二人は、一瞬後にはあの花畑に立っていた。
風は全く無く、空も相変わらず晴れている。
何でもないただの日常は、今ここには無い。
「…で? 私を呼び出して、何をさせたいのかしら? 本当につまらなかったら花畑が文字通り焼け野原になるけど…?」
もう一度脅してみるが、そもそもそんな脅しが効くような相手ではないのは判り切っている。ただここは彼女の本拠であると同時に弱点を曝け出している場所でもある。
即ち花だ。
幽香は花を自在に操れるが、美しいだけで攻撃力は無く、実際の攻撃は通常の弾幕か肉弾戦に頼ることになる。それでいて花を傷付けられることを極端に嫌うため、花が間近にある場所ではほとんど力を発揮しないのだ。
その時点でここでそれをやる気が全く無いこと、すでに下手に回っていることは明らかだ。
それに…
幽香の顔は全く笑っていなかった。
傾いてはいるもののまだ日は地を照らしている。
夕方が近くなってきているため徐々に日差しも強くなっているのだが、日傘も差さずに只佇む。
そして告げる。
「…彼を…」
幽香が徐に掌を返して恭しく指し示したのは足元。
紫はそこに在るものを流し目で見ようとして、出来ずにしげしげと見入ってしまった。
「…あなたがこんなことするなんてねぇ。この男も相当罪作りだわ。閻魔に地獄送りにされてなきゃいいけど…」
冗談を言っても相手にされないことも紫にはわかっている。
それはわかっているが、今は話すことも叶わぬ屍のこの男がどうして妖怪を動かせ得たのかがわからない。
いや、わかる必要がないと言ったほうが正しいか。
本人達がわかればそれでいいことだ。
せいぜい役者が映えるように、花を添えてやればいい。
「…灰に変えて…」
「…仰せのままに…」
腹の上で手を組み、丁寧に横にされている屍に近寄り、屈みこんで額にその細い人差し指を触れさせる。まるで壊れ物を扱うように繊細で、それでいて迷いの無い滑らかさを併せ持って、触れる。
触れた指先から水面を触れたような波紋が生まれ、死んだ男を包み込む。
身体の端に達した波紋は反響し、他の波紋とぶつかり合ってさらに大きくなっていく。
男の形は歪み、何もかも区別がつかなくなったと思ったら、唐突にそれはなくなる。
男の身体はすでに人のそれではなく、着物も含めて全てが灰色になっていた。
もう跡形も無いそれを見て、幽香は目を閉じた。
あの男は自分の視界を塗り潰す黒をさえ、見ていなかった。
今なら…今だから、わかる。
あの男が何を見ていたのか。
「…お気に召したかしら…?」
そのまま紫に訊く。
「…フフフ、それはもう…。まさか人間が異変を起こすなんて、竜神様も山の神も…どこの誰も想像しないことよ。」
幻想郷でも外の世界でも人間の脆弱さは変わらない。それでも少数ながら幻想の世界には妖怪や妖精等、超常の存在に匹敵するだけの力を持った人間もいる。霊夢や魔理沙、吸血鬼の住む紅魔館のメイド長等が挙げられるが、そんな人間でさえ未だ自ら異変を起こした者はいないのだ。
だが、異変と呼ぶにはあまりに小さく弱々しくとも、力も持たぬ只の人間が妖怪の心を動かした…確かにそれは何かを変え得た力だった。
「…異変、ね…。確かにそうかも知れないわ…。私の見る世界は、何となくだけど、異なり変わったもの…。」
「そうね。人間なんかのために涙を流すなんて、あなた本当に妖怪?」
「人間相手に流す涙なんて、あなたのその無駄遣いし過ぎな頭ぐらい不要なモノよ。」
右の掌を水平に、閉じたままの両目に触れさせる。何かの液体を触った感触は無いし、現実に泣いたわけでも一切無い。
気持ちは一際晴れやかなままだ。
後は、誰も集まるもの無く終わってしまった宴の始末をつけるだけだ。
出てもいない涙を拭うように手を払うと、一帯に聞こえるように始末の始まりを告げる。
「…さあ、後は後ろの木に停まっている鴉にでも任せましょうか…」
「アややややややっ…!?」
ガサササッ…ドサッ!
