「幽々子様ー! 幽々子さまぁー?」
陽が昇りきり、朝らしくなった白玉楼の廊下に騒がしい声が響く。
どたどたと床を鳴らし歩いてきたのは魂魄妖夢、割烹着に身を包み、手にはなぜかお玉を持って、これまた朝らしい格好で主の名を呼び続けていた。
先ほどから呼べど呼べども返事はなく、少女の声が快晴の空に消えていく。
幽々子の部屋に脱ぎ散らかされた寝間着を見るにはすでに起床はしているものの、どうやら寝惚けた頭でそこらを彷徨っているようだ。
屋敷は住む者の数に合わず広大で、慣れない者なら迷う程の広さを持つ。
勝手知ったる我が家である屋敷は知ってはいても主の頭の中までは知れず。
たびたびこうしてそこらを歩く幽々子を探し回るハメになっていることに、妖夢は漏れるため息が抑えられないでいた。
手近な部屋を手当たり次第に覗いてみてはいるものの姿は無い。
もしかしたら朝っぱらから出かけてしまったのかしらとふと妖夢は思った。
(参ったなぁ……)
早く見つけないと、せっかく作った朝食が冷めてしまう。
温めればいいだけの話だが、出来れば作りたてを食べてほしい、今日の吸い物はなかなか美味くいったのだ。
おたまをくるくる回しながら妖夢はもう一度幽々子の名前を呼ぶ、半霊は喋れないので声の代わりか無駄に激しく漂ってくれていた。
「まったくどこへ行ったのかしら…… ご飯が冷めては一大事だっていうのに」
(ご飯? 妖夢ー)
「!?」
ぼそりと呟いたつもりだったのだが、遠くから聞こえてきた幽々子の声に思わずぎょっとする。
あれだけ名前を読んでみても返事すらしないくせに、ご飯という単語を耳にしただけでこうも反応が違うとは。
声のした方へ向かってみると、いつもの服に着替えた幽々子が縁側で日にあたっていた。
そよそよと吹く風が幽々子の髪を揺らしている。
憂い顔にも見えなくない寝惚けた顔と、ボサボサの寝癖さえなければ、写真の一枚でも残したいくらいの美しさになるだろう。
幽々子には少し抜けたところがある、こういう姿を見るたび、妖夢はいつも(もったいない……)と心の中で残念がった。
「おはやう~妖夢」
手を振る幽々子の声はのんびりというよりもはや欠伸に近い、まだ目が完全に覚めていないのは見て明らかだった。
「おはようございます幽々子様、探しましたよ」
「三文の得を堪能していたの、横にいらっしゃい」
すでに早起きとは言い難い時間なのだが…何の得を堪能しているのやらか。
幽々子の横に腰かける、この位置はちょうど前に庭の木があり、おかげで眩しくなり始めた太陽の光も塞がれる。
日差しで少し熱いくらいに暖められた板敷きが、初夏の季節の訪れを感じさせた。
「私って寝起き悪い方なのよね」
唐突な言葉に思わず妖夢は肯定しそうになったが、従者の立場からしてそれを口には出せず、とりあえず曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す事にした。
「いっつもボーっとしちゃって、目が覚めるの結構時間かかっちゃうのよねぇ、妖夢は寝起きはいいほうだからいつも起こさせちゃうわね」
「まぁ、そういうのは人それぞれといいますし」
生真面目な妖夢に対して天真爛漫の幽々子、そういえば八雲紫も寝起きは悪い方らしい。
式の藍がよく愚痴にしているのを思い出してみると、性格が関係しているのだろうか?
