「まったく、博麗の巫女ともあろうものが、風邪なんて引いてどうするのですか」
果たして、そのため息はどうしてこぼれたものだったのだろうか。
りんごの皮をナイフで剥きながら、私―――射命丸文は布団で横になっている彼女に視線を向けた。
シャリシャリと静かな室内に皮を剥く音がなり、その中でひときわ大きな舌打ちをして彼女―――博麗霊夢はごろりとそっぽを向いた。
もう一度、小さくため息。
暢気で図々しくて、誰に対しても不遜な態度を崩さないのは結構なんだけれど、こんな時ぐらいこちらを頼ってもいいんじゃないかと思うわけで。
「アンタにこんな姿を見られるとは、不覚だったわ」
「何を言っているのよ。こんな時ぐらい弱みを見せなさい」
「アンタは妖怪、私は巫女よ。後は言わなくてもわかるでしょ?」
「それでも、よ。あなたの立場もわかるけど、それで風邪をこじらせて死なれたら迷惑だわ。ただでさえ、人間は脆く弱っちぃというのに」
はぁ……と、これ見よがしにため息をついて見せれば、ムーッと不機嫌そうな表情を覗かせて、こちらを睨み付けてくる霊夢。
けれども、熱があるせいか睨み付けてくる目に力はなく、上気した頬も相まってちょっと可愛らしい。
常日頃からこんな表情でいてくれればいいのに、なんて考えが浮かんだけれど、それもそれで味気ないかと苦笑する。
「霊夢、りんごはそのままがいい? それともウサギさんにしてあげようか?」
意地の悪い笑みを浮かべながらそんなことを問いかければ、案の定彼女はこちらを睨んでくる。
この後、きっと霊夢は「普通でいいわよ!」なんて激昂すると私は予想していたのだけれど、意外なことに彼女はふいっと恥ずかしそうに視線をそらして。
「……ウサギさん」
そんな、同性の私でさえドキッとするほどの愛らしさで、そんな言葉をつぶやいたのだった。
うん、なんだソレ。反則もいいところじゃないか。こんな可愛い霊夢、私は知らない。
「うー」だの「あー」だの、自分でからかっておきながら次の言葉がつむげない私は、何と滑稽なことだろう。
鏡で確認する必要もない。絶対、間違いなく、今の私は顔を真っ赤にして狼狽してるに違いないんだ。
「ちょっと、あんたが顔を真っ赤にしてどうするのよ」
「え!? いや、だってその……」
まさか、からかった言葉にそんな台詞を返されるとは夢にも思わなかったわけで。
あの霊夢が恥ずかしそうに「ウサギさん」って、そんなことを口にするなんて今でも信じられないのだ。
顔を真っ赤にして、お互いの表情を見ることもできないまま、沈黙の中でりんごの皮を剥く音だけが室内で響く。
うぅ、何でこんなに気まずいのかしら……。
落ち着け、落ち着きなさい射命丸文。いつもいつも、常日頃から笑顔を浮かべているあなたはどこに行ったの?
小さく息を吸い、そして息を吐く。小さな深呼吸を霊夢に気づかれないように何度も繰り返してる内に、ようやく冷静な思考が戻ってくる。
うん、よし大丈夫。いつもの私よ。
「はーい、できましたよウサギさん」
「……ん」
ウサギの耳に見えるように皮を残したりんごを皿に置き、彼女のそばにそっと置く。
少しだけうなずいた彼女は、やっぱり私のことを恨みがましそうに視線を向けてきた。
うん、心に余裕が持てればやっぱり可愛い。
「なんであんたはそんなに立ち直りが早いのよ」
「職業柄ですかねぇ」
「パパラッチにそんな職業柄があるなんて意外だわ」
どこか悔しそうな彼女の言葉。
ソレがなんだかおかしくて、頭をなでてあげると一層不機嫌になったみたいでこちらを睨みつけてくるのだから、ちょっと満足。
よっと声をひとつこぼし、正座を崩して立ち上がる。
相変わらず彼女はこちらを睨みつけてくるけれど、そんなの気にするほど私の精神は柔じゃない。
だって慣れてるもの。椛とか霊夢とか椛とか霊夢とか椛で。
……あれ、なんか涙が出そうになってきた。
ま、ソレはともかくとして。
「今日はそのまま安静にしておくのよ。家事とかその辺は私がしといてあげるから」
「あんたが? 信用ならないわねぇ。というより、そもそもアンタ家事とか出来るの?」
「失敬な。よし、見てなさい霊夢、あなたに私の家事の実力を見せてあげるわ!」
フッフッフッと不敵な笑みを浮かべてやれば、彼女はどうでもよくなったのか「あー、はいはい」などといって向こう側に寝返りを打った。
うん、それはそれで物凄く寂しいんだけど。もう少しだけ付き合ってくれたって罰は当たらないんじゃなかろうか?
