―― 何で私だけ、人間なんだろう……
私がその事に気が付いたのは、自分の身体とみんなの身体の成長速度の差を感じてからだ。
みんなの中で私だけが、みんなと比にならないほどに成長が早かった。
ママにその疑問をぶつけてみた時に、初めてその事実を知った。
確かに、最初は困惑したものだった。
何で私だけ人間なのか、その理由は教えてくれなかったから。
でも、私が人間であると言う事が判っても、みんなは変わらず“家族”として接してくれた。
それが嬉しくて、私は自分が人間であると言う現実を認めたうえで、これからも“家族”と一緒に暮らしていこうと思った。
大好きなこの世界で、人間ではなく“魔法使い”として生きて行こう、そう思った。
……でも、魔法使いになってから、少し時間が経ったある日……。
私の運命は、二人の人間によって、大きく変えられてしまった……。
* * * * * *
「魔界?」
「おお、久々だったけど相変わらず面白いトコだったぜ」
空を飛ぶ船の異変から帰って来たと思えば、急に懐かしい名前が出てきたものね。
話を聞けば、どうやら例の船は魔界に封じられた魔法使いの封印を解くために動いていたそうだ。
そして魔理沙は、その魔法使いが封じられた魔界まで行って、ご丁寧に封印まで解いてきたらしい。
魔理沙の性格を考えれば、目の前に例え大魔王が封印されていても、喜んで封印を解きそうだけど。
「そういや、アリスと初めて逢ったのも魔界だよな」
そうだったわね。
魔界は私の出身地……と言っていいかは判らないけど、まあ故郷みたいなものだから。
人間だった私が、どんな経緯で魔界にいたのかは覚えてないけれど……。
魔界の神に育てられた魔法使い、それが私である事に変わりはない。
「魔界、か……」
こうやって話を聞くと、色々な事を思い出すなぁ。
別にママ達の話を聞いているわけじゃないけれど、魔界という単語を聞くだけで。
魔界の門番の事。
旅行好きな姉さんの事。
黒帽子の明るい子の事。
寡黙な腹黒娘の事。
神に仕えるメイドの事。
そして、私の育ての母である、魔界の神の事。
魔界の様々な人達の事が、頭の中を駆け巡る。
みんな、今どうしてるのかな……。
「……………」
魔理沙は異変の時の自分の事を喋っているけれど、私の頭には入って来なかった。
それ以上に、魔界の事が懐かしくて、いろんな思いが私の中に溢れてくる。
ああもう、魔理沙が変な事思い出させるせいで、自分の思いに歯止めが利かないじゃない。
サラに。
ルイズ姉さんに。
ユキに。
マイに。
夢子姉さんに。
神綺ママに……。
……逢いたい……。
「久しぶりに、帰ってみようかな……」
* * * * * *
そう言うわけで、私は里帰りのために、上海と蓬莱と一緒に、魔界に続く門へと向かっていた。
幸い、先の異変のお陰で魔界との行き来が比較的簡単になっているらしい。
聖輦船が時々遊覧船感覚で魔界に行っているらしいし、あの頃と随分変わったものね。
……まあ、当時も霊夢や魔理沙が不法侵入してきてたけどさ……。
と言うわけで、私は博麗神社の裏山に来ていた。
どうしてこんなところに魔界への門があるのかは知らないけれど、此処にあるんだから仕方がない。
魔力に溢れた魔法の森に作ればよかったのに……。
「……っと、あそこね」
数年前、私が幻想郷に来る折に使った魔界への門。
さて、この近くには魔界の門番がいるはずなんだけど……。
紅魔館の門番のせいで、最近門番に良いイメージがないからなぁ……。
サラは真面目に働いているのやら。
「こら、そこのあなた。此処は許可がないと立ち入り禁止よ」
……ああ、懐かしい声が聞こえる。
声のした方を見てみれば、数年ぶりに出逢う赤い髪の少女、サラの姿が。
そう言えば、私が魔界を出た時、最後に会ったのがサラだったのよね。
魔界と幻想郷を繋ぐ門の番人をしているのだから、最後に逢うのは当たり前の事だけど。
「久しぶりね、サラ」
まずは挨拶。
さてはて、幾ら魔界出身の私と言えども、そう簡単に通してくれるのかな。
実力はともかく、比較的サラは真面目だからなぁ。
どうでもいいけど、聖輦船はちゃんと許可取って魔界と行き来してるのかな?
そもそも誰に許可を取るんだろう。やっぱりママかな。
「……うん? 何処かで逢った事あったっけ?」
がくりと膝の力が抜けた。
「サ、サラ……?」
「う~ん、私の名前は知ってるようだけど……」
やばい、サラの目が本気だ。本気で誰か判らないって顔してる。
ま、まさか私の事に気付かないだなんて……。
いやまあ、確かに魔界にいた時の私と今の私じゃ、それなりに風貌も違うだろうけどさ……。
そんな忘れられるほど変わってる? 顔と金髪だけじゃ判らない?
「とにかく、見ず知らずの妖怪を通すわけにはいかないわ」
いや、だから見ず知らずじゃないって言ってんでしょうが。
どうしよう。名前を出せば判るんだろうけど、なんかそれは悔しい。
この分だと、魔界に帰っても誰も私の事が判らないんじゃ……。
「ねえサラ、本当に私の事が判らない?」
「判らない」
即答。そろそろ一発ぶん殴ってもいいかしら?
……うん、そうね。殴って許されるわよね。私は厳密には魔界人じゃないとはいえ、この顔を忘れるなんて……。
「……久々に帰って来たんだし、お土産よ」
そう言って、私は人形をバラ撒く。
「ふえっ?」
首を傾げるサラの下に、トコトコと歩き始める人形達。
「……か、可愛い……!!」
人形達を手にとって笑顔を浮かべるサラ。
あら、そう言って貰えるとは人形師冥利に尽きるわ。
でもね、その人形達はね……。
まあ、魔界を守る門番、そんな重要な役目を背負っているサラには、丁度いい薬になるかしらね。
油断大敵。
「人形『レミングスパレード』」
* * * * * *
「ううっ、やられた……」
黒焦げになって倒れるサラ。
実力は当時のままね。それでも身体は頑丈……。
……って、どうしてこうもあの門番と被るところが多いのよ。
「まったく、あなたも魔界の門番なら、せめて夢子姉さんと同じくらいには強くなりなさいよ」
本来門番って、それくらい強くないと務まらないような気もするしね。
まあ夢子姉さんが門番をやり始めたら、サラは確実に無職になるわね。後ママが泣く。
「いやいや、夢子姉さんと同じなんて……って、なんで夢子姉さんの名前まで……」
うん、そろそろ気付け。
「夢子姉さんの事を“姉さん”って呼べるのが、幻想郷にどれだけいると思ってるの?」
というか、多分私一人だと思う。
基本的に、魔界から外に出ている存在なんて私一人のはずだし。
ルイズ姉さんがまた旅行に出かけてなければの話だけど。
「……えっ、まさか……」
やっと気付いたかしら。遅すぎるわよ。
「……もう一度言うわ。久しぶりね、サラ」
「……アリ……ス……?」
漸くその名前が出てきた。
「もっと早く思い出したらどうかしら?」
まあ、思い出してくれただけいいけどね。
自分で名前を明かすなんて、サラの姉妹としてのプライドが許さなかったから。
「アリス……アリスぅ……!!」
と、急に眼に涙を浮かべ始めるサラ。
うえっ、何でそんな急に泣き始めるのよ。
そりゃまあ、こっちだって久しぶりに会って、それなりに感動の再会的な展開を望んではいたけど……。
私にはもうそれは望めない事なのよ。主にあなたのせいで。
なのにそっちだけ涙の再会だなんて、卑怯じゃない……。
「泣き虫なのは変わってないのね」
「ううっ……だって、だってぇ……」
いやまあ、泣いてくれるのは嬉しいんだけど……。
こっちは黒焦げのサラを見ているだけで笑いそう……。
駄目よアリス、都会派の魔法使いはこんなところで笑ってはダメなのよ。
「アリスが魔界を出て行ってからもう何年も経つのに……。
全然逢いに来てくれないから、もう二度と逢えないのかと……」
いやいや、何でそんな大袈裟に捉えてるのよ。たった数年じゃない。
……まあ、そのたった数年で泣き喚きそうな人に心当たりはあるけれど。
そして目の前のサラは、その誰かさんに造られた魔界人だけど。
「ううっ……アリスがいなくなった日、本当に大変だったんだからね……。
私には許可を取って幻想郷に行くって話したくせに、神綺様には『そんな事聞いてない』って凄く怒られたし……」
あー、そう言えばそうだったわね……。
とある理由から魔界を出た私は、その時サラ以外の魔界人には誰も逢っていない。
理由が理由だった為に、魔界人の誰にも言えなかったから。
でもまあ、どうしても門番をやってるサラには逢わないといけなかったから……。
当時はそんな嘘をついていた気がする。わりと本気で忘れてた。
「夢子姉さんには壁に縫いつけられるわ、ユキにはボコられるわ、マイには散々役立たずだって罵られるわ……」
「……ご、ごめんなさい……」
悲痛な告白をするサラに対して、物凄く申し訳ない事をしてしまったという気持ちになった。
まさか全部サラの責任にされるなんて、昔の私は思ってなかったから……。
若かったわねあの頃は。
「そ、それにしても、何だって急に帰って来たの? 今までは私にすら逢いに来なかったのに」
遠回しに嫌みを言われた気がする。気のせいよね、きっと。
「此処最近、幻想郷と魔界とで一悶着あったらしいからね。それを聞いて」
「あー、そう言えばなんか変な船が此処を通ってったっけ」
意外と軽いわね。無断で通って行ったように聞こえるけど。
この辺の事はママに密告しておいた方が良いかな。どっちかというと夢子姉さんか。
「とにかく、その時に魔界の事を聞いて、久々に帰ってみようかなっていう気になったのよ」
「そっか……」
ああ、漸く私にも、魔界に帰ってきてるんだな、という実感が湧いてきた。まだ魔界入りはしていないけれど。
「それでなんだけど、この門通っていいかしら?」
此処で本題。
私は里帰りするために来たのだから、当然この門を通らなくては魔界に帰れない。
しかし、幾ら行き気がしやすくなったとはいえ、許可なしに通れるとも思え……
「ああ、いいよ別に」
……あれ、私は何を心配してたんだっけ?
