幻想郷にも春はやってくる。春といえば桜。花見の季節。
ところが、山のほうでは桜を肴に宴会が行われていると聞くのだけれど、我が博麗神社には参拝客どころか花見客一人すらまともに来やしねーのである。ゴミはちゃんと各自で始末するように。と昨年から徹底したところ今年に入ってこの仕打ち。風の噂に耳を貸す限り「博麗の神社はルールが厳しすぎる」とのこと。それでやりたい放題の他所様へ人が流れたらしい。いや確かにちょっとポイ捨て客にスペルぶっぱはやりすぎかと思ったけど、毎年毎年散らかった境内を一日かかって片付ける私の身にもなって欲しい。
そんなわけで、今年はあきれ返るほどの平和さで桜を独り占めなんかしちゃったり。
ちょっとした夢見心地に浸っていると、空から降りてくるカラス。天狗の方ではなく衣装が白黒のほうき持ちの方、霧雨魔理沙だ。
「うわ、酒臭っ」
縁側に座っている私に近づいて、開口一番にこの礼節の無さときたら。
「いいじゃない。お花見よ、お花見」
「だからって昼間からお酒はちょっと……それで客の応対をする気か?」
「来たら嬉しいんだけどねー」
それだけ聞いて、去年のスペル桜吹雪事件の現場に居合わせた魔理沙はなんとなく察してくれたらしい。それ以上は詮索せず、ぽりぽりと頬をかいて隣に腰掛けてくる。
「それだったら、霊夢も山のお花見に参加してきたらいいんじゃない?」
「いやよ。面倒くさいし、一応ここもあるし。それなら魔理沙こそどうなの?」
「あー、一日行けばもうな。二日目三日目までついていくテンションはない」
「なにあれそんなにやってるの?」
妖怪には宴会好きな連中が居るのだけれど、その度合いといったら祭り好きな人間とは比べ物にならないほど。祭り命、祭りマンセー状態。こういうところはどうしても人間と妖怪でギャップがあるのよねぇ。
何事もほどほどが一番。とかいいつつこのお酒何杯目だっけ。
「というわけで、今日はここにのんびりしに来たんだ」
言いながら全身で伸びをして、魔理沙は背中から倒れていく。昼下がりに満開の桜に囲まれて酔っ払いの横で昼寝。のんびりしすぎだ。
「せっかく来たんだから、ちゃんと花くらい見なさいよ」
「んー。そうだな、こんな長閑に神社の桜を眺めるのも初めてだし……いよっし霊夢、わたしにもお酒ちょーだい」
挙句に酒は飲むと。この無職、フリーダムすぎる。
「いいけど、できれば洋酒から片付けてくれない? もらっても使わないし飲まないから始末に困るのよ」
「おお、それは願ってもない……やっりウィスキーじゃん。氷もらうぜ!」
帰ってきた魔理沙は氷の入った湯呑みと、焦がした樽で寝かせて風味をつけたというバーボンウィスキーを手に提げていた。何かひどく間違っているのだけれどそんなの関係ねぇとちびちびやりだす魔法使い。
「っぁー! いいね。この焼けるような喉越し」
「少しちょうだい」
美味そうに飲む姿を見てちょっと興味が湧いた。
どうぞ、と渡されて飲んでみると……うげぇほっ、げほっ、咽た。げほっ、げほっ。こちらの醜態にあっはははと笑い転げる魔理沙。一口目からもう酔っ払うとか、誰かこいつをなんとかしてくれ。
「信じらんない……こんなの美味しいの?」
「慣れればまあ。水やソーダで割ればもうちょいマシだけど、やっぱロックが一番よ」
ふうん。日本酒にはない飲み方もあるらしい。
けれど、やっぱり酒は生まれた地の水で作られたものが一番。私はまたここで造った酒を飲み始める。魔理沙は魔理沙でウィスキーを続ける。二人して手酌の、のんびりしすぎた小さな宴がなし崩しで始まっていた。
で。二人してとりとめもない話をしていると気がつけばウィスキーのボトルは空に。私は……確実に一升空いてるわコレ。