「でも寝起きが悪いことが良いほうがいいと思うときがあるのよ、例えば今日みたいに」
区切った言葉に合わせるかのように涼やかな風が吹く、さわさわと頬を撫でる感触に、 目を細め、堪能してから幽々子は言葉を続けた。
「頭がはっきりしない状態で、こうして風に当たりながら陽射しを堪能するのって、凄く気持ちが良いの。ああ良い天気だな、とか、そんな言葉も浮かばずに何も考えないでこうしているととても幸せな気分になるわ」
だからその、つい、ね、と苦笑いのような顔を妖夢に向ける、何のことかと思ったが、どうやらただの言い訳だったらしい。
「確かに、そんな顔をされている幽々子様を見ているとそんな気がしますね」
自分は目が覚めたらすぐに起きて体を動かしてしまうので、抽象的な感覚はよくわからないが、なるほど確かに得ではあるかもしれない。
いつまでもぐだくだと布団に篭ったり惚けていたりしているのはだらしないと思ったが、そんな表情をされてしまっては、少し羨ましく思ってしまう。
「それで?」
「それで?」
「何の用だったのかしら」
ああそうだった、すっかり用事を忘れていた。
朝食が出来たと改めて告げると、それまで寝惚け顔だった幽々子の顔が一気にはっきりとしたものになった。
「それで、今日の献立はなにかしら、お腹ぺこぺこだわ」
目を輝かせんばかりに妖夢を見据える。
「今日こそはた
「筍ご飯に筍のお吸い物と筍のキンピラです、今日のお吸い物は自信がありますよ」
……そう」
つらつらと献立を述べる妖夢に、幽々子の目から輝きが失せる。
またか、また筍なのかといわんばかりの表情は、先ほどまで初夏を愛しんでいた人とは思えないほど影がさしていた。
「…また筍なの? 妖夢」
そんな今にも泣きそうな顔をしないでほしい。
「ご安心を、今日中には使い終えます」
「そう、……まったく永遠亭の人間はたまに来たかと思えばあんなに大量の筍置いていかなくったって」
「まぁそう言わずに、せっかく頂いたのですから」
そうは言うものの、妖夢自身も、実は筍はもうそろそろ見るのも嫌になって来たところだった。
四日程前の、半ば押し付けるように筍を渡してきた従者のげっそりした顔を思い出す、どうやらあちらの方も同じ状況らしい、お陰でこっちもずっと筍続きだ。
どうせ主である蓬莱山輝夜の我侭で大規模な筍狩りでも催したのだろう。
子供のような感性を持つ癖に、やたらと口が達者なあの姫の従者達には同情を覚える。
「そのかわり、明日のご飯は腕によりをかけさせていだきます。幽々子様は何か食べたい物はありますか?」
グっ、と腕に手をかけて見せる、久しぶりに竹の子料理以外の食事を作れるので妖夢もはりきりたいところだった。
「そうねぇ」
あごに指をかけ幽々子は思案する、野菜ならこの時期旬の物も多く、美味しい料理も期待できるし、肉なら豪勢に行きたいところだ。
結構な時間をかけた後、ようやく決まったのか幽々子はぽんと手を打った。
「魚が食べたいわ、お刺身とかいいわね」
「お、お魚ですか……」
その答えに思わず渋い顔になる、別に魚料理のレパートリーが無いという訳ではないのだが……少し時期が悪い。
初夏とはいえ夏は夏、午後にもなれば気温は増すばかりでしかも今年は猛暑ときたものだ。
少し外を歩いただけでも汗をかいてしまうこの季節に、魚は少し厳しいものがある。
白玉楼から魚を買い付けられる人里の市場までは結構な距離があるのだ。
例え飛んでいったとしても戻る頃には少しばかし傷んでしまう事は避けられない、加熱処理すれば問題はないのだが。
「焼き魚とか、煮物では駄目ですか?」
「お刺身がいいわ」
駄目元で訊いてみたが、幽々子は刺身以外にはありえない、と言った口ぶりで即答した。
幽々子は外見とは裏腹にけっこう頑固な一面がある。
一度決めたらなかなか意見を変えない事は、幼少のときから傍にいた妖夢自身も身に染みて分かっていた。
「分かりました、夕食までに準備しましょう」
「どうせなら普段食べないようなのがいいわね、期待しているわ」
「普段……うーん」
「ふふ、ゆっくり考えなさいな」
どうしたものかと顔を難しくする妖夢を眺めながら、幽々子は小さく欠伸をした。
※※※
山中の広く開いた場所にある渓流は新緑に囲まれ、昼頃だというのに涼やかな清風がそよいでいた。
蝉の声と川の段差によって出来た落ち込みの、滝に似た水の音が、うるさくとも耳に心地良い。
ぼんやりと見つめる先で大きな水飛沫を立てて魚が跳ねる、騒がしくも穏やかな、不思議な山の雰囲気を感じながら妖夢は川岸の手ごろな岩に腰掛けていた。
天狗をはじめ、山に住む者達が排他的なのは単に仲間意識や、組織的なせいかと思っていたが……。
