落ちる、落ちる。
幻想郷の天井、天の上、天上からものすごい勢いで落ちて行く。
ある日、ふと思った。幻想郷の天井ってどこだろう。
もし幻想郷が四角い箱みたいな物だとしたら、そこには天井があるはずだ。
星に触ろうと思って上がっていけば、いつかは結界の天井に辿り着くかもしれない。それより先に進めなくなったら、きっとそこが天井なんだろう。そう思った。
結果は宇宙だった。
ここより先は進めない、そう思ったとき目の前には広大な宇宙空間が広がっていた。
部屋中にキラキラ光るビーズをばらまいたみたいに、星は地上から見るよりも沢山あって、月なんてもう本当目と鼻の先。ぴょんともう一息ジャンプすれば、月に着陸出来そう。
星なんて、手を伸ばせばつまめそうなのに、それでも遠い。
あぁ、思い出した。フランドールが少し前に言っていたことを思い出した。
フランドールのお姉ちゃんは少し前に、なんか変な乗り物で月に行ったって言ってたのを思い出した。
ここより先は、何でか良く分からないけどその変な乗り物に乗らないと進めないんだなぁと理解する。
そういえばお姉ちゃんもこんなこと言ってたっけ。
生身の人では宇宙に行くことは出来ませんって。
それでも、こうして目の前にすると宇宙に行きたくなる。どうしても、宇宙に行ってみたくなる。キラキラに触れてみたくなった私は必死に手を伸ばす。ここはもう宇宙なんじゃないかって勘違いしてしまうほど宇宙に近いのだから、手を伸ばせば普通に届きそうだったのだ。
でも、ダメ。
目の前にあるキラキラに触れることなど出来ないと分かると、途端にどうでもよくなってきて、私は力を抜いて落ちたのだ。
ものすごい勢いで私の体は空に下ろされたキラキラの暗幕から遠ざかっていく。
もう手を伸ばしてもキラキラを触ることなんで出来そうに無いくらい。
確か宇宙は無重力なんだ。宇宙では浮いていられたはずだ。
こうして力を抜けば、ふんわりと浮いていられるはず。心の中を無意識の内に彷徨うように、ふわふわとしていられるはず。
なのに、なのに私は落ちている。
どんどん加速して、きっと私の体は地上に叩きつけられるんだ。こんなにも高いんだから、地底まで貫通するのかな。お姉ちゃんの頭にごちんって。そしたら面白いのに。
それとも、痛くて死んじゃう?
そんなことを考えているうちに私は雲へと入ったらしい。もう随分落ちたものだ。
雲に入ると落ちているということをもっと強く実感する。宇宙に辿り着けなかったから落ちている。重力から無重力の世界へ私じゃあ行けなかった。
そう考え始めると、何だか悲しい。
悲しくて、悲しくて。心が無い私でも何だか虚しくなってきた。
雲を抜けて、さらに落ちる。
体をぐるんと反転させて、今度は幻想郷の地面を見てみることにした。
風で帽子が飛ばないように注意して、ものすごいスピードで落ちていく。
それでも地面にすぐに到達するわけではなく、結構な時間をかけてまるでゆっくりと落ちているかのような錯覚に陥る。
普段からよく空は飛ぶけれど、こんな感覚は初めて。自分が風になったみたい。
段々と近づいてくる幻想郷を凝視する。風が当って目は痛かったけれど、我慢して凝視する。
人よりも目がいい私には遠くからでも幻想郷の全部が見えた。
途中視界の端っこで竜宮の使いが眺めていた。首をかしげていたけれど、どうやらスルーされたようだ。人里では晩飯時らしく、各々が家にこもっているようだ。竹林へと人影が入っていくのも分かる。きっと兎達だね。紅魔館の前ではメイド達が門番長と一緒に体操をしていた。ああいうのって朝やるものじゃないのかな。
地底はどこだろう。
地底は見えないのだろうか。
いくら探しても、地底の様子は分からなかった。
そりゃそうか。
元々そうやって人目につかないように地底なんだもんね。
割ったお皿は地面に埋める。人の死体も地面に埋める。
空から見る幻想郷はとっても綺麗。でも空はもっと綺麗。汚いものは全部地底にやっちゃうから、地上と空はこんなにも綺麗。お姉ちゃんや私みたいに汚いものは、ぜーんぶ地底。
だからこんなにも今の風景は綺麗なんだ!