「……いや、サラ、いくら相手が私だからって、ママの許可なくそんな簡単に通していいわけ?」
通してくれないとは思ってないけれど、だからってこんなにあっさり通っていいものなのだろうか。
本当に紅魔館の門番とイメージがダブるわね。
「いや、アリスが魔界に帰るっていうのに、それを受け入れなかったら私が神綺様に殺されちゃうよ」
納得。
「それに……」
っと、まだあったの?
私としては、今の理由だけでも充分だったんだけど……。
「家族が帰ってくるっていうのに、家の門を閉めるわけにもいかないでしょ?」
……!!
「サラ……」
曇りない笑顔で笑うサラ。そしてその言葉は、私の心に深く染み渡る。
……誰かに“家族”だと言って貰える事って、こんなに暖かい事なんだ……。
「おかえり、アリス」
「……ただいま、サラ」
* * * * * *
ああ、随分久々の感覚。
魔力の籠ったこの空気のお陰で、私の力がどんどん強くなっていく気がする。
実際に魔法使いが魔界に来れば、この空気のお陰で本来以上の力を発揮出来る。
私の場合は、幻想郷にいた為に本気を出せなかった力が、元に戻ったような感じね。
……なによ。本当の事よ。言いわけでも何でもないわよ。
「誰に向かって話してんの?」
「知らないわよ。そんな事より門番はいいの?」
私と並んで歩いているサラに目を向ける。
幾ら魔界との行き来が楽になったとは言え、それは門番であるあなたがちゃんと管理しているからでしょうに。
「いいよ別に。どうせ魔界をアリスが出て行ってから今まで、門を通ったのなんてルイズ姉さんと例の船だけだから」
どれだけ退屈な仕事をしてるんだろ、この子は……。
「相変わらず旅行好きなのね、ルイズ姉さんは」
サラの口から出てきたその名前で、私はルイズ姉さんの事を思い出す。
魔界はほぼ完全に一つの世界として確立しているので、基本的に魔界人は魔界を出ようとは考えない。
だけど、そんな魔界人の中で珍しく、何度も魔界を出て旅行に出かけている存在、それがルイズ姉さん。
私はあまり外に出てないから逢った事はないけど、幻想郷にも何度か来ていると思う。
というか、今さっきサラがルイズ姉さんが魔界を出て行ってるような事を言ってたし。
「そうね。3ヶ月に1回は幻想郷に行ってるわ」
そんなにかい。
「そんなに幻想郷に来ても、別に見る物ないと思うんだけどなぁ……」
「最近は温泉にハマってるらしいわよ」
あ、なんとなく納得。
温泉に浸かりながらのんびりしているルイズ姉さんの姿が、物凄くリアルに想像出来た。
あの人ほど温泉が似合う魔界人も、他にいないだろうなぁ……。
「で、そのルイズ姉さんは今は如何してるの?」
「あー、そう言えば、また旅行に行くって言ってたけど、確かその日って……」
「あら、サラと……ひょっとして、アリス?」
素晴らしいほどのご都合主義ね。噂をすれば、という事にしておきましょう。
声のした方に目を向けると、懐かしい白の清楚な服に身を包んだ、糸目のルイズ姉さんの姿が。
「ルイズ姉さん、久しぶりね」
「久しぶりねー。随分と大きくなったわね。わっ、もう私よりも大きいじゃない」
私と自分の身長を比べながら、そんな事を言うルイズ姉さん。
まあ、あの時の私は確かに小さかったからね。
私はまだ魔法使いとしては新米であるため、と言うか捨虫の魔法を習得していないために、身体も成長する。
真面目に勉強すれば、捨虫の魔法も習得できるだろうけど……今はもう少し、魔理沙たちと同じように成長したい。
元人間としての、単純でつまらない気持ちなんだろうけど、間違っているとは思わない。
……っと、そう言えばルイズ姉さんは、成長して姿が変わっているはずの私を、ちゃんと私だと認識していたわね。
どっかの誰かさんと違って。
「それにしても、それなりに変わったと思うのに、よく私だって判ったわね」
あえて、隣にいる誰かさんに言い聞かせるように質問してみる。
「ええ、ぱっと見じゃ判らなかったけど、アリスの事を見間違えるわけないじゃない」
「……………」
当然だと言わんばかりの笑顔で答えるルイズ姉さんと、対照的に沈み込むサラ。
……此処は、もうちょっとからかってみようかな。
「ありがと。でも良かったわ、ひょっとして今の姿じゃ誰も気付かないんじゃないかって、少し心配してたから」
「大丈夫よ。幾らなんでもそんな馬鹿な子がいるわけないじゃない」
ざくっ、ざくっ、と隣から何かが刺さるような音が聞こえた気がした。
さて、どんな気持かしらね。その判らなかった誰かさん。
それにしても、ルイズ姉さんも随分ストレートにものを言ってくるなぁ。
事情を知らないんだし、仕方のない事だけど。
「そ、そんな事より、ルイズ姉さんはどうして此処に……」
無理やり話題を変えようとするサラ。
「えっ、だから今日は温泉に行ってくるって、この間あなたには言わなかったっけ?」
「あうっ……」
「サラ? どうしたの、そんなに落ち込んで……」
そして見事に墓穴を掘る。
さっき自分で、そんな話を聞いたような事を言ってたのに……。
「……まあいっか。それよりアリス、どうして急に帰って来たの?」
あー、やっぱりこの質問はされるわよねー。
何年も音信不通だったのに、何の前触れもなく魔界に帰ってくればねぇ……。
「まあ、色々とあって、ちょっと魔界に顔を出したくなってね」
いちいち説明するのも面倒なので省略。
これから魔界人の知り合いに逢う度に説明してたら、それだけで相当な時間を喰ってしまいそうだ。
「そう。それじゃ、これからパンデモニウムに行くの?」
ルイズ姉さんの出したその名前で、私の胸が少しどきりと脈打つ。
パンデモニウム。夢子姉さんとママが住む、そして私が昔住んでいた、魔界の最奥に位置する家……と言うか城。
見た目は確かに城なんだけど……住んでる人が住んでる人だから、どうも家庭的なイメージが……。
「それはまあ、勿論。折角帰ったのに、ママに逢わないわけにもいかないでしょ?」
二重の意味でね。
普通にママに逢いに魔界に来たと言う意味と、逢わないで帰ったら後々面倒な事になりそうという意味。
「ふぅん、なら私も付いて行っていいかしら?」
と、そんな事を言いだすルイズ姉さん。
「えっ? 幻想郷に遊びに行くんじゃなかったの?」
首を傾げる私に対して、ふふっ、と上品に微笑むルイズ姉さん。
そしてサラが、お前は何を言っているんだと言いたそうな表情をしている。
「馬鹿ね。私にとって、温泉とアリスとどっちが大事だと思ってるの?」
ルイズ姉さんのその時の笑顔は、何処となくママの笑顔を思わせる暖かさがあった……。
* * * * * *
ルイズ姉さんと合流した後、私達はパンデモニウムに行くために、魔界の市街地を抜ける。
途中見知った魔界人に何度も会い、その都度挨拶して回った。正直、ちょっと面倒だった。
まあ、そんなに時間を喰う事もなく市街地を抜けた私達は……。
「……相変わらず……この辺は寒いわね……」
「うー……出来れば此処には来たくないんだけど……」
「幻想郷に行く予定だったから……上着持ってきてないし……」
魔界の氷雪世界。
魔界は一つの世界として確立しているために、それなりに気温差がある地域も存在する。
いわゆる灼熱地獄みたいなところもあれば、此処みたいに物凄く寒いところもある。
まあ、実際にはこんな事を言うほど寒くはない。はずだった。
けれど、3人が揃いも揃って薄着でこの氷雪世界に来てしまったがために、このざまである。
本当はこの氷雪世界を通らなくても、パンデモニウムに辿りつく方法はある。
そもそも魔界の市街地とパンデモニウムはそんなに離れていないので、氷雪世界を通るのは寧ろ遠回りだった。
けれど、あえて私は此処を通る事を選択した。
と言うのも、こんなところに住んでいる物好きな二人がいるものだからね。
さて、昔はよくこの辺りで二人仲良く(?)しているはずだったけど……。
「あれ? ルイズ姉にサラ? 珍しいね、こんなところに来るなんて」
「……………?」
待ち人来る、かしらね。
「ユキ、マイ」
魔界の白黒魔法使いペア、黒を基調とした服と黒い帽子の少女ユキと、それとは正反対に真っ白な服装の少女マイ。
正直、この二人の名前は逆なんじゃないかと、魔界にいた頃から思い続けていた。
ママに聞いてみた事もあるけれど、はぐらかすだけで答えてはくれなかった。
「うん? 一緒にいるのって……ひょっとして……」
「……アリ……ス……?」
ああ、二人もどうやら、私の事に気付いてくれたようだ。
「二人とも、久しぶりね」
「アリス!? 本当にアリス!? 凄い本物のアリスだ!! ねぇマイ!! アリスが帰って来たよ!!」
いきなり騒ぎ始めるユキ。何故かマイに抱きつきながら。
そんな有名人に遭遇した時みたいに驚かれても困るんだけど。
「……………」
ユキのハグに、心底うっとおしそうな表情を浮かべるマイ。私は苦笑い。
まあ、私達はマイの真の顔を知ってるからね。見ればルイズ姉さんも、私と同じような苦笑いを浮かべている。
……多分、マイの本性を知らないのはユキだけなんだろうな……。
マイがどうしてユキの前では寡黙なのかは、本人にしか判らないけど。
因みに、魔界の市街地でも私の事に気付かなかった人はいなかった。
パンデモニウムに行くまでの道中で、多分魔界人に逢うのはこれが最後だと思う。夢子姉さんは除く。
つまりまあ、これで名実ともに……。
「判らなかったの、私だけか……」
そんな微かな声と共に崩れ落ちるサラ。……まあ、ほっといていいかな。
「二人とも、喜んでくれるのは嬉しいんだけど……」
「あ、ああ、ごめんね私達だけ勝手に騒いで」
「……私は何も言ってない」
そうね、ユキが一人で騒いでただけよね。
「おかえり、アリス。何かお土産ある?」
数年ぶりに帰ってきた私に対する第一声がそれかい。
まあ、ユキらしいと言えばそうなんだけどさ……。
「さっきサラにあげたので良ければ」
「駄目!! 絶対あれだけは駄目!!」
落ち込んでいたサラが、急に必死になって私を制止する。
うーん、いきなりお土産どーのこーのなんて言う子にはちょうどいいと思ったんだけどな……。
「な、何あげたんだろう一体……気になる……」
「……………」
欲しければあげるんだけどね、人形爆弾。
でも、こんなところで人形の無駄遣いをするわけにはいかないか。
あれっ? あとはパンデモニウムに行くだけなのに、何処で人形を使うつもりなんだろう私は。
「あ、そう言えば、アリスは如何して魔界に帰って来たの? 今まで音沙汰なかったのに」
……うん、今度から帰って来る時はちゃんと連絡取ろう。
「斯く斯く然々、よ」
「ふーん、そうなんだ」
いや、今ので伝わったの?
