「なんでこんなことになったのかしら……」
完全で瀟洒な従者、十六夜咲夜は溜息をついた。
ここは咲夜の寝室。基本的にプライベートなどない咲夜だが、寝室くらいはプライベートが許される。
とはいっても、何かあるわけでもなくただベッドやクローゼットが置いてあるだけなのだが、今は少し雰囲気が違う。
何故なら――
――ベッドの上に、霧雨魔理沙が眠っている。
「はあ……」
溜息をもうひとつ。
話は1時間前に遡る。
「よう咲夜、遊びに来たぜ!」
「あら、盗みに来たんじゃないの?」
「盗んじゃいない、ただ死ぬまで――」
「借りるだけでしょ? わかったから、好きにしなさい」
「お? わかってきたじゃないか。流石はメイド長、話が早いぜ」
いつも通り本を持ち出そうと魔理沙がやって来た。
はじめは全力で阻止しようとしていた咲夜も、今となっては面倒なだけである。
紅魔館内でも図書館はパチュリーと小悪魔の管理化にあると言える。
そのため、無理に自分が働く必要がないと最近では素通りさせている。
レミリアにいたっては、パチュリーが外に出るようになるかもしれないと、むしろ推奨している伏しがある。
しかし、今日はちょっと違った。
「日符『ロイヤルフレア』!」
「彗星『ブレイジングスター』!」
「あら、今日は本気ね、パチュリー様」
いつもなら怒鳴る、泣きつく、嫌味を言うくらいしかしないパチュリーが、弾幕を使って阻止に乗り出したらしい。
魔理沙も対抗しているらしく、この分だと図書館はひどい有様だろうと嘆息していた。
が、そこに魔理沙が突っ込んできた。
「うわわわわわっ!」
「えっ!」
次の瞬間、突っ込んできた魔理沙を避けるべく、咲夜は時を止めた。
(魔理沙のことだから、てっきり応戦しているものだと思ったけれど)
(逃げてきたのね)
逃走にスペルカードを使うとは、どれだけ余裕がなかったのだろう。
ともあれ、時間を止めっぱなしにしておくわけにもいかない。
スペルカードの余波も考慮し、とりあえず廊下の右端まで移動する。
そこで時を再び時を動かす。
「わわわわわっ!」
魔理沙の声が再び廊下に響き始める。
と、そこから大きく左に逸れて、廊下の壁に激突した。
「へ?」
咲夜は唖然とする。
魔理沙は勢いのまま廊下を転がり、ぱたりと動かなくなった。
そう思ったら、廊下の先から魔理沙目掛けて弾幕が走る。
そして今しがたボロボロになった魔理沙に追い討ちをかけるように命中する。
(今のはパチュリー様のロイヤルフレア……、そういえばさっき撃ってたわね)
魔理沙への残酷な仕打ちを目の当たりにしつつ、今の状況を確認する咲夜。
(でも、なんであの時、壁に向かっていったのかしら……)
そう疑問に思った瞬間、ふと思い出す。
時を止める直前、魔理沙の目の前には自分がいたことに。
(ということは、魔理沙は私を避けようとして……)
時を止める前から起動を変えていたのだろう。そして時が動いてからは、反応が間に合わなかった。
そう考えると、咲夜は少し魔理沙に悪い気がした。あのまま突っ切れば、咲夜をはねるくらい簡単だっただろう。
しかし魔理沙はそれをしなかった。壁にぶつかることも厭わず、あの一瞬で「避ける」という選択をしたのだ。
「咲夜ッ」
考えれば考えるほどに罪悪感が芽生えてゆく咲夜は、その声で現実に引き戻された。
「ここを…ッ、魔理沙が…ッ、通ったと思うけど……ッ、いったいどこへ……って、コレ…、どうしたの……」
パチュリーは走ってきたのか、息が切れている。しかし、図書館から50メートルと離れていないこの場所に来るのに、走ってくるにしては遅すぎる。まさか歩いてきて息切らしてるのか、それならばたいした体力である。魔女といえど明日には死ぬんじゃないだろうか。
そんなパチュリーが「コレ」といっているのは、もちろん魔理沙である。
廊下を転がされ満身創痍の体にこれでもかというほどの弾幕がぶち込まれ、もはや服はズタボロ、本人は完全に気絶している。
「パチュリー様」
「何かしら、咲夜」
「あなたは人としてどうかと思います」
「でしょうね、魔法使いだもの」
パチュリーの追い討ち弾幕を責めたつもりだったが、気に留める風でもなく受け流すパチュリー。
事情を話すと、パチュリーも悪いと感じたのか、目を細めて魔理沙を見る。
が――
「そもそも魔理沙が本を持ち出すのが悪いんじゃない。同情の余地はないわ」
「……まあ、それもそうですわね」
結局、元凶は魔理沙であり、これは自業自得である。
「それじゃあ、悪いけど魔理沙、お願いするわね」
「どういうことですか?」
「だって、そこに転がしとくわけにも行かないでしょう? 適当な部屋で休ませてあげないと」
「図書館に運ぶというのは?」
「魔理沙との弾幕勝負で、今メチャクチャなのよ。小悪魔に片付けてもらってるけど、どれだけかかるか。時間があったら咲夜も手伝って頂戴」
「かしこまりました」
パチュリーはそういって、しんどそうに図書館へと帰っていく。
残されたのは、ボロボロの魔理沙と、その扱いに困る咲夜だった。
(適当な部屋って言ったって、いったいどこに……)
蒐集家の魔理沙のことだ。適当な部屋に寝かしといては、目が覚めたときに何を盗られるかわかったもんじゃない。
そうすると、より確実に安全といえるのは……。
「ああ、全く、しょうがないわね……」
そして咲夜が選んだのが自室だった。
ここなら盗られるようなものもない。
