暑い日差しが幻想郷中に溢れる昼下がり。
気温は一日の中で最高となり、子供たちはそんな暑さなど関係無しに外で遊んでいる。
それに対し、大人達は暑い中での畑仕事に専念している。
その頃、神社では、一人の少女、霊夢が暑い暑いと嘆いていた。
傍らには湯のみがあり、微かに湯気が立ち昇っているのが分かる。
足元には大きな桶があり、その中には冷たい水が満たされている。
時折足をばたつかせ、ばちゃばちゃと水が踊る。
空を見上げると、真っ青な空が何処か涼しそうに見える。
霊夢は、向こう側から黒い点がこちらにやってくるのが見えた。
「面倒なのが来るわねぇ、こんなくそ暑い時に」
しばらく待っていると、やがて現れる少女。
「なんでこんな暑いときに来るのよあんたは」
「いいじゃないか。私だって暇だったんだぜ」
「暇なら家でじっとしてなさいな」
「まだ子供だから動き回りたい気分なんですわ」
「……」
魔理沙は霊夢の隣に座る。
妙に笑顔が眩しい魔理沙は、霊夢にとって鬱陶しい他なかった。
「お、お茶があるじゃないか。ちょっともらうぜ」
霊夢の隣にある湯のみを掴むと、何の躊躇いもなく口に運ぶ。
熱いお茶だと言う事も知らずに。
「あっつ!? くそ暑い時とか言ってたくせになんで熱いお茶飲んでんだよ!」
「い、いいじゃない! お茶は熱い方がおいしいのよ!」
「だから暑いままなんじゃないのか!」
「……あ、そうかもしれないわね」
「はぁ?」
全くもって理解ができない魔理沙に対し、マイペースの霊夢。
魔理沙は霊夢の事をよく知っているつもりだ。
だけど、時々訳がわからなくなる。
マイペース過ぎるのも困ったものだと魔理沙は思った。
「それにしても暑いわね。黒い服来たあんたがいるから尚更暑く感じるわ」
「お前の目は節穴か。よく見ろ、白だってあるだろ」
「私だって白あるわよ」
「霊夢の色の事は聞いてないぜ」
「そうね」
「……」
神社に来たのは間違いだったのかもしれないと魔理沙は思った。
言わずもがな、霊夢のペースに合わせていると疲れを増長させる。
しかし、家に帰っても暇なだけだ。
魔理沙は考えに考え、至った結果として出たものは、
「なぁ霊夢。しりとりしようぜ」
「なんで?」
「いや、暇だから。じゃあ、私からな。しりとり」
「燐。あ~ぁ、負けちゃった」
「おい、真面目にやれよ」
真面目にやれって言われてもねぇと手をひらひらさせる霊夢。
ここで魔理沙は考えた。
「そうだなぁ。私にしりとりで勝ったら、里でかき氷買ってやるぜ。これでどうだ?」
「それだけ?」
「じゃあ、お前の好きな和菓子も好きなの一つ買ってやるから」
「やるわ」
なんと単純な脳みそなのだろうかと魔理沙は少しばかり驚く。
しかし、これで暇が潰せると思えば安いものだ。
「じゃあいくぜ。しりとり」
「林檎」
「ごま」
「鞠」
「りす」
「スリ」
「りょうち」
「地理」
「ちょっと待てよ」
「なによ」
ちり、で魔理沙が止めた。
「なんで最後が全部“り”ばっかりなんだよ」
「いいじゃない。勝ちたいんだもん」
「面白みの無いやつだぜ」
霊夢は本当に勝ちたい勝負になるとがめつい。
損する事が嫌いな霊夢は、得がある事には飛びこんでいく。
だからこその、今回の作戦なのだろう。
「まぁ、いいや。それじゃあ、りか」
「狩り」
「りょこう」
「瓜」
「りえき」
「霧」
「りきがく」
「栗」
得意げに最後が“り”の単語を吹っかけてくる霊夢。
それに対し、少し考えながらもそれを返す魔理沙。
しかし、魔理沙には奇策があったのだ。
それを何時使うか、それを魔理沙は見計らっていた。
「りきし」
「尻」
「りく」
「鎖」
「りくつ」
「釣り」
「りんり」
「!?」
霊夢は驚いた表情を見せる。
それもそのはず、“り”で攻撃して“り”で返って来たのだから。
魔理沙の奇策であった。
