長く生きてきた。
永く、とはまだ言えないか。
三つ子の魂百までといった人間の言葉があったけど、百どころの騒ぎじゃあないんだなぁと、こう生きてみて思った。
時間はアホみたいにあるし、知恵だってあるっていうのに、結局私はこの竹林だけを縄張りにして、毎日いたずらなどして楽しく過ごせれば良しとしている。
大きなものを持ったって、疲れるだけで楽しくない。
それが真実なんじゃない? 楽しく生きていけなきゃ、長生きなんて到底出来ない。
でも張り合いがなければまた、長生きなんて到底出来ない。
だから私は縄張りだけは、この竹林だけは、保持する。
ここが私の心を生かしてくれる。
――その日もまたこの場所で、二つとなく楽しい、ありふれた日常が訪れるはずだった。
――『しあわせウサギの永遠』――
“てゐさんてゐさん! 大変ですよ!”
ふと私の耳に届いた兎通信。
ちなみに兎通信とは、兎の耳をアンテナに見立てて行う、兎のみに許された遠隔会話法である。まぁ、ぶっちゃけ雰囲気を出すための趣味なんだけど。
しかし後に、月の兎の真似事でしかないことが発覚し、廃れることになるのだが。
私に兎通信で語りかけてきたのは、私の部下の一匹だった。サラサラストレートな黒髪が似合う兎だと覚えている。
“どうしたのゴルバチョフ”
“私の名はゴルバチョフじゃねーですよ! みんです! 因幡みん! なんでそんなまったく関係ない名前に間違えるんですか!”
“ごめんなさいゴルバチョフ。で、何が大変なの?”
“くっ……! ええと、なんか竹林に家を建ててるやつがいるんですよ”
ゴルバチョフの報告に、私は耳を疑った。
“家を? この迷いの竹林に? ……正気なの?”
“知りませんよ。ともかく正気の沙汰とは思えませんけどね”
“妖怪? 人間? ベム?”
“遠目に見た感じでは人間なんですけど……雰囲気は尋常のものではありませんでしたね”
“ベムの可能性は?”
“んなもんないですよ!”
“……わかったわゴルバチョフ。すぐにうさぎ跳びで急行するわ”
“いや、普通に飛んできてくだされば……”
“時は一刻を争うのよ!? 中途半端なことはしていられないわ!”
“……好きにしてください”
兎通信が切れる。まったく、ゴルバチョフの奴はまだまだヒヨッコね。
さて、ああいった手前、私も全力を尽くさねばならない。
私はうさぎ跳びの構えをとり、先の兎通信の発信地のあたりをつけ――跳ねた。
「ジャスト一分だ」
「早ッ!」
私の到着に、ゴルバチョフは度肝を抜かれた様子だった。
やっぱり奴はうさぎ跳びの何たるかがわかっていない。跳べない兎はただの兎だ。
……いや、冷静に考えたらただの兎ですらないけれど、まぁ今はそんなことはどうでもいいの。
「で、その一級建築士はどこにいるのゴルバチョフ」
「みんです。因幡みん。……ほら、あそこですよ」
ゴルバチョフは草陰に身を潜めていた。そして私も倣って身を潜めている。
そして、その前に竹が切り開かれて出来た空間がある。
建築士がやったのだろう。なんてひどいことをする。
私は心を痛めながら、ゴルバチョフの指差したところを見る。
人影は無かった。なぜなら既に家が完成していたから。
その家は小さい丸木のようなものを精巧に組み合わせて作ったような印象を受け、よく作ったなぁ、という純粋な感慨を抱いてしまうものだった。
「普通の、家ね」
私は冷静に声を出す。
私の縄張りに無断で入ってきた奴らに、感心するようなことがあってはならない。
「どうです? 少し近づいてみますか?」
ゴルバチョフがひそりと囁く。
「そうね。何か罠があるかもしれない。慎重に近づくわよ、ゴルバチョフ」
「みんです」
まず第一に罠を警戒。基本中の基本よね。見た感じ籠も落とし穴の痕跡も見当たらないし、竹林は切られているから上に何かが仕掛けられている可能性は限りなく低いけれども。
そうして、気配を察知されぬようにそろりそろりと近づいていくと、ゴルバチョフがすんすんと鼻を鳴らした。
「てゐさん、何か、おかしなニオイがしません?」
「言われてみれば……」
ゴルバチョフに倣ってすんすんとやると、私の鼻にもおかしなニオイが飛び込んできた。なんだか、どこか身近なような、不思議な感覚。
そのニオイにつられるように、私たちはその家の玄関の前までやってきてしまった。
「何か、ここまですんなりとやってきてしまったわね」
「どうしましょう。辺りを探ってみますか? それともいっそ突入しますか?」
なかなか過激な案を出すじゃないかゴルバチョフ。そういうの嫌いじゃない。
「よし、とりあえず少し戸を開けてみようか」
と言って、私は戸を握った。
……ぬちゃ
別に濡れているわけでもないけど、何か油っこい、変な感じが手のひらにつたわってきた。
「な、なにこれ……?」
慌てて手を離し、自分の手のひらを凝視する。
すると、手のひらから、ほのかに先ほどの不思議な香りが漂ってくるじゃないの。
これこそが、このおかしなニオイの原因なのかしら?
