籠を提げてぶらぶらと、斜陽の木陰を魔理沙が来る。
「ああ、暑い、暑い。どうしてこんなに暑いのかしら。先月まであんなに寒かったのに」
「……」
「でもほんと、今日の企画を思いついた魔理沙には大感謝ね。疲れてるみたいだし、冷茶でも入れてあげようかしら」
「……」
「と、博麗霊夢は思った」
「……やーよ」
霊夢の頬杖は冷たい。魔理沙はアテが外れたように苦く笑った。そうして籠を縁側へどさりと投げ出し、霊夢の隣へ崩れ込んだ。真実へとへとなのだ。張り切ったというより、はしゃぎすぎた疲れ方である。
「随分遅かったわね」
「ちょっと、隣町まで行ってたんでな」
「馬鹿ね」
「わけありさ」
魔理沙は無理くり顔を上げて、額に浮かぶ汗を拭った。このあとに楽しみが待っていればこそ、まだなんとか大丈夫――そんな、子供みたいな笑い方をする。
「まあいい、入ろうぜ」
くかー……。
小ぢんまりとした座敷へ、相対して座る。机もない。魔理沙は籠の中から色取りどりの小瓶をひとつずつ、取り出しては中身を宣言しながら、畳の上へならべて行く。
「砂糖、ジャム、シロップ、チョコレート、餡子」
「鉄板ね」
「こっからは変り種だぜ。バター、ソース、しょうゆ、マヨネーズ、ケチャップ、酢」
「……あんた、責任取って一口は行きなさいよ」
「順番だろ」
「や」
「体を張ったのは私だぜ?」
「はいはい。それはおつかれさま」
くかー……。
ふと、静かになる。霊夢が肩を竦める。魔理沙は笑っている。
「大丈夫だって」
「わかってるけど」
「で、どれから行く?」
「お砂糖じゃない」
くかー……、と規則正しい寝息を立てて、ぽかんと口を半開きに、部屋のちょうど真ん中で大の字に寝ているチルノを――ふたり、揃って見た。くたくたに遊び疲れて寝てしまったのである。霧雨魔理沙が体を張って、一日中ハードな鬼ごっこに興じたゆえの賜物だった。こうなったら起きない。
「砂糖だなあ」
小瓶を開けてひとつまみ、さらさらと頬に落とす。白く柔らかい肌にきらきらする。見た目だけで大いに唆るものがある。そっと舐めてみると、アイスキャンデーよりも、もっともっと純な甘さがする。なんと言っても感触がたまらない。
指先でジャムを広げる。チョコレートを塗ってみる。餡子を乗せてみる。シロップをかけてみる。そのたびにチルノの顔は、ふたりの顔で隠れて見えなくなる。かわりばんこに極上を賞味しては、どことなくにやけた顔を見合わせるのである。
「まあ、この辺は安牌だな」
「ふつうに氷蜜よね」
「そろそろ、こっちも行ってみるか?」
こっちと呼ばれた一団は、舐めるには少々キワモノの調味料たちだ。
「知らないわよ」
「案外かもだぜ。手のひらとか、足にしよう」
手のひらにソース。これはソースの味しかしない。ひざにケチャップ。これも冷たいケチャップだ。そんなに突飛な味でもない。
酢を試した魔理沙は、渋い顔をしている。霊夢はしょうゆを取る。もはや二人を動かしているのは、ただ好奇心あるのみである。足の指へ一滴垂らして、ちゅっと口に含んだ。
「あ、そこさっきマヨネーズ塗った」
「……っ」
小休止。
「口直ししましょ」
「じゃあ、これしかないな」
待ってましたとばかり、魔理沙の取出したるは秘蔵の紅白チューブ。牛のマークが印象的な、とろける甘さの加糖練乳、コンデンスミルクである。
「なるほどね。これなら隣町も納得だわ」
「クールな選択だろ」
「二重にね」
くー……、かー……。チルノはまだまだ深い眠りの中にいる。そのゆったりと上下させている胸へ、魔理沙はミルクのキャップを外して、真っ白なデコレーションを施す。このあたりはいちばん冷たいところである。ふたりとも手を合わせて、
「いただきます」
かき氷もかくやの素敵な甘さを堪能しているうちに、体も空気もどんどん冷えてくる。さっきまでのうだるような暑さは、もう遠い別世界の話のようだ。
「ああ、冷えるなあ」
「部屋もだいぶ涼しくなってきたわね」
「羨ましいだろ。私は毎晩こんなだぜ」
「たまに貸しなさいよ」
「できない相談だな」
「ケチね。なにで釣ったら、うちにも来てくれるかしら……」
そのうち、チューブがからっぽになる。
「さて、どうしようか」
残ったのは顔から足まで、いろんなものでべとべとになったチルノである。もはや味も染み込んでいるだろう。拭いてどうこうなるものでもない。
「平気。準備してあるから」
くい、と霊夢は親指で外を指す。その方向を見て意味を解した魔理沙は、苦笑する。
「ひどいやつだな」
「あんたも同罪でしょ」
「その容赦のなさがな、ひどいんだよ」
「つべこべ言わないで、手伝う」
霊夢は足を持つ。魔理沙は頭を支える。いっせいので抱き上げると、首から上がぐったりと逆向きになる。目許を微かに動かしてにやけているのは、眠りも少し浅くなって、楽しい夢でも見ているのだろうか。
風呂釜には、お湯がなみなみ張ってあった。
「三人は久々だな」
「きついけど、なんとかしましょ」
「たまの仲良しお風呂としゃれこみますか」
立ち昇る湯気を見ながら、きっとまたやろうと魔理沙は思った。霊夢も、似たようなことを考えているような顔つきをした。
「せーのっ」
ぽうんと、小さなからだが飛ぶ。
チルノ多分三回りくらいちっちゃくなってるんじゃないか?
毎晩ってどういう意味だマリサァーッ
扱いがひでぇ。
悪魔のkissかな
こんなもの100点で十分だ!!
同意
この二人なら普通にやっててもおかしくないと思いました。実益的にも。少女純潔。
遊びつかれて汚れたチルノに?それとも行水後?
チルノは裸なの?それとも服を脱がせて?
ちょっと疑問が多すぎるんだけど突っ込むと負けなのかー
あとチルノ自体に人を惹きつけるほどの味が付いてるのでなければ
素直に氷を作らせてカキ氷を食べた方が何倍も楽だと思った。
やってる事は相当酷いしね。
乳臭いという意味で