その策にはまった霊夢は、パニック状態に陥る。
「そ、そんな……。“り”で返してくるなんて……。えっと、あ~、あれよ、利益!」
「もう言ったぜ」
「う、嘘? えっと、それじゃああれよ、えっと~」
顔を歪ませて必死になって考える霊夢をじっと見つめる魔理沙。
その顔は実に嫌らしい笑みで満ちていた。
「そうだ、利口よ。上手い事言ったわね私」
「りこう、だな?それじゃあ続けるぜ。うっかり」
「!?」
これまた驚愕の表情を見せる霊夢。
一度だけでも防御に回ってしまった霊夢は、魔理沙の“り”攻めに陥った。
魔理沙の策は、二重の罠だったのだ。
「そんなの卑怯よ……。えっと、り、り、り~……。りあ、りい、りう」
“り”の後に続くものが無いかと必死に探す霊夢。
それを満足そうに見る魔理沙。
「そ、そうだわ、紫に聞いたあれよ、リサイクル」
「るり」
「くっ……。利子ならどう?」
「しょうり」
「り、よね。り、り……理性!」
「いかり」
「り、リズム!」
「無理」
「うがぁ~!! もう、なんなのよ!」
墓穴を掘った哀れな霊夢を、魔理沙は笑顔で見るほか無い。
「パスは?」
「なしだぜ」
「卑怯よ!」
「まぁ、じっくり考えることだな」
「う~。あ、輪廻!どうよ」
魔理沙は考える。
“ね”の後に“り”がつくものがないかと。
しかしながら、なかなか出てこない。
仕方なく、魔理沙は違うもので返す事にした。
「ねこ」
「氷!どうよ、もう“り”で思いつくものなんてないわ! 諦めなさい!」
そしてこのドヤ顔である。
しかし、それに対して魔理沙は冷静だった。
そう、これすらも策のうちだと言う事を、霊夢は知らなかったのだ。
魔理沙が口をゆっくりと開き、単語を口にした。
「りょうり」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
だけど、これだけははっきりと分かった。
最後が、“り”だということに
「うわぁぁぁぁああああああ!! そんなの無しよ! こんな勝負無かった、最初から勝負なんてなかったのよ!!」
「言い訳はいけないな。とりあえず私の勝ちだな」
「うぅ……」
認めたくないけど、これが現実。
霊夢は素直に負けを受け入れ、黙って頷いた。
「それじゃあ暇もつぶれたし帰らせてもらうぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 勝ち逃げするつもり?」
「顔が真っ赤になってるぜ? また今度しりとりしてやるから、そんときにはもうちょっと強くなるんだな。それじゃ、またな」
「え、あ、ちょっとぉ~」
魔理沙は箒に跨り、飛んでいってしまった。
もう魔理沙の姿がすっかり見えなくなった頃。
霊夢は頬にそっと触れる。
確かに頬は熱かった。
「……ちょっと大人気無かったかしら」
霊夢は湯のみに手を伸ばし、口に運ぶ。
中のお茶は、すっかり冷めていた。
「でも、次は絶対に勝つんだから」
お茶は冷めても、霊夢の闘志が冷めることはなかった。
気温は一日の中で最高となり、子供たちはそんな暑さなど関係無しに外で遊んでいる。
それに対し、大人達は暑い中での畑仕事に専念している。
その頃、神社では、一人の少女、霊夢が暑い暑いと嘆いていた。
傍らには湯のみがあり、微かに湯気が立ち昇っているのが分かる。
足元には大きな桶があり、その中には冷たい水が満たされている。
時折足をばたつかせ、ばちゃばちゃと水が踊る。
空を見上げると、真っ青な空が何処か涼しそうに見える。
霊夢は、向こう側から黒い点がこちらにやってくるのが見えた。
「面倒なのが来るわねぇ、こんなくそ暑い時に」
しばらく待っていると、やがて現れる少女。
「なんでこんな暑いときに来るのよあんたは」
「いいじゃないか。私だって暇だったんだぜ」
「暇なら家でじっとしてなさいな」