趣味で珍品収集を行っている咲夜だが、それらは全て能力によって創り出した空間に保管してある。
「本当に悪いことしたわね」
自業自得だろうとなんだろうと、魔理沙は自分を避けなければこんなことにはならなかった。
そのことに謝罪と感謝を込めて、せめて目が覚めるまでは看ていてあげようかと咲夜は思う。
(ふむ……)
一通り体を見させてもらったが、目立った外傷もなく、弾幕による火傷もない。
なんだかんだ言ってしっかり加減をしているところは、パチュリーらしいと思った。
失神の原因はたぶん脳震盪だろう。詳しいことは知らないが、特に心配する必要はないだろう。
まあ、仮になにか問題があっても、竹林に住む宇宙人のところまで連れて行けばだいたいの問題は解決するのが。
(それにしても――)
――細い体をしていた。
自分とは比べるまでもなく、それこそパチュリーといい勝負ではないか。
魔法を使えるというだけで、それ以外はそこらの娘をなんら変わらない。
それなのに博霊の巫女と片を並べ、異変解決に乗り出しているのだ。実際に異変解決を経験した咲夜だからこそわかるが、興味や好奇心だけじゃ到底そんなことできはしない。
博霊霊夢の隣に立つ。それだけのことに、いったいどれだけの努力をしてきたのだろう。
咲夜は、魔理沙の眠るベッドに座り、その髪を撫でる。
薄く輝く金色の髪は軽くウェーブがかかっているが、特に手入れされている気配はない。
(……異変解決なんかせずに、もっと女の子らしくすればいいのに)
そうすれば、こんな片意地を張らずとも、もっと楽に楽しく生きていけただろうに。
だが、それを選ばないことこそ、霧雨魔理沙という人間なのだろう。
より楽しそうなほうへと向かってゆく生き方。
なるほど、それは楽しそうだ。
そして咲夜は、そんな魔理沙を割りと気に入っている。
「……うん?」
ちょうどその時、魔理沙が目を覚ました。
「あら、起きた? よかったわ、目を覚ましてくれて」
咲夜は撫でていた手を止めた。
「えー…っと、ここは?」
「私の部屋よ」
「……うん? なんで?」
「どこまで覚えてるかしら?」
「…あ~、たしかパチュリーのとこに本借りに行って……、それから……、それから?」
「どうしたの?」
「……覚えてない」
おそらくそれは脳震盪による一時的な記憶の混乱だろう。頭を打って前後の記憶が曖昧になるというのはよくあること……らしい。たしかそんなふうに聞いた覚えがある。
魔理沙は体を起こそうとするが、うまく行かずバランスを崩す。
咲夜はそれをとっさに支え、体勢を直してやる。
「悪いな」
「気にしないで、こんなこと。私はあなたに感謝してるんだから」
「?」
困惑する魔理沙に、咲夜は掻い摘んで事情を説明し始めた。
「……で、あなたは私を避けようをして、壁に衝突したの」
「……服が焼け爛れてるのも、そのせいなのか?」
「それはパチュリー様の弾幕が命中したのよ。気絶したあなたに向かってね」
「……私が言うのもなんだが、パチュリーは人としてどうかと思う」
「でしょうね、魔法使いだもの」
聞いたような台詞を口にして、咲夜はふと思う。
「そういえば、あなたも魔法使いなのね」
「人間だけどな」
「魔法使いにはならないの?」
「別に興味ないな。面白おかしく生きていくための魔法だし」
「あくまで人のままなのね」
「そ。魔法のための人生じゃない、人生のための魔法だよ」
もっとも、生きてるうちに考え変わるかもわかんないけどな。
そんなことを付け足して、魔理沙は薄く笑う。
まだ頭がはっきりしないのか、いつもの男勝りな感じはなく、そのかわりに年頃の少女らしい雰囲気があった。
「なら、若いのは今のうちなのね」
「ん? まあ、そうなるのかな」
「ねぇ魔理沙」
「うん?」
「もっと女の子っぽくしなさいよ」
「へ!?」
魔理沙は大きく目を見開く。不意打ち過ぎたのか、声が裏返っていた。
咲夜はかまわず続ける。
「寝てる間に観察させてもらったけど、可愛いのにもったいないわよ。服装に気を使って髪も手入れすれば、きっともっと可愛くなるわ」
「え!? かっ、かわいいって、何言ってんだ咲夜!?」
そのままゴニョゴニョ言いながら真っ赤になって顔を俯かせる魔理沙。
「魔法は年を取ってからでもできるでしょう? お洒落は若いうちしかできないのよ。人間のまま生きるんだったら、今できることは今のうちでしょ?」
そう言って魔理沙に笑顔を向ける。別に嫌がらせというわけではない、純粋に可愛いと思ってのことだった。
そんな咲夜の心など知らぬ魔理沙は、どうにか逃げ道を探そうとする。
「……いや、いやいやいや、ないないない。私にお洒落とか似合わないぜ?」
「やってみなきゃわかんないわよ。それに、似合う似合わないは服装次第よ」
「私が可愛くしてみろ。違和感しか残らないぜ?」
「それを言うなら、魔理沙のその格好だって最初は違和感の塊よ。黒白にとんがり帽子って、いつの時代よ」
「え、嘘? ホントに?」
「……まさか本気で似合ってると思ってたの?」
「……割と」
「まあ、初対面の違和感なんて、幻想郷じゃ、ありふれたものだけどね」
「……でも、そういう咲夜だって、いつもメイド服だろ?」
「あら、別の服も持ってるわよ? なんなら見せてあげましょうか?」
「え? 持ってんの? なら見せてくれよ」
「魔理沙が可愛くしてくれたら見せてあげるわよ?」