とまぁ、とやかく言っても仕方がないわけで。
もう一度、布団で大人しくしておくように釘を刺しておいて、私はいったん退出する。
さて、ここからは新聞記者の私でもなく、そして鴉天狗としての私でもない、一人の女としての私を見せてあげるんだから、覚悟してなさい霊夢!!
そんな風に意気込んで部屋を後にした私は、鼻歌交じりにスキップを踏むのであった。マル。
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「とまぁ、意気込んだのはいいんだけどねぇ」
パンパンッと洗濯物を取り込みながら、ぼんやりとそんな言葉をこぼす。
博麗神社の裏にて空を見上げてみれば、この上ない青空が広がっている。
確認するまでもなく絶好の洗濯日和だというのに、私からこぼれるのはため息ばかりだ。
「なんというか、味気ないというか」
はぁっと、小さくため息をひとつこぼす。
意気込んで家事をやろうとしたはいいものの、あの巫女、何を考えているのか私が訪れる前に掃除やら洗濯やらほとんど済ませてしまっていたらしい。
私がやったことといえば、こうやって時間になって洗濯物を取り込むくらいだ。
私が訪れたのは八時頃、つまり彼女はソレよりも早く起きて、なおかつ熱もあって本調子でもないというのに家事を一通り片付けてしまったらしい。
しかも、私が来たときにはフラフラと頼りない足取りで境内の掃除までしていたくらいだ。
……うん、なんだかだんだんと腹が立ってきた。
「もう少し、自分の体をいたわりなさいっていうのよ。なんで妖怪の私があの子の体の心配をしなきゃいけないんだか」
そんなことを愚痴ってみても、好きでやっているんだから始末に終えない。
私、こんなにお節介を焼くタイプだったかなぁと気難しげにうなって、少し考え込んでみるけれどやっぱり答えは出てこない。
椛が言うには、私は結構面倒見がいいという話だけど……あんまり自覚ないんだけどなぁ。
「……っと、ちょっと早いけどお粥でも作ろうかしら」
何しろ、話を聞く限り私が切ったりんご以外は食べていないようだし、そろそろお腹もすいている頃合だろう。
風邪のときは食欲が低下する傾向にあるけれど、だからといって食事をおろそかにしていい理由にはならない。
もちろん、風邪のときに無理をするなんてもってのほかだ。風邪を拗らせてしまえば、命にかかわる危険だってあるのだから。
そうと決まれば話は早い。あの巫女のことだから食材の種類に些か不安が残るけど、まぁお粥を作るぐらいには何とかなるだろう。
というよりむしろ、何とかなると思いたい。
神社の一室で洗濯物をたたみ終えると、一箇所に綺麗にまとめて部屋を出る。
長い長い廊下を抜けて台所に足を踏み入れると、入り口側の椅子にかけてあった割烹着を身に着ける。
なんだかんだで機能的な代物だし、霊夢には悪いけれど、黙って使わせてもらうことにしようと思う。
とりあえず、食材の確認。それから釜戸やらなにやらの調理器具の確認などを済ませておく。