「まだ子供だから動き回りたい気分なんですわ」
「……」
魔理沙は霊夢の隣に座る。
妙に笑顔が眩しい魔理沙は、霊夢にとって鬱陶しい他なかった。
「お、お茶があるじゃないか。ちょっともらうぜ」
霊夢の隣にある湯のみを掴むと、何の躊躇いもなく口に運ぶ。
熱いお茶だと言う事も知らずに。
「あっつ!? くそ暑い時とか言ってたくせになんで熱いお茶飲んでんだよ!」
「い、いいじゃない! お茶は熱い方がおいしいのよ!」
「だから暑いままなんじゃないのか!」
「……あ、そうかもしれないわね」
「はぁ?」
全くもって理解ができない魔理沙に対し、マイペースの霊夢。
魔理沙は霊夢の事をよく知っているつもりだ。
だけど、時々訳がわからなくなる。
マイペース過ぎるのも困ったものだと魔理沙は思った。
「それにしても暑いわね。黒い服来たあんたがいるから尚更暑く感じるわ」
「お前の目は節穴か。よく見ろ、白だってあるだろ」
「私だって白あるわよ」
「霊夢の色の事は聞いてないぜ」
「そうね」
「……」
神社に来たのは間違いだったのかもしれないと魔理沙は思った。
言わずもがな、霊夢のペースに合わせていると疲れを増長させる。
しかし、家に帰っても暇なだけだ。
魔理沙は考えに考え、至った結果として出たものは、
「なぁ霊夢。しりとりしようぜ」
「なんで?」
「いや、暇だから。じゃあ、私からな。しりとり」
「燐。あ~ぁ、負けちゃった」
「おい、真面目にやれよ」
真面目にやれって言われてもねぇと手をひらひらさせる霊夢。
ここで魔理沙は考えた。
「そうだなぁ。私にしりとりで勝ったら、里でかき氷買ってやるぜ。これでどうだ?」
「それだけ?」
「じゃあ、お前の好きな和菓子も好きなの一つ買ってやるから」
「やるわ」
なんと単純な脳みそなのだろうかと魔理沙は少しばかり驚く。
しかし、これで暇が潰せると思えば安いものだ。
「じゃあいくぜ。しりとり」
「林檎」
「ごま」
「鞠」
「りす」
「スリ」
「りょうち」
「地理」
「ちょっと待てよ」
「なによ」
ちり、で魔理沙が止めた。
「なんで最後が全部“り”ばっかりなんだよ」
「いいじゃない。勝ちたいんだもん」
「面白みの無いやつだぜ」
霊夢は本当に勝ちたい勝負になるとがめつい。
損する事が嫌いな霊夢は、得がある事には飛びこんでいく。
だからこその、今回の作戦なのだろう。
「まぁ、いいや。それじゃあ、りか」
「狩り」
「りょこう」
「瓜」
「りえき」
「霧」
「りきがく」
「栗」
得意げに最後が“り”の単語を吹っかけてくる霊夢。
それに対し、少し考えながらもそれを返す魔理沙。
しかし、魔理沙には奇策があったのだ。
それを何時使うか、それを魔理沙は見計らっていた。
「りきし」
「尻」
「りく」
「鎖」
「りくつ」
「釣り」
「りんり」
「!?」
霊夢は驚いた表情を見せる。
それもそのはず、“り”で攻撃して“り”で返って来たのだから。
魔理沙の奇策であった。
その策にはまった霊夢は、パニック状態に陥る。
「そ、そんな……。“り”で返してくるなんて……。えっと、あ~、あれよ、利益!」
「もう言ったぜ」
「う、嘘? えっと、それじゃああれよ、えっと~」
顔を歪ませて必死になって考える霊夢をじっと見つめる魔理沙。
その顔は実に嫌らしい笑みで満ちていた。
「そうだ、利口よ。上手い事言ったわね私」
「りこう、だな?それじゃあ続けるぜ。うっかり」
「!?」
これまた驚愕の表情を見せる霊夢。
一度だけでも防御に回ってしまった霊夢は、魔理沙の“り”攻めに陥った。
魔理沙の策は、二重の罠だったのだ。
「そんなの卑怯よ……。えっと、り、り、り~……。りあ、りい、りう」
“り”の後に続くものが無いかと必死に探す霊夢。
それを満足そうに見る魔理沙。
「そ、そうだわ、紫に聞いたあれよ、リサイクル」
「るり」