ただこんな景色を自分達だけのものにしておきたかったのかと思えてくる。
今は新緑で若々しい木々達も秋になれば美しく色づき、きっとその下で酌み交わす酒は、とても美味いのだろう。
さすがに退屈を感じ、このまま一眠りしてしまおうかと思っていると、大きな羽音がした。
まぶたを閉じる代わりにそちらの方へ顔を向ける。
「お待たせしました、準備に結構手間取ってしまいまして」
「大丈夫、のんびり待たせてもらったから」
「それはなにより」
小石を踏み鳴らし射命丸文が降り立つ、手には竹で作られた魚篭と一合枡の形をした木箱、遅れて降りてきた犬走椛は三本の竹竿を抱えていた。
「餌の準備も万端、竿も良し、後は釣るだけですよ」
「わざわざ道具まで用意して貰って悪いわね」
「いいんですよ、私も椛も暇してましたからね」
「はい妖夢」
「ふぁ……ありがとう」
椛から竹竿を受け取る。
13尺(4m)余りの竹竿は太く、竿先はしなやかながらしっかりとした作りで、持ち手の部分には手を傷めないように薄布が巻かれていた。
穂先から7尺余りの蛍光色のつやつやとした糸には、持ち手より少し下の所に小さな鉛玉が二つ、少し上の方にはオレンジ色の玉ウキが付けられている。
鉛球の下からは3尺ほどの細い透明色の糸が別に結ばれていて、指先よりちょっと小さい釣り針がついている。
糸は引っ張ってみると細いわりには意外と強く、よほどの力を入れないと切れそうにない。
「変わった糸ね、初めて見た」
「ハリスって言うんですよ」
「糸が分かれているのはなんで?」
「ああ、それはですねぇ、水の中で餌が漂っているように見せるためです、自然に生きる魚というのはああ見えて警戒心が強いのです」
なるほど、すると上の――文が道糸です、と続けた。
ハリスよりはやや太い、色がついているのは見失わないように明るい色にしているらしい。
釣り糸一つにも工夫がされていることに、釣りの経験も知識もない妖夢は素直に感心した。
「日が沈むには充分時間があるし、釣れないって事はないからのんびりやろうね」
「よろしくね、椛」
「うん、まかせて!」
「私は適当にやらせてもらいますがね、暇といっても記事のネタは見逃しませんよ」
木箱を椛に手渡し、取り出したカメラを妖夢に向けてシャッターを切る。
目的は幽々子の夕食分を確保出切ればいいので妖夢はそれでも構わなかった。
山へ入るために大天狗への口利きを条件に、取材と称して好きなように写真を撮られるのはあまり良い気がしなかったが。
それで普段は里に出回ることが少ない渓流魚を得られるなら、むしろ安いものだった。
文と椛の話だと早春から長く晩夏まで、渓流魚は幅広い期間釣りが楽しめるらしい。
ここ最近では天狗達の間で釣りが流行り始めている。
あんまりにも流行るものだから釣りすぎないようにと、気温が高くなる晩夏から産卵期の秋、そして気温の低くなる冬は釣らないようにと決まりごとが出来るほどだ。
その間に、どれだけ大きい魚を釣り上げるとか、一日に何匹釣れたかと天狗達は競い合う、そんな時期に初心者が釣りに来たとなれば、まぁ良くも悪くも記事にはなるだろう。
何枚か写真を取られていたが、助けるように椛が餌をつけようと切り出してくれた。
「急に開けると逃げるから、半分程……」
「逃げる?」
土で汚れた蓋を慎重にずらす椛に聞き返したが、返事を聞く前に中身を見て妖夢は思わず小さな悲鳴を上げて目を逸らしてしまった。
「なにこれ!」
濡れた苔や泥に混じって六本足の気味の悪い虫が十数匹もひしめいている。
その様子を文がチャンスとばかりに撮るものだからカメラを取り上げやろうかと思ったが、椛が笑うので恥ずかしいやらばかばかしいやらで、誤魔化すためにもう一度木箱の中の虫を覗いた。
「オニチョロっていうんだよ、妖夢は虫は苦手?」
「苦手ってわけじゃないけど、こんな虫が入ってるなんて思わないじゃない!」
「あはは、ごめん、可愛い声だすからさ」
信じてないだろう、子供をあやすような笑みを浮かべる椛を睨みつける、虫なんて庭の手入れでしょっちゅう見たり触ったりしているから平気なのは本当だ、ただ見慣れない虫にびっくりしただけで、それを言っても言い訳にしかならないから黙って虫を一匹摘む。
「やろうか?」
「大丈夫よ」
釣り針を持ち、頭がどっちかわからないので触覚が小さい方から針を通す、腹の辺りで先を出すと虫がいっそう激しく足を動かしたのが気持ち悪かった。
椛も自分の分と文の分の餌を付け、魚篭と木箱を川の傍に置く。
「じゃあ釣ろうか」
川の手前で三人は糸が絡まないように横幅を取る、靴の下から感じる水の冷ややかな感じが気持ちいい。