普通の鴉が枝から落っこちるのとは違う、明らかにそれより大きな者の落下に合わせて、慌しさよりも驚きに満ちた悲鳴が聞こえてきた。
「痛っっったああぁぁ~…、気付いてたなら普通に呼んで下さいよっ!」
現在鬼のいなくなった妖怪の山の大部分を縄張りとする群成す大妖怪、天狗。
数種類存在する天狗を統括する大天狗の配下で、鴉天狗と呼ばれる比較的高い地位の種族に属している、自他共に認める幻想郷最速の新聞記者。
通称、伝統の幻想ブン屋。
射命丸文。
「あらぁっ、普通に呼んだところで素直に出てくるわけ無いじゃない♪ 盗撮捏造上等のブン屋のあなたが…」
「…ぬぐぐっ…。」
紫の指摘が的を射ているために反論できない。
大部分の妖怪は自分で起こした異変も、他者が起こした異変についても有ること無いことでっち上げるいい加減な連中が多く、あからさまに大々的に起きた異変さえ裏の取れるものはほとんど無い。そのためというか何というか、結局のところ新聞記者でさえいろいろネタをでっち上げてでしか新聞を刊行することが叶わない。
定期的に配布されることもなく不定期的な号外ばかりが出回る。
これも幻想郷らしいといえば幻想郷らしい、行き当たりばったりでいい加減な日常ではある。
「…で? 私に何を手伝わせる気ですか? こう言っちゃ何ですけど私はブン屋として誇りを持っているので記事にする対象には盗撮して取材はすれども力は一切貸しませんよ。取材に全面協力してくれるなら力を貸すことにも吝かじゃありませんけどね。」
体勢を立て直すと、姿勢をどう保ているのか歯が妙に長く一本しかない下駄で近づく。
とりあえず交換条件を提示して、諦めるか情報提供するかを迫ってみる。正直取材を始めたばかりでいきなり頓挫させたくないという意地で言った言葉で、もし二人を怒らせて危険な状況になっても逃げ切る自身はあったのだが、いつの間にやら後ろに回っていた幽香に両肩を掴まれ、あっさり逃げ道を封じられてしまった。
後ろから凍てつくような笑顔を取材に提供しながら幽香は耳元で囁く。
「何か世迷言が聞こえたみたいだけど、喋ったのはどのお口かしら? 分別のある頭の賢しい妖怪ならそんなこと言わないと思うけど…。そうね、あなたがそんなこと言うはずないものね…。きちんと喋ってるお口がどこかにあるはずだから、閉じているなら抉じ開けてあげましょうか? あなたの新しいお・く・ち…♪」
とか言いながら文の帽子を取り、人差し指で旋毛をぐるぐる弄ってくる。
普通の人間だったら気持ちよさと恐怖で、目の前に自分の名前がうっすら刻まれた無縁仏を幻視することだろう。
妖怪ゆえにそんな自体は免れているが、今のところ冷や汗が止まらない。
「あややや、やめてくれません? こ、これ以上口が増えると喋り出す前に血を吐きますし、口なら一つで十分ですから…」
下手に出ないと旋毛に穴が開きそうだったので、率直丁寧に断る。
すると即座に紫が顎を指で持ち上げて文を振り向かせる。
こっちもこっちで素晴らしい笑顔だ。
「あらっ? それじゃあ下のお口はどうかしら? 何か食べさせてあげれば上の口よりよく喋りそうよ?」
「紫さんっ! セクハラは止めていただけませんかセクハラはっ…!」
そう言って太ももから付け根に向かってツツ~っと這っていた紫の指を払いのける。
怖気のせいで鳥肌が立っている。
「もうっ! つれないわね。」
「わかりましたっ! わかりましたよ手伝いますから折れますからこれ以上の脅迫は止めて下さいお願いしますっ!」
屈するや否や、開いた手を上空に掲げる。
間髪入れずに漆黒の影が一瞬通り過ぎたかと思うと、文の右手の内には天狗を天狗たらしめる風の具現、紅葉色の団扇がすでに握られていた。
「…で? 何がお望みで?」
天狗は風を起こし、風とともに飛ぶ風そのもの。
つまり文に手伝ってもらうというのはこういうことだ。
「…あの灰を…、全て散らしていただけるかしら? 園に向かって…」
「承りましたっ!」
と右足を前に踏み込んで、団扇を大きく左手側へ振りかぶる。
勢いよくやったために後ろの木々がギシギシと今にも折れそうな音を上げた。
天狗の団扇はほんの軽い一振りでも木の枝から葉を全て吹き飛ばす程の威力を誇る。今それが起きなかったのは文が無意識に風を操作した結果だが、このままでは灰どころか辺りの花びらまで散らしてしまいかねない。
始めから細心の注意を持って、いざ風を起こそうとしたら幽香が口を挟んできた。
「あっそうそう、風を起こしてもし花びらが一枚でも散ったら…、あなたの背中に生えてるそれを一枚一枚丁寧に散らせてあげるから…」
言われて一瞬、鴉天狗の象徴たる闇より黒い翼が怯えて縮こまった。
「わっ、わかってますよっ!」
伊達に極悪妖怪と呼ばれているわけではない幽香なら本当にやりかねないため、文は今まで以上に細心の注意を払う。目は只ならぬ相手を敵に回したように緊張で細められる。ここまで弱い風を起こすのは久しぶり過ぎて一発本番で出すにはそれなりに神経をすり減らしてしまう。
