Coolier - 新生・東方創想話

黙の時間

2010/06/08 06:50:42
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ある日、アリスが目を覚ますとアリスは釣瓶落としになっていた。

気づいた時にはなぜか桶の中にちょこんと納まっていたのである。

寝る前に着ていたはずのパジャマは白装束になっている。

桶の大きさは椅子ほどで、高さは1メートルかそこらといったところ。

桶としては大きいが、他にはこれといって特徴のない普通の桶である。

周りを見渡してみると、愛着のある人形や魔道書、アンティークの数々・・・

そして窓の外にはさわやかな、とは言えなくとも静かな魔法の森の風景が見える、

そんな私の寝室は露と消え、暗闇が周囲を覆っていた。

どこからか光が入っているのか、何も見えないほど暗いわけではない。

しかしながら、この空間、洞窟のような場所全体を見渡すことが出来るほどではなく、

せいぜい周辺5メートルほどを見渡すことができるだけであった。

桶からは紐が伸びていて上から吊り下げられているみたいだが、この紐がどこに

繋がっているのかは分からない。天井があるとしたらどれほどの高さから吊り上げられているのか。

上も下も右も左も果てしなく広がっている・・・気がする。

暗闇の中で実際に広いのか狭いのかなんてわかりようもないのだ。



魔法が使えないかためしてみるが、光を出すことも空を飛ぶこともできない。



「さて、どうしようかしら。」

桶の中には私以外なにも入っていない。せめて人形かグリモワールがあれば良かったのだけど。

まぁ、あったとしても魔法が使えないのだから慰め程度にしか意味はなかったかもしれない。


桶を動かせないかしら。

「えいっ、えいっ。」

桶を中から押したり引いたりして揺らそうとしてみるが、桶はびくともしない。

・・・だめか。

「じっとしているのは性分じゃないのよねぇ。」

暗い空間の中で桶の中に閉じ込められる。一生、いつか果てる時までこのままだったとしたら・・・

冗談じゃない、どうにかして抜け出さないと。

「ちょっとくらい動きなさいよ。」

ばしっ

イラつきながら桶の縁を叩いた。すると、

くるっ

桶が少しだけ回転した。

「ん?いま少しだけ桶が動いたわね。」

桶の縁を掴み、自分の体を軸にして右から左に体重をかけるようにして力を込める。

くるくる



なるほど、回ることだけは出来るのか。

とりあえず他にやることもないし、しばらく回ってみましょう。


くるくるくるくる


くるくるくるくる


・・・・・・うぇぇ、気持ちが悪くなってきた。

慌てて桶を回すことを止める。


ぴたっ




くる



くるくる


あ、逆回転が・・・


















・・・・・・ふぅ、あぶなかった。

もしも都会派な私でなかったら胃の中のものをすべて吐き出してしまっていただろう。

それにしても気持ち悪い。視界と脳みそが揺れて安定しない。揺れているのは私の脳だけなのに、

まるで私も私の周りもまとめて洗濯機の中に投げ込まれてぐるぐると回されているかのようだ。

ぐるぐるぐるぐる






気持ち悪さをなんとかこらえ、う~ん、う~ん、と唸りながら息を整える。

「あのぅ。」

どこからか声が聞こえてきた。

周辺に目を凝らすと私の前方から何かが近づいて来る気配がする。

声の調子からすると敵意を持っているようには感じないけど、様子を見てみよう。

「なにか用かしら?それと、あなたは誰?」

「わ、私はキスメといいます。えと、あ、あなたも釣瓶落としですよね?」

さらに相手は近づいてきて、肉眼で捉えられるほどになる。相手は小柄な女の子だった。

「あなたも釣瓶落としですか?」という台詞から察するに彼女は釣瓶落としなのだろう。

確かにその子、キスメは桶の中に体を納めており、顔だけをこちらに覗かせている。