「くっ……、そうきたか……。いやでもさ、なにもいきなり可愛くなんて」
「この機会逃がすと、もうそんなこと考えるチャンスないかもよ?」
「え~~……」
咲夜の押しに逃げ場がどんどんと無くなってゆく。これはいよいよ追い詰められてきた。
しかし魔理沙もなんだかんだ言って、結局はお洒落する方向になってきている。やはり女の子なのか、興味だけはあるようだ。
「でも、私オシャレとかわからないし……」
その言葉を待っていたと言わんばかりに咲夜が目を光らせる。
「なら私が教えてあげるわ」
「はあ!?」
言うが早いか、咲夜は手に多種多様な洋服を用意していた。
いつの間に出したのかわからないが、どうせ能力なのだろう。
「なっ、何でそんな服に持ってんだよ!?」
「紅魔館の物置にたくさんあるのよ。お嬢様は長く生きていらっしゃるから」
「でも私、着れないかもだぜ!?」
「ちゃんとあなたのサイズに合わせて持ってきたわよ」
「なんで知ってるんだよ!?」
「あなたの体を調べたときに」
「……お前が怖くなってきた」
本気でドン引きしている魔理沙をよそに、咲夜はどれがいいかしらと服を選んでいる。
「ふむ、まずはメイド服から着てみましょうか」
「やっぱりそれか」
瀟洒な笑顔で魔理沙サイズのメイド服を取り出す咲夜。
「絶対着ないぞ」
「勝手にしなさい。その代わり、帰りはそのぼろ雑巾を着て帰ってもらうわ」
「!!」
魔理沙が今その身に纏っているのは、先刻パチュリーの弾幕によって焼け焦げた洋服、ぼろ雑巾といわれても仕方がない。ところどころ破れており、こんなものを着て帰れば変質者といわれても否定できない。人に見られれば騒動になるだろうし、山の天狗にでも見つかれば、ちょっとした異変に発展してもおかしくない。
「……お前ホンットやり方が汚いな」
「いいからどうするの? 着るの着ないのどっち?」
そう聞かれれば答えはひとつに決まっている。
魔理沙は渋々とぼろ雑巾もとい服を脱ぎ始めた。
(……や、やばい。これはやばい)
しばらくして、部屋にはメイド服を着た魔理沙が立っていた。
咲夜のメイド服よりも少し幼い雰囲気のデザイン。魔理沙は後ろ髪を大きな三つ編みにしている。
魔理沙は恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、スカートの端を握り締めて俯いている。
そんな魔理沙を見て、咲夜も真っ赤な顔を手で押さえ震えていた。
「なっ、なんだよ! 笑うなよ!」
「いやっ、ちがっ……」
(可愛すぎるっ!!)
咲夜はもういろいろと抑えられなくなりそうだった。
いつもは男勝りで勝気な魔理沙が、メイド服を着て、さらには恥ずかしがっている。
その姿が妙にいじらしくいて、なんかもう抱きしめたくなる。
自分の中の欲望を全部封じ込め、瀟洒な笑顔で魔理沙に告げる。
「可愛いわ、魔理沙」
「……本当に?」
それを聞いた魔理沙は不安そうな顔をこちらに向け、呟くように聞いた。
(~~~~~っ!)
魔理沙のそんなしぐさに耐え切れなくなり、とうとう魔理沙を抱きしめる。
「ちょっ、さくや!?」
「そんな不安そうな顔しないで。魔理沙はすごく可愛いわよ。似合ってるわ」
そう言って魔理沙の髪を撫でてやる。
「まあ、メイド服が似合うってのもどうかと思うけど。魔理沙、髪の手入れもしっかりしなさいよ。今は若いから大丈夫かもしれないけど、これから痛んでくるわ。なんだったら、紅魔館に余ってるシャンプーとかコンディショナー、少しくらいならあげてもいいわよ」
「……本当に?」
「ええ、まあ、あんまり高価なものはあげられないでしょうけど――」
「本当に、可愛いか?」
「え?」
目線を下に向け、魔理沙を見ると、あいかわらず不安そうな顔をしている。
咲夜は軽く溜息をつく。
「大丈夫、本当に可愛いわ。だから、いい加減笑いなさいよ」
こんな魔理沙も悪くはないが、やはり魔理沙は元気に笑ってくれないと。
今日は魔理沙のいろんな一面を見ることができたが、いつもの魔理沙が一番だ。
いつもの、エネルギーの塊のような、子供のような輝きを持った魔理沙が、見てて一番気持ちがいい。
「……おうっ! 可愛いだろ!?」
咲夜の言葉に安心したのか、いつもの純粋な笑顔で答える魔理沙。
それを見て、咲夜も笑う。
瀟洒な笑顔などではない。こちらも年相応な、純粋な笑顔を。
と、そのとき――
――ガチャリ
「咲夜、魔理沙の調子はどう? 場合によっては永遠亭に……」
魔理沙を心配して部屋に入ってきたパチュリーが、咲夜と魔理沙を見て完全に停止した。
「……」
「……」
「……」
咲夜が魔理沙を抱きしめている。
そんな光景を見たパチュリーは、静かに懐からスペルカードを取り出した。
「ちょ、パチュリー様!?」
「安心して魔理沙、あなたは私が守るわ」
パチュリーの目は据わり、今や殺しも厭わない雰囲気だ。
そんなパチュリーに咲夜は距離をとるように一歩一歩下がる。
「咲夜、あなた魔理沙に手を出して、どうなるかわかっているのでしょうね」
「落ち着いてください、パチュリー様! 決してそういう感情は――」
そうは言うものの、全くなかったと言い切れないところが痛い。
「えっと……、魔理沙! あなたからも何か言って!」
しかし魔理沙は、パチュリーにメイド服姿を見られたからか、顔を真っ赤にして固まっている。混乱しているのか、目が定まっていない。
(ああもう、可愛いな魔理沙!)