宇宙まで行けたらきっともっと綺麗なんだろうけど、私じゃ無理だったみたい。
結局幻想郷の天井はどこだか分からなかったし、結局私は重力の中。こうして、落ちるしかない。
雲を抜けて、とうとう地上が迫ってくる。
人も見えるような距離まで来た。
そういえば、このまま落ちたら痛いかなぁ。このまま落ちたら、いくら私でも死んじゃうかなぁ。
でも何となく、それでもいい気がしてきて。体をくるりと反転させてまた空を見上げる。
空が、綺麗。
私が届かなかった星達が、きらきら光って綺麗。もう手を伸ばしても、遠ざかるばっかり。
視界の端っこに山が見えた。
ということはもうすぐ地面に叩きつけられるんだな。
どうなっちゃうかな。
流石に、死んじゃうかな。
そう思ったとき、体が急にガクンとなった。
気がつけば目の前に沢山の星。星というよりは、☆。手の届かない空にある星を見て憧れた地上の人間が、必死に星を表現した☆が目の前に沢山広がっていた。
キラキラと星よりも光っている。沢山の色で光っている☆は本当に綺麗で、もしかしたら空にある星よりも綺麗なんじゃないかって思ってしまうくらいだった。
「あのなー。お前に何があったかは知らないけど、なんでそのまま落ちようとしてたんだよ。明らかにそのまま衝突するつもりだっただろ」
私の下は☆が沢山敷き詰められてて、どうやら体は魔理沙の魔法に受け止められたようだ。不思議なことに、そのとき受け止められた衝撃は全く無かった。流石魔法だね。
「いいじゃない。こうして結局助かってるんだから」
「たまたま通りかかって、たまたま視界に入ったからいいものを、私が今日ここに来なかったらどうするつもりだったんだよ」
沢山の☆が魔法使いの杖に引っ張られて、私を乗せて空を行く。横を見ると幻想郷の人達が家の中からのぞきこんでいるのが分かる。どうやら私が落ちる予定だったところは人里の近くだったらしい。今思えば、家とかじゃなくてよかったなって思う。またお姉ちゃんに迷惑かけちゃうしね。
「別に死にはしないって。多分だけど」
「私だってお前等がそんなことじゃ死なないくらいしってるさ。そういうことじゃないだろ」
「どういうこと?」
「お前が怪我して地霊殿に帰ったら、お前のお姉ちゃん色々と勘違いして死んじゃうぞ。色々な意味で」
「色々ばっかりだね」
はぁ、と深くため息をつく魔理沙。お前は本当喰えん奴だよって。食えん奴ってどういうことだろう。人間も妖怪食べるのかな。
「でもまぁ、お姉ちゃんに迷惑かかるってのはナンセンスだね。ちょっと反省した」
「お前にお姉ちゃんが居て本当よかったよ」
「なんで?」
「お姉ちゃん居なかったら、何しでかすか分からないからな」
魔理沙はちょっと恥ずかしい台詞を言ったって自覚するとき、帽子をちょいと下に下げる癖がある。無意識のうちに、くいって。今そうしたけど、そんなに恥ずかしい台詞だったかな。あんまりそうでない気がするけど、まぁそれは個人の感覚だから仕方ないか。
「☆綺麗だね」
「星にゃ負けるけどな」
空を見上げる。魔理沙も一緒になって空を見る。真っ黒のキャンパスの上に、少しキラキラした絵の具をばら撒いたみたい。私の乗ってる魔理沙の描いた☆は、ちょっとうるさすぎるかな。
「なんでいつも☆にそんなこだわってるの?」
「お前と同じだ」
出た。魔理沙の帽子くいっ。
「私もなー、空にあこがれたんだよ。宇宙に。星に。星見てたらさー、小さい頃何にも分かってない私はあれが欲しいと思ったわけよ」
「星なだけに欲しかったの?」
「やかましいわ」
魔理沙の☆の一つを手に持ってみる。薄っぺらいそれは、キラキラと光るそれは簡単に手につかむことが出来た。
さっきの、これ以上宇宙に向かって上がれない状態を思い出す。
あんなに頑張って、さらに頑張って手を伸ばしても、すぐ近くに見えるのに星は手につかむことが出来なかった。こうして地上近くに居ても空を見上げればあんなに近くに見えるのに、ちっとも届かない。手で触るなんてもってのほか。
「ほい、到着っと」
魔理沙が降り立って私を下ろした場所は地底への入り口。
「なんで? 私まだ帰る気無いよ?」
「もう夜遅いからな」
「いっつも三日に一回しか帰ってない」
「たまには帰ってやれよ。お姉ちゃん喜ぶぞ」
お姉ちゃんには迷惑や心配かけたくないってだけだから、お姉ちゃんが喜ぶってのは案外どうでもいいことだけど、まぁたまには帰ってもいいかなと思った。