投げ方がわからないので、まず椛が手本を見せることになった。
「投げる時は魚を驚かさないように、まずはこうやって糸を持つ」
椛が玉ウキの下の糸を持って下に引っ張ると、折れてしまうんじゃないかと思うくらいに竿先がしなった。
「竿はちょっと上の方にやった方がいいね、仕掛けが地面をこすらないように……っと」
言葉どおりに両腕を上げ、糸を持った手を離す、
餌のついた仕掛けは緩やかな線を描き、すっと川の中へ落ちて水面を波立たせた。
「じゃあやってみて」
「うん」
椛のやったように糸を引く、身長が低いので横から振るようにして離したが、仕掛けは上手く川の真ん中辺りに飛んで行ってくれた。
一瞬沈んだ玉浮きが、出てきた途端に流れにのって漂いはじめる、疲れないところまで腕を下げてしばらく待つと、弛んだ糸が張って止まった浮きがゆらゆらその場で止まった。
そこそこ離れた場所だが、明るい色のおかげで見失う事はない、同じようなタイミングで文も仕掛けを投げていたので、川の中には三つのオレンジ色が並んでいる。
蝉の声が、急に騒がしくなった気がした。
※※※
流れる川の音は相変わらず、ただただ蝉の声がうるさい。
ウキは先ほどから漂うだけで、変わった動きがなかった。
誰かが言葉を発することなく、じっと立ち尽くして自分のウキを見据えている。
なんとはなしに居心地が悪くなって、妖夢はしょっちゅうちらちらと横目で二人を覗き見た。
椛の横顔は、端整な顔立ちで膨らんだ胸元さえ見なければ人によっては男性にも勘違いしない、中性的な美しさがあった。
奥で大口を開けて欠伸をしている文も見えるせいか、余計にその顔立ちが際立つ。
ふと妖夢は自分がその顔を見つめていたことに気づき、ふるふると顔を振った。
(気分晴らしのつもりか、何をしてるんだか私は……)
妖夢は沈黙が苦手だった。
誰かが隣にいるのに、誰も一言も喋らないと、なんだがそわそわとして落ち着きがなくなる。
幽々子と一緒にいる時は、大抵話題に事欠かないので、なおさらだった。
息を吐く、我ながら落ち着きがなくて恥ずかしくなる。
「妖夢、かかってる!」
「へ? あ? わっ!」
突然の大声に、妖夢は思わず姿勢を崩した、途端に竿が激しくしなり、ブルブルと振動が腕に伝わる、勢いよく糸が動き、ぐいと腕が引っ張られた。
「わっとっ、……このっ!」
両手でしっかりと持ち直す、引っ張り返してやるとあっさりと引き寄せられた。
不意打ちをくらっただけだ、当たり前だが力はこっちが勝っている。
「せぇのぉ!」
「あ、そんな勢い良くやったら――」
椛か文か、どちらの声かわからなかった。
一心不乱に勢い良く竿を振り上げる、盛大に上がった水しぶきと共に魚が飛び出した。
ブツンと、何かが切れる音もした。
顔にふりかかる水滴の向こうで、光に反射した魚がきらりと光り
飛んでいった。
※※※
大小様々な白の斑点が背びれを中心に広がるイワナという魚は、その美しい模様を土まみれにしてのたくりうっていた。
「茂みに入らなくてよかったですねぇ」
「良かった、飲み込んでない」
「ごめんなさい、つい……」
「いいの、気にしない」
土で手を汚しながら針を外す椛に、申し訳ない気持ちで一杯になる。
幸いにも糸が切れて飛んだイワナはすぐ後ろの地面に落ちた、もし文の言ったとおり、その奥にある茂みに落ちていたら、きっと探すのに苦労する所だったろう。
「いやー、写真に撮りたいくらいの見事なごぼう抜きでしたよ! 妖夢さん」
「あはは、確かにあれは惜しかったね」
「うー……」
「切れた糸はまあ、そこらへんに捨てると大変ですし、新しい仕掛けを持ってくるついでにきちんとゴミ箱に捨ててきますかね」
「それまで文の使ってたのでやろうか、今度は慎重に、ね」
糸が切れた竿と外した釣り針を持って飛んでいった文を見送った後、椛は魚篭にイワナを放り込んで言った。
文が置いていった釣竿の仕掛けに餌を付け直して投げる、ぽちゃんと二つのウキが漂う。
「椛?」
眺めていると、椛のウキがさらに流れているのに気がついた。
横を向くと、椛が幅を狭めてこちらに近づいていた、もし魚がかかっても糸同士が絡まないように調整しているのか、竿をちょこちょこ動かしている。
そして、いい場所を見つけたのかそのまま先程と同じようにウキを見つめている。
何かと思ったがまた視線を逸らしては魚が飛んでいってしまうかもしれないので、慌てて妖夢も視線を戻した。
「退屈だった?」
「え?」
「ほら、ウキ」
「あ、うん」
「……いやね、さっきこっちをよく見てたからさ、ごめん」
気を遣ってくれているのだと感じ、頬が赤くなる。