力を押さえ込むために余計な力を要してしまう、それは力を振るうことに慣れた強大な妖怪の性でもあった。
自然の風はまだ吹かず、全くの無風。
「すぅ~っ!」
深呼吸して一拍、団扇を地面に滑らせるように振った。
もちろん扇ぐ速度はいつもの百分の一程度で、尚且つ自身でも制御して極限まで押さえ込んだ微風だ。
その風はきちんと、花を散らさず灰だけを巻き上げ散らした。
男の形を保っていた灰は、見る見るうちに細かな粒子に姿を変え、花畑に降り注ぐ。
灰に変えられたというのに太陽の光でキラキラと輝きながら…
「…さあ、行ってらっしゃい。あなたの望んだ場所へ…」
幽香は灰とともに花を舞わせる。
あの男が触れたのと同じ、薄い紫色の小さな花。
あの男の見た景色を…花を…忘れないために…
あの男が…立花万が…私を忘れないために…
その後すぐに紫とも文ともその場で別れた。
ふとまた自分の意思とは関係なく花畑のほうを振り返る。
思い出したように風が吹いた。
花が揺れる。
さらさらと…
ゆらゆらと…
あの男が…、「ありがとう…」と、言った気がした。
※
夕方、再び博麗神社。
一仕事終えて帰ってきた紫を待っていたのは、結局お酒を飲んでいるのに不機嫌極まりない顔をした博麗霊夢と、ちゃっかり晩御飯を食べている霧雨魔理沙、引き続き酒を飲んだくれている伊吹萃香、やっぱり何で居るのか分からないアリス・マーガトロイドの四人だった。
ただ後の二人の頭には痛々しいたんこぶが出来ていた。
それも一つや二つではない。
弾幕で付けられたものでないのは明らかだ。
「…また性懲りも無く戻ってきて…、とりあえずお灸でも据えてみる? 待っててね、今あの阿呆鴉とっ捕まえてくるから…」
霊夢の怒りは幽香が来る前に逆戻りしていた。
いや、声を掛けようものなら問答無用で陰陽玉が飛んできそうな剣幕だから、そのときより尚輪を掛けて悪化していた。
話しかけられない。
核爆発でお灸を据えられる前に霊夢から遠ざかった。
そこで、この中で一番まともに話が出来そうな魔理沙に事情を訊くことにした。
萃香がまともに答えるとはとても思えないし、アリスはアリスで二日酔い以外に何か患っているように見える。
二日酔いなのに顔が赤い。
話を戻して訊いたところによると、紫が出て行った後霊夢と魔理沙二人して潰れていた連中を全員文字通り叩き起こし、兎は真っ先に起きてそそくさと帰っていったそうだ。それ以外の連中はなかなか起きなかったのだが、そのうち天子は、心配で天界から降りてきた竜宮の使い、永江衣玖に引き摺られて帰っていった。
今頃天界でこっ酷く叱られていることだろう。
残り二人、霊夢が頭を何度か殴っても起きなかったアリスは魔理沙が起こしたそうだ。
ただ…、どうもその起こし方に問題があり現在に至っているのだった。
簡単に言ってしまえば眠り姫を眠りから醒ますが如く、キスをしたのだ。
鼻を摘まんで口を塞ぎ、息が出来なくなれば勝手に起きるだろうと考えての犯行だ。
「あっはっはっはっ! いやぁそれが気に障ったらしくてなあ! 顔真っ赤にしてああやってチビチビ自前の紅茶を飲んでる次第なんだぜっ!」
「それは…、ご愁傷さまねぇ…」
それなら顔を赤くして悶々としているアリスの様子にも合点がいった。
紅茶を入れるカップも持参しているのに、カップの紅茶をスプーンでぐるぐるかき回しているだけで飲もうとせず、代わりに何かぶつぶつ独り言を呟いている。
どうも魔理沙は自分が何をしでかしたのか全く自覚が無いようだ。
さすがは恋泥棒。
無意識でもすでにおちている相手をさらにどん底までおとし込む手練手管は、とてもではないが真似できない。
で、萃香は霊夢にボコボコされてようやく起きたそうだ。
起きた後で霊夢は笑いながら萃香の角を折ろうとして、魔理沙が止めなければもう少しで折れているところだったというから、さっさと出て行って正解だったと胸を撫で下ろした。
鬼のくせに学習能力がないのか、それだけやられておきながら説教後にはもう酒を飲み始めていたという。
まあ図太い神経は鬼の専売特許ではある。
「おうっ、そうだそうだっ! 幽香の用事っていったい何だったんだ? 滅多な事じゃこっちに来ないから相当面白いと踏んだんだが…」
駆けつけ一杯とでもいうように紫に酒を勧める魔理沙。
「そうね、私としては相当面白かったわ。」
応えるようにスキマから朱塗りの盃を引っ張り出して注いでもらう。
「…聞きたい?」
「聞きたいっ!」
気持ちよい即答とおいしい酒に気を良くし、紫は語り出した。
男の人生が起こした、幽香と花のほんの小さな異変を…
※
…
突然ガバッと魔理沙が立ち上がった。
「…魔理沙?」
飲んでいる内に落ち着いた霊夢が不自然な行動を見せた魔理沙を呼ぶ。
いや、行動自体の不自然さはなかったのだ。実際魔理沙が突発的に何かをするのは今に始まったことではない。大抵遊び半分ふざけ半分で酒の席が盛り上がるだろうと勝手に何かやりだすのがオチなのだが、今回ばかりは数少ない不自然のようだ。
