このお話は作品集109の東方幻葬郷~霊夢編~、早苗編、咲夜編、魔理沙編、阿弥編の最終話となっております。
前述の作品を読んでいない方は読まないでください。
全てを読み終わってからまた来てください。
全てを読み終わっている、という方は先に進んでください。
現在
もうすぐ陽が暮れようかという時間になりつつある。
(もうすぐ夕暮れね…)
まるで、この世界の行く末の様に茜色に変わり始めた秋の空を私は一直線に飛んでいる。
早苗さんの葬儀の後に彼女の言った『真実』。
その意味を確かめる為に私は今、再び八雲邸の門の前にいる。
「いらっしゃいませ。紫様がお待ちですのでお上がりください。」
以前と同じように彼女の式が淡々と出迎えてくれる。
まだ二度目のはずなのに、この全てを見通されているような感覚にも慣れてしまった気がする。
いや、そんなことはとりあえずどうでもいい。
彼女に会えばすべて、そう、全てが解決するだろう…
「やっぱり魔理沙までかかったわね…まあ、良いわ。ここに来たということは私の言う真実が少しはわかったのでしょう?」
通された部屋は以前と変わらず外の世界の物が大量に置かれていた。いや、以前来たときより物が増えていて狭く感じた。
その中で私と彼女は卓袱台を挟んで向かいあい、私は正座で、彼女は足を崩している。
正直なところ私は緊張、しているのだろう。
だが、以前感じたようなプレッシャーは感じない。
「そうですね…あの時はわからなかったけど今は少しだけわかった気がします。彼女たちは自分の為に生きて、自分勝手に逝きました。」
彼女の表情は変わらない。だが、話し始めたからには自分の意志を貫かなければならない。
「彼女たちはそれぞれ自分の意志を貫き、その意志に基づいて行動をして、最後まで人間であり続けました。」
私の考えに対して彼女は何も口を挟まない。
卓袱台の上のお茶を一口飲んでから結論を彼女に言う。
「彼女たちは自らの意志で、自らの人生を歩んで、逝きました。」
それから導き出せすことのできる答えは…
「悔いのないように短い生を最期まで生きることが人間だと思いました。」
一通り私の導き出した答えは彼女に話した。だが、彼女の表情は一切変わらない。
それなりに自信はあったが、それだけに彼女の望む真実を導き出せなかったというショックも…
「そう、また失敗かしらね…また次の世界で会いましょう。」
そう言い、作り出したスキマの中に消えようとする。
「待ってください!!一体、何が悪かったんですか!?次の世界って何ですか?」
卓袱台に勢い良く手をついてスキマに消え行く彼女を必死で引き止める。
「そうね…じゃあ、最後のチャンスをあげるわ。彼女たちの生き方を見てきたでしょう?それを見てあなたはどう思ったかしら?」
頭をフル回転させて考える。きっと彼女のことだから次は本当に無いだろう。
彼女たちの生き方…
博愛?
信仰?
忠誠?
自分勝手?
幻想郷の為?
いや、きっとそんな断片的なものでは無いはず…
自分の信念を貫いて死んでいった?
それでも今一歩たりない気がする…
他人の為?
確かに彼女たちの行いは幻想郷の、そして人々の為になった。だが、まだ違う気がする……
「…答えは出ないようね。今度こそお別れよ。私がいなくなったらこの世界は崩壊するわ。それまで少しだけ苦しいだろうけどすぐに楽になるわ。」
この世界が…崩壊する?
幻想郷が?彼女らの愛したこの世界が、消える?