子供扱いされてしまったのは釈然としないが、ありがたかった。
「うん、実は」
「気持ちはわかるよ、一日中喋ってそうな人がだんまりだとね」
「文とはよく来るの?」
「たまに、新聞の記事作りに行き詰った時とか、まぁ文が考え事をしたい時にね」
椛の竿があがる。
「ああ、惜しい」
餌が取られていない事を確認し、また投げる。
「息が詰まりそうで何回か話しかけたけど、かえって邪魔しちゃったみたいで、怒られた」
「なんて?」
「んー、『日常には退屈が必要である』ってね」
「……なら一人で行けばいいじゃないの」
「あはは、一人でいるのが寂しいんだよ文は」
随分自分勝手な考え方だが、それでもいいと椛は微笑んだ。
「私は、あの人のお手伝いだからね」
「それこそ、息が詰まらない?」
「詰まるね、だから今、息抜きさせてもらうよ……っとぉ!」
ばしゃりと音がしたかと思うと椛は慌しく妖夢の反対側に竿を引いた。
糸が円を描くように動く、それが収まるのを待ってから一気に引き寄せ、水面から引き上げる。
ゆっくりと地面に置かれた緑黄色に黒の斑点だらけの魚は、三度体を激しく震わせると大人しくなった。
「ニジマスか、でも小さいな」
手慣れた様子で針を外し、ぽつりと呟く。
「虹色じゃないのね」
「繁殖期のオスが虹色になるんだって、そこから来てるみたい……んー」
魚篭に放り込んだ後、手を洗った椛は大きく伸びをした。
妖夢も仕掛けを上げて伸びをする、ずっと固定していたせいかやけに気持ちがいい。
「ちょうど2匹だし、ご飯にしようか」
「文の分は?」
「自分で釣ってもらおう、実はお腹空いちゃって」
腹を撫で、椛は恥ずかしそうに笑った。
釣りを中断し、昼食の為に魚篭に入れていたニジマスとイワナを取り、逃げないように小刀で絶命させる。
そして流水で綺麗に洗い、鱗を小刀で削いでからエラを取る。
その後にアゴから下腹まで一直線に裂いてハラワタを出し、中に残った血や貼りついた鱗を綺麗に洗い流す為にもう一度流水で洗う。
その間に椛の方で木の枝を集めて火を起こしてもらい、魚に指す串の代わりの木の枝を削り、ほどよく尖らせた所で、口の中から一直線に下腹の繋がった部分へ刺す。
しっかりと刺されば準備は完了だ。
「シンプルに塩焼きってね」
椛が用意してきた巾着から塩を取り出してこれでもかというくらいに魚に塗りこむ。
直火にあたらない程度に離した所で、枝を地面に刺して石で固定すれば後は焼けるのを待つだけだった。
「あ、良い匂い」
「早く焼けないかな、まだかな」
魚の焼ける匂いと塩が焦げる音が食欲を刺激する。
五分程して半身が焼けたら反対にしてまた五分、少し煙たくなってきた所で頃合だ。
焼いている間に結構な量の塩が剥がれたが、それでもイワナの方は皮の所々にくっついた塩の塊が目立っていた。
釣った方の焼き魚をそれぞれが取る、すぐにでもかぶりつきたいが舌を火傷してしまっては大変だ。
息を吹きつけて、軽く冷ましている間に椛がニジマスにかぶりつく。
「はむ……んー、美味しいっ!」
よほどお腹が空いてたのか悶える椛が何だか可愛らしくて思わず笑ってしまった。
火傷しない程度に冷ましたイワナの腹の部分にかじりつくと、ほわっとした熱さと塩の味が口に広がった。
「ふぉいひぃ」
「あはは」
塩のせいで過剰に分泌された唾液のせいで変な言い方になってしまった。
何とか飲み込む、美味しい、美味しいのだが……。
「しょっぱいよ……」
「あ、ごめん付けすぎた?」
椛はというと、平気な顔をしている。
味の好みの違いという奴なのだろうか、しかしそんな言葉で片付けてはいけないような気がする。
でも、まぁ。
「たまにはいいかもね、こういうのも」
適当な味付け、適当な調理、大雑把だけどいつも作る料理とは違う良さ。
思えば、最後にこんな時間を過ごしたのはいつ頃だったのだろうか。
昔の記憶を探ってみたが、うまく思い出せなかった。
「ほら、妖夢」
「へっ?」
「こっちも食べてみなよ」
物思いから帰ると、椛がにっこりと串焼きのニジマスを差し出していた。
言われるまま塩の少ない部分を選んで口をつける、それでも塩の味の方がやや強く感じたが、むしろ淡白な身によく合っていた。
「やっぱりイワナの方は塩つけすぎよ、こっちのほうが美味しい」
「んー、そうかなぁ……」
「ほら、こっち食べてみて」
お返しにとイワナを差し出す、椛は最初は平気な顔をしていたが、咀嚼するうちに見る間に顔をしかめていった。
「ひょっはい」
「でしょー」
どうやら塩の塊がある部分を口にしたらしい、目端に涙を浮かべて何度も頷く。