ごろーんと寝転がって春の日差しを浴びる。気持ちいい。こんなにぽやーっとしていいなら妖怪たちの宴続きも少しだけ理解できるかもしれない。
と、魔理沙も寝転がってくる。何故だか座っていた時よりも距離が近い気がする。酔ったせいで二人とも頬が赤くて、目が潤んでいる。なんか、ほてっているのが空気越しに分かる。何気ない沈黙。そのまま見詰め合って、静けさに耐え切れず口が開く。
「ねぇ、魔理沙」
「どした?」
「チュー、しない?」
「わり、昼飯が餃子なんだわ」
本気のような冗談なんだけど、それは冗談じゃない。ん。酔っ払って日本語おかしい。
「そっかぁー。臭いのはちょっとね」
よくよく思えばウィスキーと酒という組み合わせの方がキツいような。
そんな、いい感じに記憶から消え失せた春の一日。
短い春が終わって、長く感じる夏がやってくる。
幻想郷も喧騒に包まれて、生命力に満ち溢れていく。
眩しい太陽。反射する新緑の草木。朝も夜も虫たちは高く鳴き、湿気と気温と共に嫌らしく私たちの周りに擦り寄ってくる。
きっと暑さで参拝客なんて一人も来やしねーなんて思いつつ頑張って打ち水をしているところに、魔理沙が落ちてきた。文字通りの勢いで落下し境内の土に穴を作ってしまう。呆れつつ近づくと、ふるふると震える手がこちらに向けられる。
「生きてる? 死んでたら返事をして」
「殺すな……でも、死にそう……」
言うとおりいつもの元気はどこへやら。ぶっ倒れたまま起き上がろうともしない。ちょっとだけ心配になって顔を覗き込む。すごく赤くて熱い。ってこれは――
「魔理沙、日射病って知ってる?」
「あ、ああ……そうかー。これが噂に聞く、日射病…………み、水」
そりゃあいつも通りの服装でこの炎天下を飛び回れば、お日様のお怒りくらい買う。うわっ、この黒い三角帽で目玉焼き焼けそう。
放っておくわけにもいかないので要求どおり水を差し出そうとして。
打ち水用の桶に溜めていた水を、そのまま魔理沙にぶっかけた。
「すっげー微妙……涼しいけど、濡れた服が肌にまとわりついて気持ち悪い」
そのまま縁側に退避して介抱してみる。ニ、三杯ぶっかけるといい感じで熱が失せたらしい。日射の余韻で動けない魔理沙に膝枕をしつつ、適度に飲料用に水を与えてやる。まあ死にそうにはないので間違ってはいないと思う。
「大体、夏用の服とか考えてないの? あんな真っ黒な帽子じゃ焼けて当然よ」
「考えてないけど。なんだ。だからって巫女服の袖を外すのはどうかと思う」
「ノースリーブよ、ノースリーブ。あんな暑いの着てられません」
魔理沙の言うとおり、今年の夏服は生地だけでなくデザインにもこだわってみました。まさかのノースリーブ巫女服! 袴の生地も薄くて風通しのいいものを使用しているので猛暑でもバッチリ。問題はそれすら徒労に思わせる今年の異常な暑さなのだけれど。
けれど別に異変というわけでもないので出動要請は今のところなし。幻想郷のみなさま総出で太陽にブーイングをしているのが現状であったりする。
それにしても。水に濡れている衣服という危険度極まりない服装だというのにこの魔法使い、色々残念である。
「なんだよー、ちょっとは色気くらい出てるだろー」
「思考読まれた……そういうフェティシズムはね、シチュエーションがものを言うのよ。突然の雨でなんとか軒先に避難したら、となりの娘の服が透けて見えましたみたいな。日射病治療にぶっかけられたじゃ情緒もへったくれもないじゃない」
「えらく力説するじゃないか。このまま抱きついてやろうか」
「それやったら石畳の上に放置してあげる」
炎天下の石畳はヤバい。いくら打ち水したってあっという間に熱を取り戻す。
焼かれる姿を想像して、起き上がろうとしていた魔理沙は再び重力の僕へ。あーあ、そういえば勢いで魔理沙を床に上げちゃったけど、掃除めんどくさいなー。