自信は無いが…答えを言うしか生き残る選択肢は存在しない。
私の返答次第で幻想郷が滅びるかどうかなのだ
間違いかもしれないが答えを言うしか、無い。
「答えは…」
彼女が歩みを止めて何の感情も無いような目で私を見る。
「答えは、人間らしく生きた。です。」
それまで何を言っても表情を変えなかった彼女が、私の答えを聞いて少しだけ眉を動かした。
「自分勝手に、それでも限りある儚い生を必死に生きた。まさに人間らしい生き方でした。」
だが、それ以上彼女の表情が変わることはなかった。
永劫にも感じられる、ただ彼女の視線を受け止めるだけの時間。
(あぁ…私は選択肢を誤ったのね…みんな、ごめんね…)
俯いてそう考えていたときだった
「正解にはまだ遠いけど、まあいいことにしてあげるわ。」
「えっ!?」
顔を上げて彼女の顔を見る。
卓袱台の前に座り、彼女は話し始めた。
「本来、人間は人間らしく、妖怪は妖怪らしく自らの役割を貫いて生きなければならないわ。
でも、この幻想郷では外の世界ほどでは無いけど人間も妖怪をあまり恐れなくなってしまった。このままでは人間と妖怪の境界が薄くなってしまうのよ…」
一区切りして彼女も卓袱台の上のお茶を飲む。
「境界が無くなれば妖怪の存在意義は無になる。そしてこの幻想郷から妖怪が消え去るということも遠くないわ。
だからあなたを使って人間らしさ、妖怪らしさを幻想郷の住人に再認識させようと考えたのよ。」
「そうだったのですね…」
彼女の考えがわかったところで、彼女にはまだ聞かなければならないことがある。
もう一つの、真実を…
「それで、私はいつになったらこの世界から帰ることが出来るのですか?」
彼女にとってまるで予想外だったとでも言うのだろうか。しばしの間、彼女は返事をしなかった。
ただ、無言の時が流れる。しかし、私の考えが合っているという確信も、無い。
「その事に、いつ気が付いた?」
心なしかトーンが変わった気がする。だが、推測が合っていたという安堵が訪れる。
「魔理沙さんが亡くなられたあとです。それ以前から既視感のような違和感はありましたが…」
再び彼女が口を開くと、今まで聞いたことの無い声色で彼女は話し始めた。
「その事に気付いた妖怪はあなたが初めてです。ふぅ、そうですね…どこから話すべきですかしらね?」
口調も彼女、八雲紫とは別人となっている。
「まずは、自己紹介からにしましょうか。私は八雲蒼、蒼とでも呼んでください。」
そう言って八雲蒼と名乗った妖怪は変化を解き、目の前に銀の混じった青髪の少女が現れた。
「狼ですか?」
見た目は私よりも若いが…こんな妖怪は千年以上の時を生きてきて見たことがない。
「はい。私は日本狼の最後の生き残りだったところを紫様に拾ってもらって、紫様の式になりました。」
「それにしても今までわかりませんでしたよ。」
私が気付かなかったということはきっと他の住人も気付いてないだろう。
「見破られたのはあなたで三人目ですよ。あなたの他では、幽々子様と霊夢さんだけです。」
確かに彼女と仲の良かったあの二人ならば見破ることも出来ただろう。
「彼女たちが相手では私の能力でも見破られてしまいましたからね。他の人には口外しないように頼んで…大変でしたよ。」
本当に大変そうだったのは見てわかるがそんなことより気になることが一つある。
「能力、ですか?」
「はい。私の能力は『向き(ベクトル)を操る程度の能力』でして、私の方向性を紫様に近付けることで今まで紫様を演じてきました。」
今の私ではまだ近づけたりすることが限界です…
――そうだったのか…
「それは気付かれないはずですね…それはともかく、紫様はなぜそんなことを?」
「私は…問題とその答えと解説が与えられただけで、私にも紫様の真意はわかりません…」
――式として信頼されていないのでしょうかね…
そう言って俯いてしまった。さっきまで紫様のフリをしていたとは思えないくらい弱気だ。これが彼女の元の性格なのだろうか?
うなだれると同時に少し耳が下がる。
「でも、幽々子様と霊夢さん以外には気付かれなかったんでしょう?」
少しでも彼女の気を紛らわせたくて話を振る。何故だろう…椛と同じ狼だからだろうか?
「ええ、前回はパチェリーさんで同じようなことをしたのですが、パチュリーさんは気付きませんでしたからね!!」
下を向いていた耳が上を向き、尻尾も左右に揺れる。
この人は感情の起伏が多くて面白いな~
「それはいいのですが、私はいつになったら帰れるんですか?」
八雲紫本人でないと言うことは帰るには紫に会わなければならない。
「元の世界に帰りたい?」
スキマの中からいきなり八雲紫が現れるが私も蒼も特に驚かない。
「紫様、文さんが…」
「ええ、私はいつになったら帰れるのですか?」
「…あなた達、少しは驚きなさいよ…」
彼女も妖怪だから少しは驚いてほしかったのだろうか?