「…ああ、いや…ちょっと用事を思い出したぜっ!」
話をした当の紫も未だに恥ずかしがっているアリスも、酒を飲んでいた萃香ですら、魔理沙に注目する。
いつものお調子者は鳴りを潜め、顔は紫にしか見えないが…、酷く悲しがっているように見えた。
「魔理沙…、…行くの?」
紫は魔理沙がこれから何処に向かうか知っているように訊ねた。
紫でさえつられて真面目な顔をしてしまう。
魔理沙は返事を省略して代わりに元気良く言った。
「朝飯までには戻るぜっ!」
「…あっ、ちょっ…ま、魔理沙っ!?」
アリスが硬直を振り解いて魔理沙に駆け寄っていくが、魔理沙は逃げるように素早く靴を履いて箒に跨り、何処かへすっ飛んでいってしまった。
鴉天狗の次に幻想郷最速を誇る魔理沙の速さに、アリスが今から追いかけたところで追いつくはずが無い。
「ちょっと魔理沙~っ、さっきのは…さっきのはっ、…何なのよもう~っ!!」
叫んでみるものの当の本人はもう見えない。
「青春ねぇ…。」
「青春だねぇ…。」
「青春かぁ…。」
紫も萃香も霊夢も、そんなアリスを肴に焼酎を飲み始めた。
しばらく立ったままでいたアリスがキッと紫を睨みつけ、ずんずん近づいて真正面に座り込んだ。
「?」
紫はきょとんと首を傾げた。誰がどう見ても魔理沙が出掛けたのは紫の話のせいだとわかる。
「…魔理沙を何処へやったの…?」
大事なものを奪われた女の子みたいな怒り方に、詰め寄られている紫も含めた三人は一層酒が進んでいる。
はっきり言って可愛いし面白い。
「いやぁねぇ、勝手に出て行っただけじゃない。幽香のところよ、幽香のところ。」
「ちょっと、ちょっと紫っ。」
隣に座っている霊夢が紫を肘で突く。
気だるげにアリスを見やると、アリスは魂が抜けたようにポカンと天井を見詰めていた。
事情を知らないからだけでなくあらぬ妄想も働いているみたいだ。
「…青春ねぇ…。」
「青春だねぇ…。」
「青春かぁ…。」
焼酎が空になり、次に紫がスキマから出してきた日本酒を開ける三人。
お酌をしながら霊夢はそれとなく切り出した。
「…で、魔理沙があいつのところへ行った理由は何? さっきの頼み事と何か関係あるの?」
「ええ大ありよ。…ていうか、あなたも萃香も知ってるはずだけど?」
「私達も知ってる?」
霊夢も萃香も不思議そうな顔をした。
知っているって…何を?
「私も…顔見たときはびっくりしたわ。まさかあの人が花を見に行くなんて…、地霊殿の主も読み取れない…いえ、読み取れたってどうしてそんな心境になったか理解できないでしょうね…」
つい先程見たばかりの顔を懐かしむように、紫の口調はしんみりしていた。
「魔理沙も私達も知ってる人間で…、花を見に行きそうにない人…?」
人里にも花はある。ただ寿命の短い人間は例え外より遥かに心豊かに暮らしているとしても仕事をきちんとこなしているために、花をじっくり見る機会はそんなに無い。
霊夢はもちろん萃香も紫も、生活に必要な物は人里に下りていって手に入れるから、知っている人も相当数いるのだ。
一番のヒントは魔理沙。
「…立花って金物屋、知らない?」
「「「えっ!?」」」
紫の明かした名前に、話を聞いていた霊夢、聞き耳を立てていても右から左へ通り抜けていただけの萃香、呆けていたアリスでさえ驚愕した。
人里の金物屋で一番大きなところであることは当然として、それよりも…
「そりゃあ魔理沙も出て行くわけだ…」
風は全く無く、空も相変わらず晴れている。
何でもないただの日常は、今ここには無い。
「…で? 私を呼び出して、何をさせたいのかしら? 本当につまらなかったら花畑が文字通り焼け野原になるけど…?」
もう一度脅してみるが、そもそもそんな脅しが効くような相手ではないのは判り切っている。ただここは彼女の本拠であると同時に弱点を曝け出している場所でもある。
即ち花だ。
幽香は花を自在に操れるが、美しいだけで攻撃力は無く、実際の攻撃は通常の弾幕か肉弾戦に頼ることになる。それでいて花を傷付けられることを極端に嫌うため、花が間近にある場所ではほとんど力を発揮しないのだ。
その時点でここでそれをやる気が全く無いこと、すでに下手に回っていることは明らかだ。
それに…
幽香の顔は全く笑っていなかった。
傾いてはいるもののまだ日は地を照らしている。
夕方が近くなってきているため徐々に日差しも強くなっているのだが、日傘も差さずに只佇む。
そして告げる。
「…彼を…」
幽香が徐に掌を返して恭しく指し示したのは足元。
紫はそこに在るものを流し目で見ようとして、出来ずにしげしげと見入ってしまった。
「…あなたがこんなことするなんてねぇ。この男も相当罪作りだわ。閻魔に地獄送りにされてなきゃいいけど…」
冗談を言っても相手にされないことも紫にはわかっている。
