雲山を火で炙ったら土に吸い込まれていくような今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?
命蓮寺の皆は、元気でやってます。ムラサは失踪しましたけど。
カレールーと福神漬けの分量を間違えて皿に盛ったら、海兵隊だか水兵隊だかよくわからない厳ついおっさんが急に出てきてそのまま連れてかれてしまったんです。
もう一年経つんですけど、いつ帰ってくるんでしょうね。
「逃げてくラーメン屋は良いラーメン屋だ。撤退せずに不味いラーメン出すラーメン屋はよく訓練されたラーメン屋だ。ほんと外食産業は地獄だぜフゥーハハハ!」
『ムライチ』というカレー屋を出店してからもう半年が過ぎようとしていますが、私は元気です。
お師匠さんの店で半年みっちり修行して、私もカレーに開眼しました。
いままでのカレーはカレーという名がついていたラーメンです。
カレーはナンかライスで食べるものだということを知ったのも、お師匠様と出会ってからだったんです。
同じ小麦粉なら別にいいじゃん、その甘えが私のカレー道を妨げていたんです。いま、私は幸せです。
「ムラムラカレー入ります!」
ムラムラカレーは私の店の人気メニュー。
具は入っていないんだけど、私が直接持ってくだけで他のカレーの三倍で売れる。マジボロい。
カレー粉とかそこらへんで買ってきたし。やべぇ。億万長者間近。
「ナズー! このカレー辛いです! 無理です!」
「ハハハご主人はダメ虎だな。ほら、口の回りにカレーがついているよ」
でもあのネズミどうにかしろ。資本主義にもほどがある。
なんでお札をナプキン代わりにしてんだよ落ち着けよ。
涙目になってありがとぉとか言ってる星も星だよホント。何してんだよ。木の回りまわらせてバターにするぞ。
「夢を売ると金が手に入る。金で笑顔も買える。でも金があっても、真の宝は買えないんだよ? わかるかい?」
札束でベシベシ叩きながらどや顔でそう語る、むしろ騙るネズミ。この二人、セットにして置いてくだけで金がじゃんじゃん溜まるっぽい。
でも命蓮寺が困窮してもまったく金出さない。鬼畜。
曰く「清貧に喘ぐ白蓮を眺めるのが至情の娯楽だから」だそうだ。私も全力で同意した。
でも、「スカートを1センチ切って売るとこんなにお金になるんですよ」って微笑まれたときはちょっとどうかなって思ったね。
だからいまは、命蓮寺にも送金を欠かさないようにしてる。
生かさず殺さずが百姓との付き合い方だと、昔のえらい人も言っていましたしね。
「ムラムラカレー三個入りまーす!」
「わかりましたー!」
なんだかんだと、私は充実しています。
バイトはじめました。姫海棠はたてです。
こないだ携帯電話とかスイーツですね! 見せてください! って言われたから風祝に貸したらそぉいされました。
「キャラが被ってますから早めに潰します」
全然被ってないです。
河童に新しいのを作ってもらおうと思ったら、新規契約じゃないと安くならないとかで凄い額提示されちゃったんで、カレー屋でバイト中なんです。
いやでもホントやめてください。だから、無言で脛蹴ってくるのやめてくださいってば。
ここバイト先なんで、私ニコニコしてないといけないんで。
というかキャラ、どこが被ってるんですか。全然違わないですか。私、烏天狗ですよ。
「どことなく、学生さんに見えますからね。あとムラムラカレーお願いします。露出マシマシチョモランマで」
この人まだ自分が女子校生だと思ってるよ痛いです脛蹴らないでください。
「ムラムラカレーはいりまーす。露出マシマシでお願いします!」
露出マシマシは完全予約制の個室案内で、なんと値段が通常の5倍になる。
さらにそこでトッピングでチョモランマを足すと10倍の値段の料金。
経営者としての私は嬉しいけど、女としての私を削ってる気がしてならない。
見えそうで見えないぐらいまで詰めたミニスカート(幻想超重力理論)
おへそが見えるセーラー服とか、着るだけで全身が火照ってどうにかなりそう。
「ム、ムラムラカレー露出マシマシチョモランマ入ります……」
嘗め回すような視線を感じながら個室に入ると、すっかり常連客になった風祝が立っていた。
曰く「貴方を見ていると外を思い出すんです」だそうだけど、絶対嘘だと思う。
でも金払いはとてもいい。神様が泣いてる。
「毎日の重労働を癒すには、やっぱりムラムラカレーに限りますね……」
そう言って口に具無しカレーを運ぶ様は凄く滑稽だ。
「し、失礼します」
「ん」
口元をナプキンで拭う。これもトッピングに含まれている。
チョモランマとは、トーク、拭い、耳かき、肩揉みetc...そういった全てのトッピングメニューを入れた豪華なもの。
しかも絡みを10段階で選べて、6以降の数字はVIP会員にしか注文できない。
風祝は、幻想郷唯一のVIP客だった。
「延長お願いします」
「喜んでー!」
夢を売ると、金が手に入るんです。
里に競合店が出来た。巫女師父メイド喫茶とかいう頭のおかしい店だった。
なんでも、巫女さんと師父とメイドがそれぞれ、和食、中華、洋食を出してくれる店なんだそうだ。
味もしっかりしているし、サービス内容は完全にこちらのパクりだった。
しかもうちのバイトも引き抜かれてしまって、あっちでウェイトレスをしている。
もうみなまで言わなくてもわかるかもしれない。
経営者は、守矢の風祝だった。通い詰めていたのは、手法を盗むためだった。
『早苗家』はすぐに幻想郷でトップシェアを誇るようになって、『ムライチ』もこれ以上赤字が増える前にと店を畳む日が来た。
がらんどうの店内。煌びやかに飾り立てていたのが、寂しさを余計に際立たせる。
「もう、終わりか」
盛者必衰が世の定め、か。
今日が最後の日、けれど客は誰一人として来なかった。
「はぁ……」
どの面下げて命蓮寺へ戻ればいいんだろう。
ナズーリンは相変わらず訴訟で儲けていて豪遊し放題。
同じように見えて私とは、全然違った。
「空いてるかしら?」
「い、いらっしゃいませ」
はっとして顔をあげると、一輪が呆れた顔で立っていた。
今まで一度も、来てくれなかったのに。
「ムラムラカレー一つお願いね」
一輪はそう言って席についた。
ムラムラカレーは具無しカレー。ただのぼったくり。
中身が無いものを高く見せて売りつける。
資本主義の申し子みたいなカレーを一口食べてから、一輪は微笑んだ。
「戻ってきなよ、ムラサ。具無しカレーだって、皆で食べれば美味しいよ」
不覚にも、涙が溢れた。
いや、面白かったですけど
ブートキャンプも最高だったけど、今回も素晴らしい!
何気に最後はムラいちフラグ!?
ちびくろサンボwwwwwww
とりあえず俺もチョモランマ10段階頼みたいです
露出マシマシあたりから頭がぼ~っとしてきました。
一輪さんはムラサの母港!
これ宇宙の真理ネ
相変わらずの物凄い展開(ほめことば)です。楽しめました。
ナズーリンのスカートの切り取ったような穴の意味がこれで判明した。
チョモランマ10段階はナプキンで拭うのでなく舐め取ってくr
それはそれとして師父麻婆マシマシチョモランマで
ぬえが最後の良心