「まあ、いいわ。あなたは良くやったわよ。私の問いの答えを導き出したし、それにまさか、蒼を見破るなんてね…」
「まだまだ修行が足りないわね。」
「藍様のところで修行してきます…」
褒めてもらったのは嬉しいが、彼女にはまだ肝心なことを聞いていない。
「それで、この世界は一体何なんですか?」
どうしてもこれだけは聞かなければならない。
「この世界はあなたが魔理沙に取材に行った直後の世界を私と蒼の能力で本来とは違う流れにした世界よ。世界の、一つの可能性よ。」
聞いたところ霊夢さんに取材に行ったところから蒼の能力でやり直したらしい。
「あなたが感じた違和感はそれが原因よ。あなたが感づくように蒼の能力で彼女たちを少し勝手に動かさせてもらったわ。」
「確かに魔理沙さんや咲夜さんの死の直前、いつもとは違うように感じましたが…」
まさかそんなところまで彼女が手を加えていたなんて…
だが、元の世界とは違う世界なのか?
「それじゃあ…元の世界には帰れないのですか?」
もう二度と彼女たちの元気な姿を見れないと思うと、一度は死に別れたにもかかわらず希望を奪われたような感覚に陥る。
「安心しなさい。元の世界では1ヶ月しか経ってないわ。その1ヶ月間あなたは失踪していたということになってるけどね。」
「え!?じゃあ…」
顔を上げると幻想郷の母親たる八雲紫の柔らかな笑みが目に入る。
「ええ、このスキマを通れば元の世界に帰れるわ。」
そう言って空中に新たなスキマを開ける。
「ただ、この世界で起こったことは話してはいけないわよ。あなたはジャーナリストだからそれくらいわかるでしょう?」
「はい。それでは私は元の世界に帰ります。紫様、蒼さん、ありがとうございました。」
そう言って私はスキマを潜る。
眩しい…
だが周りの様子から察するに季節は秋のようだ。
「ここは…博麗神社?」
懐かしい、あの頃の博麗神社のままだ。
「あら?文さんじゃないですか。1ヶ月も姿が見えなかったからお嬢様が心配してましたよ。」
「本当だ、文じゃないか。久しぶりだな~早苗も心配してたぜ。」
縁側には魔理沙と、咲夜と早苗の三人が来ていた。
「魔理沙さんのところに取材に行った後から姿が見えなくなったからすっごく心配したんですよ…」
私は零れそうになる涙を拭い、笑顔で彼女たちに言う。
「みなさん、ただいま。」
彼女も柔らかな笑みで応えてくれた。
「お帰りなさい、文。」
前述の作品を読んでいない方は読まないでください。
全てを読み終わってからまた来てください。
全てを読み終わっている、という方は先に進んでください。
現在
もうすぐ陽が暮れようかという時間になりつつある。
(もうすぐ夕暮れね…)
まるで、この世界の行く末の様に茜色に変わり始めた秋の空を私は一直線に飛んでいる。
早苗さんの葬儀の後に彼女の言った『真実』。
その意味を確かめる為に私は今、再び八雲邸の門の前にいる。
「いらっしゃいませ。紫様がお待ちですのでお上がりください。」
以前と同じように彼女の式が淡々と出迎えてくれる。
まだ二度目のはずなのに、この全てを見通されているような感覚にも慣れてしまった気がする。
いや、そんなことはとりあえずどうでもいい。
彼女に会えばすべて、そう、全てが解決するだろう…
「やっぱり魔理沙までかかったわね…まあ、良いわ。ここに来たということは私の言う真実が少しはわかったのでしょう?」
通された部屋は以前と変わらず外の世界の物が大量に置かれていた。いや、以前来たときより物が増えていて狭く感じた。
その中で私と彼女は卓袱台を挟んで向かいあい、私は正座で、彼女は足を崩している。
正直なところ私は緊張、しているのだろう。
だが、以前感じたようなプレッシャーは感じない。
「そうですね…あの時はわからなかったけど今は少しだけわかった気がします。彼女たちは自分の為に生きて、自分勝手に逝きました。」
彼女の表情は変わらない。だが、話し始めたからには自分の意志を貫かなければならない。
「彼女たちはそれぞれ自分の意志を貫き、その意志に基づいて行動をして、最後まで人間であり続けました。」
私の考えに対して彼女は何も口を挟まない。
卓袱台の上のお茶を一口飲んでから結論を彼女に言う。
「彼女たちは自らの意志で、自らの人生を歩んで、逝きました。」
それから導き出せすことのできる答えは…
「悔いのないように短い生を最期まで生きることが人間だと思いました。」
一通り私の導き出した答えは彼女に話した。だが、彼女の表情は一切変わらない。
それなりに自信はあったが、それだけに彼女の望む真実を導き出せなかったというショックも…
「そう、また失敗かしらね…また次の世界で会いましょう。」
そう言い、作り出したスキマの中に消えようとする。
「待ってください!!一体、何が悪かったんですか!?次の世界って何ですか?」
卓袱台に勢い良く手をついてスキマに消え行く彼女を必死で引き止める。
「そうね…じゃあ、最後のチャンスをあげるわ。彼女たちの生き方を見てきたでしょう?それを見てあなたはどう思ったかしら?」
頭をフル回転させて考える。きっと彼女のことだから次は本当に無いだろう。
彼女たちの生き方…
博愛?