それはわかっているが、今は話すことも叶わぬ屍のこの男がどうして妖怪を動かせ得たのかがわからない。
いや、わかる必要がないと言ったほうが正しいか。
本人達がわかればそれでいいことだ。
せいぜい役者が映えるように、花を添えてやればいい。
「…灰に変えて…」
「…仰せのままに…」
腹の上で手を組み、丁寧に横にされている屍に近寄り、屈みこんで額にその細い人差し指を触れさせる。まるで壊れ物を扱うように繊細で、それでいて迷いの無い滑らかさを併せ持って、触れる。
触れた指先から水面を触れたような波紋が生まれ、死んだ男を包み込む。
身体の端に達した波紋は反響し、他の波紋とぶつかり合ってさらに大きくなっていく。
男の形は歪み、何もかも区別がつかなくなったと思ったら、唐突にそれはなくなる。
男の身体はすでに人のそれではなく、着物も含めて全てが灰色になっていた。
もう跡形も無いそれを見て、幽香は目を閉じた。
あの男は自分の視界を塗り潰す黒をさえ、見ていなかった。
今なら…今だから、わかる。
あの男が何を見ていたのか。
「…お気に召したかしら…?」
そのまま紫に訊く。
「…フフフ、それはもう…。まさか人間が異変を起こすなんて、竜神様も山の神も…どこの誰も想像しないことよ。」
幻想郷でも外の世界でも人間の脆弱さは変わらない。それでも少数ながら幻想の世界には妖怪や妖精等、超常の存在に匹敵するだけの力を持った人間もいる。霊夢や魔理沙、吸血鬼の住む紅魔館のメイド長等が挙げられるが、そんな人間でさえ未だ自ら異変を起こした者はいないのだ。
だが、異変と呼ぶにはあまりに小さく弱々しくとも、力も持たぬ只の人間が妖怪の心を動かした…確かにそれは何かを変え得た力だった。
「…異変、ね…。確かにそうかも知れないわ…。私の見る世界は、何となくだけど、異なり変わったもの…。」
「そうね。人間なんかのために涙を流すなんて、あなた本当に妖怪?」
「人間相手に流す涙なんて、あなたのその無駄遣いし過ぎな頭ぐらい不要なモノよ。」
右の掌を水平に、閉じたままの両目に触れさせる。何かの液体を触った感触は無いし、現実に泣いたわけでも一切無い。
気持ちは一際晴れやかなままだ。
後は、誰も集まるもの無く終わってしまった宴の始末をつけるだけだ。
出てもいない涙を拭うように手を払うと、一帯に聞こえるように始末の始まりを告げる。
「…さあ、後は後ろの木に停まっている鴉にでも任せましょうか…」
「アややややややっ…!?」
ガサササッ…ドサッ!
普通の鴉が枝から落っこちるのとは違う、明らかにそれより大きな者の落下に合わせて、慌しさよりも驚きに満ちた悲鳴が聞こえてきた。
「痛っっったああぁぁ~…、気付いてたなら普通に呼んで下さいよっ!」
現在鬼のいなくなった妖怪の山の大部分を縄張りとする群成す大妖怪、天狗。
数種類存在する天狗を統括する大天狗の配下で、鴉天狗と呼ばれる比較的高い地位の種族に属している、自他共に認める幻想郷最速の新聞記者。
通称、伝統の幻想ブン屋。
射命丸文。
「あらぁっ、普通に呼んだところで素直に出てくるわけ無いじゃない♪ 盗撮捏造上等のブン屋のあなたが…」
「…ぬぐぐっ…。」
紫の指摘が的を射ているために反論できない。
大部分の妖怪は自分で起こした異変も、他者が起こした異変についても有ること無いことでっち上げるいい加減な連中が多く、あからさまに大々的に起きた異変さえ裏の取れるものはほとんど無い。そのためというか何というか、結局のところ新聞記者でさえいろいろネタをでっち上げてでしか新聞を刊行することが叶わない。
定期的に配布されることもなく不定期的な号外ばかりが出回る。
これも幻想郷らしいといえば幻想郷らしい、行き当たりばったりでいい加減な日常ではある。
「…で? 私に何を手伝わせる気ですか? こう言っちゃ何ですけど私はブン屋として誇りを持っているので記事にする対象には盗撮して取材はすれども力は一切貸しませんよ。取材に全面協力してくれるなら力を貸すことにも吝かじゃありませんけどね。」
体勢を立て直すと、姿勢をどう保ているのか歯が妙に長く一本しかない下駄で近づく。
とりあえず交換条件を提示して、諦めるか情報提供するかを迫ってみる。正直取材を始めたばかりでいきなり頓挫させたくないという意地で言った言葉で、もし二人を怒らせて危険な状況になっても逃げ切る自身はあったのだが、いつの間にやら後ろに回っていた幽香に両肩を掴まれ、あっさり逃げ道を封じられてしまった。
後ろから凍てつくような笑顔を取材に提供しながら幽香は耳元で囁く。
「何か世迷言が聞こえたみたいだけど、喋ったのはどのお口かしら? 分別のある頭の賢しい妖怪ならそんなこと言わないと思うけど…。そうね、あなたがそんなこと言うはずないものね…。きちんと喋ってるお口がどこかにあるはずだから、閉じているなら抉じ開けてあげましょうか? あなたの新しいお・く・ち…♪」
とか言いながら文の帽子を取り、人差し指で旋毛をぐるぐる弄ってくる。
