この作品は作品集113「咲夜あんたおっぱい大きくていいわね」の流れを汲んだお話となっております。こちらだけでも読めないことはありませんが、お先にそちらの作品を読んで頂けたらなんかわかった気分になると思います。
「咲夜ってさあ、胸でかくていいよなぁ」
やわらかな白のワンピースに黒のカーディガンを羽織っている少女はそんなことを言った。
生白い脚を無防備にベッドに投げ出して、仰向けのままひっくり返った視界でこちらを見ている。
まだ金の髪はしっとりと濡れていて、重そうに束になってシーツの上に広がっていた。
「…最近聞いたわねえ、そんなセリフ」
「へぇ、流行ってるんじゃないか?」
「そうかもね」
私の気だるそうな返事にも、瞳に楽しそうな色を浮かべながら寝転がる客人――霧雨魔理沙は何だか普段とは違って見えた。
たぶん、服のせいだろう。
カラーリングは変わらずとも、客人用のゆったりとしたワンピースを纏った彼女は幾分穏やかな雰囲気を持つ。
あと、いかにも魔女を主張する帽子が彼女の頭ではなく壁にかかっていることも原因だと思う。
そんないつもと違う魔理沙がなぜこんな夜に私と一緒にいるかといえば、外が大雨だからである。
日課のように図書館へとやってきて珍しく黙々と読書にいそしんでいた彼女は、突然やってきた嵐のような雨で家へ帰れなくなってしまった。
実はそんなことはあまり珍しくもなくて、お泊りもたまにあったりする。
ただそういう時は、魔理沙はお風呂にさっと入って図書館へ戻り、パチュリー様と魔法の議論だか何だかをおっ始め、
いつの間にか眠ってしまって朝を迎えるというパターンだった。
だからこうして夜眠たげに話しているのは、意外と初めてだ、と気付く。
「で、誰から聞いたんだ?」
私がようやくメイド服から寝間着に着替え終わったところで、魔理沙はにやにやとして聞いてきた。
「プライバシーって知ってる?」
「横文字は苦手ですわ」
「あんたのスペル横文字ばかりだけどね。じゃあ、デリカシーって知ってる?」
「馬鹿にしないでほしいぜ」
魔理沙は体を起こして首をぷるぷると振る。
長い髪から多少しずくが飛んできたので、大きなバスタオルで後ろから頭を覆ってやると、わっ、と悲鳴をあげた。
そのままわしわし、丁寧にふいてやると案外大人しくしている。
「どいつもこいつも、なんでそんな大きいのがいいのかしらね」
「そりゃー、女子はそんなもんだろ、それに」
「それに?」
私はドライヤーをかけつつ、彼女の声に耳を澄ます。
「…もっとさあ、女の子らしくなれたらって、思うし」
「あら、また珍しいこと言うのね」
「―――ああもう、いいだろ、別にっ」
すっかり乾いた髪をふわりとなびかせ、真っ赤な顔をした魔理沙がベッドから立ち上がった。
早足でクローゼットまで歩き、乾いたばかりのエプロンドレスに着替えてゆく。
髪を一束顔の横で結い、壁にかけてあった帽子と箒を持ってドアのほうへ歩く。
私は自分のベッドのシーツのしわを直しつつ、彼女に問うた。
「てっきり今日は泊まっていくものだと思ってたけど。外はまだ雨よ?」
「多少の雨風なら防げるぜ。どうせ濡れるけどまぁ、いいだろ。咲夜悪いな、今日は先約があるんだ」
「折角髪も乾いたのに、魔理沙はせっかちね。ちょっと待ってなさい」
そう言った直後に、時を止める。
キッチンまで歩き、昼間に焼いたタルトを持って部屋へ戻った。
「ほら」
「うわっ、と。美味そうなタルトだな」
「明日の朝食べようと思って焼いたのだけれど、持っていきなさい。お土産」
「珍しい。明日はナイフでも降るんじゃないか」
今降らしてもいいわよ、と懐から一本取り出すと魔理沙は慌てて箒に跨った。
雨風用の防護壁を張った彼女が開けた窓からぼたぼた、と大きな雨粒が飛び込んで絨毯を濡らす。
窓から飛び出した魔理沙は一度振り返り、
「咲夜!ありがと、またな!」
と叫ぶと流星のように雨筋の向こうへと見えなくなった。
不意に空を走った稲妻が、部屋全体を白く染めたのを見て、私は呆れたような息をつきながら窓を閉めた。
「ほんと、二人して鈍感なんだから」
「咲夜ってさあ、胸でかくていいよなぁ」
