小悪魔が倒れた。いきなりだ。
あんなに元気だったのに、ぴくりともしなかった。
動転した私はとにかくひたすら助けを求めた。
咲夜が機転を利かせて、永琳を呼んでくれた。
緊急手術をすることになった。それほど重体だったのだ。
永遠亭の手術室前で、私はずっと待っている。
いや、私だけではない。レミィも咲夜も妹様も美鈴も、みんな待っている。
手術室が開き、永琳が出て来た。
「小悪魔は! 小悪魔は大丈夫なの!?」
私は彼女に駆け寄り、まくし立てる。
「落ち着いてパチェ……小悪魔の容態は?」
レミィが私をなだめた。それで私は冷静になった。
みんな辛いのだ。
八意永琳は重々しく口を開いた。
「彼女は……末期症状だわ」
それは、私たち全員にとって、死刑宣告も同じだった。
「そんな……そんなッ!」
永琳の言葉が信じられなくて、私は手術室へ駆けた。
あそこには、元気な小悪魔が居るんだ。
かわいらしい笑顔を、見せてくれるんだ。
「パチェッ!」
「パチュリーさま!」
制止なんて、聞かなかった。
「小悪魔ッ!!」
扉を開いた。
「びるのあいだー、きゅうくつそうにー!」
閉めた。
みんなが私に追いついた。
「パチェ……」
レミィが私に声をかける。けれど、どう言っていいのか分からないようだった。
ほかのみんなも重々しい表情を見せている。
「小悪魔は……?」
妹様が、不安をありありと浮かばせて尋ねてきた。
うん、なんかキーボードピアノ叩いてた。
なんだったんだろうあれは。
いやいや、冷静になって考えてみれば、末期症状の小悪魔があんな元気なわけがない。
みんなに促され、もう一度私は扉を開いた。
「ゆーあー、びゅーてぃふるばたふりゃーい!」
閉めた。
「……何か、いたわよね、今」
「言わないでレミィ! あれは違うの! 別の何かよ多分!」
あいにく、少なくとも私の幻覚では無いらしい。レミィにも咲夜にも美鈴にも妹様にも見えたらしい。
みんな、あんぐりと口を開けていた。
「いやいやいやいや、無いわ、ありえないわ。だって倒れてたじゃない。私だって見たわよあれ」
真っ先に否定してかかったのはレミィだった。
そうだ、うん、ありえない。
私は持てる知識を総動員して、見たアレを否定しにかかる。
「集団催眠って言うのがあるわ。似たようなので集団幻覚っていうのもあるかもしれない」
そうだ。そうに違いない。
みんなも頷いた。
「もう一度開ければ大丈夫なはず。そうよそうに違いないわ!」
開けた。
「きみがつくったのなら! もんくも! おもいきりいえたーのに!」
「永琳! いったいどういうことなの!」
永琳に詰め寄る。
小悪魔に何をやらかしてくれたのだ。
「……私は言ったはずだけど?」
けれどこの医者、心外だと言わんばかりだった。
何を抜かす。
「じゃあ言ってみなさい! あれは一体何の末期症状なのよ!」
すると、永琳はため息をついた。
「あのねぇ、言ったじゃない。彼女はマッキー症状だって」
手術室からは、「もー恋なんてしないなんてー! 言わないよ絶対ー!」という歌声が聞こえてきた。
音痴ね、小悪魔。
まぁSPYが一番好きなんですけどね^q^ 微妙? 屋上へ行こうぜ。
そしてネタの発想と投稿スピードに感服しました。
このフレーズ大好きなんですね