味の好みというわけじゃなく、単純に塩の量が違っただけらしい、適当なのもたまにはいいが、何事もほどほどが一番かもしれない。
「あー、なに食べてるんですか!」
「あ、おかえり」
仕掛けを付け直し終わったのか、竿を持って戻ってきた文が二人を見るなり声をあげた。
「わ、私の分は!?」
「ごめん、用意してない」
「ひ、酷い……って椛、どうしました?」
「なんでもない、ちょっと水飲んでくる……あ、これ食べてていいよ」
よほど堪えたらしいのか、ふらふらと川岸に歩いていく椛を受け取った焼き魚と交互に見ながら文は首をかしげた。
「随分時間がかかったわね」
「大天狗様にちょっとお呼ばれしてましてね、それとフィルムの交換もしておこうと思いまして、というわけで一枚」
おもむろにカメラを取り出し、シャッターを切る。
「これも記事に使うの? 必要ないと思うけど」
「これはコレクション用です、今度は食べてる所を……」
コレクション用、という言葉に突っ込みたかったが、あえて黙って言葉に従った。
イワナの背の部分を口に当ててる所をもう2、3枚ほど撮られる、こんな写真をコレクションして文は何をしているのか、聞いてみたいが、聞かないほうがいいだろう、色々と。
その後もいちいちああだこうだとアングルを指定され、文が満足の行くまで撮られた後、戻ってきた椛と二匹の魚を分けて食べ、簡単な後片付けをすませて昼食は終了した。
※※※
渓流の水で喉を潤すと、すっかりしょっぱくなった口の中がさっぱりする。
透き通った水はよく冷えていて、段々と暑くなる気温のせいか、顔を突っ込みたくなる衝動にかられる。
さすがに行儀が悪いかなと思った途端、横で盛大な水飛沫が上がった。
見ると椛が行儀もへったくれもなく水面に顔を突っ込んでいる、しばらく泡を浮かせていたと思ったら、勢い良く顔を上げ、ふるふると顔の水滴を払った。
「あー、気持ちいいー」
「椛、行儀悪いですよ」
「えー、気持ちいいよ」
さすがに文がたしなめるが、椛はわかってないなと言わんばかりの声を上げる。
なんというか、大らかだなと妖夢は呆れると同時に、少し羨ましくなった。
水面を見つめる、冷ややかな水が太陽の光を反射し、きらきらと輝いている。
気が付けば、その冷たい水を顔いっぱいに感じていた。
目を開けば淀んだ視界、目の前には土と石ころ。
流れる水は穏やかなのに、この打つような激しい音は、落ち込みの激流か。
ああ、なんて気持ちのいい。
息苦しさを感じ、顔を上げるとぐっしょりと濡れた髪が額に貼りつく、色々な所から滴る水滴が服をどんどん濡らしていくが、この暑さだ、すぐに乾いてしまうだろう。
拭った目の先に、呆れ顔の文と満面の笑みを浮かべた椛が映る。
「どう?」
勿論、答えは決まっている。
「気持ちいいね」
「でしょー」
「まったくもう……妖夢さんまで変な影響受けて」
そう言われても、衝動的にやってしまったのだからしょうがない。
行儀が悪くたっていいかもしれない、たまの息抜き、そう、息抜きなのだから。
「さて、そろそろ始めましょうかね、そろそろ陽も沈みそうだし」
「夕マズメに入ればそこそこ数も釣れると思うし、頑張ろうね」
「うん、頑張ろう」
片付けの邪魔にならないように離した所に置いた竿を取る。
夕マズメとは、簡単に言えば魚が餌を求めて活性化する時間帯の事らしく、二人の話しだとその時間帯が狙い目だと言う。
椛の言葉通り、再開し始めた頃はなかなか掛からなかった魚も、夕焼けが見える頃には気が付けば仕掛けを入れた途端に食いつく程の勢いを見せた。
魚篭には三人が釣り上げたニジマスやイワナ、珍しいところで紋様のついたヤマメで溢れている、さすがに入りきりそうにないので小さい固体は逃がさなければならなかった。
しかし、調子の良い時間は続かず、最後に文が釣り上げた魚を最後に、ぱったりと魚の食いが途絶えてしまった。
「終わっちゃったかな」
椛が残念そうに呟く。
勢いが途絶えてしまったのは少し残念だが、夕食分には充分すぎるほどの釣果は得た。
まだまだ蒸し暑いが昼ほどでもない、ここからならば特に傷ませる事もなく持ち帰る事も出来るだろう。
二人で食べる分には多いが、永遠亭に筍のお礼にでもすれば無駄も無い。
そろそろ終わるには頃合だった、糸を垂らしているのは妖夢と椛の二人だけになり、文は少し前から今日のことをどう記事にしようかと手帳を睨んでいる。
夕焼けに染まった水面を見つめる、まだ竿を上げないでいるのは、何となく、この時間を終わらせたくないからだった。
椛も何を言うわけでもなくそれに付き合ってくれている、しかしいつまでも続けていては夜になり、幽々子を待たせてしまう。