それから少し言葉もなく過ごすと、魔理沙がよいこらしょと起き上がる。そこそこ回復はしたらしい。境内で人死にだけは避けられたようだ。
「よし。なんとか行けるか……けど、服はどうしたもんだか」
「乾かして行けばいいじゃない」
「着替え、貸してくれるのか?」
「そもそも服を着る必要があるの?」
だって暑いし。お互い裸くらい見てるし。ついでに人なんて来ないし。
「……それもそうか」
なんて納得して、年頃の娘だというのに他所様のお家で下着姿になるダメ娘。
濡れた服はそのまま物干し竿行き。改めて体を抜いた魔理沙は、そのままヒャッホーなんて畳に寝転がり始める。
物干し台から私が戻ってくると、魔理沙が仰向けに寝転んだまま停止してこちらを見上げる。改めて見ると、ここまで頑張ればそれなりに扇情的だ。半裸の体に絡む三つ編みがまたなんともいえないいい味。
そんな魔理沙が、日射にやられて朱の頬のまま、くい、と袴の裾を引っ張る。
「なあ、霊夢」
「どうかしたの?」
「……その、エッチしようよ」
「ごめん、生理中なのよ」
恥らって言う姿は中々ですけれど。残念ながら冗談だろうとなんだろうと布団が汚れる面倒くささが勝つ。
「ちぇー、ノリ悪いぞ霊夢」
いやいや生理は事実。こいつはもうちょっと気を使ってくれても良いと思う。
そんな、うだるような夏の一日。
夏が終わり、冬が訪れるまでの間。これを秋というのだが、毎年どのあたりまでが秋なのかという範囲の見極めが難しい。
今年はどうだろう。残暑が長かった気もする。それでいて冷え込む時はあっという間で、もう居間にはコタツが欠かせなくなってしまった。いかんいかん早すぎる。これがあると寒くないのはいいのだけれど、いつまでも引き篭もってしまえるのがよろしくない。まったく、これから冬が来るというのにこの体たらく。まあ改善しようという気は微塵もないのですけれど。
さて。この時期の博麗神社には、決まって大仕事が必要となる。
それは――落ち葉の始末。
大自然麗らかな幻想郷、その周囲近辺一体から流れてくる大量の落ち葉。別にこの神社だけが被害を受けているわけではないのだけれど、この社を綺麗に保つのが巫女の仕事の一つ。なので、こうして何も無い時はほうきを手にとってえっさかほいさか掃除をしているのですが、一日経てば大体元通り。落ち葉の散乱する境内に戻る。
そんなうんざりする掃除ライフの三日目。そろそろ嫌になってきて放置しようかなと考え始めた所で、魔理沙がやってきた。ええいどうしてこう面倒くさい時に限って普段より客足が多いのか。
「どした、霊夢。えらく不機嫌そうな顔をして」
「そりゃイヤにもなるわよ。毎年毎年、どうしてこれだけ散らかしてくれるのかなって」
「落ち葉掃除かぁ。ご苦労さん」
「もーやめちゃおっかな。ああもう、秋の風物詩ってもっと情緒のあるものでしょ!」
「そうだなー。人にもよりけりだけどわたしの場合はやっぱり……これだな」
言って魔理沙が取り出したるは……ある国市場限定で高額取引がされているという噂の食材。きのこ。立派なマ○タケだった! って何故にここに、それも篭一盛りという中々の量で存在しているのか。
「魔理沙、それ」
「食おうぜ! って持ってきたんだけど、そっかまだ仕事中か。じゃあ他所へ」
「全力で片付けるからそこで待ってなさい」
そんなご褒美を用意されたからにはボムを全弾消費してでもこの落ち葉を駆逐する。そんな意気込みで掃除再開。
「ほら、魔理沙も手伝う! その手に持ってるほうきは飾りなの!?」
「あんなのただの飾りです。偉い人には……まあいいか」
半ば八つ当たりで言ってみたものの、付き合いよく落ち葉の弾幕に付き合ってくれる魔法使い。
二人でやるならこっちのもの。さっさと終わらせてマツ○ケをいただくのだ!