「要するに、私達に逢いたくなって帰って来たって事かー」
「ど、どうしてそうなるのよ!!」
ユキのその一言に、何故か過敏に反応してしまった。
何一つ間違っている事は言っていないのだけど、寧ろそれで正解なんだけど……。
なんだか、当の家族の一人にそんな事をはっきりと言われると、もの凄く恥ずかしい。
「おー、照れてる照れてる。やっぱ、見た目は変わってもアリスのままだねぇ。
一番神綺様にべったりの甘えん坊だったからねー」
「……………くすっ」
うー……ユキの能天気さは魔理沙と似てるところがあるから、ちょっと苦手だ……。
そして何一つ否定出来ないのが悔しい。だけど何時もマイにべたべたのユキには言われたくない。
やっぱりリターンイナニメトネスをプレゼントするべきだったかしら。
「……まあ、ユキもマイも変わってないみたいで何よりだわ……」
ため息が漏れた。
相変わらずのユキとマイの凸凹っぷりも、ルイズ姉さんも、サラも、何一つ変わっていなくて。
本当に昔のままで、まるで時間が止まっていたみたいだ。
まあ、魔界人も妖怪と同じく寿命は長いし、成長も遅い。変わってないのは当たり前なんだけど……。
寧ろ、幻想郷の方が異常なのよね。コロコロ新しい妖怪やら神やらが出てきて、みんなどんどん変わって行く。
別にそれが悪いとは思わない。どちらかと言えば、良い事なんだと思う。
でも、この不変な空気と言うのも、悪くないわよね。
だって、本当に此処が“故郷”なんだな、と思えるから。
ユキのあまりの不変っぷりにため息したものの、心の何処かではやっぱり喜んでいる私がいる。
サラ、ルイズ姉さん、ユキ、マイ……みんなみんな、私の知っている、あの時のままだ。
ああ、パンデモニウムに行くのが、本当に楽しみになってきた。
夢子姉さん、そして神綺ママ……きっと、昔と変わらない姿を見せてくれるよね……。
* * * * * *
ユキとマイに逢ってから、私達は今度こそ、ママの住む城パンデモニウムに到着する。
「おー、久しぶりに近くまで来たけど、相変わらず凄いトコだねぇ」
「……………」
……ユキとマイをメンバーに加えて。
「ユキ、マイ、何であんた達まで……」
これでサラ、ルイズ姉さんを含めて5人……。
「いいじゃんいいじゃん、神綺様のところに自分で行く事なんて滅多にないしー。
それに、魔王の城に乗り込むんだから、パーティは多い方がいいでしょ?」
「……ユキ……ゲームやり過ぎ」
ホントにどのRPGゲームよ。ド○クエ? F○?
まあ確かに、言ってる事は間違ってはいないんだけどね。
ママが魔界の神で、言いかえれば魔界を統治する王なのは確かだし。
ほとんど何もしてないけど。寧ろそのせいで、霊夢達が魔界で暴れる羽目になったんだけど。
「まったく、何だってこんな集団で……。……夢子姉さんに怒られても知らないからね?」
「あら、アリスは私達と一緒じゃ嫌なの?」
「うっ……!!」
ルイズ姉さんのカウンター攻撃。
いや、寧ろみんなが一緒にいてくれた方がいいんだけど……。
ああもう、素直になれない自分が恨めしい。どれもこれも全部魔理沙のせいよ!!
……何で魔理沙のせいにしてんのよ私!! それじゃ私が魔理沙に対して素直になれないところがあるみたいじゃない!!
違う違う魔理沙とはそういう関係じゃなくてあいつはただのうっとおしい奴で私の物を勝手に持ってくだけの田舎魔法使いよ!!
「……なに一人で顔真っ赤にして悶えてるの?」
「煩い!! とにかくさっさと入るわよ!!」
恥ずかしさを誤魔化す意味でも、私はパンデモニウムの扉を開ける。
扉を開けると、無駄に広くて暗い廊下が続いている。
あれ、昔はまあ、暗さはこんな感じだったけれど、もっと紅魔館の妖精メイドみたいなのがいたような気が……。
「アリス、随分遅かったわね」
……暗い廊下の向こうから、凄く懐かしい声が聞こえる。
カツッ、カツッ、と暗闇から足音が、私達のところへと近づいてくる。
冷静に考えると凄いホラーな状況だけど、何を今さら怖がる事があろうか。いや、逆に怖いかもしれない。
……なんだか今の声が、凄く怒っているようにも聞こえたし……。
「ゆ、夢子姉さん……」
暗闇の中から現われる、金髪で赤を基調としたメイド服姿の、私達の一番上の姉に当たる存在、夢子姉さん。
元々釣り眼気味ではあったけど、今はなんだか、目つきがさらに鋭くなっている気がする……。
や、やっぱり怒ってる……でも何を怒ってるんだろう……?
「5年と10ヶ月12日、ついでに今の時間が18時13分だから……さらに13分遅刻」
……えっ? なに、それ。
「門限は6時だって言うのに、5年10ヶ月12日13分も遅く帰ってくるとはね……」
ふえっ?
……ああ、そう言えば、私がまだ魔界にいた頃は、幼かった姿のせいなのか、門限は6時までだとか言われてたっけ。
そしてそれを何時も無視して、夢子姉さんに怒られて、そして神綺ママに心配されていた。
……えっ、ちょっと待って、じゃあ今言った5年10ヶ月12日前って……。
私が、魔界を出ていった日……?
「夢子姉さん、まさかあの日からずっと……?」
「帰ってきたら、また説教しなきゃいけないからね」
夢子姉さんは、私が魔界を出て行った日からずっと、日数をカウントしていた?
私が何時魔界に帰ってくるかも判らないのに、それなのに、ずっと……?
夢子姉さんは、ずっと私が帰ってくるのを、待ってくれていたって事……?
