Coolier - 新生・東方創想話

ふたりのアリス

2010/04/05 15:21:14
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※タグの通り、キャラが死にます。苦手な方は、閲覧を控えた方が宜しいかも知れません。
 残酷な表現は多分無いと思いますが・・・。








私の名は、アリス・マーガトロイド。そう自称しているし、殆どの人はそう信じている。しかし、実を言うとこの名前は私の物では無い。

――否。私は名前を偽った訳では無い。紛れも無く本名を名乗った。これには、一寸した"引っ掛け"が有る。



私はある時期を、同じ名前の女の子と共有した。その際、紛らわしいという事で彼女は私を「マーガトロイド」と呼んでいたのである。
その縁から、彼女が死んだ時「アリス」の名前を"受け継いだ"事にしたのだ。

理解に苦しむ話である。一時を共有しただけの相手の――しかも、全く同じ名前を"受け継ぐ"とは?



そう述べた理由を、これから綴ろう。これは、世にも奇妙な・・・2人のアリスが"1つになる"物語である。



































"元々の私"は、人形作りが好きな普通の人間で、ちょっとした田舎町に住んでいた。
"都会派魔法使い"という自称と矛盾している! と思われるかも知れないが、幻想郷に比べれば充分都会である。

ある時、二親が一遍に亡くなった。ショックで人形の様に彷徨う内、町外れの森で迷い込み、気が付いたら幻想郷にやってきた。

私の経緯は、それ位である。余りに呆気無い話だが、まぁ此処では"神隠しに遭った外来人である"事さえ知って頂ければ十分だ。



知らない世界に迷い込んだ事さえ知らず、私は当て所無く歩いた。歩いて、歩いて、歩き続けた。

だが、遂に力尽きてへたりこんでしまった。もう嫌だ、いっそ死んでしまいたい・・・。

そう思った時、突然何か爆発した。驚きはしたが、迷い込んで初めて違う風景が見られそうだという事で、兎も角そっちへ駆け出した。



爆発地点は、目を覆う様な有様だった。その中心に、女の子が血を流して倒れていた。
駆け寄って見たが、火傷も負っているらしい。抱き上げると、うぅっと呻いた。

「誰・・・?」
「誰でも良いでしょ。大丈夫なの?」
「そうね・・・ねぇ、鍵の付いた本がそこらに落ちてるでしょ?」
「鍵?・・・この、がっちり縛ってある本?」
「そう。それを、貸して・・・。」

言われた通りに本を渡すと、彼女はそれを開いて何かを唱えた。すると、殆どの傷が塞がった。

私は、唖然とした。あんなに酷い火傷や怪我が、見る間に治ったのだから。
しかし、それで体力が限界に来たのだろう。力尽きて気絶してしまった。

仕方無いので、彼女の家に運び入れて、ソファーに寝かせてやった。毛布は・・・私の上着で我慢して貰おう。



しかし、此処は何処なんだろう。この森は、自転車で一周15分程度の広さな筈だが。

思考を巡らせていると、彼女が目を覚ました。訝しむ様な目つきだが、致し方無いか。

「・・・貴女、誰?」
「助けて貰ったら先ずお礼、って教わらなかったのかしら?」
「そうね、失礼したわ。助けて頂いて、どうも有り難う。」

「私はアリス。アリス・マーガトロイドよ。」
「私もアリスよ、同じね。」
「あら、そうなの。ファミリーネームは?」
「無いわ。」
「ふーん・・・それで、此処は何処なの?」
「あら、御存知無いの? 外と切り離された世界よ。"幻想郷"と呼ばれているわ。」



私はそこで初めて、自分が全然別の世界にやってきてしまった事を知った。そう聞いても、特にショックは湧かなかった。

最早、何もかもが別世界の出来事の様な気がした。それ以上は話が続かなかった。

少しだけ気を持ち直すと、それを察したのか彼女の方から口を開いてきた。

「ねぇ、ここに暫く住まない? 宿代は、家事で払って貰えば良いから。」
「え?」
「実を言うと、さっき怪我を治したせいで暫く魔法が使えないの。」
「あぁ、それであんな傷が・・・とどのつまり、力が底を尽きちゃったのね?」
「えぇ、生活の殆どが魔法頼みだったから・・・――お願い、頼まれてくれないかしら?」



何というか、渡りに船だ。そんな話を聞いた後で、寝泊まりする所が欲しくない訳は無い。
家事をするだけなら、さほど難しくは無いだろう。見返りを考えると、寧ろ破格かも知れない。