咲夜はそんなことを考えるが、状況が状況である。
「弁解があるのなら、ある程度は聞いてあげるわ」
「えー…と、これはですね……」
魔理沙が役に立たない今、何とかこの窮地を乗り切ろうと言葉を探す。
「そう! これはアレです! 妹的な、姉妹愛のようなものでして――」
「あら、そうだったの。魔理沙は妹のようなものだと」
(おや?)
予想外に引いてくれたパチュリーに希望を持った咲夜だったが。
「さすがはロリコンね」
(はあ!?)
「いえ、この場合はシスコンなのかしら? まあ、幼い女の子が大好きな咲夜には関係ないものね」
「……あの、パチュリー様?」
「さて、このことは誰に報告するべきかしら? やっぱりレミィ? ああ、でもあなたは美鈴とイチャついてるようだし、ここは美鈴に幻滅してもらうのが――」
――カチャリ
と、パチュリーの後ろで扉の閉まる音がする。
振り返ると、能力を使って回り込んだ咲夜がナイフを片手に構えていた。
その目は鋭く冷たく光り、「悪魔の犬」と呼ぶにふさわしい輝きを放っている。
「申し訳ありません。忘れていましたわ。パチュリー様は魔理沙が大好きなんでしたっけ」
「無駄よ。魔理沙は今、なにを言っても頭に残らない状態みたいだし、私も今更そんなこと言われても気にならないわ」
「いえいえ、知ってるんですよ? パチュリー様が毎夜毎夜、小悪魔となにをしているのか」
「な!?」
この言葉でパチュリーの顔が一気に赤くなった。
「あ、あれは、小悪魔がジャレついてくるから、しょうがなく……」
「あら、しょうがなくあんなことするんですか。お安いことですわ」
「小悪魔の主人としてある程度は付き合ってあげなくちゃいけないのよ!」
「主人? ああ、そういうプレイなんですか」
――プチリ
「……魔理沙と抱き合っていただけなら、痛い目見るだけで済んだのに。いい度胸ね、咲夜」
「あら、こちらの台詞ですわ。わざわざ痛い目見るということは、ご主人様は小悪魔のほうなのですか?」
挑発に挑発を繰り返す咲夜とパチュリー。
その傍らでは、あいかわらず固まったままの魔理沙。
「だいたい、あなたはわかってないわ、咲夜」
真剣な表情で咲夜に言葉を投げかけるパチュリー。
「部屋に入ったときから、思っていたのよ」
咲夜もその態度を汲み取り、その言葉を受け取る。
「何のことでしょう?」
「魔理沙のことよ」
「?」
いまいち理解が追いつかない咲夜に、パチュリーは言う。
「魔理沙の魅力は、そのかっこ良さよ!」
その言葉を聞いて、しばらく咲夜は沈黙する。
そして、口を開いた。
「なるほど、わかりました」
「そう、わかってくれたのならいいわ。命まではとらないで――」
「私たちはもともと相容れない者同士ということがですわ!」
そう言って大量のナイフを取り出す咲夜。
「そう、残念だわ!」
パチュリーも構えて、お互いスペルを発動させる。
「月符『サイレントセレナ』!」
「幻符『殺人ドール』!」
こうして、互いのジャスティスを賭けた決闘が幕を開けた。
しかし、その渦中の人、霧雨魔理沙は、すでにそこにはいない。
羞恥から立ち直った魔理沙は、その決闘の意味を全く理解しておらず、面倒だということもありさっさと紅魔館から離脱していたりするのだった。
完全で瀟洒な従者、十六夜咲夜は溜息をついた。
ここは咲夜の寝室。基本的にプライベートなどない咲夜だが、寝室くらいはプライベートが許される。
とはいっても、何かあるわけでもなくただベッドやクローゼットが置いてあるだけなのだが、今は少し雰囲気が違う。
何故なら――
――ベッドの上に、霧雨魔理沙が眠っている。
「はあ……」
溜息をもうひとつ。
話は1時間前に遡る。
「よう咲夜、遊びに来たぜ!」
「あら、盗みに来たんじゃないの?」
「盗んじゃいない、ただ死ぬまで――」
「借りるだけでしょ? わかったから、好きにしなさい」
「お? わかってきたじゃないか。流石はメイド長、話が早いぜ」
いつも通り本を持ち出そうと魔理沙がやって来た。
はじめは全力で阻止しようとしていた咲夜も、今となっては面倒なだけである。
紅魔館内でも図書館はパチュリーと小悪魔の管理化にあると言える。
そのため、無理に自分が働く必要がないと最近では素通りさせている。
レミリアにいたっては、パチュリーが外に出るようになるかもしれないと、むしろ推奨している伏しがある。
しかし、今日はちょっと違った。
「日符『ロイヤルフレア』!」
「彗星『ブレイジングスター』!」
「あら、今日は本気ね、パチュリー様」
いつもなら怒鳴る、泣きつく、嫌味を言うくらいしかしないパチュリーが、弾幕を使って阻止に乗り出したらしい。
魔理沙も対抗しているらしく、この分だと図書館はひどい有様だろうと嘆息していた。
が、そこに魔理沙が突っ込んできた。
「うわわわわわっ!」
「えっ!」