「……ごめんなさい」
そう思った時、一番最初に出てきた言葉がそれだった。
誰にも告げずに、魔界を出て行った私。そんな私の帰りを、夢子姉さんはずっと待っていてくれた。
幻想郷に行ってから、連絡一つも遣さなかった私の事を、ずっと……。
ごめんなさい、夢子姉さん……。
「あら、随分素直になったじゃない。昔はまず先に『だって……』って言ってたのに」
ううっ……。
当時の自分の事を思い出して、かなり恥ずかしくなる。
何と言うか、昔の私は本当に子供っぽかったな……ある意味魔界を出て行って良かったかもしれない……。
「でも、それを言うのは私にじゃないでしょう?」
と、夢子姉さんは今までの釣り眼気味の目元を緩める。
昔の、厳しいけれど、妹である私達の事を何時も思ってくれていた、あの夢子姉さんの顔。
懐かしい夢子姉さんの笑顔、その優しさを感じて、なんだか眼の奥が熱くなった……。
ああ、でも、まだ早いよね。夢子姉さんの言う通り、もう一人謝らないといけない人がいるから。
「早く、神綺様にその顔を見せてあげなさい」
「……うん」
夢子姉さんはパンデモニウムの奥へと向き直り、私達はそれに続く。
こんな大人数でパンデモニウムの廊下を歩くなんて、初めてだろうなぁ。
魔界人で此処まで気軽にママに逢っていた存在は、私だけだろうから。
私にとってはママは『母』で、夢子姉さんたちにとっては『神』。
専属のメイドである夢子姉さんはともかく、それ以外の魔界人にとって、ママは偉大な存在……。
……でもないかも。
みんなママに一度でも逢えば、その天性の親バカに一度は触れているはずだし。
実はみんな、それなりにママに逢いに来てるのかも。ユキは久しぶりだって言ってたけど。
「そう言えば夢子姉さん、私が来ること知ってたの?」
ふと思い出して、それを訪ねてみる。
私がパンデモニウムの扉を開けた時、夢子姉さんは予め知っていたかのように迎えに来てくれたからね。
「魔界での出来事は基本的に私のところにすぐ来るようになってるのよ。
あなた達が回り道をしている間に、その話は聞いたわ。ああ、神綺様にはまだ伝えてないから大丈夫よ」
いや、別にそんな事は心配してないんだけど。
そもそも何で、ママにはまだ伝えてないんだろう……。
なんとなく判らなくもないけれど。ママの事だから、私が帰ってくるなんて知ったら、何をしでかすか判ったもんじゃない。
「そう。他のメイドさんは?」
「総出であなたを迎える準備をしてるわよ。……命令したわけでもないのに」
あー、なるほど、だからこんなに静かなのね。
別にただの里帰りなんだから、そんなことまでしなくていいのに……。
夢子姉さんも迷惑してるみたいだし。
「絶対姉さんが命令したんだよね……」
「相変わらず夢子姉様は嘘が下手ですわ」
「いわゆる“つんでれ”ってやつかな……」
「……………」
「後ろの4人、黙らないと壁に縫いつけるわよ?」
ユキ達がぼそぼそ呟いているのを聞き逃さない夢子姉さん。
私でも聞こえるか聞こえないかって程度だったのに……地獄耳……いや、魔界耳かな?
「……私は喋ってないのに」
マイはそんな事をぼやいていた。
「さて、アリス」
と、もう少しでママの部屋に着くといった辺りで、夢子姉さんが唐突に話しかけてくる。足は止めずに。
「実はあなたが帰ってくるのを待ってたのは、もう一つ理由があるからなんだけど……。
もうすぐ神綺様の部屋に着くし、今の内に話しておくわ」
「えっ?」
いきなり何の話だろう。
「あなたが魔界にいた時、門限を過ぎて帰って来る度に神綺様がどんな反応をしていたか、覚えているかしら?」
「えっ? ええ、それは勿論……」
と言うか、忘れられるわけもない。
幻想郷で多くの人間に出会って、人間の里で人形劇なんてものをしていると、多くの家族と触れ合う。
その中で、いわゆる“親の愛情”と言うのを何度も見てきて……。
……ママの魔界人への愛が、どれだけぶっ飛んだものであるかをよく理解したから……。
ちょっとだけ、当時のママの事を思い出してみる。
『ただいまー』
『アリスちゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!
うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!! こんな遅くまでどこに行ってたのよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
因みに回想中の時間は当時の18時05分ほど。
『あうぅ……お母さんアリスちゃんが誰かに誘拐されたんじゃないかって心配で心配で……。
ひょっとしたら崖から落ちたとか間違って人間界に行っちゃったとか、とにかくいても立ってもいられなくて……!!』
『ま、ママ? たった5分だけじゃん……』
『5分でもダメ!! お願いだからお母さんを一人にしないでえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
因みにほんの一部の回想であり、あくまでこれは“5分の遅刻”の時の反応だ。
参考までに、5分遅刻で帰って来た時の夢子姉さんの反応は。
『……まあ、5分くらいは仕方ないわね。次から気をつけなさい』
だけであった。
「あの時から既に病的な親バカだったけど、無論今でもそれは変わってないわ」
夢子姉さんは少し変わったわね。昔はママに対する悪口(?)はあまり言わなかったのに。
流石にこの6年で、ママに対する自分の態度が甘いって事に気付いたのかな。
「で、此処で問題だけど……。
5分の遅刻でも大騒ぎする神綺様が、そのエネルギーを6年近く溜めこんでいたら、どうなると思う?」
夢子姉さんに言われて、少し考えてみる。
たった5分であれだけの大騒ぎをするママ。それが6年分となると……。
……暗算じゃパッと出来ないから、取り敢えず物凄く大きい数字だという事だけ理解する。
「……あの、それって私下手したら死ぬんじゃない?」
「否定出来ないわ」
いや、夢子姉さんもそんなにさらりと言わないでよ。
「そう言えば、1ヶ月ぶりくらいに神綺様に顔を見せると、なんか凄い事になるよね」
「ええ、だから私はなるべく頻繁に顔を見せるようにしているわ」
「私は逆に滅多に逢いに行かないようにしてるよ……」
「……1ヶ月の凄さも、3ヶ月の凄さも、慣れればあまり変わらないからね」
後ろの4人の手痛い追い打ち。
なんだろう、本当に魔王に逢う前の旅人みたいな気分になってきた。
「私も最近の神綺様の威厳の無さには少し手を焼いていて……」
大きなため息が聞こえた。本当に苦労してるんだなこの人。
そんな会話をしているうちに、懐かしいママの部屋の前に到着する。
「まあ、一度神綺様を見て貰った方が早いわ。と言うわけで、部屋の中を覗いて見て」
「えっ? そんな事していいの?」
「大丈夫よ。時間が時間だし、絶対に気付かないから」
夢子姉さんの良く判らない発言。言われるがままに、私は静かにママの部屋の扉を開けてみる。
ああ、でも、これで6年ぶりにママの姿を見れるんだ……。
夢子姉さんは変な事を言っているけれど、それでも凄く楽しみだ。
ゆっくりと、ママの部屋の扉を開ける。
ママ、ごめんね6年も待たせちゃって。
さあ、早くその顔を見せ……。
「アリスちゃんアリスちゃんああ今日もアリスちゃんが帰って来ない何処かの悪い女に捕まってたりしてないかしらやっぱり幻想郷に迎えに行くべきかしらでもそんな事したらまた夢子ちゃんが五月蠅いしアリスちゃん何処で何してるのちゃんと魔法使いとして生きているのかしら変な輩と付き合って不良になってたりしないかしらちゃんとご飯食べてるかしら夜中に遊んでたりしないかしらああアリスちゃんアリスちゃん」
ぱたん。
暫しの間、廊下に凍りついた空気が流れる。
今私は何を見たんだろう。本気でそんな事を考えてしまう。
えっと、うん、中にいたの誰だっけ。そもそも誰かいたっけ。何か聞いたっけ。きっと気のせいよね。
「残念だけど、現実よ」
何故か心を読んできた夢子姉さん。あなたはさとり?
「……夢子姉さん」
「何かしら?」
「今部屋の中にいたのは誰?」
「神綺様」
「本当に?」
「疑いたくなる気持ちは判るけれど、本当よ」
「あっ、あれは呪いの呪文? 最近ママは呪いにでも凝ってるの?」
「神綺様程の力を持つ存在が、わざわざ誰かに呪いを掛ける必要なんてあるかしら?」
「あー、新しい魔法」
「ある意味魔法かもしれないわね。手軽に私のストレスを溜められる」
「えっ、じゃあ今のはなに?」
「アリス、そろそろ現実を見なさい」
「出来れば見たくないわ……」
ああ、なんだか頭痛がしてきた……。
それはまあ、夢子姉さんの言葉だとか元々のママの性格だとかで、ある程度予想のついた事ではあったけれど……。
まさか部屋で一人、虚ろな目をしてあんな呪いの呪文を唱えるようになっているとは流石に思わなかった。
「まさか、あれ毎日やってるの?」
「勿論よ。毎日6時過ぎから、1時間はああしてるわ」
勿論なんだ。しかも1時間も。
「……私のせい?」
「まあ、あなたのせいと言えば確かにあなたのせいなんだけど、別に責任を感じる必要はないわよ。神綺様が悪いだけだから」
それはどうなんだろう。
ママの事を考えずに、黙って魔界を出て行って、その上便りも寄こさなかった私も悪いんだし。
何時までも過保護(なんてレベルの話かは判らないけれど)なのもどうかと思うけどね。
「流石にあそこに一人で突入する勇気はないわ」
「大丈夫よ。私も無理だから」
何が大丈夫なんだろう。
「……夢子姉さん」
とにかく、あのママを何とかしないといけないという事だけは良く判った。
今の状態のままの前に姿を出したら、確実に死ぬ。そんな気がする。
責任は私にあるとはいえ、それは置いておいてまずはママをどうにかしないと……。
ああ、大丈夫。方法はあるから。物凄く簡単な方法が。
「ちょっと夢子姉さんの理念に反する事を今からするけど、止めないでくれる?」
「最初からそのつもりよ。そのためにあなたに帰ってきて欲しかったんだから」
左様ですか。なら遠慮なくやらせていただきます。
人形を取りだす。まさかユキに人形をプレゼントしなかった事が、こんなところで生きてくるとは思わなかった。
そして私は、さっとママの部屋の扉を開けて、人形を放り投げる。そしてすぐ閉める。
「ふえっ……? あれ、なんだろう、この人形……」
中からママのそんな声が聞こえた。うん、今多分手に取ったわよね。
こんな事をするのは、ちょっと心苦しいけど、仕方ない。自分に言いわけをしておく。
ごめんねママ。これも全部、ママと普通に再会したいが故の行動だから。許してね。
「Return In animateness」
* * * * * *
ママの部屋から轟く爆音。俯く私。そっぽ向く夢子姉さん。固まるユキ達。
うん、なんかちょっと爆音が強かった気がする。火薬の量間違えたかな。
まあ、ママの事だからこの程度で死ぬわけないか。傷を負ってるかどうかも怪しいし。
「ふえっ!? テ、テロ!? ふえええぇぇぇぇぇ!! 夢子ちゃん!! 夢子ちゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
涙目で部屋から飛び出してくるママ。カリスマは微塵もない。昔からだけど。
しかしまあ、火薬の量を間違えたかもしれないとはいえ、やっぱりママの身体には傷一つつけられなかったみたいだ。
まだ魔界の神様には勝てないかな……。
「落ち着いてください神綺様。テロではありません」
「夢子ちゃん!? そんなところで何してるの!? テロリストは誰!?」
「だからテロじゃないってば。あの程度の火薬じゃママを殺すどころか傷だってつけられないわよ」
「酷いわアリスちゃん!! ちょっとくらいお母さんを心配してくれてもいいじゃない!!」
「いや、うん、なんかもう余りにどうでもいい光景すぎて言葉も出ないね」
「サラちゃん!? 何時からそんな親不幸な事を言う子になっちゃったの!?」
「あ、神綺様。この間幻想郷に行った時のお土産を持ってきましたわ」
「今それを渡すところなの!? しかも何で今さら!? ルイズちゃんは何時も私に逢いに来てくれるのに!?」
「あれ、前回ルイズ姉が幻想郷行ったのって、3ヶ月くらい前じゃなかったっけ」
「ユキちゃん!? 話を引っ張る必要がない上にさらりと絶望的な真実を突きつけないで!!」
「……………」
「マイちゃんも何か言ってよ!! そんな生ゴミを見るような目で私を見ないで!!」
「もう、本当に昔と全く変わってないんだから……」
「そんな!! これでもアリスちゃんが出て行ってからずっとアリスちゃんの事を考え、て……」
ママの言葉が、二回目に私を目にしたところで漸く止まる。
まったく、どうして一回目は何事もないかのようにスルーするのよ。わりとショックだったわよ?