普通の人間だったら気持ちよさと恐怖で、目の前に自分の名前がうっすら刻まれた無縁仏を幻視することだろう。
妖怪ゆえにそんな自体は免れているが、今のところ冷や汗が止まらない。
「あややや、やめてくれません? こ、これ以上口が増えると喋り出す前に血を吐きますし、口なら一つで十分ですから…」
下手に出ないと旋毛に穴が開きそうだったので、率直丁寧に断る。
すると即座に紫が顎を指で持ち上げて文を振り向かせる。
こっちもこっちで素晴らしい笑顔だ。
「あらっ? それじゃあ下のお口はどうかしら? 何か食べさせてあげれば上の口よりよく喋りそうよ?」
「紫さんっ! セクハラは止めていただけませんかセクハラはっ…!」
そう言って太ももから付け根に向かってツツ~っと這っていた紫の指を払いのける。
怖気のせいで鳥肌が立っている。
「もうっ! つれないわね。」
「わかりましたっ! わかりましたよ手伝いますから折れますからこれ以上の脅迫は止めて下さいお願いしますっ!」
屈するや否や、開いた手を上空に掲げる。
間髪入れずに漆黒の影が一瞬通り過ぎたかと思うと、文の右手の内には天狗を天狗たらしめる風の具現、紅葉色の団扇がすでに握られていた。
「…で? 何がお望みで?」
天狗は風を起こし、風とともに飛ぶ風そのもの。
つまり文に手伝ってもらうというのはこういうことだ。
「…あの灰を…、全て散らしていただけるかしら? 園に向かって…」
「承りましたっ!」
と右足を前に踏み込んで、団扇を大きく左手側へ振りかぶる。
勢いよくやったために後ろの木々がギシギシと今にも折れそうな音を上げた。
天狗の団扇はほんの軽い一振りでも木の枝から葉を全て吹き飛ばす程の威力を誇る。今それが起きなかったのは文が無意識に風を操作した結果だが、このままでは灰どころか辺りの花びらまで散らしてしまいかねない。
始めから細心の注意を持って、いざ風を起こそうとしたら幽香が口を挟んできた。
「あっそうそう、風を起こしてもし花びらが一枚でも散ったら…、あなたの背中に生えてるそれを一枚一枚丁寧に散らせてあげるから…」
言われて一瞬、鴉天狗の象徴たる闇より黒い翼が怯えて縮こまった。
「わっ、わかってますよっ!」
伊達に極悪妖怪と呼ばれているわけではない幽香なら本当にやりかねないため、文は今まで以上に細心の注意を払う。目は只ならぬ相手を敵に回したように緊張で細められる。ここまで弱い風を起こすのは久しぶり過ぎて一発本番で出すにはそれなりに神経をすり減らしてしまう。
力を押さえ込むために余計な力を要してしまう、それは力を振るうことに慣れた強大な妖怪の性でもあった。
自然の風はまだ吹かず、全くの無風。
「すぅ~っ!」
深呼吸して一拍、団扇を地面に滑らせるように振った。
もちろん扇ぐ速度はいつもの百分の一程度で、尚且つ自身でも制御して極限まで押さえ込んだ微風だ。
その風はきちんと、花を散らさず灰だけを巻き上げ散らした。
男の形を保っていた灰は、見る見るうちに細かな粒子に姿を変え、花畑に降り注ぐ。
灰に変えられたというのに太陽の光でキラキラと輝きながら…
「…さあ、行ってらっしゃい。あなたの望んだ場所へ…」
幽香は灰とともに花を舞わせる。
あの男が触れたのと同じ、薄い紫色の小さな花。
あの男の見た景色を…花を…忘れないために…
あの男が…立花万が…私を忘れないために…
その後すぐに紫とも文ともその場で別れた。
ふとまた自分の意思とは関係なく花畑のほうを振り返る。
思い出したように風が吹いた。
花が揺れる。
さらさらと…
ゆらゆらと…
あの男が…、「ありがとう…」と、言った気がした。
※
夕方、再び博麗神社。
一仕事終えて帰ってきた紫を待っていたのは、結局お酒を飲んでいるのに不機嫌極まりない顔をした博麗霊夢と、ちゃっかり晩御飯を食べている霧雨魔理沙、引き続き酒を飲んだくれている伊吹萃香、やっぱり何で居るのか分からないアリス・マーガトロイドの四人だった。
ただ後の二人の頭には痛々しいたんこぶが出来ていた。
それも一つや二つではない。
弾幕で付けられたものでないのは明らかだ。
「…また性懲りも無く戻ってきて…、とりあえずお灸でも据えてみる? 待っててね、今あの阿呆鴉とっ捕まえてくるから…」
霊夢の怒りは幽香が来る前に逆戻りしていた。
いや、声を掛けようものなら問答無用で陰陽玉が飛んできそうな剣幕だから、そのときより尚輪を掛けて悪化していた。
話しかけられない。
核爆発でお灸を据えられる前に霊夢から遠ざかった。
そこで、この中で一番まともに話が出来そうな魔理沙に事情を訊くことにした。
萃香がまともに答えるとはとても思えないし、アリスはアリスで二日酔い以外に何か患っているように見える。
二日酔いなのに顔が赤い。
話を戻して訊いたところによると、紫が出て行った後霊夢と魔理沙二人して潰れていた連中を全員文字通り叩き起こし、兎は真っ先に起きてそそくさと帰っていったそうだ。それ以外の連中はなかなか起きなかったのだが、そのうち天子は、心配で天界から降りてきた竜宮の使い、永江衣玖に引き摺られて帰っていった。