信仰?
忠誠?
自分勝手?
幻想郷の為?
いや、きっとそんな断片的なものでは無いはず…
自分の信念を貫いて死んでいった?
それでも今一歩たりない気がする…
他人の為?
確かに彼女たちの行いは幻想郷の、そして人々の為になった。だが、まだ違う気がする……
「…答えは出ないようね。今度こそお別れよ。私がいなくなったらこの世界は崩壊するわ。それまで少しだけ苦しいだろうけどすぐに楽になるわ。」
この世界が…崩壊する?
幻想郷が?彼女らの愛したこの世界が、消える?
自信は無いが…答えを言うしか生き残る選択肢は存在しない。
私の返答次第で幻想郷が滅びるかどうかなのだ
間違いかもしれないが答えを言うしか、無い。
「答えは…」
彼女が歩みを止めて何の感情も無いような目で私を見る。
「答えは、人間らしく生きた。です。」
それまで何を言っても表情を変えなかった彼女が、私の答えを聞いて少しだけ眉を動かした。
「自分勝手に、それでも限りある儚い生を必死に生きた。まさに人間らしい生き方でした。」
だが、それ以上彼女の表情が変わることはなかった。
永劫にも感じられる、ただ彼女の視線を受け止めるだけの時間。
(あぁ…私は選択肢を誤ったのね…みんな、ごめんね…)
俯いてそう考えていたときだった
「正解にはまだ遠いけど、まあいいことにしてあげるわ。」
「えっ!?」
顔を上げて彼女の顔を見る。
卓袱台の前に座り、彼女は話し始めた。
「本来、人間は人間らしく、妖怪は妖怪らしく自らの役割を貫いて生きなければならないわ。
でも、この幻想郷では外の世界ほどでは無いけど人間も妖怪をあまり恐れなくなってしまった。このままでは人間と妖怪の境界が薄くなってしまうのよ…」
一区切りして彼女も卓袱台の上のお茶を飲む。
「境界が無くなれば妖怪の存在意義は無になる。そしてこの幻想郷から妖怪が消え去るということも遠くないわ。
だからあなたを使って人間らしさ、妖怪らしさを幻想郷の住人に再認識させようと考えたのよ。」
「そうだったのですね…」
彼女の考えがわかったところで、彼女にはまだ聞かなければならないことがある。
もう一つの、真実を…
「それで、私はいつになったらこの世界から帰ることが出来るのですか?」
彼女にとってまるで予想外だったとでも言うのだろうか。しばしの間、彼女は返事をしなかった。
ただ、無言の時が流れる。しかし、私の考えが合っているという確信も、無い。
「その事に、いつ気が付いた?」
心なしかトーンが変わった気がする。だが、推測が合っていたという安堵が訪れる。
「魔理沙さんが亡くなられたあとです。それ以前から既視感のような違和感はありましたが…」
再び彼女が口を開くと、今まで聞いたことの無い声色で彼女は話し始めた。
「その事に気付いた妖怪はあなたが初めてです。ふぅ、そうですね…どこから話すべきですかしらね?」
口調も彼女、八雲紫とは別人となっている。
「まずは、自己紹介からにしましょうか。私は八雲蒼、蒼とでも呼んでください。」
そう言って八雲蒼と名乗った妖怪は変化を解き、目の前に銀の混じった青髪の少女が現れた。
「狼ですか?」
見た目は私よりも若いが…こんな妖怪は千年以上の時を生きてきて見たことがない。
「はい。私は日本狼の最後の生き残りだったところを紫様に拾ってもらって、紫様の式になりました。」
「それにしても今までわかりませんでしたよ。」
私が気付かなかったということはきっと他の住人も気付いてないだろう。
「見破られたのはあなたで三人目ですよ。あなたの他では、幽々子様と霊夢さんだけです。」
確かに彼女と仲の良かったあの二人ならば見破ることも出来ただろう。
「彼女たちが相手では私の能力でも見破られてしまいましたからね。他の人には口外しないように頼んで…大変でしたよ。」
本当に大変そうだったのは見てわかるがそんなことより気になることが一つある。
「能力、ですか?」
「はい。私の能力は『向き(ベクトル)を操る程度の能力』でして、私の方向性を紫様に近付けることで今まで紫様を演じてきました。」
