今宵は生ぬるい風が吹いている。
普段地下にいるせいか、その風が尚更温かく感じる。
空を見上げれば、綺麗な欠けた月が私達を見下ろしている。
その景色はとても美しい。
そして、辺りには桜の花が咲き誇り、桃色の花びらが風にふわりと揺れている。
地下には桜なんて咲かないので、地上でしか見られない景色を妬ましいと感じる。
別にそれくらいはいい。
何が一番妬ましいかって言えば…
(何これ、リア充ばっかりじゃない。いちゃいちゃいちゃいちゃして、妬むしかないじゃないッ!!)
各々が酒を飲み、食べ、そして笑っている宴。
宴には幻想郷中の妖怪や人間達が集まっているようだった。
その中で私も呼ばれてきたわけなんだけど…
お酒が入っているせいもあるのか、何処を見てもいちゃいちゃしてる光景しか見えない。
「妖夢は可愛いわねぇ」
「なっ!?何を言うんですか!!べ、別に私なんか可愛くないですよ」
「そういう反応が可愛いのよ。あ~、食べちゃいたいくらい」
「何を言って…ちょ、やめてください!」
頬を真っ赤にしながら全力で逃れようとする従者に、そんな従者が可愛くてたまらないとにやにや顔の主。
従者を後ろから抱きしめてからかっているようだった。
何なのよここは。
男からしたらにやける景色かもしれないけど、私からしたら妬むことしかできないじゃない。
私の嫉妬の視線さえ届かないなんて、もう指を咥えて見ているしかない。
「ねぇ、妖夢。そんなに私の事が嫌いかしら?」
「え?いや、そんなことは決して…」
「じゃあ何で私を避けるのかしら…。悲しいわぁ」
主が泣いているような仕草を見せているのに対し、従者は焦る仕草を見せる。
なんて従者は純粋なんだろうと指を咥えながら見ることにする。
「私はいつも幽々子様の事を思っていますよ!」
「じゃあ、愛してる?」
「え、あ…のぅ…」
「やっぱり嫌いなのね?悲しいわ」
「いえ、あの…あ、あ…愛してます!」
「嬉しいわ妖夢!」
あぁ、もうあほらしい。
見てるのが恥ずかしくなるくらいあほらしい。
そして甘い、ほんと砂糖のように甘いわ…。
何でここで小さなラブストーリーで新たな信頼関係が花開いているのだろうか、桜だけで十分ですよお二人さん。
宴でやるのはぜひともやめてもらいたい、スキマ妖怪にこれは報告しないと。
何処にいるのかと探すと、彼女もまた違う者と話していた。
どうやら博麗の巫女にべたーっとくっついている、何これ、逃げ場がない。
しかも、霊夢の隣には萃香とかいう鬼もいる。
二人に囲まれて、ハーレム状態なんてもう妬ましすぎて生きるのが辛くなる。
「霊夢、月が綺麗ね。それに桜も満開ですわ」
「だから何よ」
「つれないわねぇ。美しい景色もいいけど、霊夢の方が魅力的だわ」
「そりゃどうも」
「霊夢~、もっとお酒呑んで騒ごうよ~」
「うっさい万年酔っ払い」
「つれないなぁ。もっと楽しくやろうよ、せっかくの宴なんだから」
「あんたがいなかったら楽しいわよ」
二人の言葉をばっさりと切り捨てるように霊夢は突き放している。
普通なら諦めると思うんだけど、何故かそういう霊夢に惹かれるのだろうか。
あの二人はマゾなんだろうかと疑ってしまう。
そして、私の目からして美人である二人をばっさりと切り捨てる霊夢は一体何を求めているのかと疑問に思う。
あっちはサドだ、違いない。
男ならだれしもが憧れるポジションを得ている霊夢がそれを自らの手で捨てている。
妬ましいわ、ほんと妬ましい。
さっきから指噛みすぎて血が出てきそうなくらい妬ましい。
ふと横の方を見れば、地下の方から来てる奴らもいる。
地霊殿のさとりとそのペットがじゃれあっている。
「さとり様~。あたい酔っちゃったみたいです~」
「うにゅ~」
「全く、手間のかかる子たちですね…」
とか言っちゃって、ペットという名の女の子達に囲まれてるさとり。
頭を擦りつけるようにしてじゃれる猫や地獄烏の相手をして、微笑んでいる。
幸せだよね、そうやってペットというか、家族のような人たちに愛されるというか好かれるのって。
あ~拝啓お母様、地上も地下もリア充ばっかりです、辛いです。
「お嬢様、いけませんわ。そんなに呑んでばかりいてはお体に悪いですわ」
「咲夜、私がそんな貧弱な吸血鬼に見えるかしら?」
「い、いいえ!決してそんなことは…。ただ、お嬢様が心配で…」
「心配することはないわ、咲夜。あなたも私の事ばかり気に掛けずに呑みなさい」
「ありがとうございます、お嬢様」
おい、そこのメイド、酒飲んでないのに頬を紅く染めるんじゃない。
なんか見た目のギャップで凄く可愛らしく見えて妬ましい。
凛としたような顔つきなのに、お嬢様の優しい面を見ただけで頬を赤く染めるなんて乙女すぎるわ、妬ましい。
なんで幻想郷はこんな可愛くて美人が多いのだろうか。
妬ましい、あぁ、妬ましい、妬ましい。
正直な話、何処を見渡しても誰かとくっ付いて話し合ったりいちゃいちゃしてる。
私だけ仲間外れ、もう慣れてるんだけど、やっぱり寂しい。
私だって女の子だもん、泣いちゃうぞ?