私の入っている桶よりも随分と小さい、言い換えれば一般的な大きさの桶だが、釣瓶落としの桶は

体の大きさに合わせて自動的に調整されるものなのかもしれない。

「会えて光栄だわ、キスメ。私の名前はアリス、アリス・マーガトロイド、よろしくね。

それと、残念なことに私は釣瓶落としじゃないわよ。」

相手に親近感を沸かせるなら私は釣瓶落としだ、ということにしておいたほうがよかったのかも

しれないけど、自分を偽ることは好きじゃない。

「えっ!?ち、違うんですか?け、けど、アリス・・・アリスさんは釣瓶落としに見えます。

それに、同類の・・・釣瓶落としの匂いがします。」

匂いって、同族だけが感じ取れるフェロモンみたいなものだろうか。クンクンと自分の服をかいでみる。

よく分からない。

「ふむ、今の私は釣瓶落としなのかもしれないわね。なぜこの場所にいるのかもよく分からないし、

なにかの魔法か、そうでなければ呪いにかけられてしまったのでしょう。本来の私は魔法の森で

人形遣いをやっているわ。」

「そう、なんですか。」

少し落胆しているみたいだ。まったく、こんなに綺麗な人形遣いさんに出会って落胆するとは何事か。

これでも里で人気の綺麗なお姉さんで通ってるんだぞ。


と、そんな事より情報を集めたい、とりあえずキスメの事を聞いてみよう。

「あなたはこんな所で一体なにをしていたの?」

キスメのことを観察してみると、桶を掴む手に力が入りすぎている気がする。

それに体が少し震えているし、表情も堅い。怯えているみたいだ。私に怯えているはずもないので、

他になにか怯えるような原因がある、もしくはあったのだろう。

服や桶は特に汚れたり傷ついたりしていない。何物かに襲われているならもっと慌てているだろうし、

最初は仲間がいて、はぐれてしまい迷子になってしまったといったところかな。

「えと、恐い妖怪に襲われて、それで無我夢中で逃げてきたんです。」

「やっぱりそうだったの、そうじゃないかと思ってたのよね。恐かったでしょう。」

「はい、とっても恐かったです。」

「その妖怪はどうしたの?この周辺にはいないみたいだけど。」

「多分、逃げきることが出来たんだと思います。けど、いつのまにか知らないところまで来てしまって、

途方に暮れていたんです。」

「そう、あなたもここが何処なのかはわからないのね。けど、あなたが無事で居てくれてよかったわ。

こんな場所に一人ぼっちだと心細いもの。」

「わ、私もアリスさんが居てくれてよかったです。アリスさんがいると心強い気がします。」

「うれしいことを言ってくれるわね。それなら、もう少しこっちに近づいてみてくれないかしら。

どうしてか私の桶は動いてくれないのよ。」

「そうなんですか?アリスさんは本来、釣瓶落としじゃないからでしょうか?」

ススス

とキスメが近づいてきて、私の桶とキスメの桶が触れ合う。すると突然二つの桶が一つになった。

つまり、一つの桶の中にアリスとキスメがいる状態になったのである。桶の大きさはアリスが今まで

いた桶よりも少しだけ大きくなり、正座を崩した状態のアリスの上にいつのまにかキスメが乗っている。

突然の事態に混乱したのか、キスメが取り乱した声を上げる。

「い、一体何が起きたんですか!?どうなっているんですか!?はわわわわ。」

「落ち着きなさい、大丈夫だから。私に抱きついてなさい。」

「ううううううう。」

「大丈夫、大丈夫よ。」

キスメを抱きしめて、背中をぽんぽんと叩いて落ち着かせる。

桶が一つになった事以外に何か異常はないか。

・・・とくに変わったところはない。と思う。少なくとも体に異常は感じない。



「キスメ、落ち着いた?」

「はぅ、は、はい。びっくりしたけど、落ち着きました。」

「それはよかったわ・・・それにしても、あんたって軽いのねぇ。人形と同じぐらいしか体重

ないんじゃないかしら。」

「えぇ!?そ、そんなことないですよぅ。」

「冗談よ、十分軽いけどね。それと、私のことはアリスでいいわ。さん付けで呼ばれるのは