今の私ではまだ近づけたりすることが限界です…
――そうだったのか…
「それは気付かれないはずですね…それはともかく、紫様はなぜそんなことを?」
「私は…問題とその答えと解説が与えられただけで、私にも紫様の真意はわかりません…」
――式として信頼されていないのでしょうかね…
そう言って俯いてしまった。さっきまで紫様のフリをしていたとは思えないくらい弱気だ。これが彼女の元の性格なのだろうか?
うなだれると同時に少し耳が下がる。
「でも、幽々子様と霊夢さん以外には気付かれなかったんでしょう?」
少しでも彼女の気を紛らわせたくて話を振る。何故だろう…椛と同じ狼だからだろうか?
「ええ、前回はパチェリーさんで同じようなことをしたのですが、パチュリーさんは気付きませんでしたからね!!」
下を向いていた耳が上を向き、尻尾も左右に揺れる。
この人は感情の起伏が多くて面白いな~
「それはいいのですが、私はいつになったら帰れるんですか?」
八雲紫本人でないと言うことは帰るには紫に会わなければならない。
「元の世界に帰りたい?」
スキマの中からいきなり八雲紫が現れるが私も蒼も特に驚かない。
「紫様、文さんが…」
「ええ、私はいつになったら帰れるのですか?」
「…あなた達、少しは驚きなさいよ…」
彼女も妖怪だから少しは驚いてほしかったのだろうか?
「まあ、いいわ。あなたは良くやったわよ。私の問いの答えを導き出したし、それにまさか、蒼を見破るなんてね…」
「まだまだ修行が足りないわね。」
「藍様のところで修行してきます…」
褒めてもらったのは嬉しいが、彼女にはまだ肝心なことを聞いていない。
「それで、この世界は一体何なんですか?」
どうしてもこれだけは聞かなければならない。
「この世界はあなたが魔理沙に取材に行った直後の世界を私と蒼の能力で本来とは違う流れにした世界よ。世界の、一つの可能性よ。」
聞いたところ霊夢さんに取材に行ったところから蒼の能力でやり直したらしい。
「あなたが感じた違和感はそれが原因よ。あなたが感づくように蒼の能力で彼女たちを少し勝手に動かさせてもらったわ。」
「確かに魔理沙さんや咲夜さんの死の直前、いつもとは違うように感じましたが…」
まさかそんなところまで彼女が手を加えていたなんて…
だが、元の世界とは違う世界なのか?
「それじゃあ…元の世界には帰れないのですか?」
もう二度と彼女たちの元気な姿を見れないと思うと、一度は死に別れたにもかかわらず希望を奪われたような感覚に陥る。
「安心しなさい。元の世界では1ヶ月しか経ってないわ。その1ヶ月間あなたは失踪していたということになってるけどね。」
「え!?じゃあ…」
顔を上げると幻想郷の母親たる八雲紫の柔らかな笑みが目に入る。
「ええ、このスキマを通れば元の世界に帰れるわ。」
そう言って空中に新たなスキマを開ける。
「ただ、この世界で起こったことは話してはいけないわよ。あなたはジャーナリストだからそれくらいわかるでしょう?」
「はい。それでは私は元の世界に帰ります。紫様、蒼さん、ありがとうございました。」
そう言って私はスキマを潜る。
眩しい…
だが周りの様子から察するに季節は秋のようだ。
「ここは…博麗神社?」
懐かしい、あの頃の博麗神社のままだ。
「あら?文さんじゃないですか。1ヶ月も姿が見えなかったからお嬢様が心配してましたよ。」
「本当だ、文じゃないか。久しぶりだな~早苗も心配してたぜ。」
縁側には魔理沙と、咲夜と早苗の三人が来ていた。
「魔理沙さんのところに取材に行った後から姿が見えなくなったからすっごく心配したんですよ…」
私は零れそうになる涙を拭い、笑顔で彼女たちに言う。
「みなさん、ただいま。」
彼女も柔らかな笑みで応えてくれた。
「お帰りなさい、文。」
「人間らしく」とは良いテーマですね,私たちの生き方についてとても真剣な問いが詰まっていると感じました.探し続ける姿勢がまぶしかったです.