今頃天界でこっ酷く叱られていることだろう。
残り二人、霊夢が頭を何度か殴っても起きなかったアリスは魔理沙が起こしたそうだ。
ただ…、どうもその起こし方に問題があり現在に至っているのだった。
簡単に言ってしまえば眠り姫を眠りから醒ますが如く、キスをしたのだ。
鼻を摘まんで口を塞ぎ、息が出来なくなれば勝手に起きるだろうと考えての犯行だ。
「あっはっはっはっ! いやぁそれが気に障ったらしくてなあ! 顔真っ赤にしてああやってチビチビ自前の紅茶を飲んでる次第なんだぜっ!」
「それは…、ご愁傷さまねぇ…」
それなら顔を赤くして悶々としているアリスの様子にも合点がいった。
紅茶を入れるカップも持参しているのに、カップの紅茶をスプーンでぐるぐるかき回しているだけで飲もうとせず、代わりに何かぶつぶつ独り言を呟いている。
どうも魔理沙は自分が何をしでかしたのか全く自覚が無いようだ。
さすがは恋泥棒。
無意識でもすでにおちている相手をさらにどん底までおとし込む手練手管は、とてもではないが真似できない。
で、萃香は霊夢にボコボコされてようやく起きたそうだ。
起きた後で霊夢は笑いながら萃香の角を折ろうとして、魔理沙が止めなければもう少しで折れているところだったというから、さっさと出て行って正解だったと胸を撫で下ろした。
鬼のくせに学習能力がないのか、それだけやられておきながら説教後にはもう酒を飲み始めていたという。
まあ図太い神経は鬼の専売特許ではある。
「おうっ、そうだそうだっ! 幽香の用事っていったい何だったんだ? 滅多な事じゃこっちに来ないから相当面白いと踏んだんだが…」
駆けつけ一杯とでもいうように紫に酒を勧める魔理沙。
「そうね、私としては相当面白かったわ。」
応えるようにスキマから朱塗りの盃を引っ張り出して注いでもらう。
「…聞きたい?」
「聞きたいっ!」
気持ちよい即答とおいしい酒に気を良くし、紫は語り出した。
男の人生が起こした、幽香と花のほんの小さな異変を…
※
…
突然ガバッと魔理沙が立ち上がった。
「…魔理沙?」
飲んでいる内に落ち着いた霊夢が不自然な行動を見せた魔理沙を呼ぶ。
いや、行動自体の不自然さはなかったのだ。実際魔理沙が突発的に何かをするのは今に始まったことではない。大抵遊び半分ふざけ半分で酒の席が盛り上がるだろうと勝手に何かやりだすのがオチなのだが、今回ばかりは数少ない不自然のようだ。
「…ああ、いや…ちょっと用事を思い出したぜっ!」
話をした当の紫も未だに恥ずかしがっているアリスも、酒を飲んでいた萃香ですら、魔理沙に注目する。
いつものお調子者は鳴りを潜め、顔は紫にしか見えないが…、酷く悲しがっているように見えた。
「魔理沙…、…行くの?」
紫は魔理沙がこれから何処に向かうか知っているように訊ねた。
紫でさえつられて真面目な顔をしてしまう。
魔理沙は返事を省略して代わりに元気良く言った。
「朝飯までには戻るぜっ!」
「…あっ、ちょっ…ま、魔理沙っ!?」
アリスが硬直を振り解いて魔理沙に駆け寄っていくが、魔理沙は逃げるように素早く靴を履いて箒に跨り、何処かへすっ飛んでいってしまった。
鴉天狗の次に幻想郷最速を誇る魔理沙の速さに、アリスが今から追いかけたところで追いつくはずが無い。
「ちょっと魔理沙~っ、さっきのは…さっきのはっ、…何なのよもう~っ!!」
叫んでみるものの当の本人はもう見えない。
「青春ねぇ…。」
「青春だねぇ…。」
「青春かぁ…。」
紫も萃香も霊夢も、そんなアリスを肴に焼酎を飲み始めた。
しばらく立ったままでいたアリスがキッと紫を睨みつけ、ずんずん近づいて真正面に座り込んだ。
「?」
紫はきょとんと首を傾げた。誰がどう見ても魔理沙が出掛けたのは紫の話のせいだとわかる。
「…魔理沙を何処へやったの…?」
大事なものを奪われた女の子みたいな怒り方に、詰め寄られている紫も含めた三人は一層酒が進んでいる。
はっきり言って可愛いし面白い。
「いやぁねぇ、勝手に出て行っただけじゃない。幽香のところよ、幽香のところ。」
「ちょっと、ちょっと紫っ。」
隣に座っている霊夢が紫を肘で突く。
気だるげにアリスを見やると、アリスは魂が抜けたようにポカンと天井を見詰めていた。
事情を知らないからだけでなくあらぬ妄想も働いているみたいだ。
「…青春ねぇ…。」
「青春だねぇ…。」
「青春かぁ…。」
焼酎が空になり、次に紫がスキマから出してきた日本酒を開ける三人。
お酌をしながら霊夢はそれとなく切り出した。
「…で、魔理沙があいつのところへ行った理由は何? さっきの頼み事と何か関係あるの?」
「ええ大ありよ。…ていうか、あなたも萃香も知ってるはずだけど?」
「私達も知ってる?」
霊夢も萃香も不思議そうな顔をした。
知っているって…何を?