次の瞬間、突っ込んできた魔理沙を避けるべく、咲夜は時を止めた。
(魔理沙のことだから、てっきり応戦しているものだと思ったけれど)
(逃げてきたのね)
逃走にスペルカードを使うとは、どれだけ余裕がなかったのだろう。
ともあれ、時間を止めっぱなしにしておくわけにもいかない。
スペルカードの余波も考慮し、とりあえず廊下の右端まで移動する。
そこで時を再び時を動かす。
「わわわわわっ!」
魔理沙の声が再び廊下に響き始める。
と、そこから大きく左に逸れて、廊下の壁に激突した。
「へ?」
咲夜は唖然とする。
魔理沙は勢いのまま廊下を転がり、ぱたりと動かなくなった。
そう思ったら、廊下の先から魔理沙目掛けて弾幕が走る。
そして今しがたボロボロになった魔理沙に追い討ちをかけるように命中する。
(今のはパチュリー様のロイヤルフレア……、そういえばさっき撃ってたわね)
魔理沙への残酷な仕打ちを目の当たりにしつつ、今の状況を確認する咲夜。
(でも、なんであの時、壁に向かっていったのかしら……)
そう疑問に思った瞬間、ふと思い出す。
時を止める直前、魔理沙の目の前には自分がいたことに。
(ということは、魔理沙は私を避けようとして……)
時を止める前から起動を変えていたのだろう。そして時が動いてからは、反応が間に合わなかった。
そう考えると、咲夜は少し魔理沙に悪い気がした。あのまま突っ切れば、咲夜をはねるくらい簡単だっただろう。
しかし魔理沙はそれをしなかった。壁にぶつかることも厭わず、あの一瞬で「避ける」という選択をしたのだ。
「咲夜ッ」
考えれば考えるほどに罪悪感が芽生えてゆく咲夜は、その声で現実に引き戻された。
「ここを…ッ、魔理沙が…ッ、通ったと思うけど……ッ、いったいどこへ……って、コレ…、どうしたの……」
パチュリーは走ってきたのか、息が切れている。しかし、図書館から50メートルと離れていないこの場所に来るのに、走ってくるにしては遅すぎる。まさか歩いてきて息切らしてるのか、それならばたいした体力である。魔女といえど明日には死ぬんじゃないだろうか。
そんなパチュリーが「コレ」といっているのは、もちろん魔理沙である。
廊下を転がされ満身創痍の体にこれでもかというほどの弾幕がぶち込まれ、もはや服はズタボロ、本人は完全に気絶している。
「パチュリー様」
「何かしら、咲夜」
「あなたは人としてどうかと思います」
「でしょうね、魔法使いだもの」
パチュリーの追い討ち弾幕を責めたつもりだったが、気に留める風でもなく受け流すパチュリー。
事情を話すと、パチュリーも悪いと感じたのか、目を細めて魔理沙を見る。
が――
「そもそも魔理沙が本を持ち出すのが悪いんじゃない。同情の余地はないわ」
「……まあ、それもそうですわね」
結局、元凶は魔理沙であり、これは自業自得である。
「それじゃあ、悪いけど魔理沙、お願いするわね」
「どういうことですか?」
「だって、そこに転がしとくわけにも行かないでしょう? 適当な部屋で休ませてあげないと」
「図書館に運ぶというのは?」
「魔理沙との弾幕勝負で、今メチャクチャなのよ。小悪魔に片付けてもらってるけど、どれだけかかるか。時間があったら咲夜も手伝って頂戴」
「かしこまりました」
パチュリーはそういって、しんどそうに図書館へと帰っていく。
残されたのは、ボロボロの魔理沙と、その扱いに困る咲夜だった。
(適当な部屋って言ったって、いったいどこに……)
蒐集家の魔理沙のことだ。適当な部屋に寝かしといては、目が覚めたときに何を盗られるかわかったもんじゃない。
そうすると、より確実に安全といえるのは……。
「ああ、全く、しょうがないわね……」
そして咲夜が選んだのが自室だった。
ここなら盗られるようなものもない。
趣味で珍品収集を行っている咲夜だが、それらは全て能力によって創り出した空間に保管してある。
「本当に悪いことしたわね」
自業自得だろうとなんだろうと、魔理沙は自分を避けなければこんなことにはならなかった。
そのことに謝罪と感謝を込めて、せめて目が覚めるまでは看ていてあげようかと咲夜は思う。
(ふむ……)
一通り体を見させてもらったが、目立った外傷もなく、弾幕による火傷もない。
なんだかんだ言ってしっかり加減をしているところは、パチュリーらしいと思った。
失神の原因はたぶん脳震盪だろう。詳しいことは知らないが、特に心配する必要はないだろう。
まあ、仮になにか問題があっても、竹林に住む宇宙人のところまで連れて行けばだいたいの問題は解決するのが。
(それにしても――)
――細い体をしていた。
自分とは比べるまでもなく、それこそパチュリーといい勝負ではないか。
魔法を使えるというだけで、それ以外はそこらの娘をなんら変わらない。
それなのに博霊の巫女と片を並べ、異変解決に乗り出しているのだ。実際に異変解決を経験した咲夜だからこそわかるが、興味や好奇心だけじゃ到底そんなことできはしない。