炊き込みご飯に土瓶蒸し、網焼きにお吸い物と、まさかのフルコースで秋を堪能させていただきました。ごちそうさまです。
食事も後片付けも終わった、時刻的にはもう夜の過ぎ。魔理沙はぐだぐだとして帰らずコタツの中。私は私で熱燗を飲みながらコタツの中。それぞれ余韻を楽しみながら力を抜いて休んでなんかみたり。
それにしても。きのこ限定とはいえ自ら調達できるというのは便利で強いなぁ。と思ってみたり。それに比べて私の出来ることと言ったら弾幕展開とここの神事くらいなもの。なんて考えの末に思ったことが不意に口から出る。
「私、博麗の巫女じゃなかったらきっと野垂れ死んでるわー」
返事を期待したわけではないのだけれど、魔理沙はごろーんと寝転がったまま声だけで反応してくれる。
「あー、うん。一切否定できない。むしゃくしゃしてるからって昼から酒を飲んだりするのはちょっとな」
「そんなこともあったわね。でも否定をできないってどういうことかしら。二重で否定するほど?」
「そういう意味じゃないと思う。あ、わたしぬる燗で」
「そこにお猪口もとっくりもあるから自分でやって」
「やりぃ! 台所借りるぜ」
「お代におつまみ作ってよね」
「腕によりをかけますわ♪」
ヤだなんだかろくでもない会話。やっぱり私、博麗の巫女じゃなかったら今頃は野垂れ死んでると思う。
戻ってきた魔理沙はコタツに戻り、二人分のおつまみとぬるめの燗を置いておやじみたいな一息をつく。なんとなく注いであげて、くいっと一口飲んでから、私の目も見ないで言う。
「別にいいんじゃない。やっぱり人それぞれ得手不得手っていうのはあるし」
「人それぞれ。って言う言葉は好きじゃないんだけど。だってこれ、他人と自分の線引きをするための簡単な言い訳じゃない。そういうイージーな諦めって嫌いだわ」
「それには同意だけれど、言いたいことはもうちょっと別。何かが得意な奴はやっぱり、その何かの上では人より高いところから目が届く――そういう奴が足りない奴を補ってくれるもんさ。だからきっと、霊夢は巫女じゃなくたって生きていける」
それはちょうど今の私たちのように。
……くそ、納得してしまったじゃないか。
「じゃ魔理沙、結婚して」
「いや、やっぱ旦那は野郎じゃなきゃ」
「そうよねー。どっかにいい男いないかしら」
励まされたのが少し悔しいので思ってもない言葉を口になんかしてしまったり。
そんな、徐々に暮れていく秋の一日。
年末年始は冬の真っ只中、時おり雪がちらつく寒さの中で迎えられる。
徐々に厳しくなる寒波は、空気も、水も、棘のように冷たくしてくれる。文字通り寒気が刺さったところを温めながら、もう一度寒さに立ち向かう。そんな様子の早朝が冬の光景だと言うのだけれど、私は冬の夜の方が好きだ。特に雪が降り積もった晩は最高。本来闇に包まれるはずの世界が、白色によって銀世界に生まれ変わるという奇跡。その翌朝に見れる山の雪化粧も溜息ものの美しさだけれど、やはり光と闇の暗転を私は推したい。
ただし今年は雪なんてちっとも降らず、ただただ寒いばかりの日々が続く。情緒もへったくれもなく木枯らしが吹き荒び、広い境内を寂しく凍えさせる。うう、なんか気持ちまで寒くなってくる。こんな日は一日中コタツの中でお茶をすすっていたいのだけれど、そういうわけにもいかない。年末年始は、神社の数少ない書き入れ時だ。ここで一年分は稼ぐつもりでやらねば神社も信仰も立ち行かない。そんなわけで初詣ばかりには気合を入れる。師走だというのに師匠すらおっぽり出している魔法使いまで借り出して、毎年、昨年よりより良く目指して仕度を整えていく。