…あぁ、似合わないわね、私にはこんなキャラ似合わないわね。
一人で突っ込んでいると…
「先ほどから一人で呑まれているようですが…。一緒にどうですか?」
振り返ると、そこには優しい笑顔があった。
なんか後光が差しているような、温かい光が見える。
あぁ、これが仏と言う者なのね…。
「あ、申し遅れました。私の名前は聖 白蓮と申します。あなたは?」
「私は水橋パルスィ。…あなた優しいのね」
「えぇ、みんな平等に楽しまなければ宴じゃないでしょう?」
あぁ、心に光が満ちる…
眩しすぎる、私にとって聖という人は眩しすぎる。
だけど、なんというか妬めない。
思わず頬が緩んだ、その瞬間だった。
「ひじり~、星がいじめる~!!」
「いじめてなんかません!あなたが悪いんでしょう!」
聖の後ろ側から飛び込むようにして抱きつく者が一人、それを追ってまた体を寄せる者が一人。
二人の乱入により、聖とのいい感じの雰囲気がぶち壊し、ついでにいちゃつきはじめたではないか。
もうだめだ、どこもかしこも甘すぎる。
やはり仲間はずれなのだろうか。
先ほどの場所とは少し離れた場所で私は桜を眺めながら一人お酒を飲む。
桜はとても綺麗で、とても純粋に見えた。
宴なんて誰か親しいものでもいないと辛いだけなのかもなぁと今更ながら思い始める。
はぁ、と一つ溜息をつく。
「どうしたんだいパルスィ、溜息なんかついて。どうかしたのかい?」
隣に、それこそどかっ、という音が相応しいように座るのは星熊勇儀。
大きな盃片手に、彼女は私に問う。
「どこを見てもいちゃついてるやつらばっかりじゃない。妬ましいったらあしゃしないわ」
「なんだい、そんなことで拗ねてるのか。可愛らしいなぁ、お前さんは」
「なっ…」
拗ねているだって?私が可愛いだって?
この鬼は何を言っているんだろうか。
私が拗ねているはずがないじゃないか。
「私でよければ一緒に呑むさ。どうだい?」
私のコップに酒を注ぎ、笑顔で勇儀は言う。
この鬼は何を考えているか分からない。
私に気を使ってくれているのか、それとも単に私と一緒に呑みたいだけなのか。
勇儀の問いに、私は
「仕方ないわね。一緒に呑んであげるわよ」
「そうこなくっちゃな。さぁ、今日は呑もうか!」
幻想郷の夜は、永い。
評価ありがとうございます。
幻想郷だから許せる気がします。
>4 様
評価ありがとうございます。
リアルでそんな話されたら壁も殴りたくなるもんです。
もう好きにしやがれw
評価ありがとうございます。
こんな幻想郷に誰がした…!!
評価ありがとうございます。
一人だけで飲んでる少女を見て放っておくほど鬼はひどくないみたいです。
「また[へたれ向日葵]!この間読んだSSも、このSSも、このSSも……!!
[へたれ向日葵]……いったいどんな向日葵なんだろう」(耳をすませば風に)
宴会の中で星熊の姉さんと飲んでるパルパルを見て、密かにパルスィを狙っていた人達が姉さんを妬むんですね。そうですね。
評価ありがとうございます。
自分のSSを読んでくださっているということを知ることができただけでも幸せです。
おもにそれを眺める自分が妬みますね。
改めて、ありがとうございます。
>25 様
評価ありがとうございます。
女の子たちがリアなら頬が緩みます。
>26 様
評価ありがとうございます。
爆発したら幻想郷がほろb(ry
>椿 様
評価ありがとうございます。
勇儀出さずに行こうと思いましたが、一人じゃ可哀想なので出てきました。
勇パルいいよ!
評価ありがとうございます。
まずは幻想郷へ行くことから始めましょう、話はそこからです。
だが、カップルは爆発しろ!
評価ありがとうございます。
リア充とカップルの違いを教えてくれるとありがたいです。
評価ありがとうございます。
ネリ充…これは新しいw
こんないい作品が書ける向日葵さんになぁ!!!!!!!!
てか今、もしかしたら向日葵さんも創想話にいるくさいですね・・・
なんかテンション上がります!
評価ありがとうございます。
へたれな向日葵です、どうもw
今の時間帯、きっといますね。
なぜにテンションがw
もしそうならどれだけ私は幸せになれることか。