「何か……食べ物っぽい匂いですよね」
「私もそう思う」
私はその正体を暴くためと意を決し、そっとその何かが付着した手のひらをなめてみた。
……!!
「うわーっ!? これうまい棒だ! メンタイ味だよ! この家、丸木造りなんかじゃねぇ! 総うまい棒造りだ!」
「てゐさん! こっちはコーンポタージュの味がしますよ!」
ゴルバチョフも別の部分を触って、なめていた。
ありえねえ。お菓子の家とでも言い張る気なのかこれ。というか竹材どこやったんだ。
「あ、てゐさん、この『定礎』って書いてあるのはチョコみたいですよ?」
「定礎!? 何様のつもりだこのうまい棒建築!? 誰よ竹林の中にこんなの建てたヤツ!」
よく作ったなぁ、という、別の意味で純粋な感慨が狂おしいまでに私の中にあふれ、思わずそう叫んだときだった。
「どちらさま?」
キィ、とうまい棒の扉が開き、凛とした声が響く。
不覚、いかにこの家に度肝を抜かれたとはいえ、あんな声を出してしまうなんて。
かくなるうえは相対するしかない。覚悟を決めよう。
「あら、かわいらしい兎さんが二匹」
――まるで和服のような洋服。
良く見たらどう見ても洋服であるのに、ふとそう思ってしまったのは、にじみ出る日本的オーラの故か。
一言でこの人物を言い表すなら、『姫』。
それ以外には、思い浮かばなかった。
「ようこそいらっしゃい。私の名は蓬莱山輝夜。この家の、主です」
そう言って、お姫様は屈託無く笑った。
「ようこそ、てゐに……ゴルバチョフだったかしら」
「みんですよ! 因幡みん! なんでそっちで覚えるんですか!」
「ご、ごめんなさいゴルバチョフ」
「チクショー!」
こいつが? いや、まさか。
成り行きで意外と純和風な内装であるその家の客間へと案内されながら、私は思案していた。
一級建築士はこのお姫様ではない。おそらく。
誰かいる。禍々しい気配。
「普段は私自ら来客の出迎えなんてことはしないのだけれど、どうにもまだ人手がたりてなくてねえ」
その姫は何故か悪戯っぽく笑う。
そして、私たちは建設中の区画に――そう、完成していた外見からは想定できなかったが、まだ建設中の場所があったのだ――差し掛かった。
曲がりなりにもこれほどの家を完成させるのだ。それほどの人足が存在するのか?
だったら、たとえ争うにしてもやり方を考えた方がよさそうだ。
そう思案する。が。
「あら永琳、休憩中かしら」
姫がそうして声をかけた先には、一人しかいなかった。
「ええ、既に必要最低限の場所は仕上げてしまいましたから、あとはゆっくりといこうと思いまして」
そうして材木を背景に、キセルで一服入れながら答えたのは――
「……あ?」
目を疑う。
そこにはニッカポッカとランニングシャツを装備し、ハンマー片手にいい笑顔と珠の汗を浮かべるセクシーな女性の姿が。
揺れる銀髪と整った顔立ちがやたら浮いて見えた。
え、何これこわい。
私はよくわからない本能的な恐怖に駆られ、目の前の現実が変化する可能性を信じて目を擦った。
擦った目を開けたら、そこにいた女性は武者姿に変わっていた。
やったね! へんかしたよ!
「って悪化するってどういうことよ!? せめて現状を維持しろよ現状をぉぉぉぉ!」
「て、てゐさん!? おちついて!」
暴れる私をゴルバチョフが羽交い絞めにして抑えてくる。
そこで私はゴルバチョフの腕を取ると、スパァンと華麗な音を立てて背負い投げを決めた。
「げふぁ」
「ふぅ……ありがとうゴルバチョフ。落ち着いたわ」
「人を投げて落ち着かねーでください……あと、みんです」
ゴルバチョフが少し体をがくがくさせながら立ち上がる間に、その女性が音もなく近づいていたことに気づく。
いや、武者姿のくせになんで音が鳴らないんだよ。おかしいじゃない。
「それは私が天才だからよ」
こころをよまないでくだしあ。
「私の名は八意永琳。月の頭脳と呼ばれているわ」
格好に関してはむしろ月の脳筋じゃないのかと疑ってしまうのだが、確かにその瞳は、知恵の輝きを宿しているように見えた。
「ちなみに、姫の付き人をやっているわ。月人だけに」
前言撤回。だめだこりゃ。
「フッ、馬鹿と天才は紙一重なのよ……」
「それ自分で言う台詞じゃないですよね」
よく言ったゴルバチョフ。
――だがその刹那、永琳の眼光が煌く。
次の瞬間、ゴルバチョフがいたはずのところにゴルバチョフがいなくなっており、代わりにウサミちゃん人形が鎮座ましましていた。
「ゴッ、ゴルバチョフぅぅぅぅ!!?」
「あなたもそれ以上私を疑うのだったら、なかったことにしてあげましょうか? あのウサギのように……」
あのウサギのように……!?