風邪のときは、とかく胃腸が弱くなりやすい。なので、風邪のときはお粥やおうどんなどの消化にいい料理が理想的だ。
とりあえず、食材を確認してみると意外にもどちらも作れそう。
ということで、間を取ってお粥うどんでも作りますかね。ぶっちゃけると私もお腹すきましたし。
本当はもうちょっと豪勢なものにしたいのですが、病人相手では些か消化に悪いものはよろしくないでしょう。
時間はまだ夕飯というにはだいぶ早い。けれど、これから私が作るおゆはんは腕によりをかけて作る自慢の一品になるに違いない。
なんたって、あの巫女を唸らせる為にこれからもてる技術の全てをつぎ込むのだ。
これが、自慢の一品にならないはずがないなんて、そんな漠然とした自信を抱きながら、私は調理に取り掛かるのであった。
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お盆にお粥うどんの入った土鍋を載せ、私はゆっくりと霊夢の寝ている彼女の私室に入り込む。
純和風の室内は程よい湿度と温度に保たれて、彼女は布団の中でおとなしく横になっている。
昼間にきったリンゴは、ひとつも残ってなくて、全部食べてくれたのだと思うと、少し嬉しかった。
「霊夢、起きてる?」
「んー、……今起きた。おいしそうな匂い……」
「ふふふ、自慢のお粥うどんです。おいしいこと間違いなしですよ?」
「……ねぇ、なんか一人分にしてはやたら量があるんだけど」
「心配要りません。私の分も入ってますから」
「あ、なるほど」と言葉をこぼして、彼女はゆっくりと体を持ち上げる。
上半身だけ起こした形になると、ンーッと固まってしまった背骨を伸ばすかのように両腕を上げて、なんだかその様子が可愛らしい。
微笑みながら彼女の隣に座ると、彼女の分と自分の分のお椀を分けて、土鍋の蓋をゆっくりと開ける。
もわもわと立ち上る湯気、その湯気に隠れるように姿を見せたのは、お粥とうどんが融合した自慢の一品である。
卵やニラなどの食材をアクセントに加えたその一品を見て、巫女のほうから「おぉ」と僅かに感嘆の息がこぼれたのが耳に届く。
勝った! などと心の中でガッツポーズを取り、どうだ参ったかーなんて子供じみたことを思ってしまう自分自身を何とか押さえ込む。
「意外だわ、あんたちゃんと料理できるんだ。料理にしても普通のお粥が出るもんだと思ってた」
「フッ、何年独り暮らししてると思ってんの。伊達に長生きしちゃいないのよ」
自信満々な私の言葉をどう受け取ったのやら、霊夢は「ふーん」と気のない返事をしてまじまじと鍋の中を覗き込んでいる。
ふはははは、どうだ美味そうだろう。などと私が心中で高笑いしていたそのとき。
「……なんで結婚できないのかしらね、コイツ」
「ぐはぁっ!!?」
何気ない彼女の一言が、私の心をものの見事にえぐりやがったのである。
そうよね、そうだよね、千年以上生きてて独り身ってあれよね。確かにそうなんだけどさ。
……ふーん、いいもん。私は仕事が恋人なの。仕事が楽しいからソレでいいんだもん。負け惜しみなんかじゃないんだったら!