あまり好きではないの。」

「わ、わかりました。アリス・・・・・・さん。」

「こら。」

「あぅ、ごめんなさい。」

「何の縁だか、こうして同じ釜の飯ならぬ同じ桶の仲になったのだし、他人行儀に接するのは

やめましょうよ。ね?キスメ。」

「は、はい。アリス・・・」

「キスメ。」

「アリス。」

ふふふ

くすくす

お互いに笑みを見せる。

キスメの体は小さく頼りなかったが、その小さな体から感じる温もりは心地いいものだった。

そういえば、

いつだったか、私もこうして抱きしめてもらったことがある。

あれは、そう





私と     と     の三人で水族館にいったときだ。



私はいきたくなかったのに、     が太平洋にできたテーマパークにいこうといったのだ。    

     がいこうといって、     もいこうといって、だからわたしもいこうといったのだ。    


てーまぱーくのなかはおおきなすいそうになっていました。

なかはくらくて、とてもくらいので     と     のかおはみえません。

かげがうごめいていました。

わたしもほかのひともぞろぞろとすいそうのなかをあるきました。

ほんとうはすいそうをみるのはわたしのほうなのに、すいそうのなかにいるのはわたしたちでした。

すいそうのそとにはたくさんのめがありました。

さかなをみているのにわたしはさかなからみられていました。

わたしはみずのなかをおよぐさかながこわくてないてしまいました。  

けど、     はわたしのことをだきしめて、だいじょうぶ、だいじょうぶ、といってくれました。

だからわたしはさかながこわくなんてありませんでした。




―――けれど、抱きしめられていたのはあなたではなかった。あなたはそれを見ていただけよ。だって、


―――あなたの傍には誰もいなかったじゃない。名前を呼んでくれる人さえも。





「アリス?」

「ん?どうしたの?」

「アリスがぼーっとしていたから。」

「ちょっとね、あまりにも抱き心地がいいから、キスメをペットにでもしようかと思っていたのよ。」

「ふぇ!?ぺ、ペットですか!?あう、それは、その、うぅ。」

「ん~?嫌とは言わないのかな~?お持ち帰りしちゃってもいいのかな~?」

「あう、そ、そういうんじゃなくて、けど、抱きしめてもらっていると気持ちよくて。ぺ、ペットは

いやですけど、その・・・ペットじゃないなら、あの。」

私の腕の中で顔を赤くしている。う~む、かわいいなこの子。

ぎゅっとしてなでなでしてあげたくなるわね。・・・なでなで

「かわゆいのう、お主かわゆいのう。なでなで。」

「はわわわわわ。」

「うふふふふ。よいではないか~。」





ぐいい

ふいに、何かに引っ張られたかのように桶が動きだした。

「キスメが動かしたの?」

「いえ、違います。」

桶の動きはゆっくりとしている。上下には動いていないようだが、一定の速度で一定の方向に進んでいる。

まるでクレーンゲームで吊り上げられたぬいぐるみのようだ。

・・・はて、クレーンゲームって一体何だったかしら。まあいいか。

「自然に動き出したのかしら?それとも誰かが動かしているのかしら?どっちにしろ、いいかげんじっと

しているのにも飽きていたし、流れに身をまかせてみましょう。」

「アリスは恐くないんですか。」

「恐い?私に恐いものなんてないわ。どんなものでも正体見たり枯れ尾花、ってね。

想像や不可解で私を恐怖させることは不可能よ。」

「すごいですね。私なんて妖怪なのに恐がってばっかりです。」

「私は特別にすごいから仕方がないわね・・・と、何か見えてきたわよ。」

前方になにかがいる。動物のようだ。背中を向けているのでよくわからないが、ウサギのような体つきをしている。

問題はそのウサギが人間ぐらいに大きいということだろう。茶色の毛並みでぴょんぴょんと飛びながら移動

している。どうやら私たちの桶と同じ方向へ進んでいるようだ。

言葉が通じないかな?