「ゴルバチョフのことか……ゴルバチョフのことかーーーーーっ!!!」
「いや違うけど……」
「ズコー!」
すごい古い……というか時代を先取りしたこけ方をしてしまった……。
ゴルバチョフでないとしたら一体何のことを……!?
「かの名はレイセン。過去七百人を殺し、死刑執行されること十三回、そのことごとくを生き延びた……奴こそまさに、悪魔の化身……!」
「そ、そんな恐ろしいウサギが……!?」
驚く私に、永琳と名乗った女は凛とした顔で言い放つ。
「嘘ウサ」
「ぐっ……!」
手玉に取られたというか、十八番をとられたというか、ともかくひどい敗北感が私を襲った。
「そこまでにしておきなさい。永琳」
姫が進み出てきて、手にした皮衣をウサミちゃん人形にはらりとかける。
「わん、つー、すりー」
そしてサッと皮衣をどけると、そこには黒いサラサラストレートヘアーの妖怪兎が……ゴルバチョフがいた。
「無事だったのね! ゴルバチョフ!」
「て、てゐさん……私一体……とりあえずみんです。因幡みんです」
私がゴルバチョフの無事を喜んでいると、姫が呆れるように言った。
「永琳。先住の者と事を荒立てないようにと言ったのは、他ならぬあなたではなくて?」
「失礼しました姫。だけどその場のノリで行動してしまうのはサガなのです。だって私は天才だから……」
「とりあえず理由付けに天才を乱用するクセを直しなさい」
「はい……」
鎧武者の美人がしょぼくれる奇妙な光景。
長く生きてきた。こんな光景は見たことないが。
しかしともかく、この永琳を押さえ込めるのだから、この姫もなかなかのやり手。一緒になって暴走するタチでなくて本当に良かったと思う。
「しかし、なんでそんな格好になったんですか?」
ゴルバチョフが人形にされたトラウマもものともせずに、武者姿のことを永琳に尋ねる。あんた漢女だよ。
「これのこと? いくらなんでも客人がいるのに作業着で応対したのでは失礼ですから、姫の付き人らしい格好に着替えただけですよ」
「付き人らしいのかこれ」
「さぁ……」
一緒に首をひねる私とゴルバチョフに、姫が優しく声をかける。
「ま、細かいところは気にしないであげて頂戴。彼女なりに礼儀は示しているのよ。あなたたちと話をしたがっていたのは、誰あろう永琳なんだしね……」
そうして趣味なのか何なのか、殿様の謁見部屋みたいなところに通された。
姫が正面に座り、付き人の永琳が傍に控えている。
さっき永琳が『必要最低限の場所は仕上げた』とか言ってたが、それにここも含まれているのかはなはだ疑問である。ていうかいらんだろ。
ともあれ、ここで初めて永琳という女に自分の名を名乗っていないことに気がついた。
ツッコミどころばっかりだったから仕方ないね。
「まぁ、まずは名乗っておくわ。私の名は因幡てゐ。この竹林の兎の総大将よ」
そして、私に続いてゴルバチョフが自己紹介を始める。
「そして私は……」
「あなたは知っているわ。ゴルベーザさんね」
「ゴルバチョフだよ!! いや違う! みんです! 私の名前は因幡みんです!!!」
「よろしくゴルバチョフさん」
「だからみんですってー!」
こ、この女……出会ってすぐに弄り方をさとるだけでなく、ゴルバチョフに自分からゴルバチョフと言わせるとは……!