また最後,悲しいことが夢だったような,ほっとした感がありましたね.
勿忘草さんは,どうかご自分の作風のよさを大切にしてください.またSSを読ませてくださいね.
良かった良かった、ハハハハハハって違うわ! 俺が言いたいのはそんなことじゃねえっ!
根本的な問題として、何故紫様は文を可能性の世界に引っ張り込んだのか?
人間と妖怪の役割を、新聞記者を利用して幻想郷の住人に再認識させたかったから? なら、何故万年引き篭もりのパチュリーにも同じ事をしている? そもそも可能性の世界でそれをして、現実の幻想郷(なんか矛盾)になんの意味がある? 現実世界に戻った、自分の役割を認識した文が啓蒙活動を
始めるのを紫様は期待しているのか? なら、何故最後に口止めなんかするんだ?
つーか、俺のコメント長過ぎっ! 疑問符も多過ぎっ!
……もちつけ、俺。深呼吸をするんだ。素数でも数えながらな。ふぅ、ふぅ……
と、いう感じで作者様の頭の中では解決済みの問題なのかも知れないですが、私は納得出来ない。
伏線の回収云々を気にし過ぎて、物語全体が矛盾を孕むなんて本末転倒だと思うのですよ。
貴方は若い。若い故に、あえてハードルの高い物語を創作しようとしたのでしょうが、もっと自然体で
奇を衒わない作品を書いてみても良いのではないでしょうか。
貴方にはそれが出来ると私は確信しています。お疲れ様でした。
PS.みなも様もおつかれちゃんでした。
今までの話が台無しじゃねえかっ!
PS.……まで書いておいてこれじゃ恥ずかし過ぎるじゃねえかっ!
ふっ、やはり私にはピエロがお似合いのようです。
部屋の隅っこで体育座り状態のコチドリより
あるいは、投稿する時までにご自身で感じられたかも知れませんが、この作品自体が違和感の結晶になっていると思います。通して作品を読むとよく分かるのですが、作品の主題が「違和感」なのかな、と思わせる描写が多々ある。どうにも読み疲れてしまいます。この作品では、恐らくある種の変化に焦点を当てられたのだろうと思うのですが、作品の根底をなす「違和感」そのものが変化していない為(全ての描写が「射命丸文が違和感を感じ取る」ですまされてしまっている→大きくも小さくもならない)、息が上がっている感があります。具体的に言うならば、もう少し写実的な表現を足して、変化の補足説明を行うのが良いでしょう。
そして、登場人物の割には尺が短すぎる。主人公・射命丸文とヒロインである博麗霊夢・東風谷早苗・十六夜咲夜・霧雨魔理沙・稗田阿弥。そしてキーである八雲蒼・紫。これだけでも8人居るのに、+αも合わさって、どこから手を付けるべきなのか、わかりにくい作品です。上二名の方が本質を付いていらっしゃるので、あえて深くは言及しませんが、暗中模索のまま帰らぬ人となった印象を受けました。
とまれ、面白い作品でしたから頑張って下さい。では。
他の方の素敵なコメがあったからこそ,私のコメントも生きたと思うのです.
私は少々人を叩いて伸ばすのが苦手なのでとても助かりました.
なので,一言だけ,全体レスを勘忍してください,作者様.
PS.はい,他の皆さまもおつかれさまです!
パラレルワールド!ってことは皆まだちゃんと生きてるんだ、良かった
さぁ、これから文の目には、世界はどう映っていくんでしょうね
でも、一気に通して見てしまいました。
まず、色々言われても、しっかりと終わらせたことに拍手!w