「ねぇ、そこのウサギさん。ちょっと待ってよ。」

そう話しかけると、意外にもウサギは立ち止まりこちらへ返事をしてきた。

「俺に話しかけたのかい?」

「ええ、そうよ。」

「俺はウサギじゃないぜ。」

「そうなの?」

相手はウサギではなかったらしい。

「そうさ、俺はカンガルーっていうんだ。」

「へー、確かにウサギとは違うみたいね。ウサギよりも、え~と、男らしい顔つきをしているわ。」

「そうだろう?俺は仲間内でも男前で有名だったからな。」

どことなく得意気な様子だ。

「それで、あんたたちはなんなんだい?」

カンガルーが逆に聞いてきた。私たちは・・・なんなんだろう。キスメに尋ねてみる。

「キスメ、私たちってなんなのかしら?」

「えっと、釣瓶落としなんじゃないでしょうか。」

「そうなの?」

「多分。」

「あんたたち、自分が何なのかもわからないのかい。」

「本当の私は人形遣いなんだけどね。」

「本当の私は釣瓶落としなんですけど。」

「よくわからん。だが、自分のことがわからないなら進む方向が違うね、あんたたちが進むのはあっちだ。」

カンガルーが右の前足を伸ばして方角を指す。

「う~ん、けど、この桶って自分で動かせないのよねぇ。」

「そうなのかい、それならきっとこの方角であってるんだろうよ。」

けっこう適等なのね。まあいいけど。

「カンガルーさんはこれから何処に行くの?」


あれ?カンガルーがいない。すぐそばにいたはずなのに。

その代わり、いつのまにやら私たちの周辺には様々な生物が姿を現していた。

その生物は犬だったり、鳥、種類までは分からないが、大きい猫やらトカゲやらで、現れたと思ったら

私たちを通りすぎてどこかへ消えていく。

どこから来てどこへ行くのか。

みんな進む方向は同じで、他の生物から見ると、現れてから消えたように見えるのは私たちのほう

なのかもしれないなぁ、などと思う。




しばらくすると、私たちを通りすぎていく生物の姿が変わり始めた。

人間の顔をした鹿が駆けて行き

体に不釣合いな人の足を生やした鶯がのそのそと歩いている。

異様に耳の大きい梟が頭上を羽ばたいて越えていった。

目が数え切れないほどある口のないサルがキィと鳴く。



あぁ、違った。これらのものは動いてなんかいなかった。まるで剥製のように固まっていて、

ベルトコンベアに乗せられたマネキンのように音もなく移動している。

百鬼夜行のように見えなくもないそれらと一緒に桶は進んでいく。




それらの生物たちの姿も消え、目の前には骨が広がっている。

骨の広場とでもいうのか、地面、本当にそれが地面かは分からないが、白い骨が地面を覆い尽くしている

のだ。広場というよりも骨の砂漠というべきか。よく見ると、骨はすべて人のものということがわかる。

なぜなら、砂漠の合間にみえる頭蓋骨が全て人のものだったから。

もう一つ気がついたことは、腕だ。砂漠には至るところに何かが突き出していた。

最初は小さな柱が何本も立っているのかと思ったが、それらはすべて腕であった。

何かを掴むかのようにして腕を上空に伸ばしている。まるで神にすがるかのように。

桶が通り過ぎる時に、

ぺきん

と、乾いた音を立てて何かが折れる音が聞こえた。


骨の砂漠が消えて、再び暗闇に覆われる。





ぼわ

と、何かが目の前でぼんやりと白い光を放っている。海月だ。

それと、蝶がひらひらと飛んでいる。こちらもぼんやりと白い光を放っている。

先程のように、いつのまにか私達の周りには海月と蝶が何匹も現れていた。

海月は、ふわりふわりと漂いながら、

蝶はひらりひらりと舞いながら、ぼんやりとさざめいて流れていく。

流れていく先にはまばゆい光が見える。

海月と蝶が何千何万と集まっているからだ。

大きな光に吸い込まれていくかのように海月と蝶が飛び込む。そしてさらに光が強くなる。

きっとこれは天の川だ。

海月と蝶がつくる天の川。渡って会うのは誰そ彼か。


川の流れに乗るようにして桶は進む。




まどろみの中で声が聞こえてきた。

「あんたたち、ちょいとお待ちよ。」

姿は見えず、声だけが聞こえる。

  なにか用かしら?それに、あなたは誰?

「あたいはしがない死神さね。あんたたち、このまま先へ進むと死んでしまうよ。」

  そうなの?一体どうすればいいのかしら。

「今来た道を逆に戻ればいいのさ。」

  けど、この桶は勝手に動いちゃうのよ。それに方向も変えられないわ。

「ふむ、それなら少し手荒な方法を使うけど、いいかい?」

  いいわよ。まだ死ぬ気はないもの。

「話が早くて助かるよ。」

あらよっと

掛け声が聞こえ、なにかが振りかぶられる音が聞こえた。


ブツン







どさっ

・・・痛い、

目を開けると、目の前には見知った天井が見える。私の家の寝室の天井だ。

私の体はパジャマ姿で床に転がっている。寝ているうちにベッドから落ちてしまったのだろうか。




どさり、

「ぐぇ。」

なにかがベッドの上から私の体に落ちてきた。

それは小柄な少女の姿をしており、衝撃があったにもかかわらず、すやすやと穏やかな寝息を立てている。

「キスメー?起きなさいよー。」

「すやすや。」

まったくしょうがない。たしか、桶が壊れたとかで直してくれと言ってきたはずだ。

それで、すぐには直せないからキスメを家に泊まっていかせたのだっけ?