博霊霊夢の隣に立つ。それだけのことに、いったいどれだけの努力をしてきたのだろう。
咲夜は、魔理沙の眠るベッドに座り、その髪を撫でる。
薄く輝く金色の髪は軽くウェーブがかかっているが、特に手入れされている気配はない。
(……異変解決なんかせずに、もっと女の子らしくすればいいのに)
そうすれば、こんな片意地を張らずとも、もっと楽に楽しく生きていけただろうに。
だが、それを選ばないことこそ、霧雨魔理沙という人間なのだろう。
より楽しそうなほうへと向かってゆく生き方。
なるほど、それは楽しそうだ。
そして咲夜は、そんな魔理沙を割りと気に入っている。
「……うん?」
ちょうどその時、魔理沙が目を覚ました。
「あら、起きた? よかったわ、目を覚ましてくれて」
咲夜は撫でていた手を止めた。
「えー…っと、ここは?」
「私の部屋よ」
「……うん? なんで?」
「どこまで覚えてるかしら?」
「…あ~、たしかパチュリーのとこに本借りに行って……、それから……、それから?」
「どうしたの?」
「……覚えてない」
おそらくそれは脳震盪による一時的な記憶の混乱だろう。頭を打って前後の記憶が曖昧になるというのはよくあること……らしい。たしかそんなふうに聞いた覚えがある。
魔理沙は体を起こそうとするが、うまく行かずバランスを崩す。
咲夜はそれをとっさに支え、体勢を直してやる。
「悪いな」
「気にしないで、こんなこと。私はあなたに感謝してるんだから」
「?」
困惑する魔理沙に、咲夜は掻い摘んで事情を説明し始めた。
「……で、あなたは私を避けようをして、壁に衝突したの」
「……服が焼け爛れてるのも、そのせいなのか?」
「それはパチュリー様の弾幕が命中したのよ。気絶したあなたに向かってね」
「……私が言うのもなんだが、パチュリーは人としてどうかと思う」
「でしょうね、魔法使いだもの」
聞いたような台詞を口にして、咲夜はふと思う。
「そういえば、あなたも魔法使いなのね」
「人間だけどな」
「魔法使いにはならないの?」
「別に興味ないな。面白おかしく生きていくための魔法だし」
「あくまで人のままなのね」
「そ。魔法のための人生じゃない、人生のための魔法だよ」
もっとも、生きてるうちに考え変わるかもわかんないけどな。
そんなことを付け足して、魔理沙は薄く笑う。
まだ頭がはっきりしないのか、いつもの男勝りな感じはなく、そのかわりに年頃の少女らしい雰囲気があった。
「なら、若いのは今のうちなのね」
「ん? まあ、そうなるのかな」
「ねぇ魔理沙」
「うん?」
「もっと女の子っぽくしなさいよ」
「へ!?」
魔理沙は大きく目を見開く。不意打ち過ぎたのか、声が裏返っていた。
咲夜はかまわず続ける。
「寝てる間に観察させてもらったけど、可愛いのにもったいないわよ。服装に気を使って髪も手入れすれば、きっともっと可愛くなるわ」
「え!? かっ、かわいいって、何言ってんだ咲夜!?」
そのままゴニョゴニョ言いながら真っ赤になって顔を俯かせる魔理沙。
「魔法は年を取ってからでもできるでしょう? お洒落は若いうちしかできないのよ。人間のまま生きるんだったら、今できることは今のうちでしょ?」
そう言って魔理沙に笑顔を向ける。別に嫌がらせというわけではない、純粋に可愛いと思ってのことだった。
そんな咲夜の心など知らぬ魔理沙は、どうにか逃げ道を探そうとする。
「……いや、いやいやいや、ないないない。私にお洒落とか似合わないぜ?」
「やってみなきゃわかんないわよ。それに、似合う似合わないは服装次第よ」
「私が可愛くしてみろ。違和感しか残らないぜ?」
「それを言うなら、魔理沙のその格好だって最初は違和感の塊よ。黒白にとんがり帽子って、いつの時代よ」
「え、嘘? ホントに?」
「……まさか本気で似合ってると思ってたの?」
「……割と」
「まあ、初対面の違和感なんて、幻想郷じゃ、ありふれたものだけどね」
「……でも、そういう咲夜だって、いつもメイド服だろ?」
「あら、別の服も持ってるわよ? なんなら見せてあげましょうか?」
「え? 持ってんの? なら見せてくれよ」
「魔理沙が可愛くしてくれたら見せてあげるわよ?」
「くっ……、そうきたか……。いやでもさ、なにもいきなり可愛くなんて」
「この機会逃がすと、もうそんなこと考えるチャンスないかもよ?」
「え~~……」
咲夜の押しに逃げ場がどんどんと無くなってゆく。これはいよいよ追い詰められてきた。
しかし魔理沙もなんだかんだ言って、結局はお洒落する方向になってきている。やはり女の子なのか、興味だけはあるようだ。
「でも、私オシャレとかわからないし……」
その言葉を待っていたと言わんばかりに咲夜が目を光らせる。
「なら私が教えてあげるわ」