何でかって言うと。
「ねぇ、この☆貰ってっていい?」
「あぁ、そんなもん五万とある。いくらでもやるよ」
そういうと魔理沙は帽子を出せって言ってきて、私の抱えた帽子一杯に☆を入れてくれた。
大小様々。ピンク、青、赤、黄緑。発光している沢山の色とりどりの☆。
これをお姉ちゃんに見せてあげるんだ。
「ありがとう!」
「おう、じゃあな」
だってお姉ちゃん、星なんて最後にみたのいつか思い出せないくらい昔だと思うから。
「あ、そうそう」
「どうしたの?」
「お前さ、今日の落ちた出来事、何考えてたか分からないけどあんまり詳しくお姉ちゃんに話すなよ?」
「分かってるって」
「そうだったな」
☆をくれた魔法使いは箒にまたがり浮遊し始める。人間が魔法をこんなにも使いこなすまで到達するのにどのくらい努力したんだろう。それでもまだ星を手にすることは出来ない。だから☆を生み出しているんだ。
お姉ちゃん、☆喜んでくれるかな。まぁ、星じゃなきゃ嫌だなんてことは言わないと思うけど。喜んでくれるといいな。
今日は帰って、これを隠して部屋に持ち込んで。
お姉ちゃんよりも早くお風呂に入って。
それでお姉ちゃんがお風呂に入っている間にこの☆を地霊殿に飾るんだ。
怒られるかな。でもきっと、喜んでくれるよね。
☆をくれた魔法使いがものすごいスピードで空へと飛び立つ。
もし玄関でお姉ちゃんにあっちゃったら何て言おうか。まずは、ただいまー。たぶんおかえりなさい、こいしっていうから、部屋にかけこもう。
そのとき見られたら意味無いから、お姉ちゃんに持たせてもらったハンカチを帽子にかけて隠しておこう。
それでもきっと、何ですかそれって聞いてくるよね。そしたらいいじゃん別にって答えよう。きっと深くは詮索してこない。
そう考え始めると何だか楽しくなってきた。
普通の魔法使いが見えないくらい空高くに☆をばら撒きながら飛んでいったのを見届けて、私は地霊殿を目指して歩き出した。
お姉ちゃん☆を見て、星を見たいって思うかな。思ってくれたら、なんかいいな。
幻想郷の天井、天の上、天上からものすごい勢いで落ちて行く。
ある日、ふと思った。幻想郷の天井ってどこだろう。
もし幻想郷が四角い箱みたいな物だとしたら、そこには天井があるはずだ。
星に触ろうと思って上がっていけば、いつかは結界の天井に辿り着くかもしれない。それより先に進めなくなったら、きっとそこが天井なんだろう。そう思った。
結果は宇宙だった。
ここより先は進めない、そう思ったとき目の前には広大な宇宙空間が広がっていた。
部屋中にキラキラ光るビーズをばらまいたみたいに、星は地上から見るよりも沢山あって、月なんてもう本当目と鼻の先。ぴょんともう一息ジャンプすれば、月に着陸出来そう。
星なんて、手を伸ばせばつまめそうなのに、それでも遠い。
あぁ、思い出した。フランドールが少し前に言っていたことを思い出した。
フランドールのお姉ちゃんは少し前に、なんか変な乗り物で月に行ったって言ってたのを思い出した。
ここより先は、何でか良く分からないけどその変な乗り物に乗らないと進めないんだなぁと理解する。
そういえばお姉ちゃんもこんなこと言ってたっけ。
生身の人では宇宙に行くことは出来ませんって。
それでも、こうして目の前にすると宇宙に行きたくなる。どうしても、宇宙に行ってみたくなる。キラキラに触れてみたくなった私は必死に手を伸ばす。ここはもう宇宙なんじゃないかって勘違いしてしまうほど宇宙に近いのだから、手を伸ばせば普通に届きそうだったのだ。
でも、ダメ。
目の前にあるキラキラに触れることなど出来ないと分かると、途端にどうでもよくなってきて、私は力を抜いて落ちたのだ。
ものすごい勢いで私の体は空に下ろされたキラキラの暗幕から遠ざかっていく。
もう手を伸ばしてもキラキラを触ることなんで出来そうに無いくらい。
確か宇宙は無重力なんだ。宇宙では浮いていられたはずだ。
こうして力を抜けば、ふんわりと浮いていられるはず。心の中を無意識の内に彷徨うように、ふわふわとしていられるはず。
なのに、なのに私は落ちている。
どんどん加速して、きっと私の体は地上に叩きつけられるんだ。こんなにも高いんだから、地底まで貫通するのかな。お姉ちゃんの頭にごちんって。そしたら面白いのに。
それとも、痛くて死んじゃう?