北風と太陽方式なら既に負けていた。改めて、この女の規格外さを思い知らされる。
だが……ビビるわけにはいかない。私とて一群の大将なのだ。
「それで……話したいこととは何かしら?」
ともかく、話を聞いてみないことには始まらない。
「何、別に変な話をしようというわけではないわ。当たり前のことを言いたかっただけよ」
永琳が微笑んで、言った。
「私達がここに住むことを許可して欲しいのよ。竹林の主さん」
こいつ……さんざんこちらをおちょくった上での要求? ふざけないでよ。
「私の竹林にあんたみたいなわけのわからん奴を受け入れさせるもんか。とっとと出ていきな」
ぴしゃりと叩きつけ、立ち上がる。
「帰るわよ。ゴルダック」
「だから私はゴルバチョフ……じゃないのー! 私の名前は因幡みん! 因幡みんであるー!」
私はゴルバチョフ弄りで軽く対抗しつつ、その部屋を出て行った。
「あらら、怒らせちゃったわね? 永琳」
「ええ。まぁ、最初はちょっといがみ合うくらいの方が良いのですよ」
結局、半ば勢いに任せる格好で跳ねつけてきてしまった。
別に後悔と言うほどのものはしていないが、軽率だったかなとは思う。
得体が知れないが、それだけに読めぬ力をもっていたようにも思う。
「変な気を起こさなければいいけど……」
そうして永琳のことが頭から離れぬまま迎えた翌日、目の前のゴルバチョフに矢が刺さった。
「あふぅ」
「ゴルバチョフーーーーーっ!」
倒れたゴルバチョフを、慌てて抱き上げる。
「いや大丈夫ですよ、これ吸盤になってて、手紙が……」
「ゴルバチョフー! 死ぬなー! ゴルバチョフー!」
「いや、だから吸盤で」
「ちくしょう! 諸君らの愛してくれたゴルバチョフは死んだ! 何故だ!」
「死んでませんてば」
「ゴルバチョフ……君は私の心の中で、生き続ける……」
「話をきけい!」
「ガブシ!」
ゴルバチョフから顔面にパンチをもらう。総大将相手にいい度胸してるじゃない。
「前がみえねェ」
「あわわ、やりすぎました。はいオオナムチ印の万能傷薬」
ゴルバチョフから手渡された傷薬で回復しながら、ため息をついた。
「ふぅ……せっかくいいところだったのに、邪魔をしないでよ」
「そもそも人を勝手に殺すシチュエーションで盛り上がらないでくださいよ……。とりあえずはい、矢文ですよ」
矢文を受け取り、目を通す。
~~~
Dear 因幡てゐ様
ああ ←※「んうあぁあ!」と発音
突撃マイハート 突撃となりの晩御飯
多汗症のひよこが呻いた
「こんにゃくが……こんにゃくが湿ってるんだよ……」
僕と君の間には、のみの市が広がっている。
ああのみの市。どうしてお前はのみの市なんだ。
諸説あってよくわからないんだよ。
そんな疑問も何もかも、ハレー彗星が空気と一緒に盗んでいったんだ……。
関係ないけど洞窟いいね。
From ヤゴッコーロ・リンエー
~~~
「おちょくっとんのかぁぁぁぁぁ!」
私はその矢文を感情に任せて破り捨てた。わけがわかんないよこんなの!
「やだ……かっこよかったのに……」
マジかよゴルバチョフ!
「まぁそれはともかく、どうするんですか、これ?」
「ふん……たぶん来いっていってるんだろうね」
昨日の今日で仕掛けてくるとは、あいつの言葉を借りるならばまさに天才と馬鹿は紙一重ということか。
にわかに、愉快な気持ちが湧いてくる。
なぜだかわからない。関わりたくもないはずだったのに、なんだか逆に気になってきて、足を運びたくなってくる。
これも奴の策なのか?
「考えても仕方ないね。行くよゴルバチョフ。あの女のハウスに……」
「みんです」
家のあるところにやってくると、そこはダイワハウスになっていた。
「なんでダイワハウスなんだ……」
総うまい棒造りだった前回の外見とは打って変わった現代建築。ダイワハウスがなんなのかわからないけど、壁にでかでかと書いてあるから仕方ない。
ともかく今回の方がはるかに入りやすいのは確か。
私は戸を叩いて来訪を知らせる。
「ほら、来てやったわよ!」
きぃぃと相変わらずの音を立てて開いたそこには、姫ではなくあの銀色の髪の女。八意永琳。
「あら、いらっしゃい」
今日はなんだか赤と青のコントラストが変だけど、昨日に比べたら普通の服装だった。
「さすがに私はなんでもない日万歳と言える境地にはいないのよ」
言ってる意味がよくわからない。
そう思っていると、なぜか顔を赤らめて人差し指の先をつんつんと突き合わせ始める。
「さて、ここまで来てくれたということは……私の恋文は読んで貰えたのかしら」
「恋文だったのかアレ!?」
どう見てもただの怪文書だったじゃない! 縦読みとかでもなかったはずだよ!?