「私も…顔見たときはびっくりしたわ。まさかあの人が花を見に行くなんて…、地霊殿の主も読み取れない…いえ、読み取れたってどうしてそんな心境になったか理解できないでしょうね…」
つい先程見たばかりの顔を懐かしむように、紫の口調はしんみりしていた。
「魔理沙も私達も知ってる人間で…、花を見に行きそうにない人…?」
人里にも花はある。ただ寿命の短い人間は例え外より遥かに心豊かに暮らしているとしても仕事をきちんとこなしているために、花をじっくり見る機会はそんなに無い。
霊夢はもちろん萃香も紫も、生活に必要な物は人里に下りていって手に入れるから、知っている人も相当数いるのだ。
一番のヒントは魔理沙。
「…立花って金物屋、知らない?」
「「「えっ!?」」」
紫の明かした名前に、話を聞いていた霊夢、聞き耳を立てていても右から左へ通り抜けていただけの萃香、呆けていたアリスでさえ驚愕した。
人里の金物屋で一番大きなところであることは当然として、それよりも…
「そりゃあ魔理沙も出て行くわけだ…」
残念だ。壱から一気読みしちゃう位気に入ったのに。
実は始めのうち、評価点が低かったら私の力不足だろうということで、
壱だけですぐに撤退するつもりでいました。
東方について何もかも初心者な私の作品を気に入っていただけていることに奇跡を感じます。
なるべく早く修正を終えて再開したいと思いますので、どうか今しばらくお待ちいただきたく存じます。
よろしければ、部分的にでもいいのでご感想をいただけたらと思います。
コメントとは作家にとって一種の砥ぎ石であると考えております。
それを励みに、それをバネに作品を磨いていくことが作者の努めです。
作品の推敲というのはやればやるほど途方もない、
永遠に完成を見ないものだと考えております。
その中で、どうすれば作者自身の愛の形を読者様にお伝えすることができるのか、
それは読者様のコメントが助力となるのです。
少しずつでも、この作品で東方ssを理解していきたい、
日々精進したい、研鑽したいと考えておりますので、
今後、お見かけいただけましたら、足をお運びいただきたいと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
こっちはどうあがいても受け手なので
つづき書いてくれたら100点あげるんだからなっ///
そうですか…後書が難解とは…
どうすればいいでしょう?
つまり私の頭がおかしいという意味ですね。
しかしこればかりはどうも直すことができそうにありません。
申し訳ありません。
そして…
「好きなようにすればいい」ですか…
すでにできているものを加筆修正するつもりでいたのですが、
こうなると元のをUPして挑戦してみたほうがいいのですかね?
……
では、後書に書いたことを撤回しようと思います。
後書のほうを読んで待っていらっしゃる方には大変申し訳ありません。
この場での謝罪を失礼させていただくと同時に、明日中に本作品を完結させたいと思います。
ただ、連作とした以上、場面の移り変わりも考慮しますと、
文章的には非常に短いものを3つ、UPすることになるだろうと思われます。
最後に限っては10秒で読み終わると思いますが、何卒ご容赦いただきたく存じます。
連投となりますが、最後までお付き合いくださいますよう、切に願っております。
それでは失礼させていただきます。
私の頭が悪いばかりに理解できないだけだと思います。私は別にあなたを非難するつもりはありません。ただ、この作品を読み、後書きを読んで、非常に混乱したのは事実です。やっと少し整理が就いたので、コメントを変させて頂きます。
まず、あなたは少し謙虚すぎる。そう思わずにいられません。慇懃無礼という言葉がありますが、謙遜も度を過ぎれば自虐になり相手を不快にさせます。上の「壱だけですぐに撤退するつもりでいました。」とはなんですか。たとえ1人でも読者があなたに興味を持ち、1人でも続きを読みたいと思ったのなら、途中放置こそ戒めるべきことでしょう。それに、オーディエンスが居なくたって、芝居をやるときはやるんですよ。評価なんて後からもぎ取ってみせなさい。現に、少なくとも私は―そして幾ばくかの人はあなたの作品を認めています。
また、かなりきつい言い方になりますが、もし本当に自分の事を畜生以下の存在だと思うのならば、頭を冷やして出直しなさい。ここは人生相談所ではないし、私は精神科医じゃない。あなたがやっているのは人生じゃなくて、東方Projectの2次創作です。ここは創想話で、私は批評家気取りの1読者です。
精神汚染が何ですか。「感覚がずれている」、それが何です。みんながみんなZUN氏だったら、博麗霊夢だったら、2次創作なんてはやる訳ないでしょう。みんなちがって、みんないい。そういう物でしょう?自信を持ちなさい。たとえそれがあなたのスタンスなのだとしても、謙虚すぎる人に運命の女神は微笑みませんよ。こっぴどくやられる位でちょうど良いじゃないですか。
私は気が短いのでね、毎回いろんなSSを読む度にいやらしいコメントばっかり考えてるんですよ。必ず欠点と美点を1つずつ以上見つけて著者をへこます事ばかり考えてるんです。
あなたの欠点は、うじうじと考えすぎること。
あなたの美点は、頭を使っていることです。
そして、こんなにも美しいSSを著し、私を魅了した事です。
もし後書きでいうようにあなたが「まとも」になったら、私の楽しみが1つ減ります。
まだ夜は始まったばかりです。ゆっくり行きましょう。
「東方葬送花」という作品に関して言えば、私は文句なく綺麗で素敵な作品だと答えるでしょう。
老人は花に、私は死に涙した。老人は花を、私は眼を見た。老人は花に、私は人になった。
そして最後に―文章が書けるということは本当に素敵です。
いつまでもお待ちしておりますから。では。
本当に「これから」ってところで切りますねぇ。人間の起こした異変、それは妖怪にもそれ以外にも影響を及ぼすんですね。