そんなことを考えているうちに私は雲へと入ったらしい。もう随分落ちたものだ。
雲に入ると落ちているということをもっと強く実感する。宇宙に辿り着けなかったから落ちている。重力から無重力の世界へ私じゃあ行けなかった。
そう考え始めると、何だか悲しい。
悲しくて、悲しくて。心が無い私でも何だか虚しくなってきた。
雲を抜けて、さらに落ちる。
体をぐるんと反転させて、今度は幻想郷の地面を見てみることにした。
風で帽子が飛ばないように注意して、ものすごいスピードで落ちていく。
それでも地面にすぐに到達するわけではなく、結構な時間をかけてまるでゆっくりと落ちているかのような錯覚に陥る。
普段からよく空は飛ぶけれど、こんな感覚は初めて。自分が風になったみたい。
段々と近づいてくる幻想郷を凝視する。風が当って目は痛かったけれど、我慢して凝視する。
人よりも目がいい私には遠くからでも幻想郷の全部が見えた。
途中視界の端っこで竜宮の使いが眺めていた。首をかしげていたけれど、どうやらスルーされたようだ。人里では晩飯時らしく、各々が家にこもっているようだ。竹林へと人影が入っていくのも分かる。きっと兎達だね。紅魔館の前ではメイド達が門番長と一緒に体操をしていた。ああいうのって朝やるものじゃないのかな。
地底はどこだろう。
地底は見えないのだろうか。
いくら探しても、地底の様子は分からなかった。
そりゃそうか。
元々そうやって人目につかないように地底なんだもんね。
割ったお皿は地面に埋める。人の死体も地面に埋める。
空から見る幻想郷はとっても綺麗。でも空はもっと綺麗。汚いものは全部地底にやっちゃうから、地上と空はこんなにも綺麗。お姉ちゃんや私みたいに汚いものは、ぜーんぶ地底。
だからこんなにも今の風景は綺麗なんだ!
宇宙まで行けたらきっともっと綺麗なんだろうけど、私じゃ無理だったみたい。
結局幻想郷の天井はどこだか分からなかったし、結局私は重力の中。こうして、落ちるしかない。
雲を抜けて、とうとう地上が迫ってくる。
人も見えるような距離まで来た。
そういえば、このまま落ちたら痛いかなぁ。このまま落ちたら、いくら私でも死んじゃうかなぁ。
でも何となく、それでもいい気がしてきて。体をくるりと反転させてまた空を見上げる。
空が、綺麗。
私が届かなかった星達が、きらきら光って綺麗。もう手を伸ばしても、遠ざかるばっかり。
視界の端っこに山が見えた。
ということはもうすぐ地面に叩きつけられるんだな。
どうなっちゃうかな。
流石に、死んじゃうかな。
そう思ったとき、体が急にガクンとなった。
気がつけば目の前に沢山の星。星というよりは、☆。手の届かない空にある星を見て憧れた地上の人間が、必死に星を表現した☆が目の前に沢山広がっていた。
キラキラと星よりも光っている。沢山の色で光っている☆は本当に綺麗で、もしかしたら空にある星よりも綺麗なんじゃないかって思ってしまうくらいだった。
「あのなー。お前に何があったかは知らないけど、なんでそのまま落ちようとしてたんだよ。明らかにそのまま衝突するつもりだっただろ」
私の下は☆が沢山敷き詰められてて、どうやら体は魔理沙の魔法に受け止められたようだ。不思議なことに、そのとき受け止められた衝撃は全く無かった。流石魔法だね。
「いいじゃない。こうして結局助かってるんだから」
「たまたま通りかかって、たまたま視界に入ったからいいものを、私が今日ここに来なかったらどうするつもりだったんだよ」
沢山の☆が魔法使いの杖に引っ張られて、私を乗せて空を行く。横を見ると幻想郷の人達が家の中からのぞきこんでいるのが分かる。どうやら私が落ちる予定だったところは人里の近くだったらしい。今思えば、家とかじゃなくてよかったなって思う。またお姉ちゃんに迷惑かけちゃうしね。
「別に死にはしないって。多分だけど」
「私だってお前等がそんなことじゃ死なないくらいしってるさ。そういうことじゃないだろ」
「どういうこと?」
「お前が怪我して地霊殿に帰ったら、お前のお姉ちゃん色々と勘違いして死んじゃうぞ。色々な意味で」
「色々ばっかりだね」
はぁ、と深くため息をつく魔理沙。お前は本当喰えん奴だよって。食えん奴ってどういうことだろう。人間も妖怪食べるのかな。