「それで……お返事は……」
「どう返事しろってんだ!」
「ほら、からかうのもその辺にしておあげなさい。仲良くなりたいのではないの?」
ぱんぱんと手を打つ音が聞こえ、永琳の背後から姫がやってくる。
「姫……。いや、ツンデレなんですよ。私は」
「ツンデレは通常ツンデレであることを自己申告しない」
「ツンデレを自己申告するツンデレがいてもいい。自由とはそういうことです」
もうわけわかんねえよ。
「……ともあれ、よくいらしたわね。歓迎するわ。てゐ。ゴルベーザさん」
「仲良くなりたいならまず私の名前をきちんと呼ぶことからはじめてはどうでしょう」
「ごめんなさい。以後改めるわ。ゴルバチョフさん」
「そうではなく……」
ゴルバチョフだけさん付けなのは気に食わないなぁ。
と、そのとき私はそんなことを考えていたのだった。
「で、なんであんな怪文書まで出して私達を呼びつけたのかしら?」
今回通されたのは謁見部屋くさいところではなく、普通の和室であった。みんなで茶と菓子の乗ったちゃぶ台を囲んでいる。
譲歩してきた――ということなのか。
「まずは私達がここに流れ着くことになった経緯を聞いてもらおうかと」
「興味ないわね」
はねつける。
そういう身の上話を聞かせて感情移入させようという魂胆なのだろうが……そういう手には乗らない。
「まぁそう言わずに。ニンジンあげるから」
「仕方ないわね。早く話しなさい」
「てゐさーーーーん!」
うるさいわねゴルバチョフ。ウサギたるものニンジンに対しては素直であるべきよ。
「ほらゴルバチョフさんにも、ニンジンあげるわ」
「ふ、ふん、そんなまずそうなニンジンもらったって、うれしくもなんともないんだからねっ!」
ゴルバチョフはニンジンに対してツンデレなんだよなぁ。
素直になればいいのにねえ。よだれ出とるし。
ともあれこうして、私達は姫と永琳がこの竹林に来るまでの話を聞くことになった。
月に生まれ、
追放されて地上に堕ち、
そのまま月に戻らずに地上で暮らし、
隠れ続け、場所を変え、
一人のときは涙を流し、
寒さの夏はおろおろ歩き、
みんなにでくの坊と呼ばれ、
褒められもせず
苦にもされず
「そういうものに、私はなりたい」
「途中から完全に宮沢さんじゃねーか!!」
「まったく、月から来ただって? 私の月への憧れがストレスでマッハなんだけど……」
「まぁまぁてゐさん、観光名所って、実際行ってみるとしょぼいもんですよ」
「そういう問題じゃないよ!」
まったくゴルバチョフめ、いい観光名所もあるっつーの。因幡とか。
「で、聞いたけど、これでどうしろというの?」
「別に、聞いておいてもらいたかっただけよ」
お茶をすすりながら姫が言い、永琳がそれにうなずく。
「ええ、別に、交渉の材料に使うために話したわけではないわ。単なる、交渉の前置き、かしらね」
前置き、ねえ。
訝しげな視線を向ける。一体、どういう交渉を……?
「いえ、昨日は早々に帰られてしまったので、仕切りなおそうといった魂胆ですよ。ここに住まわせて欲しいという交渉を」
「それならば既に断ったはずだけど?」
そう返すと、永琳は待ったという風に手を掲げる。
「ただで住まわせてもらえるなんて思ってはいませんよ。もちろん対価を支払うわ」
「へえ? 言っておくけど、私はそう簡単には揺らがないよ」
「では一年中ニンジンを収穫できる月の技術で……」
「やべえ超揺らぐ」
「てゐさーーーーん!!」
騒ぎすぎよゴルバチョフ。
ニンジンを出されて揺らがないならそれはウサギにあらず。
イメージを大切にしない妖怪に未来はなぃ。
しかし――揺らぐまでなら妥協するが……堕ちるかどうかはまた別問題。
私は一つ落ち着くように、大きく深呼吸をする。
「確かに魅力的な条件ね。だけど、今一歩かしら。……なんでこの竹林にこだわるの?」
私の問いに、永琳は答える。
「『迷い』の名を冠したこの竹林……隠れ住むならこれ以上の意味を持った場所はない。何しろ私たちは一応追われる身。屋敷の外装を毎日のように変えているのもそのためよ」
「あれ意味あったんだ!?」
「ていうか、そんなことしたら普通に目立つのでは?」
ゴルバチョフが相変わらず最もな疑問をぶつける。
すると、姫が口を開いた。
「いいえ、この地は私の力で永遠が保たれる。彼らにとって変わらぬ場所ほど怪しいところはない。……まぁ、この地に馴染むまでの道楽といえば、そうなのかもだけどね」
いまいち……要領がつかめない。
でも掴む必要も特にないのであった。
「まぁ、引越し場所を考える時間くらいならあげるわ」
「……あなたこそ、どうしてこうもこの竹林に拘るの?」
姫が、不思議そうな顔をする。
月を出、場所を転々として過ごさざるを得なかった彼女らには、根付くという感覚が理解できないのも道理だろう。
「特に。ただここで長く生きてきた。オオナムチ様に救ってもらってから、ここに流れ着き、そして全てを積み上げてきたのよ。だから、ちょっと余所者が、受け入れられないだけかな」
「へぇ」
姫が微笑む。
「私達もここに、流れ着いたのよ?」
――!
「永遠が破られることの重みは、誰よりも理解している。でも、だからこそ……私はあなたたちと、仲間になりたいと思うの」
仲間……?
本気で、言っているのだろうか?
「永遠を生きてきた者よ。私達と、新しい永遠を刻みましょう?」
なぜ、それを魅力的な申し出のように感じてしまうのだろう。
この、奇妙な重みは……。
“ゴルバチョフ”
“みんですよ。なんですか”
“どう思う?”
兎通信で問いかける。
向こうの申し出に、ゴルバチョフはいったいどういう感情を抱いているのか。
“……私に聞くのですか? ……まだ私たちは向こうのことを真に理解したとは到底言えません。経った時間が少なすぎますもの”
そう。少なすぎるはずなんだ。
だけど、なんだ。この、ずっと前からここにいたような感覚。まるで向こうがこの地の主であるかのような感覚。
“ですけれど……永遠という言葉に、偽りが感じられないのは何故でしょうね?”