ついでに、それ何も変わってないから。それこそ昔のまんまだから。
「……アリス……ちゃん……?」
「どう? 少しは落ち着いて話せそう?」
さっきに比べれば全然落ち着いている様子。
落ち着いている、という表現が正しいかは判らないけれど、さっきの呪いの呪文の時に比べれば、まだ話しやすそうだ。
「……ふえぇ……アリスちゃん……アリスちゃぁぁぁん……!!」
ママの眼に、涙が溢れてくるのが見える。
なんだかサラみたいな反応をするなぁ。
……でも、やっぱり嬉しいな、こういう反応をしてくれるのは。
ありがとう、ママ。
「ただいm「アリスちゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
やっぱり前言撤回。あんまり嬉しくないかも。
「アリスちゃんアリスちゃんアリスちゃんアリスちゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「黙れ」
飛びついてくるママの顔面にクロスカウンター。
バキッ!! といい音が廊下に鳴り響いた。
「あうぅ、酷いわアリスちゃん!! 折角6年ぶりの再会なのにテロした上に顔を殴るなんて!!」
「知らないわよ。いきなり襲ってくる方が悪いんでしょ?」
「襲うなんてそんな!! お母さんはもう6年もアリスちゃんの事を抱きしめたくてしょうがなかったのに!!」
「常識の範囲内でなら構わないけど、いまママに抱かれたら多分全身骨折で入院するわ」
「えっ? アリスちゃん怪我してるの?
……まさか誰かにやられたの!? 誰に!? そんな奴はお母さんが全殺しに……!!」
「いや、うん、もう帰れ」
「私の家は此処よ!?」
「神綺様、戯れもそのくらいにしていただけますか?」
「ええっ!? 私何か間違った事言ってる!?」
本気で泣く寸前のママ。
魔界の神としての威厳は……。……いや、だからそんなの最初からないって。
「ママ」
私はママの下に一歩近寄る。
そして……
こつんっ
「ふえっ?」
ちょっとの力でママの頭を叩く。
「ばか」
本当にママは昔と何も変わってないわね。
私達の事になると、周りの事が何も見えなくなる。
なにも間違ってないわよ、ママの言ってる事は。
知ってるわよ。ママが、本当に立派な“母”である事なんて。
私はママ以上に、私達の事を愛してくれている母親を知らない。
ママ以上に、私の事を思ってくれた人なんて知らない。
だからさ、私はママに、普通に迎えて欲しいの。ママにとっての普通の基準がおかしいのかもしれないけどさ。
ただ一言、その言葉だけ言って欲しい。
「……ただいま」
私は、ママにそれだけ言う。でも、それ以上の言葉なんて必要ない。
だってそれで、ママが笑顔になってくれたから。
私が本当に逢いたかった、大好きな笑顔のママのところに、帰って来れたから。
そうだ、どんなに理由をつけても、どんなに誤魔化しても、やっぱりこの気持ちにだけは嘘を吐けない。
私が魔界に帰って来た、一番の理由は……。
……このママの笑顔が、見たかったから……。
「……お帰り……アリスちゃん……!!」
ゆっくりと、強く、温かく……。
ママは、私の事を抱きしめてくれた……。
* * * * * *
「ごめんねアリスちゃん、変に取り乱しちゃって」
「いいわよ別に。予想はしてたから」
「……遠回しに馬鹿にしてない?」
「ストレートに馬鹿にしたつもりだったんだけど……」
「酷いっ!!」
場所は少し変わって、ママの部屋の中。まだ火薬のにおいが少し残っているけれど、部屋は先ほど私達全員で片づけてある。
あー、ごめんみんな……こんな事の為に手を煩わせちゃって……。
「取り敢えず、食事が出来るまではあと30分ほどだろうから、それまではゆっくりしてなさい」
「そう、じゃあ夢子ちゃんもゆっくりしてなさいな」
「えっ、いえ、私は準備の方に掛かろうかと……」
「いいから」
ママに止められて、夢子姉さんは仕方なさそうにため息を吐く。
「それにしてもアリスちゃん、本当に大きくなったわね」
と、ママは私を見ながらそう言ってくる。
ルイズ姉さんにも言われた事だけれど、やっぱり家族にこう言われるのって、少し恥ずかしいな……。
「まだ捨虫の魔法は習得してないからね、もうちょっと成長するまで待ってるのよ」
先ほども言ったけれど、本気で勉強すれば捨虫の魔法を習得する事は出来ると思う。
だけど、今はもう少しだけ、人間と同じ歩幅で成長していたい。私だって、魔法使いとはいえ元は人間なんだから。
魔理沙たちと一緒に、もう少しだけ同じ目線で、同じ時間を、同じ人生を歩んでいたいから。
「あら、そう言う意味じゃないわよ。身長も確かに大きくなったけど、ね」
ふえっ?
「本当に大人になったわね。見るだけで判るわ。
ずっと、一人で幻想郷に行っちゃって大丈夫なのかって思ってたけど……杞憂だったみたいね」
ママが少しだけ笑う。
意外だなぁ。親バカのママが、私が魔界を出て行った事を肯定するような事を言うなんて。
……逆かな。親バカだからこそ、素直に受け止めてくれるのかもしれない。
私が成長した事を、素直に喜んでくれるのかもしれない。
そう思うと、頬が少しくすぐったくなった。
「……ねぇ、アリスちゃん」
と、急にママの表情が、真剣なものに変わる。
こんなママの表情を見るのは、わりと珍しい事だ。基本的にママは温和だから、余り何かに真剣になる事はしないし……。
「アリスちゃんが魔界を出て行ってから、ずっと聞きたかった事があるの。聞いてもいい?」
……ああ、なんとなくママが何を聞きたいのかを理解する。
私は無言で首肯した。
「……どうして、魔界を出て行ったの?」
ママの口から出てきた言葉は、私の予想と寸分違わなかった。
当然の事だ。私が魔界を出て行った理由は誰にも話していないし、気になるのは当然の事。
昔の私は、そんな理由である事を言う事が出来なかった。何故なら……。
……何故なら、絶対にママに迷惑がかかると思ったから。
この事を言ってしまえば、絶対にママは私の為に悩んでしまう。悲しんでしまう。
だったら、黙って魔界を出て行った方がまだ良かった。ママを必要以上に苦しませたくなかった。
当時の私は、そう考えて魔界を出て行った。
……でも、今ならもう話してもいいのかな。
私が黙って魔界を出て行って、一人で成長した事を肯定してくれた、今のママになら……。
「私は……」
閉ざしていた口を、開く。
「……自分がいかに弱い存在だったか、それを知っちゃったから……」
* * * * * *
霊夢と魔理沙が魔界で暴れた後、私の中にとある疑問が浮かんだ。
私は人間である霊夢と魔理沙に負けた。魔界の神であるママも、人間に敵わなかった。
私はその時、初めて人間の“強さ”を知った。
決して妖怪や魔界人に劣る存在なんかじゃない。強い力を持った人間がいる事を知った。
「たいした魔法も使えないくせしていきがってんじゃないわ!!」
魔理沙にそう言った自分が、物凄くちっぽけな存在に見えた。
そして、それだけの力を持った霊夢と魔理沙に、憧れすら覚えた。
……そして私は、自分が魔法使いである事に疑問を覚えた。
私は元は人間だった。
じゃあ、何で今は人間じゃないのか。
何で今は魔界で暮らせるのか。
……捨食の術を覚え、人間である事を捨てたから。
じゃあ、何で人間を捨てる必要があったのか。
何で、わざわざ魔法使いになる道を選んだのか。
……周りのみんなに、合わせたかったから。
私は、魔界の事が大好きだった。
サラの事が、ルイズ姉さんの事が、ユキの事が、マイの事が、夢子姉さんの事が、ママの事が、魔界人みんなの事が、大好きだった。
私だけは魔界人じゃないのに、私の事を家族だと言ってくれるみんなの事が、本当に大好きだった。
……でも、霊夢と魔理沙に出逢ってしまってから……。
強い心と力を持った人間に出逢ってしまってから……。
何故か、魔界人みんなの姿が、少し霞んで見えた……。
私だけは、ただの魔法使い。ママに造られた魔界人じゃない。元々は人間。
どんなに魔界人に近付いても、魔界人になる事は出来ない。
じゃあ、何で私は、魔界にいるのか。
私は魔界にいていいのか。
何で私は魔界人じゃないんだろう。
私は一体、何なの?