頭の中にもやがかかっている。都会派は低血圧だから寝起きに弱いのである。

どうせたいした事でもないだろう。たいした事なら私が忘れるはずがない。

このまま圧し掛かられていると重いので、よいしょ、と声をあげてキスメの体を抱き上げる。

「小柄なくせにけっこう重いのよね。まったく。」

そして、起こさないようにしながらベッドに寝かしつけようとしたら。

ぎゅう

しがみつかれた。

この子、実は起きてるんじゃなかろうか。すっごく力強いんですけど。

疑惑の眼差しをキスメに向けるが、

「すやすや。」

と、当の本人は眠ったままだ。

「やれやれだわ。」

身動きがとれないし、このままでは朝ごはんを作ることもできない。

まぁ、人形を動かせばいいんだけどね。

・・・

小さな体で私にしがみついているキスメをぎゅう、と抱きしめる。

暖かい。

















どこからか声が聞こえる。


―――けれど、抱きしめられていたのはあなたではなかった。あなたはそれを見ていただけよ。だって、


―――あなたの傍には誰もいなかったじゃない。名前を呼んでくれる人さえも。


その声に言い返す。


「名前なら、この子が呼んでくれるわ。」


だから、






わたしにはこわいものなんてなにもないのです。






分かりようもないことがあるのでいくつか解説させてください。

実際のキスメは妖怪から逃げ切ることができずに死んでいます。

そして、アリスはキスメの死に誘われたためにあのような状態になりました。

アリスの桶が動かなかったのはアリス自身が死んだわけではなかったためで、

キスメの桶に触れて魂が共有されたために、アリスもまた死へと動きだしたのです。


動物などの描写は、生物が形を変えて、形を捨てて魂になる過程だと思って下さい。

もう少し上手に描くことができれば良かったのですが、あれらのものは干渉してくるものでもなく、

干渉するものでもないのでなかなか文字で表現しにくいですね。




キスメがアリスにくっついているのは、キスメにとってアリスが大木の存在になったからです。

釣瓶落としは調べてみるとなかなかおもしろい妖怪で、釣瓶下ろしとよばれたり、地域によって形が違ったりするそうです。

ゆっくりってもしかして釣瓶落としの一種なんじゃないかと思ったりも。

関係はないんですが、つるべ落としの秋の日、という言葉もあるそうですね。


最後に、このSSを読んでいただきありがとうございました。
ひきにく
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コメント



0.1460簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
回想部分はメガテンのアリス、全体的には不思議の国のアリスを想起して、なんともいえない不思議な気持ちになりました。
死に誘われたのは死の少女として在った昔のアリスの名残なのかなと勝手に解釈。
幻想的で白昼夢のような世界にありながら、キスメの見せる可愛らしさが現を感じさせる素晴らしい作品でした。
文句なしの100点です。
6.100名前が無い程度の能力削除
あとがきの説明でより一層物語を楽しむことができました。
エクセレント
16.90名前が無い程度の能力削除
夢に近い現象だと思って読んでいましたが、後書きで予想以上に重い話で驚いて二重に楽しませてもらいました。
できれば後書きの内容も本文内でぼかしながらでも描写して欲しかったです。
この話でイザナギとイザナミの神話を思い出しましたが、あっちはバッドエンドですので「あんたたち」と言って二人を現世に戻した小町にはよくやったと絶賛したくなりました。
しょうもない事だけど、途中で生物の姿が変わった場面で自然に何食わぬ顔で混ざっているきめら丸を想像したのは自分だけだろうかw
24.100名前が無い程度の能力削除
すごく面白く読めました。
つるべ落としという、謎妖怪がなんとなく身近に感じられたような・・・?!?
アリスとキスメというペアが自然にいい感じに見えて、それもGJでした!!
26.100名前が無い程度の能力削除
あとがき読んでからもう一度読むとがらりと印象が変わっておもしろい。
27.100名前が無い程度の能力削除
よく「言いたいことは作品中で語れ」と言いますが、この作品に関しては後書きの解説が良い味出してました。
29.100名前が無い程度の能力削除
これは何となく感じても言われなきゃ理解が及ばないですね
テキストに使われる有名作品と違って先生やプロの書評家による解説がない以上
自分で言うしか無いのが辛いところ
>アリスが大木の存在になったからです
なんという依存度の高さ、まさにペット
30.100名前が無い程度の能力削除
あとがきで設定を語るのは悪手だと言われるけど、この話の後書きはいい味出してた。


キスメ死ななくて良かった
37.90名前が無い程度の能力削除
不思議な話しだな~となんとなく読んでいたらあとがきでちょっと怖くなった、シニタクナーイ
41.100パレット削除
 これは確かに、このくらいなら後書きで語られてしまっていいなあと思えました。ひとつのやり方として。
 なんとなく絵本を読んだような気持ちになったり。