椛に声をかけ、竿を上げようとした時だった、すっかりアタリのなくなったウキが小さく沈んだ。
反射的に腕を上げそうになる、、そうしなかったのは、沈んだウキがすぐに上がってきたからだ。
小刻みに浮きが揺れる、魚が餌を食えるかどうか、確かめている。
竿を持つ手に力を込める、じわじわと湧く高揚感に焦る気持ちが逸るが、焦るな。
一つ、呼吸を大きく吸う。
吐くと同時に、ウキが勢い良く沈んだ。
「わっ」
上げた腕が引っ張られるように動く、重みのある勢いが伝わってくる。
食いついた魚は暴れることなく、すいと右へ泳ぐ。
それに気づいた椛が巻き込まれないように自分の仕掛けをあげてくれていた。
「んー、結構大きそうだね」
動きに合わせて竿を右へ、無理に反対へ引っ張ると伸びた糸はたちまち切れてしまう。
手前へ竿をやり、引き寄せよるが、すぐに奥へ逃げられる。
引く度、弓のように竿先がしなる、それでも何とか浮かすと一瞬顔を見せたが、すぐに体をくねらせ太い尾で水面を波立たせると水中へ潜っていった。
「とりあえず慎重に、魚を疲れさせるんです」
いつの間にか隣に立っていた文がシャッターを切っている。
「糸、切れそうなんだけどっ!」
「気合で頑張ってください!」
両手でしっかりと竿を掴み、それ以上潜らせまいと上方向に引く。
慎重にとは、難しい話だと妖夢は言いたかったが、糸を切らんと大きく動く魚に合わせるので精一杯だった。
額から生暖かい雫が伝う、汗をかいているのだと気づいた。
しかしそれを拭う手間が惜しい。
右へ動いたら竿を右へ、左へ動いたら左へ、沈もうなら引き上げ、とにかく、泳がせる。
そのかいあってか、不意に動きが止まった。
引き寄せると、重いが抵抗は少ない。
「よし」
一気に手前まで引き寄せる、足元近くまで来た、ここからだ。
先ほどまで釣った魚と違い、体が大きい分、水から上げた時の抵抗は大きい。
引き上げようなものなら糸が切れるかもしれないが……どうせこいつで最後なのだ。
「椛、悪いけどお願いできる?」
「うん、わかった」
「せぇ……のぉ!」
一息置き、気合を入れて引き上げる。
途端竿がいっそうしなり、釣り上げられた魚の重みが竿先に集中する。
案の定、持ち上げた所でぶつりと糸が切れる、がすかさず椛が魚の口を持ち陸に引きずりこむ。
ニジマスだった、横腹にある赤紫色の線が他の魚よりもはっきりしていて、突き出た腹はいかにも食べ応えがありそうだ。
「いいサイズですね、んー、一尺三寸ちょっとですかねぇ」
「最後の最後に大物だね、妖夢」
「え、ええ……」
曖昧な返事を返す、ずっと竿を強く握り締めていたせいで喜びよりもまず痛かった。
地面に横たわったニジマスはびちびちと跳ねている、それをぼーっと眺めているうちに、 ふつふつと嬉しさがこみ上げてくる。
「ほら、妖夢」
椛がそれを渡してくれる、ずっしりとまでは行かないが、両手にかかるそれなりにある重みが釣ったという実感を沸かせる。
刺身にするのには充分な大きさでもある、幽々子もきっと喜ぶだろう。
「さて、それじゃあお開きにしましょうか、魚を入れる桶持ってこないと……ああ、その前に妖夢さん」
「なに?」
文の方を向くと、カメラを構えて手を振っている、妖夢は魚を自分と映しやすいように持ち直す。
「椛も横に立ってください、ほら」
文にせかされ、椛が隣に立つ、少し気恥ずかしかった。
「んー……片方だけってのも」
ぶつぶつと呟きながら魚篭から魚を取り出して椛に渡すと、満足がいったのかもう一度カメラを構えなおす。
「それじゃあ行きますよ、にっこり笑ってくださいー」
「わっ」
文がシャッターを切ろうとした瞬間、妖夢の持つニジマスが暴れ始めた。
しかし時はすでに遅く、妖夢の手からニジマスが飛び出す。
ほとんど沈んだ夕日の光に反射して、その魚体がきらりと光った。
※※※
「んー! 美味しいわー、さすが妖夢ねー」
「お気に召してよかったです、幽々子様」
食卓に並べられた魚料理に舌鼓を打ちながら、幽々子は満足そうにお猪口の酒を飲んでいる。
久しぶりの筍以外の料理がよほど嬉しかったのか、すでに頬も赤くなっている。
上機嫌でニジマスの刺身をつまんでいるのを見ると、釣ってきたかいがあったとこっちまで嬉しくなる。
十匹余り持ち帰ったうちの六匹を永遠亭にお裾分けしたが、四匹でも充分な料理が作れた。
ニジマスとイワナを二匹ずつ。二匹は刺身にし、もう二匹を塩焼きにする、塩は気持ち控えめに。
刺身にしたあの大きなニジマスは、コシはあるが淡白な味で、それがワサビ醤油によく合いご飯も酒も進む。
イワナの方は骨も立派な食材になる、広葉樹を使って燻すと綺麗な飴色になり、熱燗に入れるとこれがまた美味しい。