「くっ……。利子ならどう?」
「しょうり」
「り、よね。り、り……理性!」
「いかり」
「り、リズム!」
「無理」
「うがぁ~!! もう、なんなのよ!」
墓穴を掘った哀れな霊夢を、魔理沙は笑顔で見るほか無い。
「パスは?」
「なしだぜ」
「卑怯よ!」
「まぁ、じっくり考えることだな」
「う~。あ、輪廻!どうよ」
魔理沙は考える。
“ね”の後に“り”がつくものがないかと。
しかしながら、なかなか出てこない。
仕方なく、魔理沙は違うもので返す事にした。
「ねこ」
「氷!どうよ、もう“り”で思いつくものなんてないわ! 諦めなさい!」
そしてこのドヤ顔である。
しかし、それに対して魔理沙は冷静だった。
そう、これすらも策のうちだと言う事を、霊夢は知らなかったのだ。
魔理沙が口をゆっくりと開き、単語を口にした。
「りょうり」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
だけど、これだけははっきりと分かった。
最後が、“り”だということに
「うわぁぁぁぁああああああ!! そんなの無しよ! こんな勝負無かった、最初から勝負なんてなかったのよ!!」
「言い訳はいけないな。とりあえず私の勝ちだな」
「うぅ……」
認めたくないけど、これが現実。
霊夢は素直に負けを受け入れ、黙って頷いた。
「それじゃあ暇もつぶれたし帰らせてもらうぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 勝ち逃げするつもり?」
「顔が真っ赤になってるぜ? また今度しりとりしてやるから、そんときにはもうちょっと強くなるんだな。それじゃ、またな」
「え、あ、ちょっとぉ~」
魔理沙は箒に跨り、飛んでいってしまった。
もう魔理沙の姿がすっかり見えなくなった頃。
霊夢は頬にそっと触れる。
確かに頬は熱かった。
「……ちょっと大人気無かったかしら」
霊夢は湯のみに手を伸ばし、口に運ぶ。
中のお茶は、すっかり冷めていた。
「でも、次は絶対に勝つんだから」
お茶は冷めても、霊夢の闘志が冷めることはなかった。
もう1回やったら魔理沙が負ける気がしてならない
良いレイマリでした
更に逆転したと思っていたのを見事返された時のうろたえぶりがww
負けてやけになる霊夢が可愛かったですw
『ね』で始まって『り』で終わるものといえば
練りきり、寝返り、値切り、眠り、粘り、とかでしょうか。
いざしりとりとなったとき、これらの単語がパッと出るかと言われると自信ないですが(^^;
評価ありがとうございます。
意味も無いような場所で勝っちゃう魔理沙可愛いよ。
魔理沙はきっと次も勝つはずです、フラグじゃありません。
>9 様
評価ありがとうございます。
れいまりよきよき
>11 様
評価ありがとうございます。
実際にしりとりやっててもニヤニヤしちゃいますよね。
>12 様
評価ありがとうございます。
れいまりかわいい
>奇声を発する程度の能力 様
評価ありがとうございます。
やってるとてんぱりますからねw
>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
もう皆に霊夢愛されてますね、可愛いです。
かっこいいのもいいけど、女の子な霊夢かわいい!
>31 様
評価ありがとうございます。
楽しい作品に出来あがっていたようでなによりです。
>ワレモノ中尉 様
評価ありがとうございます。
必死になる霊夢かわいいです。
実際にしりとりやって、負けた後とかだとあんな単語あったなぁって思いだします。
やってる時ってなかなか出てこないんですよねぇ。
うむぅ、いいものを読んでしまいました
評価ありがとうございます。
しりとりなら様々なたくさんあるんですよ!
この駆け引きがたまらないんですよね、しりとりは