何で私は、人間である事を止めてしまったの……?
その答えに気付いてしまった時……。
……私は、漸く自分の弱さに気がついた……。
* * * * * *
「……きっと、人間だった頃の私は、凄く心が弱かったんだと思う」
あらかたの理由は話して、私はそう結論付けた。
「人間じゃ、魔界人であるみんなと一緒になれない。みんなより弱い存在になってしまう。
それが嫌だった。私には、魔界以外に帰る場所なんてなかった。居場所なんてなかった。
馬鹿だよね。今はこんなに人間の事を認められるのに、昔はそんなにあっさりと人間を捨てちゃうなんて……」
今はもう、その時の自分を殴ってやりたいくらいだ。
魔界のみんなに併せて、人間を捨てた私。魔界にいたかったが故に、人間を捨てた私。
昔は、それが当たり前だった。それ以外の発想なんて、私にはなかった。
だけど、霊夢と魔理沙と出逢って、人間の強さを知って、そして……。
私は、私の弱さを知った。
「本当に、嫌になった。だって、魔界のみんなと一緒にいたかったのに、私はみんなの事を信用してなかったんだもん。
私の心が弱かった。私が人間である事を認めてくれたみんなの事を、心のどこかで信用してなかった。
……人間の私は、人間のままだと、何時かみんなに見捨てられてしまうんじゃないか、そう思ってた……」
人間だった頃の私が、いかに心が弱かったか。いかにみんなの事を信用していなかったのか。
魔界のみんなが、私の事を捨てるはずがないのに。それなのに、信用出来てなかった。
そう思った時、私は自分が信じられなくなった。
弱い心を持った自分が、嫌いになった。
……そして、魔界人のみんなの事を、まともに見る事が出来なくなった。
「今まで一緒にいたみんなの事を、信じていなかった。その事が申し訳なくて、情けなくて、みじめで……」
私は魔界を離れた……。
いや、離れたなんて、生易しいものじゃない。
私は魔界から、弱い自分から、逃げたんだ……。
結局、何処までもあの時の私は弱かった。
霊夢や魔理沙、魅魔や幽香に勝てなかった。魔法使いとして、弱かった。
みんなの事を信じられず、一人魔界から逃げ出した。心も弱かった。
「アリスちゃん……」
私が言葉を止めると、ママの私を呼ぶ声が聞こえる。
「ごめんなさい、ママ。
でも、こんな事は絶対に言えなかった。言ってしまえば、ママは絶対に自分を責めた。
私が人間だという事を打ち明けてしまった事を、人間に負けてしまった事を……」
一つだけ、私は自信を持って言える事がある。
それは、夢子姉さんを除いた誰よりも長く、ママの傍にいたという事。
子供だった私を育ててくれたママ。そのママの傍に、ずっと寄り添っていた私。
魔界人の誰よりも、私はママの事を理解しているつもりだ。
だからこそ、この事を言えばママがどう思うかが判ってしまった。
だから……だから、言えなかった……。
私のせいで、ママを苦しませたくなかったから……。
「……ありがとう、アリスちゃん」
ふえっ?
「私はてっきり、アリスちゃんが魔界を嫌いになったから出て行った、って思ってたの」
「そ、そんなわけないじゃない」
慌てて否定する。
確かに何も言わずに出て行ったら、そう思うのも無理はない気がするけど。
「でも、アリスちゃんは今、ちゃんと私達に気持ちを打ち明けてくれた。
嫌な思い出を、全部隠さずに話してくれた。強くなったのね、アリスちゃん……」
ママ……。
「アリス、私達は誰もあなたの事を見捨てたりしないよ」
「あなたを見捨てるなんて事、私達は絶対にしない。約束するわ」
「ごめんねアリス。私達は、アリスが苦しんでいるのに気付いてあげられなかった」
「……でも、今、アリスは話してくれた。苦しいのを我慢して……」
サラが、ルイズ姉さんが、ユキが、マイが、言葉を繋いでいく。
「ありがとう、アリス。私達の事を、信じてくれて」
夢子姉さんが、何時になく優しい笑顔を見せてくれる。
ああ、もう、どうして私は家族の事を信じられなかったんだろう。
こんな素晴らしい家族達の事を、どうして信じられなかったんだろう。本当に自分を殴ってやりたい。
でも、今はそれ以上に、みんなの言葉が嬉しかった。
こんな私の事を、それでも家族だと言ってくれるみんなの優しさが、心に染みる。
漸く私は、少しだけ強くなれた気がする。
弱かったあの時の自分に、何歩かリード出来た気がする。
もう、私の大切な家族達を、疑ったりなんてするものか。
だから……。
「ママ、今の事を話した代わり……っていうわけじゃないけど……」
私は一つ、ママにどうしても聞きたい事があった。
さっきから、再三出している疑問、それを今この場で解消したい。
漸くみんなの事を信じられるようになったんだ。だから、私は真実を知りたい。
「どうして私だけ、人間だったの……?」
ママの顔が、一瞬固まる。
「幻想郷で暮らしたりして気付いた事なんだけど……。
魔力は人間にとって、そんなに良いものじゃない。長時間浴び続けていれば、身体を害することだってある。
私が元々人間だっていう事は、もう疑いようのない事。それは私自身が一番判ってる。
なのに、何で人間だった頃の私は、魔界にいる事が出来たの?
そもそも、何で私は人間だったの? 私の本当の親って、いったい誰なの……?」
今まで、何度かこの質問はした事がある。
でも、ママはその都度誤魔化すだけで、何も教えてはくれなかった。
きっと、私には言えないんだろう。ママを困らせたくなかった私は、余り深く追求する事は出来なかった。
ただ、私の出生が良いものじゃないって事だけは、理解しておいた。
あれから6年。
今なら、話してくれると信じてる。
私が少しは強くなった事は、ママも認めてくれた。だから……。
「神綺様、その事は……」
しかし、夢子姉さんはあくまで止めようとする。
ああ、やっぱり良いものじゃないんだな。寧ろ、最悪なのかもしれない。
だからこそ、私はその真実を聞きたいんだけどな……。
「いいのよ、夢子ちゃん。アリスちゃんはもう十分強くなったんだから」
ママはすっと立ち上がって、一歩私の方に歩み寄る。
「アリスちゃん、最初にこれだけは言っておくわ。
この事を聞けば、アリスちゃんは後悔するかもしれない。私達の事を嫌いになるかもしれない。
……それでも、真実を受け止める自信はある……?」
優しい、だけど真剣な眼差しで私を見つめるママ。
まさか此処まで言われるほどに、私の出生って悪いものなんだろうか。
でも、大丈夫。
真実以上の事は何も求めない。それ以下の事も。
魔界で育った、ママの娘として。
アリス・マーガトロイドとして、真実を聞きたい……。
私は、無言で首肯する。
「……そう、判ったわ」
ふぅ、と一つ息を吐く。
夢子姉さんも諦めたのか、同じように溜息をついた。
そして、ママの口がゆっくりと開いた。
「アリスちゃん、一番最後に私が造った存在って、誰だと思う?」
えっ?
最後の魔界人って……流石にそんなのは知らない。
確か私の見てきた限りでは、ママは一度も魔界人を創造してはいない。
だから、私が生まれる随分前に、魔界人を造るのは止めたんだろうって、勝手に思ってたけど……。
「……判らないわよね。でも、今のアリスちゃんが知っている限りの魔界人の他に、もう一人だけ私の娘がいるのよ」
うん?
ママの言葉に、少し違和感を覚える。
私の知っている限りの魔界人のほかに、もう一人だけママの娘がいるというのは判った。
でも、その誰か……仮にXとしておくと、ママはXの事を『魔界人』とは言っていないのだ。
無理やりにでも、ママは“魔界人”という言葉を使っていない。
ママの娘であるのに、Xは魔界人じゃない、ってこと……?
その疑問は、次のママの言葉で一瞬で解消された……。
「私が最後に造った存在、それがあなたなのよ、アリスちゃん」
……えっ……?
「で、でも、私は人間だって……」
ママの突然の告白に、私の頭は一瞬でぐちゃぐちゃになった。
私がママに造られた存在? でも、私が人間である事は、ママも夢子姉さんも、みんなが認めている事。
私は魔界人じゃないのに、ママに造られた存在?