「……何泣いてんのアンタ」
「いーえー、なんでもありませんよー」
シクシクと涙を流していた私を不信の眼差しで見下ろしながら、彼女はいそいそと自分のお椀に食事を取り分けていた。
このまま涙にくれていると自分の分がなくなりそうな勢いなんで、気を取り直した私は自分のお椀に料理をよそう。
ちょっと早い時間帯だし、食事も豪勢というには程遠いけれど、二人きりの夕食。
よくよく考えればここは神社なんだし、このぐらい質素なもので丁度いいのだろう。
ハムッと料理を一口。舌の上を熱さと同時にお粥独特の風味が広がって、我ながら美味い出来だったのではないかと太鼓判を押してみる。
ちらりと霊夢に視線を向けてみれば、彼女は目を輝かせてハムハムコクコクと、一口含むたびにコクコクと頷いておいしそうだ。
うん、その顔が見たかった私としては、十分に合格点を出せそう。
「ふむ、ふむふむ」
「……何よ?」
「いえいえ、その様子を見る限りじゃ感想を聞くまでもないみたいね」
ニヤニヤと視線を向けて言ってやれば、彼女は顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけてきた。
眠っている間にだいぶよくなったんだろう。目には今朝には無かった力強さが戻っていて、ほっと一安心。
「仕方ないでしょ。こんな料理でも、食べなきゃもったいないんだから」
「むむ、そうですか。不味いなら食べなくてもよろしいのですよ?」
「不味いなんて一言も言ってないでしょ! ていうか、わかっててからかってるわねアンタ!」
「さて、何のことやら」
例えそうだとしても、シレッと白を切ってやるのが射命丸流。
したたかに生きていないと新聞記者なんてやってられない。時には人に嫌われる豪胆さも必要なのだ。
まぁ、そのせいで彼女にはパパラッチなんて不名誉な呼ばれ方するわけなんだけど……世知辛いわね、世の中。
はぁっと、彼女はため息をひとつついて料理を口に運ぶ。
その度に頬が緩んで幸せそうな顔をするもんだから、こちらとしては感無量というか、作ってよかったってしみじみ思うわけで。
お酒があればもっといいのだろうけど、病人の前で、しかもお酒が好きな霊夢の前で自分だけ飲むのはあまりよろしくあるまい。
「……なんていうかさぁ、今日一日アンタに看病されて思ったんだけど」
「ほぇ?」
もきゅもきゅと口の中のものを租借しながら、そんな間の抜けた声がこぼれ出る。
彼女は真剣な表情で、ソレでいてどこか気難しそうな、そんな奇妙な表情のまま、私を見据えて。
「アンタってさ、何で私のことをそんなに気にかけるのよ?」
そんな質問を、大真面目にぶつけてきたのであった。
「何でって言われましても……なんとなく?」
「なんとなくって……アンタそんな理由で今まで看病してたわけ?」
「アホくさっ」とはき捨てるようにため息をついて、彼女は頭を抑えてため息をつく。
……何もそんなあからさまな呆れを体にあらわさなくてもいいんじゃなかろうか。
だって、しょうがないじゃない。本当になんとなくとしか言いようが無いし、強いて言えば「取材対象がいないと困る」というものですけど、別にソレは巫女じゃなくてもいいわけで。
きっと難しく考える必要なんて無い。感じたままを言葉にすれば、きっとそれでいいはずで。
「そんなに言わなくてもいいんじゃないの、霊夢。第一、友人が病気になったら気にかけるくらいはするものでしょ、普通」
「へぇー、アンタは私のことを友人と思ってるわけ?」
「勿論。そうでなけりゃ、山の神が来たときにわざと通したりしないわよ。これでも、あなたのことは信用も信頼もしてるんだから」
そんな風に、思いのままを言葉にしてもう一口。
かれこれ彼女とは長い付き合いになるけれど、私は彼女のことは取材対象であると同時に、友人としても見ているつもりだ。
そうでなけりゃ、あの時に妖怪の山へわざと通したりなんかしないし、地底の取材のために彼女をたきつけたりなんかしない。
「ふーん、意外ね」
「何が?」
「てっきり、アンタは私のことを取材対象としてしか見てないと思ってた」
「勿論、ソレもあるんだけどね。でも、友人だと思ってるというのも本当よ。そうでなけりゃ、ここで素の口調で喋ったりなんかしないわ」
はたして、彼女は私の言葉に何を思っただろうか。
どこか納得したように、彼女は「なるほどね」なんて呟いて料理を口に運ぶ。
そのときの彼女の表情が、どこか嬉しそうだったと思ったのは、私の自惚れだろうか?
「で、アンタいつまで家にいるつもりなの? そろそろ帰るんでしょ?」
「……? 何言ってるの霊夢、私は今日ここに泊まっていくわよ」
はて、私は今何かおかしなことを言っただろうか?