「でもまぁ、お姉ちゃんに迷惑かかるってのはナンセンスだね。ちょっと反省した」
「お前にお姉ちゃんが居て本当よかったよ」
「なんで?」
「お姉ちゃん居なかったら、何しでかすか分からないからな」
魔理沙はちょっと恥ずかしい台詞を言ったって自覚するとき、帽子をちょいと下に下げる癖がある。無意識のうちに、くいって。今そうしたけど、そんなに恥ずかしい台詞だったかな。あんまりそうでない気がするけど、まぁそれは個人の感覚だから仕方ないか。
「☆綺麗だね」
「星にゃ負けるけどな」
空を見上げる。魔理沙も一緒になって空を見る。真っ黒のキャンパスの上に、少しキラキラした絵の具をばら撒いたみたい。私の乗ってる魔理沙の描いた☆は、ちょっとうるさすぎるかな。
「なんでいつも☆にそんなこだわってるの?」
「お前と同じだ」
出た。魔理沙の帽子くいっ。
「私もなー、空にあこがれたんだよ。宇宙に。星に。星見てたらさー、小さい頃何にも分かってない私はあれが欲しいと思ったわけよ」
「星なだけに欲しかったの?」
「やかましいわ」
魔理沙の☆の一つを手に持ってみる。薄っぺらいそれは、キラキラと光るそれは簡単に手につかむことが出来た。
さっきの、これ以上宇宙に向かって上がれない状態を思い出す。
あんなに頑張って、さらに頑張って手を伸ばしても、すぐ近くに見えるのに星は手につかむことが出来なかった。こうして地上近くに居ても空を見上げればあんなに近くに見えるのに、ちっとも届かない。手で触るなんてもってのほか。
「ほい、到着っと」
魔理沙が降り立って私を下ろした場所は地底への入り口。
「なんで? 私まだ帰る気無いよ?」
「もう夜遅いからな」
「いっつも三日に一回しか帰ってない」
「たまには帰ってやれよ。お姉ちゃん喜ぶぞ」
お姉ちゃんには迷惑や心配かけたくないってだけだから、お姉ちゃんが喜ぶってのは案外どうでもいいことだけど、まぁたまには帰ってもいいかなと思った。
何でかって言うと。
「ねぇ、この☆貰ってっていい?」
「あぁ、そんなもん五万とある。いくらでもやるよ」
そういうと魔理沙は帽子を出せって言ってきて、私の抱えた帽子一杯に☆を入れてくれた。
大小様々。ピンク、青、赤、黄緑。発光している沢山の色とりどりの☆。
これをお姉ちゃんに見せてあげるんだ。
「ありがとう!」
「おう、じゃあな」
だってお姉ちゃん、星なんて最後にみたのいつか思い出せないくらい昔だと思うから。
「あ、そうそう」
「どうしたの?」
「お前さ、今日の落ちた出来事、何考えてたか分からないけどあんまり詳しくお姉ちゃんに話すなよ?」
「分かってるって」
「そうだったな」
☆をくれた魔法使いは箒にまたがり浮遊し始める。人間が魔法をこんなにも使いこなすまで到達するのにどのくらい努力したんだろう。それでもまだ星を手にすることは出来ない。だから☆を生み出しているんだ。
お姉ちゃん、☆喜んでくれるかな。まぁ、星じゃなきゃ嫌だなんてことは言わないと思うけど。喜んでくれるといいな。
今日は帰って、これを隠して部屋に持ち込んで。
お姉ちゃんよりも早くお風呂に入って。
それでお姉ちゃんがお風呂に入っている間にこの☆を地霊殿に飾るんだ。
怒られるかな。でもきっと、喜んでくれるよね。
☆をくれた魔法使いがものすごいスピードで空へと飛び立つ。
もし玄関でお姉ちゃんにあっちゃったら何て言おうか。まずは、ただいまー。たぶんおかえりなさい、こいしっていうから、部屋にかけこもう。
そのとき見られたら意味無いから、お姉ちゃんに持たせてもらったハンカチを帽子にかけて隠しておこう。
それでもきっと、何ですかそれって聞いてくるよね。そしたらいいじゃん別にって答えよう。きっと深くは詮索してこない。
そう考え始めると何だか楽しくなってきた。
普通の魔法使いが見えないくらい空高くに☆をばら撒きながら飛んでいったのを見届けて、私は地霊殿を目指して歩き出した。
お姉ちゃん☆を見て、星を見たいって思うかな。思ってくれたら、なんかいいな。
魔理沙イケメン過ぎるwww
☆は星じゃないんだな、突き付けられたような感じ。
地底で光る☆はどんなものになるんでしょうかね?