どういう事なのか、全く訳が判らなかった。
「そう、アリスちゃんは確かに人間よ。でも、アリスちゃんを造ったのが私である事も事実なの」
だから、それはどういう事なの?
「……魔界人はみんな、魔力の篭った石を媒体として生まれた存在なのよ」
夢子姉さんが、唐突にそんな事を説明してきた。
魔力の篭った石って、魔界でよく見かけるやつ?
物凄くメタな言い方をするなら、ルイズ姉さんのステージの最初で降ってくる、あれの事?
「勿論、魔界人を造るのには、それに適した魔法石が必要なんだけど……。
私は一度だけ、その魔法石を使わずに、別の“ある物”を使って、魔界人を作ろうとした事があるの」
魔法石を使わずに、魔界人を?
多分、それが私だって言いたいんだろうけど……。
「ある物、って……?」
私がそれを聞くと、ママは俯いて、少しだけ身体を震わす。
きっとその事が、ママがずっと私にこの事を隠し続けてきた、一番の理由なんだろう。
本当に言いたくない事なんだろうな。ママが悩んでいるのが、苦しんでいるのが、嫌でも伝わってくる。
「神綺様、やはり……」
夢子姉さんが、ママの肩に手を置く。
夢子姉さんも、これ以上ママが苦しむ姿を見たくはないんだろう。
私だって、こんなママの姿を見ているのは、どうしようもなく辛い。
でもそれ以上に私は、真実を聞きたい。
お願い、ママ……。
「……人間よ。死んだ人間の身体を使って、私は魔界人を作ろうとしたの」
……一瞬、私の中の時間が止まったような気がした。
そんな中でも、不思議とママの声は耳に入ってくる。まるで、直接私の脳に語りかけているかのように。
「私が魔界人を造って、そしてこの魔界を創造したのは、一人でいる事が嫌だったから。
神として生まれて、神として生きて、でも周りには誰もいなくて……それが凄く、辛かった……。
誰でも良かった。どんな方法でも良かった。だから私は、魔法石を媒体に、最初に夢子ちゃんを造った」
この時初めて、私はママが魔界を造った理由を知った。
神とは言え、やっぱりママも意思を持つ存在。孤独なのは、何より辛かったんだと思う。
だからママは魔界を、そして魔界人を……。
「でも、最初からアリスちゃんの知っている姿だった夢子ちゃん達は、何時までも私の傍にはいてくれない。
別に、それが悪いっていうわけじゃないの。寧ろ私から自立してくれた方が、みんなの母親としては、嬉しかった。
……だけど、みんなが自立していくにつれて、私はまた一人になって行った……」
静かに、呟くように私に語りかけるママを、寂しげな眼差しで見つめる夢子姉さん。
……夢子姉さんが何時もママの傍にいる理由が、漸く判った。
昔はただ、元々夢子姉さんがそう言う目的で造られた魔界人なんだと思ってたけど……。
それは違ったんだ。夢子姉さんは、ママの事を誰よりも理解していたから、ずっとママの傍に……。
「夢子ちゃんは何時も傍にいてくれたけど、私にはどうしても、何かが欠けているような思いがずっと残ってた。
神であるより先に、私は母親だった。魔界人みんなの母親でありたかった。
私の事を、魔界の創造神じゃなくて、母親だと思ってくれる、そんな存在が欲しかった……」
ママのその言葉を聞いて、夢子姉さんよりも過剰に反応したのは、横で話を聞いていたユキ達だった。
勿論、ユキ達もママの事は母親だと思っていると思う。でも、ユキ達はママの事を『神綺様』と呼んでいる。
ママの事を自分達の母親だと思っていても、やっぱりママが『神』であるという気持ちを、拭いきれなかったんだろう。
その事がママを苦しめているだなんて、微塵も思わずに……。
「だから私は、最後にもう一人の魔界人を造ろうと思った。
ずっと私の傍にいてくれる、本当の『娘』でいてくれる存在を造ろうとした。
……でもね、その事は私が魔界人を創造する事を辞めた理由と、大きく相反する事だったの」
ママの言葉を、私は黙って聞く。
「私は魔界人のみんなを造って、そして魔界を造って、そこで暮らすみんなの事を見てきて……。
ああ、命って言うのは、軽々しく造っていいものじゃない、そう思うようになったの。
だって、魔界で生きているみんなの姿が、凄く輝いてたから。みんなで楽しく生きている時の笑顔が、眩しかったから。
こんな素晴らしい命は、そんな簡単に造っていいものじゃない。いくら私が神だからって、命は弄んでいいものじゃない。
……でも、それでも、私は『娘』が欲しいという気持ちも、捨てる事が出来なかった。私はどうすればいいのか、ずっと迷ってた。
そんな時に、サラちゃんが私に、こんな事を報告してきたのよ。
『魔界の門の傍で、人間の子供の死体を見つけた』って……」
どうやら、此処からが本題のようだ。今まで以上に、私は集中してママの言葉に耳を傾ける。
「サラちゃんはただの業務連絡として報告してきたんだろうけど、私はチャンスだと思ったわ。
だって、それなら新しい命を造る、言いわけに出来たんだもの。
死んだ人間の子供に新しい命を吹き込めば、その人間を助けると同時に、私の娘になって貰える、そんな言いわけをね」
そのママの話を聞いて、私はなんだか複雑な気持ちになった。
随分滅茶苦茶な事を……それだったらまだ、普通に魔界人を造った方が良かったんじゃないだろうか。
人の死体を使って新しい命を造る方が、よっぽど命を弄んでいる気がしなくもなかった。
……でも、ママのその時の気持ちを思うと、そして今の自分の事を考えると、頭ごなしに否定出来る事でもない。
ママは本当に寂しかったんだ。自分に言いわけをして、人の命を操ってでも、寂しさを埋め合わせたかったんだ。
丁度、魔界を出て一人になった私が、孤独から人形作りを始めたように……。
「確かに、その人間に新しい命を吹き込む事には成功したわ。だけど、何を間違えたのか、それ以上の事が出来なかった。
歳を取るし、魔力に若干耐性があるとは言え、身体も強くない。それこそ、媒体となった“人間”そのものだった……」
ママのその言葉が、重く私に圧し掛かる。
若干端折ってはいるけれど、要するにママは、魔界人を造る事に失敗したんだろう。
魔界人を造るのが久しぶりだったからか、人間の死体を媒体にしたからか、それは判らないけれど。
そして話の流れからして、その時生れた人間というのが、私の事……。
「じゃあ、私は……」
私がその時の“失敗”から生まれた人間だって言うなら……。
私は魔界人の出来損ない、失敗作って事……?
ママが魔界人としての創造に失敗したから、私は魔界人ではなく、人間として……。
何時ものママなら、絶対に「それは違う」と慌てて訂正したと思う。
だけど、ママは険しい顔をして俯くだけで、なにも言おうとはしなかった。
そのママの反応が、今までの事が全て真実である事を、証明していた。
「……ごめんね、アリスちゃん。こんな私に、アリスちゃんの親を語る資格なんてないわよね。
でも、これだけは言わせて。私はアリスちゃんが生まれてきてくれて良かったと思ってるし、ましてや失敗だなんて一度も思った事はないわ。
アリスちゃんがいなかったら、私はきっと、孤独に押し潰されていたから……」
ママが必死に弁解している。
だけど、私にとってはもう、そんな事はどうでも良かった。
私はママに造られた、最初で最後の“人間”。
人間の身体を使って造られた、失敗作の魔界人。
確かにママの言う通り、聞けば後悔するかもしれないし、ママの事を嫌いになるかもしれない。そんなレベルの話だ。
でもそれが、私が探していた真実……。
それを知った私は、ただ……。
「ありがとう、ママ」
……ただ純粋に、嬉しかった……。
「アリス……ちゃん……?」
唖然とするママや夢子姉さん達。
そんなに、私が笑っているのが不思議なんだろうか。
まあ確かに、私は元々死人、魔法で蘇ったゾンビみたいな存在だと思うと、ちょっと不気味だけど……。
それ以上に、嬉しい事があった。
「私の本当の親って、やっぱりママだったんだ……」
私がママに造られた存在だという事が、何より嬉しかった。
ずっと、私だけはみんなと違う存在だと思っていたけど、そうじゃなかったんだ。
私は魔界人じゃないけれど、それでも夢子姉さんたちの姉妹だった。
血の繋がった……という言い方はおかしいかもしれないけれど、それでも、実の姉妹だったんだ。
そして、ママの本当の娘だったんだ……。
私にとっては、その事実だけで充分よ。
「失敗作だとしても、何でもいい。私がママの本当の娘であるなら、それ以上は何もいらない」
この言葉は嘘なんかじゃない。本当に、私はそう思っている。
別にさ、今さら自分がゾンビだなんて言われたところで、驚く必要なんてないわよ。
いやまあ、驚いたと言えば驚いたけれど、そんなのは大した事じゃなかった。
だって幻想郷には、もっとわけが判らない連中が沢山いるんだしね。
それに、アンデッドの魔法使いなんて別に珍しくもないし。
そして、そんな幻想郷の“仲間”に出逢えたのは……。
「ありがとう、ママ。私を造ってくれて。
ママが私を造ってくれなかったら、私はただの死人で、こんな幸せを味わう事なんて出来なかったんだから」
ママと、夢子姉さんたちみんなのお陰なんだ。
