十六夜 咲夜が新しい言語の開発に成功した。
スローガンは「スタイリッシュでフレキシブルでアンビリーバブル」。完成後さっそく紅魔館で使われ始めた。
そんな記事を文々。新聞で読んだ魔理沙は、真偽を確かめに紅魔館に訪れた。
新聞に載っていることは事実のはずであり、真偽など確かめるまでもないのだが、残念ながら幻想郷においてはそんな常識が通じない。確認は大切だ。
あと、新しい言語というのが本当なら、それがどんなものか非常に気になったのもある。
「いよーう、パチュリー」
図書館に忍び込んだ魔理沙、さっそくパチュリーに話しかけた。
「いぃようってぁああああぉんた、何しに来たのほぉおおよお゛おお゛ぉ」
!?
何か凄まじい返事が返ってきた。
が、言葉こそ凄まじいが、それ以外は極めて普通である。
いつも通り本を読んでいて、読書の邪魔をするなといわんばかりのジト目を送っていた。
我に返った魔理沙、来訪の意図を言う。
「いやな、この新聞読んでさぁ。眉唾だと思ってたけど、マジっぽいな」
「まぉぁあああね、しゃいぃしょは戸惑ったけど、にゃれると便利にゃもんらわはぁぁ」
とてもではないが、便利なようには思えない。
喉が枯れそうな言語だ。
これを館中でやっているらしい。大変だなと魔理沙は感じた。
「スタイリッシュでフレキシブルでアンビリーバブル」というスローガンらしいが、アンビリーバブルが悪目立ちしている上に、意思疎通のしやすさは明らかに度外視だった。
要するに、あれだ。使いづらい。絶対。
「まぁあああ あぉ、ゆっくりしてぇぇぇぇ゛いぃきにゃしゃいぃにゃのぉおお、こぁああああぉくま、紅茶をいぃれてえぇぇぇえちょうらいぃ」
「ぁあああ あぉ、はひぃ、わかりましたのぉおお」
多分「ゆっくりしていきなさい」云々と言ったのだろう。
魔理沙としては、もう既に帰りたくてたまらなかった。
この言語、疲れる。
すっごく。
小悪魔がこぁぁ゛ぁ゛こぁぁ゛ぁ゛と呟きながら紅茶を入れる。
多分、こぁこぁと呟いているのだろう。そんなところまで変えるのだから徹底している。
魔理沙としては、濁点と拗音からしばらく離れたくてたまらなかった。
だが、紅茶まで入れてもらって帰るのもなんだった。仕方なく、パチュリーの向かいに座る。
「はひぃ、どうぞ」
やけにセクシーな声とともに、小悪魔が紅茶を差し出す。
パチュリーが一口飲み、顔をしかめた。
「ちょっと濃しゅぎるのほぉ、みるくをいぃれてえぇぇぇえちょうらいぃ」
「ぁあああ あぉ、しゅみません」
紅茶にミルクを入れるよう求める発言がどうしてこんなことになってしまうんだろう。
魔理沙は頭を抱えた。
「魔理沙? 体調れもわるいぃのぉおお?」
「いや、ちょっと頭が――」
頭痛の原因は、間違いなく二人の使う言葉だった。
何が一番の頭痛の種だって、この頭の悪い言語を作ったのが咲夜だということだった。
どうしてぇぇぇぇ゛こうにゃったのぉおお――魔理沙は考える。早くも伝染していた。
「パチュリーしゃま、お゙ぉおォおんそうじしに参りましたのほぉおお――ぁああああぉら魔理沙」
渦中の人、咲夜がやって来た。自分で作った言語だけあって、使いこなしている。
発言の中で魔理沙が理解できたのは「パチュリー」と「魔理沙」だけだったが、手に持ったモップからするに、おそらく掃除しに来たのだろう。
「よう咲夜……つっても、もうそろそろ帰ろうと思ってたところだが。頭も痛いしな」
「そうにゃのぉおお。ウチれよければ休んれいぃってもいぃぃぃっよぉおお゙のぉおおよお゛お゛お゛ぉ?」
「やめとく」
悪化するから。
最後に、ふと思いついた魔理沙は、咲夜に尋ねた。
「お前が作ったその言語さぁ、名前あるの?」
「もちろんぁあああ あぉるわよお゛お゛お゛ぉ?」
何を言っているか分からなかったのだが、あるんだろうと判断した。
「何て名前?」
「私がちゅくった言語らから、それっぽいぃ名前にしようとお゙ぉおォおんもって――」
咲夜はそこで、もったいぶるように言葉を切ると、その名を告げた。
「みさくや語」
五十作品目がこれでいいのかww
一旦落ち着こうか
私も落ち着くから
ジワジワぁぁあ゛あきちゃうぅぅぅう゛う゛ぅぅのぉほぉぉお゛お゛
いいやちがう
あんたアホだわwwww
やっぱりこぁあああ あぉくまかわいぃぃぃっよぉおお゙よこぁあああ あぉくま
やっぱりみさくや語面白いですwww
てかマジ最近絶好調ですねwww
このテンションよ永久に・・・
くぅせぇぇにぅい"ぃぃぬぁりぃぃそぉぉおお"ぅぅぅ
実際に言ってみると案外スッキリしますな
ま た お 前 か w
って思っちまったよ。
今回も面白かったですww
こりゃいい
おもしろかったがこれだけは言わせてくれ
やっぱあんた狂人だわ
みんな落ち着いてるはずなのに台詞はみさくら。みさくらはもっと勢いを表現するべき言語ではないのかい?
単なる台詞をコンバータにかけるのはいい。それの時点で周りの情景ががらっと変わるのが楽しいのだから。
だが、この紅魔館はなまじ地の文があるせいで、台詞がみさくらになっただけであまりにいつもどおりという印象を受ける。みさくら語を上手く使えているとはお世辞にも言いがたい。
ただ、こぁこぁ呟く小悪魔がかわいかったのと、みさくや語って響きには吹いた。
まぁ、良くも悪くも『みさくや語』というアイディアありきの作品だった。
・・・コンバーターを実際に使ってみてあとがき理解w
……それを彷彿させられたよwww