少なくとも、霊夢が「はぁっ!!?」なんて言って立ち上がるあたり、よっぽど素っ頓狂な言葉でも口走っていたのだろうか?
少し考えてみるけど、やっぱり心当たりが無いわけで。
「何で泊まるのよ!? もう私もほとんど治ってるんだからアンタがいる意味ないでしょ!?」
「病み上がりでしょ? そんな体でもし妖怪に襲われたらどうするつもりなのよ。博麗の巫女とはいえ、知能の低い妖怪なんかは問答無用で今のあなたを狙うだろうし」
「だから、今日は泊まっていく」と言って彼女に視線を送れば、「ムグッ」と言葉を詰まらせた霊夢の姿。
大体、だいぶ元気になったとはいえまだまだ本調子じゃないのは明白だ。
博麗の巫女は幻想郷に無くてはならない存在だし、彼女を狙おうなんて馬鹿は殆どいないだろうけれど、それを理解できない低俗な輩も居ないとは限らない。
まぁ、いわゆる保険みたいなものだ。彼女は私のお気に入りなのだし、こんなところで死んでしまいましたーなんて、あまりにも笑えない。
難を言えば今日の椛分が補充できないことだけど……まぁ、仕方ないかな。
いつの間にか土鍋の中も空っぽ。これだけ食欲があるのなら、明日にはすっかり元気になっていることだろう。
しかし、ソレはソレ、これはこれ。今の彼女は病人に他ならないわけで。
「霊夢、お風呂に行くわよ。汗かいてるだろうし、せめて体ぐらい拭いてあげないと」
「は?」
「あぁ、ちゃんとお風呂沸かしてるから心配要らないわよ。ほら、さっさと汗を流して、新しい寝巻きに着替えないと」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんたも一緒に入るつもり!!?」
「そうだけど?」
「なんでよ!? 私一人で十分だって!!」
「病人が何を言ってるのよ。こんな時ぐらい年上に甘えなさいって」
ニャーニャーと抵抗する霊夢を抱きかかえ、からかい半分でお姫様抱っこなどをしつつ風呂場に一直線。
相変わらず暴れまわる霊夢だけど、病人の彼女の腕力などで鴉天狗の腕から逃れられるわけもなく。
そんなわけで、彼女は風呂場を嫌がる猫のごとく、あえなく風呂場に連行されたのであった。
▼
さて、すっかり夜の帳が落ちた深夜。
私の隣の布団で横になっている霊夢が、恥ずかしいことでも思い出していたのか布団の中でもだえている。
「あぁ、不覚だわ。博麗の巫女ともあろうものが、あんなにあっさり手篭めにされるなんて!」
「ただ体を洗ってあげただけじゃないの。ところでさ霊夢、借りてるこの寝巻き、胸の辺りがちょっとキツイ」
「帰れ馬鹿鴉!!?」
キンキン耳が痛くなるような金切り声で、思いっきり怒鳴られた。
うぅ、流石にからかい過ぎたかしら。ちょっと反省。
ふんッとそっぽを向いた彼女は怒り心頭なのか、こちらなど見ようともしない。
そんなにお風呂に一緒に入ったのが恥ずかしかったらしい。まったく、女同士なのに何を遠慮する必要があるのやら。
年頃の女の子って難しいわ。
「アンタ、明日覚えてなさいよ」
「……うわーい、霊夢さんってば殺気が般若になってるー」
うん、いや本当に。
殺気が視認できる上に、それが般若を象ってるって、私は明日生きていられるのだろうかちょっと不安になってきた。
背筋を這い回る寒気がまるで虫のよう。こんな恐ろしい殺意を放てる巫女ってどうなんですかね、実際。
「霊夢、殺意をぶちまける巫女ってどうなの?」
「ムッ」
私の言葉に流石に思うことがあったのか、霊夢から気難しげな声がこぼれる。
しばらく考え込んでいたようだったけれど、彼女は何かを悟ったようにフッとニヒルに笑い。
「心配要らないわ。殺意をぶちまけようと、怨念をぶちまけようと、私は博麗の巫女であり続けるんだから!」
「「キリッ」ってやつね」
効果音つけたらリアルに首を絞められた。
ていうかちょっと待って!? 本当に絞まってる!!? ギブ、ギブアップですってば霊夢さん!!?