「アリスちゃん……」
今まで険しい顔をしていたママの表情に、漸く光が戻ってくる。
「まだ、私の事を“ママ”って呼んでくれるの……?」
「当たり前じゃない。私の母親は、ママなんだから」
一瞬の躊躇いもなく、返答した。
だって、ママはママなんだから。私にとって一人の、かけがえのない存在なんだから。
「アリスちゃん……!!」
ぼろぼろと、大粒の涙を流し始めるママ。
でもその涙は、悲しいから流しているわけじゃない。そんなの、ママの笑顔を見れば判る。
「ありがとう、アリスちゃん……ありがとう……!!」
ママは私の事を、ぎゅっと抱きしめてくれた。ママの優しさが、全身に伝わっていく。
ああ、良かった。私の居場所は、ちゃんと此処にあったんだ。
私はこの魔界に、いていい存在だったんだ。
頬を、温かい涙が滑り落ちて行く。
なんだ、自分で言っておいて否定するのもなんだけど……。
私は失敗作でも何でもない。寧ろ、人間に生まれて良かったんだ。
魔界人だったら、確かにずっとママの傍に居られたかもしれない。でも、幻想郷に行く事はなかったと思う。
霊夢や魔理沙、いろんな仲間と触れ合う事もなかった。
こんな幸せな気分を、味わう事は出来なかった。
ありがとう、ママ……。
私はママの身体を、強く抱き返した……。
「……アリス、ごめんなさい」
抱き合う私とママに対して、唐突に夢子姉さんが声を掛けてきた。
「夢子姉さん……?」
「あら、私もまだ“姉さん”なの?」
うー、夢子姉さんも意地悪だなぁ。
別に今さら、そんな事どうでもいいじゃない。
「ママがママなら、姉さんは姉さんよ」
「そう、ありがとう」
夢子姉さんは優しく微笑む。
「私も、神綺様からその話は聞いていたわ。アリスが死体を使って造られた人間だという事は。
でも、私はそれを絶対に話してはいけないと思った。あなたがどんなに成長しようと、それだけは駄目だと思ってた。
その事を知ってしまえば、あなたが私達の元から離れてしまうと思ったから。神綺様を、悲しませる事になると思ったから。
……だけど、それは間違いだったみたいね」
その時の夢子姉さんは、何処か遠くを見ていた。
きっと今言っているように、私の出生をママから聞いた時の自分の事を見ているんだと思う。
「あなたは私が思っていたよりも、ずっとずっと強く成長していた。
だけど、あなたの成長した姿を見ても、私はそれを話してはいけないと思ってしまった。
あなたが私達を信じられずに魔界を出て行ったというなら、私はあなたの心の強さを信じられなかったのね……。
ごめんなさい、アリス」
ああ、やっぱり夢子姉さんは夢子姉さんだな。
こんなにも素直に自分の過ちを認められる人間なんて、そういないと思う。夢子姉さんは魔界人だけどさ。
逃げる事しかしなかった私なんかより、ずっと立派だよ、夢子姉さん。
「私も、ごめんねアリス。さっきは……」
夢子姉さんとは違い、やたら言葉を濁して謝るサラ。
さっき? さっき、って……。
……ああ、あれの事か……。
「それ、今謝るところなの?」
「え、いや、なんだか今謝らないとタイミングを逃しそうな気がしたから……」
アホかこいつは。
「でも、本当にごめん。アリスは大切な家族なのに、そのアリスに対してあんな事言って……」
だから、そんなどうでもいい事で謝らなくてもいいってば。
ほら、夢子姉さんやルイズ姉さん達も、意味が判らないって顔をしてるじゃない。
サラの名誉のために、この事は夢子姉さん達には話さないでおこう。
「その気持ちだけで充分よ。それに、私はあなたにお礼を言わなくちゃいけないんだから」
そして、サラもルイズ姉さん達と同じ表情になる。
気付いてないのね。今日魔界の門でサラに出逢った事が、本当は重要な分岐点だったって事に。
「正直に言うと、私は魔界の門であなたに逢うまで、本当に帰って来ていいのか、ってずっと悩んでたの。
でも、サラがある事を言ってくれたおかげで、私は此処に来る勇気を貰えたのよ」
サラの頭の疑問符がどんどん増えて行く。
まだ判らないの? サラがあの一言を言ってくれなかったら、私は多分、明るい気持ちで魔界に帰って来れなかったのよ?
覚えてるかしら?
パンデモニウムに来るまでに、私の事を『家族』だって言ってくれたの、サラだけなんだよ……?
勿論、ルイズ姉さん達は私を家族だと思ってない、っていうわけじゃないけど……。
サラが私の事を『家族』だって、そう言葉に出して言ってくれたおかげで、私は魔界に帰ってくる事が出来た。
魔界のみんなが、私の事をまだ『家族』だと思ってくれている。その事を、サラが教えてくれたから。
ありがとう、サラ。私に、魔界に帰ってくる勇気をくれて……。
「アリス、今度旅行に行く時は、あなたの家に遊びに行ってもいいかしら?」
「ええ、勿論。私は魔法の森に住んでるから、何時でも来て。
あ、でも『霧雨魔法店』とかいう場所と間違えないでね?」
「あ、じゃあ今度ルイズ姉が幻想郷に行く時は付いて行かないとね」
「……足手まとい、か……」
「……マイ?」
「……ん?」
「あれ? 気のせいかな?」
気のせいだという事にしておきなさい。きっとそっちの方が幸せだから。
折角だし、ルイズ姉さんが来る時は魔理沙も呼ぼうかしら。
きっと吃驚するだろうな。あの時の魔法使いと今の魔理沙が、同一人物だなんて知ったら。
そして、魔理沙は顔を真っ赤にするんだろうな。恥ずかしさで。
ああ、本当に私は幸せ者なんだ。
こんなに素晴らしい家族を、こんなに沢山持っている妖怪なんて、私以外に絶対にいない。
魔界人のみんなは、家族のみんなは、魔界に生まれた事は、私の誇りだ。
神様、ありがとう。この世界に、私を居させてくれて。
……ありきたりな感謝の言葉だったのに、それが真の意味で本当の事だと思うと、少し可笑しかった。
「ねえ、アリスちゃん」
当の神様が、優しい笑顔で私に語りかけてくる。
「さっきも言った事なんだけど……もう一度だけ、言わせてもらっていい? 今度は、みんなで」
えっ?
一体何の事だろう、そう思う前に、ママは私を抱いてくれていた手を離す。
そして二歩ほど後ろに下がり、その両脇に、夢子姉さんとルイズ姉さんが並ぶ。
夢子姉さんの更に隣に、ユキとマイが。ルイズ姉さんの隣にはサラが。
私の大切な家族達が、一列に並ぶ。
みんながみんな、同じような温かい笑顔を浮かべる。
その姿は本当にみんな良く似ていて、みんながママの娘である事を思わせる。
……きっと、その時の私の顔も、ママ達に似ていたんだろうな。
「「「「「「お帰り、アリス」」」」」」
タイミングを合わせる仕草もなかったのに、見事なくらいにピッタリ、その言葉は重なった。
……ああ、もう、みんな酷いな……。
そんな六人分の『お帰り』を、私一人で受け止められるはずないじゃない。
私には、みんなの思いを受け止めきれないわよ。私には、あったか過ぎる……。
駄目だ、もう我慢なんて出来ない……。
「……た……ま……」
私の目から、涙がぼろぼろと零れ落ちて……。
「……ただいま……みんな……!!」
二度とこの絆を手放さないように、私は大切な家族達を、今一度強く抱きしめた……。
でも旧作は設定ぐらいしか知らないからメタなとこはわからなかったが良かったですよ
どこの小説読んでも神綺様はアリスの事になると暴走するなww(だがそれがいい)
どこかで旧作は手に入らないかな~
独りじゃない!!!
外伝と合わせて100点以上付けたい
基本的にシリアスになりがちなネタを家族愛という形に持っていったのは流石。
次回作にも期待しています。
旧作は未だノータッチですが楽しませて頂きました。パッと見で判らなかったくせにかっちりいい所を持ってくサラさんに惚れざるを得ない。
蛇足:某カードゲーム…VISIONなら多少分かりますがアレの魔界デッキは強い。
やはり家族はいいものですね。
だから魔理沙のことは気にしなくてもおkだと思う次第w
魔界人ってのは「種族」だと思ってない自分としてはまあ
別にアリスが人間でもそうでなくても問題なし
それにしても親ばかに描かれるのはもはや宿命ですか神綺様w
それはそうと、神綺様のアホ毛描写が無い…だと。個人的に彼女は親馬鹿とアホ毛により構成された
生き物だと思ってますので。
>幻想郷に行く予定だったがら→だったから
>全部魔理沙せいよ→魔理沙のせいよ
>そのままの傍に→そのママの傍に、以上です。
ほんわかとしたあたたかい雰囲気が良かったです。
外伝もあわせて楽しませていただきました♪
アリスは態度は少し冷たいのに
誰にも負けない暖かさを心に宿しているのは
こんなに素晴らしい家族がいるなら当たり前でしょうか
でも魔理沙を見ていると、家族って定義が曖昧になってきます。
魔理沙にとって霊夢もアリスも魅魔様もみんな家族と同じなんでしょうね
素晴らしいハートフルファミリー、いえ、ハートフルワールドでしたb
いい話でした、アザーッス!!
そして夢子姉さんカッコイイです…GJとしか言いようがない
みんな優しく楽しそうで、暖かい気持ちで見ることが出来ました。
神綺様が親馬鹿すぎてどうなる事かと思ったけどww