その仕度も本日でお終い。つまり本日は大晦日である。
今日まで手伝ってくれた魔理沙へ、心よりお礼を込めて年越し蕎麦を振舞う。今年は豪華に天ぷらもたくさん作ったので、魔法使いは渋々それで手を売ってくれたのであった。
「あーあ。また一年が終わるのかぁ」
気がつけばあと数刻で日付が変わり、年が進むところでふと魔理沙がぼやいた。
「もう、って感じよね。なんか時間が過ぎるのが早くなってる気がする」
丁寧に拾ってから考える。というより、考えるまでもなく日々思っていたことが口から出る。小さい頃は一年の終わりなんて、まるで長く続いたこの世の果てが来たみたいな衝撃で迎えていたものだけれど、今ではあっさりと日付を跨ぐし、年末に至るまでの過程も一生分なんかじゃなくって長い長い一日程度にしか感じられない。いやちょいまち流石に言い過ぎた。一年と一月が大差ないなぁってぐらいで。
「そうなんだよなぁ。なあ霊夢、時間っていうのはどうして過ぎていくんだ?」
「それを答えようと思ったら、何が時間の変化を示しているかを明確にしないと」
「うーん。物体の変化、ってところか? 天ぷらの衣みたいに、つゆにつけておけばふやけていく。これは時間が過ぎている。と言える」
「じゃあ、変化が多いのは過ぎていく時間が早いっていうこと? それとも遅いっていうこと? 逆もよろしく」
「どうなんだろう。主観として見る分には子供の頃の時間は長く感じる。でも客観から見たら子供があっという間に育っている。うーん、ここは覆しようが無いんじゃないか? それは主観か客観かで決まる」
「じゃ、私たちは大人に近づいて変化が乏しくなったから時間の流れを早いって感じているけれど、周囲から見れば私たちは変化が少なくなって長い時間を過ごしているように感じられるってことか」
「皮肉な話だよなー。でもこういうのって妖怪はどう感じるんだろうな。あいつら変化なんてしないし」
「……分かんない。自分のだって頭捻られないと分からないのに、他所様の、しかも人間じゃないものなんて想像できない」
「だよなぁ。レミリアと咲夜に投げてみたいなこの話」
「時間を操る人間と、長く不変の吸血鬼。うわ絶対ついてけない」
同感だ。と言った所でふと言葉が途切れる。
麺つゆは冷めて、天ぷらのころもはふやけきっている。食事とお喋りとコタツで私たちの体温は上がっているから、時間は確かに過ぎている。
あえて口にしなかった問いを頭の中で反芻する。
私たちは、永くあるものを美しいと感じるのか。
それとも、壊れやすいものほど美しいと感じるのか。
「なあ、霊夢」
「なに? 魔理沙」
「少し改めて言うことがあるんだけど……」
「なによ、もったいぶって」
「あけましておめでとう」
聴いた瞬間、日付が変わった。
永遠不変の新年の挨拶。もちろん返しもお決まりだ。
「明けましておめでとうございます」
『ことしもよろしくおねがいします』
同時に言った瞬間。なんだかたまらなく可笑しくなった。だって私たちはこんなに変わらないのに。
笑って笑って笑い転げて、新年の始まったばかりから大笑いをする。魔理沙もお腹を抱えて笑い、二人で福を手招きしてみる。福が釣られてこちらに来たかどうかは分からないけれど、笑い終わった後はそれとなく幸せだった。これだけで満足できるなんて、なんてエコロジーなのか。ああ、そうだ。たまにはこのくらい簡単であってもいいや。うん、これでいいのだ。
そんな、脆くも永いものを見つめた冬の一日。
さ、また一年頑張りましょう。
非常に良い雰囲気でした。