雰囲気が楽しめました。
☆って表現に最初違和感あったけど、読み進めるとしっくり来ました
なるほど☆だ
…なんか違うな、えーと、ともかく最高だ「☆」。
しかし☆はどう読もうか。
>1様
実は☆にいたっては自分でも書いていて違和感だらけでした。本当にこんなんでいいのかな、こんなん上げていいのかなぁって気分でした。でも自分で後々読んでみても、今までの中では屈指のお気に入り度です。素直に安心しました。
鉄梟の中で魔理沙はイケメン。妹紅とツートップです。咲夜さんが司令塔。少し嫌な言い方をするのなら、魔理沙がアンリ、妹紅がトレセゲ、咲夜さんがジダンです。少し古いですね。
>4様
オリオン座を見てオリオンだと思った人は天才ですが、星を見て☆とした人も抽象画の天才だと思います。本当に。自分でもこれを書こうと思ったときはそうかーって思ってしまいました。そう考えると今の科学はよく発展してますね。星をプラネタリウムでより星に近く見せることに成功していると思います。図鑑ではまだまだ☆ですが……。
そう、今回の副題は実はそこなのですよ。別にこいしじゃなくてもよかったのですが、無理矢理にでも地底に星を写したかったんです。さとり様に見てもらいたくて。でも鉄梟の技量じゃこれが限界で、さらに☆を見せてあげるのが限界でした。
>9様
楽しんでいただけたようで何よりです。
今後もね、こういう謎な物あるかもしれないので、温かい目で見守ってやってください。それでまたふむ、面白いと思ったらコメントを入れてやってください。後転しながら喜びます。
>10様
魔理沙はかっこかわいいですよね。さっきのコメントでも語りましたが、まじ格好いい。しかも妹紅や咲夜さんとは違うタイプ。涙も似合うイケメンとか。マジ隙なさすぎる。
自分でも書いている途中では☆に違和感だらけでした。でも読んでみたら意外と。この作品本当自分の中でもお気に入りなんです。☆ですねぇ。
>13様
☆は☆でちゃんと綺麗なんですよねぇ。何せ人間が星を見て勝手に美化したものが☆なわけですから。この先人類が宇宙に簡単にいけるようになったとき、天体で☆型の星を発見できたら、なんだかもっと素敵ですよね。お前は少女かって、鉄梟はむさい男です。
>奇声を発する程度の能力様
そう言ってもらえると嬉しいです! キラッ☆
>18様
問題は昔の人が星を見て、☆を書いてからそれを「ホシ」と呼び始めたのか、星を見て「ホシ」と名づけ☆を書いたのか。どっちかってことですよね。☆ってマークを最初にやったのはいつなのか。歴史じゃこういうこと教えてくれませんもんねぇ。興味あります。
>ずわいがに様
こいし、小石。さとり様にとってこいしは何よりも輝いて見える存在なのです。こいしちゃんから見ても、さとり様はきっと輝いていると思います。だからきっと互いに傷つけたくないって思いが強すぎちゃうんですね。極たまに。それがすれ違いを生んで……。
>20様
☆流行らないかななぁ。
さぁ、みんなで☆を打ち上げようか!
>28様
魔理沙もよんでこよう!
さとり様☆をみたらなんて言うでしょうね。さとり様みたいに心の読める妖怪は何を見て感動するんでしょうかね。それは僕等人間と同じなのでしょうか。
空が明るすぎて、現代の日本じゃあ星はあんまり見えないのだ。魔理沙みたいに☆を空にばら撒いてくれるような人がいたら楽しいでしょうね!
>29様
風景というか、視界をかなり意識しました。ありがとうございます。
これからも、まぁぽりぽりと頑張っていきますん。