剥いだ皮は油で揚げればパリパリとした食感の唐揚げになる。
もう少しあれば燻製にも挑戦したかったが……まぁこれは次の機会にしておこう。
「お刺身も美味しいし、焼き魚も美味しいし、お酒も美味しいし、幸せ」
「ええ、川魚の刺身ってのもいけるもんですね」
「ご苦労様ね、妖夢」
「いえ、いい息抜きになりましたし、楽しかったですよ」
「あらあら」
「あ、いえそういう意味では……」
しまったと弁明すると、幽々子は意地の悪い笑みを浮かべた。
「こんな美味しい物が食べれるなら、しょっちゅう息抜きしてもらおうかしら」
「幽々子さまぁ」
「冗談よ、でもそうね、たまにはこういう時間を作ってあげないといけないわね」
こういう時間、一日ただ釣り糸を垂らす、それだけの時間。
「期待してますね、幽々子様」
しょっちゅうは困るが、たまにならいいかもしれない。
今度は一人で行ってみようか、ぼーっと釣り糸を垂らすのも悪くない。
今日みたいに釣れないかもしれないが、それもいいだろう。
「あ、妖夢おかわり」
「はい、幽々子様」
いや、幽々子を誘うというのはどうだろうか、やはり誰かといるほうが楽しいかもしれない。
明日からはまたいつも通りの一日が続く、また朝から幽々子を探して回ることになるだろう。
それでも、たまに今日みたいな日を過ごせるなら、まぁそれでもいいかもれない。
人生には、息抜きが必要なのだ。
美しく、丁寧な描写はとても上手だと思いました。
自分も見習いたいくらいです。
椛の文に対する対する口調が普段通りの口調というか、呼び捨てなのが妙に新鮮に感じましたね。
そしてなんというか、妖夢が可愛らしかったです。
少しだけ気になった点を挙げるとすれば、「!」や「?」がところどころ半角だったり全角だったししたところでしょうか。
姫様なにやってんのw
ダブルスポイラーの影響か、椛の文に対する態度に様々な個性が見えてきましたよね。
夏休みののんびりした一日を過ごしたかのような錯覚をしてしまうほど雰囲気が出ていました。
文もみのさっぱりした関係もなかなか素敵でした。
また気になる新人さんが出てきて嬉しい限りです。
ありがとうございます
所々半角だったりするのは……直し忘れです、はい
>>5
輝夜「テンション上がっていた、後悔は優曇華にさせる」
>>6-7
自分の中ではこの二人は結構フランクな付き合いをしていイメージがありますね
そこらへんの関係をもう少し掘り下げらたらなぁとは思いますが予定は未定
>>ぺ・四潤
見直してみたら直し忘れや誤字が目立ちますね、駄目だこりゃ
指摘ありがとうございます、意図的ではなく直し忘れです、はい
cmについても投稿時に直すつもりが忘れてて
もっと見直そう、うんorz
いやほんと失礼しました、重ねてお礼申し上げます。
生憎、刺身で珍しいのはサバぐらいしか食べたことないもんで・・・・。
あー刺身食べたくなってきたーー
幻想郷の魚美味しそうだな~~~あ、でも川しかないな・・・。
朝に修正するのでしばらくお待ちいただけませんか?
それと上の返信レスの際さんを付け忘れて呼び捨てにしてしまったことをお詫びします、申し訳ございませんでした
>>11
ご飯が進みますよ、機会があったら是非食べてみて下さい
ただし管理釣り堀のニジマスにはご注意を
>>14
そう言っていただければ嬉しい限りです、今後も文章などに気を付けつつ書いていきたいと思います
>>16
仕事が終わり次第、すぐに直したいと思います
教えてくれてありがとうございます、とても助かります
ところで中身が変わってないですからわざわざタイトルに書く必要ないですよ。
烈しい太陽、深緑の草葉、キラキラと流れる沢……幻想的な夏の情景が目に浮かぶようでした
これが初投稿……だと……
直しました
>>19
ありがとうございます
って良く考えたら霊の二人には関係ないですね。
ほのぼの出来てよかったです。GJ!!
アニサキス等、色々あるみたいですね。
まあ結構、何事も無かった例が多いみたいだし、お言葉どおり二人共幽霊ですからねぇ
遅れましたが評価ありがとうございます、嬉しいです
次も楽しみにしてます
まず最初に思ったことは爽やかな読み口だということ。
そして次に思ったことが「釣りやってみたいなぁ、でも虫……」。
重厚になり過ぎず、しかしそれでいて要所要所を抑えられているという感じのする描写で描かれる背景や仕草が物語と相まって、
本当にこう、にぎやか!って言うわけでもないのに何か楽しそうで。
あゝ、こういう休日の過ごし方とかいいかもしれないと思いました。