ふと、姫が微笑んだ。
まるでこっちの戸惑いを全て見透かしているかのように。
「……まだ、結論は出せないわ」
「そう……大丈夫よ。時間はそれこそ永遠に……あるからね」
引っかかる、言い方だった。
時間を与えるのは私のはずだのに。
「……じゃあ、今日はこれで失礼するわ」
今度は姫の方に奇妙な感覚を抱きつつ、席を立つ。
見極めなければ。この場所に住んでいるのが何なのか。
「あ、帰るんだったら」
永琳がごそごそと別室から何かを持って来た。
「何?」
「はい、おみやげのセクシャルキャロットです」
「うおおおおおおおい!」
それは足をくねらせた下半身に見える実に悩ましいセクシャルキャロットでってこんなもんみやげで渡すんじゃないよ! どうしろってんだよ! まぁ食うけど。
やっぱりただの馬鹿かもしれん。
「う、うれしいなんて思ってないんだからね!」
ゴルバチョフもこんなのにまで律儀にツンデレ発動させなくていいと思う。
かくして……あの二人と我々の、奇妙な近所づきあいが始まった。
といっても何のことはない。
たまにあのときのように呼びつけられたり、突如こっちがわの住処に上がりこんできて、茶をすすって帰ったりニンジン畑の監修をしていったり。
なんでもない日が過ぎる。
永遠に繰り返すかのように、なんでもない日が。
月から来た、迷いの森から抜け出そうとせず、あまつさえここに住もうとする人間。
それが――あなたたちのシアワセなのか?
「因幡の白兎」
竹林を進んでいたとき、ふと呼ばれる。そこには姫がいた。
「どうしたの、お姫様」
「ちょっとお話がしたくてね。永琳もゴルバットもいない、ここで」
「ゴルバチョフですよ」
にぃ、と笑いあう。
そうして、姫は近くの手ごろな岩に腰をかけた。
「あなた、永琳にだいぶ気に入られたみたいね」
ええ、やだなぁ。
「私としても個人的な親近感は感じているわ。因幡の白兎、物語に謳われし者」
「好き勝手に語られるのは面白くはありませんがね、なよ竹のかぐや姫?」
「あら、同感だわ」
少し嫌味は込めたけど、姫は袖で口元を隠しつつ、にこりと笑った。
「……永琳は怖い?」
ふと、尋ねられる。
「そりゃ、得体の知れないもんは怖いよ」
口を尖らせて答える。
いまだもって、奴を理解できた気がしない。
「あはは、まぁ、確かに永琳は変な奴に見えるけど、でも、ただ単にはしゃいでるだけだよ、あれは。ここでの生活が、あなた達と話すのが、楽しいんだろうね。しっかりとツッコミを入れてくれるあなたと話すのが」
そんなこといわれても、といわざるを得ない。
「私が増長させてるんですか?」
「打てば響くよ。八意永琳って女は」
「少しは落ち着いて欲しい、と思うけど」
はぁ、とため息をつく。
「夜明けを望む? イナバ」
姫の言葉に、怪訝な目を向ける。
「明けない夜はない……それはそれは残酷なことよね。日が昇る明日には、一体どんなことが起こっているのか……」
ぱちんと指を鳴らして、姫はよっ、と掛け声をかけて岩から降りる。
「それじゃあねイナバ。またお話しましょう。また『明日』」
手を振り、姫は飛んで消えていく。
なんだったのだろう。あの思わせぶりな言葉は。
自分も知恵をまわしてきたほうだとは思うけれど。
わからない。常人には宇宙人の行動も思考回路も、よくわかんない。
そしてその『明日』。
たけやぶやけた。
「てゐさんてゐさんたけやぶやけてますよ逆から読んでもたけやぶやけてますよー!!!」
「見りゃわかるし丁寧語にしたら回文にならねーし! ちっくしょう!」
もうヤケで叫ぶしかない。
ねぐらから出てきたら、そこは火の海だった。うん、物語の展開の余地もなく死ぬね。
ゴルバチョフもどうしていいかわからずにぴょんぴょん跳ねてる。
だがぴょんぴょん跳ねるだけなら鯉の王様にだって出来るんだよ!!
「ウサギたちに指令を出せ! 人型になれるやつは水汲んで来い! どうしようもなけりゃ何とか逃げ延びろ!」
「ひゃいぃ!」
つばを飛ばして号令をかける。
我らが竹林の一大事だぞ!? 命をかけても守ったらぁ!!
と、そのときに熱された竹がパァンと弾けて、燃え盛る破片が腕に着地。
あっつ。
うん、ごめん無理。大自然つええ。
これに水かけて消すとか無理でしょ常識的に考えて……。焼け石に水という名台詞を知らないのかよ……。
「てゐさぁぁぁぁぁぁん!! てゐさんのテンションががくんと下がったぁぁ!」
腕を押さえてうずくまる私を、必死にゴルバチョフが揺さぶる。
ええい、なんでこんなことに……
なんか姫が思わせぶりなこと言ってたけど、まさか……いやでも、こんなことして何の得がある?
あの人たちなら私達を排除せずとものうのうと住み続けることは出来たはず。
そもそもこんなに竹林を燃やしてしまっては……。
何を……?