考えるまでも無い事だった。外はとっくに日が暮れているし、今から他を当たるのは無理があるだろう。

「寧ろ、此方からお願いしたい位なんだけど。」
「契約成立ね、宜しくお願いするわ。」
「えぇ、宜しく。」

「さて、話も纏まったし、今日はもう寝ますか。」
「そうね、寝室へご案内するわ。」





こうして、"2人のアリス"は出会った。それは、運命だったろうか。





朝が来た。ゆっくりと覚醒しつつ、昨日の事を思い返す。・・・まだ、現実味が湧かない。両親の死が、遙か昔に感じられる。

取り敢えず、昨日教えて貰った洗面所で顔を洗う。その後、お勉強中らしい彼女の部屋を訪ねた。

「おはよう。朝ご飯、どうする?」
「あぁ、おはよう。要らないわ。」
「え? そうなの?」
「えぇ、睡眠さえ取れば回復するから。」
「ふーん・・・。」

そう言われては仕方無いので、自分の分だけ拵えて食べる事にした。
・・・後ろから視線を感じる。振り返るべきか迷ったが、要らないと言われたので気にしないでおこう。

程なくして、階段を上がっていく音が聞こえた。食べたいなら、そう言えば良いのに。



次の時も、また次の時も、そんな具合だった。気になって振り返ってみたが、目が合うと直ぐに引っ込んでしまう。
そんな遣り取りが続いて2日目、仕方が無いので振り向かずに聞いてみた。

「食事に興味が有るの?」
「・・・経験が無い訳じゃ、無いわ。魔界に居た頃は、みんなで食べていたもの。」
「家族一緒に?」
「えぇ。家族揃って食事できるのが一番だから、ってお母さんが・・・。」

「貴女は、どうだったの?」
「――正直、時間の無駄だと思ったわ。必要無いんだもの。」
「じゃあ、どうして見ているの?」

そう聞くと、何やら口をもごもごさせたが、暫くして観念した様に呟いた。



「久し振りなのよ。他人を、見る事が。気にならない訳無いわ。」

・・・彼女に悟られない様気を付けつつ、呆れ顔で嘆息した。妙な所で素直になれない子である。



「――台所。」
「え?」
「作りすぎちゃってね。余ってるのよ、"1人分"。」
「・・・!」

トタタタ、と駆けていく音が聞こえた。一寸苦笑してしまう。色々な意味で"飢えている"のかもしれない。
直ぐに、ホクホクとした笑みを浮かべて彼女が現れた。

「"余ってる"んだったらしょうがないわね、勿体無い物。」
「そう、"勿体無い"わよ。」

・・・いつ別れるかも知れないから、とは言わないでおいた。未だ、認めたくなかったのも有ったからだ。



食後のティータイムに、この世界や魔界の事を聞いた。

彼女が、元々魔界に居た事。
ある日、巫女やら魔法使いやら悪霊やら妖怪やらがやってきて、みんな倒されてしまった事。
その後、禁忌の魔導書の力で再び挑んだけれど、やっぱり倒された事。
悔くて、勝ちたくて、倒したくて、魔界を飛び出した事。

その後になって、やっと衣・食・住を確保しなければならないと気付いた事。

途方に暮れながら歩いていると、一軒の家があった事。
廃墟ではあったが、住めそうだったので、魔法で修理した事。
そして、実験と修行を繰り返した事・・・。

意外な事に、幻想郷の話は殆どしなかった。修練にかまけていて、調べる余裕が無かったのだと言う。
それで良いのか? とは思ったが、口には出さないでおいた。私もよく知らないのだし。

「何だか、口が軽くなるわね・・・どうしてかしら?」
「きっと、"アリス"同士だから遠慮が要らないのよ。」
「・・・そうかもね。」

その時、彼女がふっと零した微笑みは、今でも焼き付いて色褪せない。それ位に、魅力的だったのだ。



































彼女の魔力は、使い果たしても1週間有れば回復するという。



だが、数週間・・・数ヶ月経っても、その量は微々たる物だった。彼女の苛立ちは、誰の目にも明らかだった。



ティータイムは直ぐに廃止され、程なく笑顔も見せなくなり、仕舞いには食事すらしなくなった。睡眠も、効果が無いと思ったのか止めてしまった。

私にできたのは、なるべく外へ出て帰る手段を模索する事だけだった。しかし、何の手掛かりも得られず、抑も森から出る事すら叶わなかった。

私達は焦っていたし、苛立っていた。お互いその有様な物だから、それぞれ酷くなる一方だった。

嘗ては、そこそこ二人で外へ出たりしていたし、仲良く家事をこなしたりしていたのだが、今やそれも希な事になってしまった。





その日は、大雪だった。これ以上根を詰めても埒があかないと思った私は、半ば無理矢理にティータイムを開いた。

珍しく・・・というより、初めて彼女がお茶を入れた。いつもならただ苦いだけの紅茶が、今日は僅かに甘く感じた。

それが睡眠薬-Hypnotic pills-入りだったとは・・・。あっという間に、私は眠りに落ちていった。





「これから、貴女の体に私の魂を植え付けるわ。」



目覚めて直ぐ、彼女はそんな事を口にした。どうして、何故。



「私の体は、もうボロボロなのよ。恐らく、グリモワールの過剰使用が祟ったのね。・・・でも、思い付いた。」



そこで、彼女は一息区切った。言わんとしている事が、私にも分かった。



・・・私は、背筋が凍った。



































止めて。その先を、言わないで。



































「"アリス"は(やめて)



































