Coolier - 新生・東方創想話

「さぁ霊夢、今日こそはっきりしてもらうぜ?」

2010/06/01 17:14:54
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「黒と白、どっちがいいんだ?」
「悩むわね……」

 早朝の博麗神社、その居間にて――真剣に問う魔理沙に、戸惑いながらも返す私……これは悩むわ……。

「もういっそのこと、どっちも……」
「駄目だぜ霊夢」

 折衷案は無し、という訳ね……どうするべきか……。

「意外性をとって赤なんて……」
「過去に立ち返るのはいいことだが、今は無しだぜ」

 うぅ……困ったわ、本気で黒白はっきりさせるつもりらしい……。
 仕方ないわね……。

「わかったわ……」

 私は、遂に意を決した――

「黒で……」
「……わかったぜ」

 そう言うと、魔理沙は私の肩を軽く叩いた――





























「……くぅ~~、染みるぜ」

 そう手に持つそれを見て、幸せそうな顔をする魔理沙。

「やっぱこれがなきゃ朝が始まらないぜ」
「ねぇ魔理沙、それには同意するけど……」

 私はそんな魔理沙を微笑ましく思いながら、文句が一つ。

「さっきのやり取りって、必要だったのかしら?」
「何言ってんだよ霊夢」

 魔理沙はご飯にそれをかけながら反論してきた。

「霊夢が三食白米だけだってから持って来てやったんだぜ?味噌をさ」
 
 ――そう、ここ二週間お米を除き、漬物を含む全食材が底を尽いてしまい、途方に暮れつつも三食白米だけで凌いできた私。それを見かねて魔理沙が味噌をいっぱい持って来てくれたのだ。
 かくして、私の食卓におふくろの味、お味噌汁が増えたのだった……。

「それはありがたいけど、別に赤味噌でもよかったじゃない」
「それが一週間続いてなければな」

 魔理沙が持ってきた味噌は赤味噌の割合が多く、白味噌と黒味噌がちょっと少なめだった。そしてそれは、今の幻想郷の味噌事情をそのまま表しているのだった……。
 もとより、幻想郷の味噌の生産割合は赤4割、白4割、黒とその他が1割ずつといったところなのだが、今は諸事情により白味噌が品薄となっており、そのため霊夢達も必然的に赤いお味噌汁が多くなってしまうのだった。

「でもやっぱ味噌汁はいいな、体にって言うか心まで温かくなるぜ……」
「そりゃそうでしょ、私が作ったんだから」

 実は魔理沙、お味噌を持って来てくれたのはいいけど何故か神社に入り浸りご飯を食べている。しかも手伝ってくれるならまだしも、自分は居間で文の新聞を読みながらお茶を啜っているのだ。

「まったく、雲山だってもう少しは手伝ってくれるわよ」
「だって仕方がないじゃないか」

 ごちそうさま――そう言い箸を置く魔理沙……

「こんなにも料理が上手い嫁に、手伝いなんていらないだろ?」
「じゃあ私は、働かない旦那を調伏すればいいのね?」

 懐から御札を取り出す私に、つれないぜ★――そう言いながら舌をペロッと出す魔理沙。

「……はぁ、まぁいいわ、片づけ位は手伝いなさいよ」
「わかったぜ」

 そうやって茶碗を炊事場に運ぶ私と魔理沙。こうして今日も、幻想郷の平和な一日が始まるのであった……。


 ちょうどその頃、冥界にある白玉楼では――

「妖夢ー、ご飯まだなのー」
「はーいただいま」

 炊事場にて返事を返すのは庭師兼家政婦、もとい剣術指南役の魂魄妖夢。今日もせっせと主人である西行寺幽々子の為に朝食の準備に追われていた。
 竈には炎がたぎり、その上に大きな釜と鍋がかけられている。その大鍋に一口大の様々な野菜を入れる姿はまるで炊き出しそのもの。
それが毎日三食分ともなると、あの料理の上手い藍さんの手といかずとも猫の手でもいいから借りたくなる。

「しかも幽々子様、お味噌汁好きですからねぇ……」

 そう言い、野菜に火が通ったところで私は、買い置きしてある白味噌を入れ始めた――
 幽々子様は毎日三食かかさずお味噌汁を飲まれ、たまの洋食でもかかされることはない。
 そんな、毎日お味噌汁を楽しみにされてる幽々子様を悲しませるわけにもいかず、精を出しているのだが――

「いかんせん消費量が……」

 一箱、それが我が白玉楼の味噌の一日の消費量であった……。



「私のところは無論『紅』ですわ、私と美鈴位しか食べませんし」

「そうですね……白が多いですね、聖が好きなので」

「白黒はっきりさせたいところですが、私は赤です」
「あいかわらず辛口ですねぇ。あたい?あたいは四季様が作ってくださるなら何でも」

「味噌汁ねぇ……ぶっちゃけ濃いけりゃ何でもいいよ、酒呑んでるし。あぁ、パルスィが作ってくれるのは別格だけどね」
「妬ましいわ、パルパル」

「味噌かぁ、あたしは白が好きなんだけど、あいつは赤が好きなんだよねぇ……ねぇ知ってた?諏訪大戦って実は味噌汁に入れる味噌で喧嘩したのが始まりなのさ」
「あやや、そうだったんですか」
「いやどう考えても嘘だろ」
「ケロケロ♪」

 ――文文。新聞号外、幻想郷の味噌汁事情――

 そんな号外を手に取りながら私は呟いた……

「そういえば最近食べてないわね、味噌は味噌でもあっちの味噌」

 あの濃厚な味噌を食べたくなってきた私であった――
「藍ー?カニ味噌が食べたいわー」
「ご自分で獲って来て下さい」




 ……どうも、終焉刹那です。
 この間の小説で様々なご指摘をいただき、それを踏まえた(つもりの)上で今回のお話を書いてみました。ご指摘を下さった方、ありがとうございました。
 ちなみに黒味噌は九州の方では見たことがちょっとないんですが、甘口らしいです。

 まぁ元ネタは自分が東方と同じく大好きなあのゲームの新タイトルから。どっちからやろうかな……。
終焉刹那
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コメント



0.740簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
味噌汁美味しいですよね
そういう私は断然赤味噌派です
7.100奇声を発する程度の能力削除
>カニ味噌が食べたいわー
それってもしかして、ずわいがn

私も赤味噌かなぁ。
12.70名前が無い程度の能力削除
最後に不覚にも笑ってしまった。
19.無評価終焉刹那削除
自分は断然赤味噌派、終焉刹那です。
見て下さった方には感謝、ありがとうございました。

追伸  自分はホワイトからやることにしました。
20.100名前が無い程度の能力削除
白味噌があれば全てが許せる