そろそろ酸欠で脳みそがやばくなってきたころに、ようやく私の意思が通じたか彼女の手から開放される。
不足した酸素を補うように、せきを混じらせながら大きく息を吸って新鮮な空気を取り込んだ。
……し、死ぬかと思った。
「……この借り物の布団が死の棺桶になるところだったわ」
「そのまま死ねばよかったのに」
「あ、あはははは……相変わらず辛辣だわ、この巫女」
乾いた笑いをこぼして見せれば、彼女はジト目でこちらを睨みつけてくる。
うむ、くわばらくわばら。これ以上彼女を刺激するのはやめたほうが無難か。
ふわぁっと、大きな欠伸がひとつこぼれる。
思えば、取材をしにきたはずのこの場所で、いつの間にか看病をしていて仕事どころではなくなってしまった。
けれど不思議と残念な気はしなくて、「たまにはこんな日もいいかな」なんて、そう思っている自分がいる。
まぁ、取材のほうは明日頑張ればいいということで。たまには仕事を休んだって罰は当たるまい。
「霊夢、一緒に寝ない?」
「はぁ? 寝言は寝てから言いなさい」
「でも残念、これから眠る私には十分寝言に等しいわけです! ていうか私の抱き枕になーれー!!」
「ちょっ!? こら!!? 布団に入り込むな!! 抱きつくなぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
そいやーっと勢いよく彼女の布団にもぐりこめば、上がるのは巫女の悲鳴なわけで。
何とか抵抗する巫女を尻目に、私は彼女を抱きしめてスリスリと頬擦りを開始する。
椛分が補充できない今日、満足行くまで霊夢分を補充しなければいけないのです。
そんなわけで、普段聞けない彼女の顔、彼女の表情、彼女の声を知れた。
なんだかんだといいつつも、結局彼女は一緒に眠ることをしぶしぶと了承してくれて。
ただそれだけでも、今日はこんなにも、有意義な日だと思えるのだから。
取材をしない、けれどこんな一日も―――きっと、悪くない。
▼
「うぅ……ゲホゲホ」
「……一緒に寝るから風邪がうつるのよ、この馬鹿」
翌日、私は風邪を引いた。ていうか、うつされたらしい。
今日も今日とて、取材にはいけそうに無い私であった。
でも、霊夢が看病してくれるみたいだし、プラマイゼロ……かな?
こんなハイスペックな文ちゃんになら看病されたいかも!
ただ…何故お風呂シーンが無いんだ!?
あやれいむ……流行れ!!
ウサギさん…で俺の中の何かが崩れ去った。
ここにアリスとかが乱入して修羅場とか考えちゃったW
あやれいむのビックウェーブが!
霊夢も文ちゃんもにやけてしまうほど可愛かったですw
あやれいむ・・・流行らない方がおかしい!
友人かー……。こんな関係があるなら、本当に幻想郷は平和で安泰ですなぁ。
……そして次はれいあや、だと……?
だがもっと流行れ
もうニヤニヤが止まりませんでした
わかってはいたけどいいオチでした。
時代は確実に動いている…
あやれいむは…マイナーからメジャーへと…変わる!
……ウサギさん
でいきなり顔面崩壊を起こしたのは俺だけじゃないはず。
もっと広がれれいあやの輪!(ちょ
敬語じゃない素のあややって素敵。
素のあややのが好きな俺としては歓喜な作品でした。
もっと広がれあやれいむの輪!!…とレイアリの輪!!
オヤジ、もう一杯!
魔術師とも言うべきですね、貴方は。
さあ、次はどの二人をターゲットにしているのだ!?
「……なんで結婚できないのかしらね、コイツ」←霊夢と結婚するためですよ!!!!
一緒に寝たぐらいで風邪移るかな? ハッ! 移る様なことをしたというのか!!!!