「てゐさん考え込んでる場合じゃないですよ! 逃げ道なくなっちゃう! ぬおお、私の髪の毛の先っぽに火がァァ! このままでは前代未聞のアフロバニーガールが出来上がってしまうぅぅぅ! 助けてー! 助けてぇぇぇ!」
助けて……?
誰に助けを求めてるゴルバチョフ?
私? オオナムチ様? それとも他の妖怪? それとも……
駄目だ、私も――縋らずにはいられない。
「助けて……」
目の前で全てが燃えるこの光景の中で、私もその言葉を、喉の奥から搾り出してしまっていた。
「助けてっ……永琳っ!」
瞬間、目の前の燃える光景が爆ぜ、白い煙があたりを席巻する。
何事!?
「東に助けて永琳と呼ぶ声あれば、行って看病してやり、西にも助けて永琳と呼ぶ声あれば、行ってその稲の束を負い、南に死にそうな助けて永琳あれば、行ってこわがらなくてもいいといい、北に喧嘩や助けて永琳があればつまらないからやめろという」
そうして、煙の中からがっちゃがっちゃと足音を立ててそれは現れた。
「そういうものに、私はなりたい」
なんか来たし。そのどや顔はなんだよ。あと宮沢さん好きすぎだろ! 意味わかんないし!
「永琳さん!」
ゴルバチョフが目を輝かせる。
そう、確かにそこにいたのは、いつかの武者姿に身を包んだ、八意永琳その人だった。
暑くないかそれ。
「私もいるよ」
その背中から、ひょっこりと姫も姿を見せる。
「あら!? 火傷してるじゃない、ちょっと診せてみなさい!」
永琳が私の腕の火傷に気づき、永琳が姫を降ろしつつ駆け寄ってくる。
「ほら、これを塗って、これで包んで……」
「あ……」
てきぱきと処置をする永琳を見て、私はちょっと、オオナムチ様のことを思い出してしまう。
懐かしい、気持ちになった。
「ごめんねぇ、まさか永遠を解いた瞬間にこんなことになるとは思ってなくてさ」
「永遠を解く……?」
処置の間に話し出した姫の言葉に、頭にハテナが浮かぶ。
「姫は永遠と須臾を操ることができるの。今まで、永遠の力を使って、この竹林にある事象を固定していたの。永遠に何もかわらない日常が続いていく……」
「そうして私たちは、うやむやのうちにあなた達とのまったりとした近所づきあいを永遠に続けていくつもりだったのよ」
な、なんだって……!
二人の言葉に戦慄する。あの日々に、そんな真実が隠されていたなんて……。
ゴルバチョフも信じられないといった顔をしている。
「つ、つまり……どういうことなんだってばよ!?」
わかってなかっただけか。
「だけど、私は永遠を解いた。次に進みたい、って、誰かが望んだから。あなたかもしれない、私かもしれない、永琳かもしれない」
「驚きましたよ。いつの間にか永遠を解いているのですから……。そうしてこの竹林は、一挙に外界からの干渉を受けるようになった。火種はどこかにあったのでしょうね。それが永遠を解かれて一気に燃え広がった。それがおそらく今回の火事の原因」
そうか、それがあの『明日』という言葉の意味。
止まった時が動き出す。この日竹林は、やっと日をまたいだのだ。
「さて、終わったわ」
「あ、ありがとう……ございます」
「ん? どういたしまして」
永琳はにこりと笑うと、再びひょいと姫を背負った。
「さてと、ちょっとは私達のせいだから、文字通りの火消しはさせてもらうわ」
永琳は粉のようなものが入っている袋を姫に手渡す。
そして姫を背にしたまま、飛んだ。
「私特製の鎮火剤を……」
「私の須臾の能力で、一気にばら撒く!」
姫が腕を振るうと、全方位に粉が飛んでいった。一瞬をかき集めてその中を自由に動く、そんな能力だと後に聞いた。
つまり姫は、一瞬のうちに、鎮火剤を撒くという行動を何回も済ませているのだ。なんというチート。
「これが私達のコンビネーションよ! はははは!」
威勢のいい声と共に、竹林の火事は見る見る間に収まっていった。
「す、すごいですねてゐさん。あの大火災をいとも簡単に」
ゴルバチョフが口をあけて感嘆する。
「楽しそうだね」
苦笑し、その場にぺたんと腰を下ろす。
やたら生き生きと鎮火する姿に、呆れればいいのか、冗談じゃねーんだぞと怒ればいいのか、つられて笑えばいいのか、よくわからなくなった。
明日に進む。
その選択をしたのは誰だったか。
「それがお前のシアワセか? 月の姫よ、その従者よ」
「て、てゐさん……?」
くつくつと笑う私に、ゴルバチョフが少し怯えたようにこちらを伺ってくる。
「ううん、なら、いいかなって」
腕に巻かれた包帯を撫ぜながら、私はふっと力を抜く。
確かに、あのよくわからないまんま、永遠を歩むのは勘弁だった。
今やっと、永琳たちの存在に、安心できた気がした。