「はあ!?」
言うが早いか、咲夜は手に多種多様な洋服を用意していた。
いつの間に出したのかわからないが、どうせ能力なのだろう。
「なっ、何でそんな服に持ってんだよ!?」
「紅魔館の物置にたくさんあるのよ。お嬢様は長く生きていらっしゃるから」
「でも私、着れないかもだぜ!?」
「ちゃんとあなたのサイズに合わせて持ってきたわよ」
「なんで知ってるんだよ!?」
「あなたの体を調べたときに」
「……お前が怖くなってきた」
本気でドン引きしている魔理沙をよそに、咲夜はどれがいいかしらと服を選んでいる。
「ふむ、まずはメイド服から着てみましょうか」
「やっぱりそれか」
瀟洒な笑顔で魔理沙サイズのメイド服を取り出す咲夜。
「絶対着ないぞ」
「勝手にしなさい。その代わり、帰りはそのぼろ雑巾を着て帰ってもらうわ」
「!!」
魔理沙が今その身に纏っているのは、先刻パチュリーの弾幕によって焼け焦げた洋服、ぼろ雑巾といわれても仕方がない。ところどころ破れており、こんなものを着て帰れば変質者といわれても否定できない。人に見られれば騒動になるだろうし、山の天狗にでも見つかれば、ちょっとした異変に発展してもおかしくない。
「……お前ホンットやり方が汚いな」
「いいからどうするの? 着るの着ないのどっち?」
そう聞かれれば答えはひとつに決まっている。
魔理沙は渋々とぼろ雑巾もとい服を脱ぎ始めた。
(……や、やばい。これはやばい)
しばらくして、部屋にはメイド服を着た魔理沙が立っていた。
咲夜のメイド服よりも少し幼い雰囲気のデザイン。魔理沙は後ろ髪を大きな三つ編みにしている。
魔理沙は恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、スカートの端を握り締めて俯いている。
そんな魔理沙を見て、咲夜も真っ赤な顔を手で押さえ震えていた。
「なっ、なんだよ! 笑うなよ!」
「いやっ、ちがっ……」
(可愛すぎるっ!!)
咲夜はもういろいろと抑えられなくなりそうだった。
いつもは男勝りで勝気な魔理沙が、メイド服を着て、さらには恥ずかしがっている。
その姿が妙にいじらしくいて、なんかもう抱きしめたくなる。
自分の中の欲望を全部封じ込め、瀟洒な笑顔で魔理沙に告げる。
「可愛いわ、魔理沙」
「……本当に?」
それを聞いた魔理沙は不安そうな顔をこちらに向け、呟くように聞いた。
(~~~~~っ!)
魔理沙のそんなしぐさに耐え切れなくなり、とうとう魔理沙を抱きしめる。
「ちょっ、さくや!?」
「そんな不安そうな顔しないで。魔理沙はすごく可愛いわよ。似合ってるわ」
そう言って魔理沙の髪を撫でてやる。
「まあ、メイド服が似合うってのもどうかと思うけど。魔理沙、髪の手入れもしっかりしなさいよ。今は若いから大丈夫かもしれないけど、これから痛んでくるわ。なんだったら、紅魔館に余ってるシャンプーとかコンディショナー、少しくらいならあげてもいいわよ」
「……本当に?」
「ええ、まあ、あんまり高価なものはあげられないでしょうけど――」
「本当に、可愛いか?」
「え?」
目線を下に向け、魔理沙を見ると、あいかわらず不安そうな顔をしている。
咲夜は軽く溜息をつく。
「大丈夫、本当に可愛いわ。だから、いい加減笑いなさいよ」
こんな魔理沙も悪くはないが、やはり魔理沙は元気に笑ってくれないと。
今日は魔理沙のいろんな一面を見ることができたが、いつもの魔理沙が一番だ。
いつもの、エネルギーの塊のような、子供のような輝きを持った魔理沙が、見てて一番気持ちがいい。
「……おうっ! 可愛いだろ!?」
咲夜の言葉に安心したのか、いつもの純粋な笑顔で答える魔理沙。
それを見て、咲夜も笑う。
瀟洒な笑顔などではない。こちらも年相応な、純粋な笑顔を。
と、そのとき――
――ガチャリ
「咲夜、魔理沙の調子はどう? 場合によっては永遠亭に……」
魔理沙を心配して部屋に入ってきたパチュリーが、咲夜と魔理沙を見て完全に停止した。
「……」
「……」
「……」
咲夜が魔理沙を抱きしめている。
そんな光景を見たパチュリーは、静かに懐からスペルカードを取り出した。
「ちょ、パチュリー様!?」
「安心して魔理沙、あなたは私が守るわ」
パチュリーの目は据わり、今や殺しも厭わない雰囲気だ。
そんなパチュリーに咲夜は距離をとるように一歩一歩下がる。
「咲夜、あなた魔理沙に手を出して、どうなるかわかっているのでしょうね」
「落ち着いてください、パチュリー様! 決してそういう感情は――」
そうは言うものの、全くなかったと言い切れないところが痛い。
「えっと……、魔理沙! あなたからも何か言って!」
しかし魔理沙は、パチュリーにメイド服姿を見られたからか、顔を真っ赤にして固まっている。混乱しているのか、目が定まっていない。
(ああもう、可愛いな魔理沙!)