やわらかな白のワンピースに黒のカーディガンを羽織っている少女はそんなことを言った。
生白い脚を無防備にベッドに投げ出して、仰向けのままひっくり返った視界でこちらを見ている。
まだ金の髪はしっとりと濡れていて、重そうに束になってシーツの上に広がっていた。
「…最近聞いたわねえ、そんなセリフ」
「へぇ、流行ってるんじゃないか?」
「そうかもね」
私の気だるそうな返事にも、瞳に楽しそうな色を浮かべながら寝転がる客人――霧雨魔理沙は何だか普段とは違って見えた。
たぶん、服のせいだろう。
カラーリングは変わらずとも、客人用のゆったりとしたワンピースを纏った彼女は幾分穏やかな雰囲気を持つ。
あと、いかにも魔女を主張する帽子が彼女の頭ではなく壁にかかっていることも原因だと思う。
そんないつもと違う魔理沙がなぜこんな夜に私と一緒にいるかといえば、外が大雨だからである。
日課のように図書館へとやってきて珍しく黙々と読書にいそしんでいた彼女は、突然やってきた嵐のような雨で家へ帰れなくなってしまった。
実はそんなことはあまり珍しくもなくて、お泊りもたまにあったりする。
ただそういう時は、魔理沙はお風呂にさっと入って図書館へ戻り、パチュリー様と魔法の議論だか何だかをおっ始め、
いつの間にか眠ってしまって朝を迎えるというパターンだった。
だからこうして夜眠たげに話しているのは、意外と初めてだ、と気付く。
「で、誰から聞いたんだ?」
私がようやくメイド服から寝間着に着替え終わったところで、魔理沙はにやにやとして聞いてきた。
「プライバシーって知ってる?」
「横文字は苦手ですわ」
「あんたのスペル横文字ばかりだけどね。じゃあ、デリカシーって知ってる?」
「馬鹿にしないでほしいぜ」
魔理沙は体を起こして首をぷるぷると振る。
長い髪から多少しずくが飛んできたので、大きなバスタオルで後ろから頭を覆ってやると、わっ、と悲鳴をあげた。
そのままわしわし、丁寧にふいてやると案外大人しくしている。
「どいつもこいつも、なんでそんな大きいのがいいのかしらね」
「そりゃー、女子はそんなもんだろ、それに」
「それに?」
私はドライヤーをかけつつ、彼女の声に耳を澄ます。
「…もっとさあ、女の子らしくなれたらって、思うし」
「あら、また珍しいこと言うのね」
「―――ああもう、いいだろ、別にっ」
すっかり乾いた髪をふわりとなびかせ、真っ赤な顔をした魔理沙がベッドから立ち上がった。
早足でクローゼットまで歩き、乾いたばかりのエプロンドレスに着替えてゆく。
髪を一束顔の横で結い、壁にかけてあった帽子と箒を持ってドアのほうへ歩く。
私は自分のベッドのシーツのしわを直しつつ、彼女に問うた。
「てっきり今日は泊まっていくものだと思ってたけど。外はまだ雨よ?」
「多少の雨風なら防げるぜ。どうせ濡れるけどまぁ、いいだろ。咲夜悪いな、今日は先約があるんだ」
「折角髪も乾いたのに、魔理沙はせっかちね。ちょっと待ってなさい」
そう言った直後に、時を止める。
キッチンまで歩き、昼間に焼いたタルトを持って部屋へ戻った。
「ほら」
「うわっ、と。美味そうなタルトだな」
「明日の朝食べようと思って焼いたのだけれど、持っていきなさい。お土産」
「珍しい。明日はナイフでも降るんじゃないか」
今降らしてもいいわよ、と懐から一本取り出すと魔理沙は慌てて箒に跨った。
雨風用の防護壁を張った彼女が開けた窓からぼたぼた、と大きな雨粒が飛び込んで絨毯を濡らす。
窓から飛び出した魔理沙は一度振り返り、
「咲夜!ありがと、またな!」
と叫ぶと流星のように雨筋の向こうへと見えなくなった。
不意に空を走った稲妻が、部屋全体を白く染めたのを見て、私は呆れたような息をつきながら窓を閉めた。
「ほんと、二人して鈍感なんだから」
ご馳走さまです!
ありがとうございます!
いいレイマリですね!
魔理沙と霊夢にとって咲夜さんはお姉さんみたいな感じなのかな?
これはいいぜっ!!きゃふうううううううううううう
ただ、雨風を防ぐことが魔理沙が出来るんだとしたら、そもそも最初から魔理沙帰ってるんじゃないかなと……
あと、雨の日にお菓子を持たすのはどうかと思います咲夜さん