竹林は大部分が無事だったものの、ねぐらの周りの被害が大きかったため、移住をしなければならなかった。
聞けば、姫たちの家も燃えてしまったらしい。
「ねえ、せっかくだから一緒に家を作らない?」
「一緒に? 家を?」
永琳の申し出に、私は首をひねる。
「そう、みんなの力をあわせれば、もっと大きくてすごい家が出来ると思うの」
「そしてそこで、新しい永遠を刻みましょう」
姫から差し出された手を、じっと見つめる。
兎と人間が一緒に家を作る? 相変わらず、宇宙人の考えることはよくわかんない。
でもまぁ、いいかな、と、何か思ってしまった。
こんなところに流れ着いてきた、変わり者に付きあってやるのも。
それに何か、楽しくなりそうな、楽しい永遠を刻めそうな予感が、したから。
信じてやろう、あなたのシアワセを。あなたのシアワセが私の、私達のシアワセであることを。
私はそうして、姫の手を握り返した――
「いやー、てゐさん、工事もだいぶ進みましたねー」
メットをかぶって、ニッカポッカ装備で、ゴルバチョフが白い歯を見せる。
時は経ち、焼けた土地を利用して建てた新しい屋敷も、全容が見えるくらいになってきた。
「そうね。早いものだわ」
事実、永琳の設計には無駄がない。
こんな建築など門外漢だった兎たちが、すんなりと作業できているのは感嘆するばかりだ。
こういう点に限っては、師匠と呼ばせて欲しくなるくらい。
「こんなところに住むなんて考えたことなかったですねー。なんかかっこいい名前とかつけませんか?」
「名前?」
「いい考えね」
「うおあ!?」
ぬぅ、と傍に掘ってあった穴から姫を背負ったニッカポッカ永琳が這い上がってきた。
「名付けとはそのものに意味を与える儀式。いい名をつければ、より良い建物になるでしょう」
「はいはい、実はこっそり暖めてた案が!」
姫が元気よく手をあげる。
「私達の永遠の力と、あなたの名前をあわせて、『永遠亭』! ってのはどう?」
私は永琳に目を合わせる。
次に、ゴルバチョフと目を合わせる。
そして、再び姫を見据える。
「ぷっ……なるほど」
「ふふふふっ……確かにいい名ですね」
そして湧き起こってくる笑い。
おかしさと感銘を同時に受ける不思議なネーミング。さすがと思ってしまうほかなかった。
「私の名前はさすがに入らないか……」
うなるゴルバチョフ。
「じゃあ、永遠亭ゴルバチョフで……」
「何その平安京エイリアンみたいの! しかもゴルバチョフ占有率高いな!」
「そもそも私の名前はみんですよ!」
「じゃあ……永眠亭?」
「それはいけねえ姫様ーっ!」
………………
…………
……
「ねえ、みん」
「みんですよ!」
「合ってるでしょ?」
「あ、あれ……?」
みんが不思議そうに首をかしげる。
「て、てゐさんが私の名前を!?」
驚き戸惑い、そしてうるうると涙を滲ませていた。
「うん、今のうちに呼んどこうかと思って」
「え? 今のうちにって……?」
「ん? 今度から『新しい永遠』に入るでしょ? そしたらずっとゴルバチョフ確定だし……」
「うおおおおおおおい! ずっとみんでいいですよおおおお! そもそもなんで私ゴルバチョフって呼ばれるようになったんですか!?」
「あなたを拾ったとき、『可愛がってやってください。名前は、ゴルバチョフとどっちにしようかと三日三晩悩んだけど“みん”にしました』って手紙がくっついてたから」
「嘘おおおお!? しかも私にそんな出生の秘密が!? 嘘だといってよバニー!」
「嘘ウサ」
私は満面の笑顔を浮かべて、言ってやった。
「おーい、てゐー、ゴルバチョフー、最後の仕上げ行くわよー!」
「はいよー!」
「ふえええええん! 我が名は因幡みん! 因幡みんなのだぁぁぁぁ!」
また永遠が始まる。
きっと、今までよりずっと楽しい永遠。
そしてこの永遠が終わるとき。
そこにはもっとずっと楽しい永遠が待ってる。
そう、信じる。
しあわせウサギの永遠――fin
まさや、これも姫様の能力……?
>きっと永夜抄5面の初っ端に出てくる妖怪ウサギあたりなんでしょう。
単騎で特攻(おでむかえ)してくれるアイツですね。わかります。
でもう耐えきれなかった
相変わらずの武者っぷりよの!
っていう原作の馴れ初めをもっと大事にして欲しかった。
ちなみにてゐが永遠亭を発見できた理由はいまだに永琳にも分からないらしい。
でもまあ、お話そのものは面白かったです。
笑いで、一気に読むことが出来ませんでしたw 貴方の作品は、驚くほどに私の好みにフィットしていますw
>「ツンデレを自己申告するツンデレがいてもいい。自由とはそういうことです。」
今回のツボww
どうしてくれるwww
にしてもこの面子は何があろうと幸せに生きていけそうですねw