咲夜はそんなことを考えるが、状況が状況である。
「弁解があるのなら、ある程度は聞いてあげるわ」
「えー…と、これはですね……」
魔理沙が役に立たない今、何とかこの窮地を乗り切ろうと言葉を探す。
「そう! これはアレです! 妹的な、姉妹愛のようなものでして――」
「あら、そうだったの。魔理沙は妹のようなものだと」
(おや?)
予想外に引いてくれたパチュリーに希望を持った咲夜だったが。
「さすがはロリコンね」
(はあ!?)
「いえ、この場合はシスコンなのかしら? まあ、幼い女の子が大好きな咲夜には関係ないものね」
「……あの、パチュリー様?」
「さて、このことは誰に報告するべきかしら? やっぱりレミィ? ああ、でもあなたは美鈴とイチャついてるようだし、ここは美鈴に幻滅してもらうのが――」
――カチャリ
と、パチュリーの後ろで扉の閉まる音がする。
振り返ると、能力を使って回り込んだ咲夜がナイフを片手に構えていた。
その目は鋭く冷たく光り、「悪魔の犬」と呼ぶにふさわしい輝きを放っている。
「申し訳ありません。忘れていましたわ。パチュリー様は魔理沙が大好きなんでしたっけ」
「無駄よ。魔理沙は今、なにを言っても頭に残らない状態みたいだし、私も今更そんなこと言われても気にならないわ」
「いえいえ、知ってるんですよ? パチュリー様が毎夜毎夜、小悪魔となにをしているのか」
「な!?」
この言葉でパチュリーの顔が一気に赤くなった。
「あ、あれは、小悪魔がジャレついてくるから、しょうがなく……」
「あら、しょうがなくあんなことするんですか。お安いことですわ」
「小悪魔の主人としてある程度は付き合ってあげなくちゃいけないのよ!」
「主人? ああ、そういうプレイなんですか」
――プチリ
「……魔理沙と抱き合っていただけなら、痛い目見るだけで済んだのに。いい度胸ね、咲夜」
「あら、こちらの台詞ですわ。わざわざ痛い目見るということは、ご主人様は小悪魔のほうなのですか?」
挑発に挑発を繰り返す咲夜とパチュリー。
その傍らでは、あいかわらず固まったままの魔理沙。
「だいたい、あなたはわかってないわ、咲夜」
真剣な表情で咲夜に言葉を投げかけるパチュリー。
「部屋に入ったときから、思っていたのよ」
咲夜もその態度を汲み取り、その言葉を受け取る。
「何のことでしょう?」
「魔理沙のことよ」
「?」
いまいち理解が追いつかない咲夜に、パチュリーは言う。
「魔理沙の魅力は、そのかっこ良さよ!」
その言葉を聞いて、しばらく咲夜は沈黙する。
そして、口を開いた。
「なるほど、わかりました」
「そう、わかってくれたのならいいわ。命まではとらないで――」
「私たちはもともと相容れない者同士ということがですわ!」
そう言って大量のナイフを取り出す咲夜。
「そう、残念だわ!」
パチュリーも構えて、お互いスペルを発動させる。
「月符『サイレントセレナ』!」
「幻符『殺人ドール』!」
こうして、互いのジャスティスを賭けた決闘が幕を開けた。
しかし、その渦中の人、霧雨魔理沙は、すでにそこにはいない。
羞恥から立ち直った魔理沙は、その決闘の意味を全く理解しておらず、面倒だということもありさっさと紅魔館から離脱していたりするのだった。
面白かったのに、なんか詰め込みすぎな気がしました。
血を見るな・・・・・・
パチュリー、アリス、にとり、フランドールなら強気攻め
咲夜、霊夢なら誘い受けだ
というか、魔理沙はもう紅魔館に籍を置けばいいさ。みんな幸せになれるはずだ。
和服(巫女服を含む)魔理沙推進派として咲夜とパチュリーに勝負を挑まざるを得ないな
>推奨している伏しがある。
もしかして: 節
>起動を変えていた
もしかして: 軌道
>片を並べ
もしかして: 肩
似合う服はまだまだ山のようにあるはず!
さぁ、もっと魔理沙を着せ替え人形にしておしゃれの限りを尽くすのだ!
ハリー!ハリー!ハリー!
そう、藍様や勇義姉さんとか。
そして服装は白ワンピに麦藁帽子(ピンクのリボン付き)だと思う。
>魔法のための人生じゃない、人生のための魔法だよ
いやん、このセリフ素敵v
アリス以外が相手の魔理沙の絡みは基本苦手なんですが、今回は俺の負けですw
この作品はなんか面白かったんで最後まで読んじゃいましたねww
男勝りの女の子がいきなりしおらしくなるなんて いいと思います。
しかしあえて言わせてもらいますが、私は咲夜さんの私服を見てみたい
パチュリーもいい感じに最後絡んできて楽しく読ませていただきました。