・・・もう1人、居るじゃない。」



































――私は、彼女を妹の様に思っていた。元々一人っ子だったし、両親が死んだ事もあって、温もりが欲しかったのかもしれない。

それだけに、言い切られるのは辛かった。私が、単なる代替品程度に見られていると。



もうこれ以上は耐えられない。

私は、意識を落とした。





・・・そこから先は、覚えていない。目覚めても、私は"私"のままだった。



そして、彼女は死んでいた。まるで、眠っているかの様に。





何故そんな事をしたのか。

どうして死んでしまったのか。

私にはそんな事はもうどうでも良かった。



ただただ、彼女ともう会えないことに泣いた。例え彼女が、私を殺そうとしたとしても。





私は、彼女の記憶を頼りに魔界の入り口へ赴いた。どうやら、記憶は受け継いだらしい。
魔界の門番「サラ」は、私と私が抱えている"アリスだった物"を見比べて、愕然としていた。
そして、静かに門を開けると、力尽きた様に頽れて泣き出した。

「ルイズ」の案内で、私は神であり"母"である「神綺」と面会した。彼女は、泣き笑う様な顔で、記憶を見せてくれと言った。

全てを見終わった神綺は、驚く様な事を告げた。



「・・・アリスちゃんは、貴女を愛していたのね。」

「え?」
「貴女、あの子の最期の顔を御存知無いでしょう? 笑ってたのよ。とても、安らかに。」
「でも、私は・・・。」
「代替品だ、と?・・・違うわね。受け継いで欲しかったのよ、貴女に。」



神綺が語ったのは、大凡次の様な事だった。

自分はもう生きられないから、どうか愛する貴女に、私の記憶を貰って欲しい。
そして、できれば私の亡骸を魔界に持って帰って、そこで埋めて欲しい。
・・・願わくば、私に変わって、魔法の研究を引き継いで欲しい。

「アリスちゃんは元々素直じゃなかったから、好意を表には出さなかったかも知れない。
 でも、貴女が妹の様に思っていたのと同じ位、姉の様に慕っていたのかも知れないわね。
 もしかしたら、貴女に未来の自分を見ていたのかも知れない。だから、受け継いで欲しいと思ったのかも・・・。」



全ては、最早分からない。単に失敗したのか、それとも受け継いで欲しかったのか・・・。

その時を境に私は人間を止めて、魔法使いとして生きる様になった。元の世界には、もう未練が無かったから。

幸い、アリスから受け継いだ知識・経験と、神綺から貰った魔力のお陰で、生きるには困らなくなっていた。
時折、自分とは思えない様な振る舞いをする事も有ったが、それが"アリス"の欠片なのだと思えば、嬉しかった。
彼女が持っていた人形2体は、どういう訳か自在に操れる様になった。私は、その2体を「上海人形」「蓬莱人形」と名付けた。



それから暫く経って、後に「春雪異変」と呼ばれる出来事が起きた。
解決に向かった中に、あの時の巫女と魔法使いが居るという。私は、喜び勇んで出掛ける事にした。

彼女たちを目の前にした時、知らない筈なのに懐かしい様な気分になった。



あぁ――"アリス"が喜んでいる。紛れも無く、そう感じた。私は、強がりも込めてこう言った。



"私のこと覚えてないの?
まぁ、どうでもいいけど"


END
前作から、半年。お久し振りです・・・と言って良いのかどうか、悩む所です。

本作は、怪綺談のアリスと妖々夢のアリスがかなり違う容姿なので、何処かで"変わった"んじゃないか?という妄想の下に生まれました。
相変わらず強引な展開ですが、楽しんで(?)頂ければ幸いです。

それでは、此処まで読んで下さって、どうも有り難う御座いました。
seirei
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コメント



0.1380簡易評価
7.100名前が無い程度の能力削除
ロリスとアリスが出会う話はどこかで見たことあるけどこういうのもいいですね。
面白かったです。
8.90名前が無い程度の能力削除
死の少女ネタかと思ったら全く新しい解釈で驚きました。
とても良かったと思います。
14.100名前が無い程度の能力削除
これは新しい解釈ですね。
いいと思います。
同一人物だけど違う人。
上手いと思いました。
17.90名前が無い程度の能力削除
果たしてアリス・マーガトロイドが彼女のままだったのか、あるいは……アリスもまた

作品としては申し分ないのですが、スペースを取りすぎてるように感じたのでこの点数で
20.100名前が無い程度の能力削除
すごくいい作品だと思う
22.80無休削除
ちょっと展開が早い気がする、もっとじっくり読みたいくらい良い話~
28.80ずわいがに削除
これが元人間といつ意味ですか
アリスを引き継いだアリスは、どちらのアリスでもあるんだろうな
29.100名前が無い程度の能力削除
これは俺の琴線にズガンときた。