Coolier - 新生・東方創想話

Bad Apple...?

2010/03/23 12:08:10
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◆0
早朝の5時。日が出て間もない世界は、まだ青白くて霧がかかっている。
特に霧が深い湖の辺に、一つの影が寂しげに座っていた。
その影の正体であるチルノは、ついさっき悪夢によって目が覚めた。
「嫌な夢……。」
湖を見つめながらポツリとつぶやいた後、膝に顔を埋め、動かなくなった。

◆1
鼻歌を歌いながら、リグルは湖を目指していた。
今日は雲一つ無い快晴。
しかし暑すぎることも無く、涼しい風がやさしく吹いている。
こんな絶好の日には、みんな湖に集まっているだろうと思ったのだが…、
実際はチルノ一人だった。

近づいてみると、何か様子が違った。
普段の無邪気な元気さは無く、暗い雰囲気を漂わせて蹲っているのだ。
「チルノちゃんどうしたの…?」
声をかけてみるが、反応はなくじっと蹲っている。
「チルノちゃん…」
リグルがそっと肩に触れた瞬間、チルノが勢いよく立ち上がり、リグルの顔をじっと見つめた。
チルノの目は死人ように曇っている。
喫驚しているリグルに、チルノは強く問いかけた。

「ねぇ。アタイって…ろくでなし?」

急な質問に、リグルはたじろいだ。
「え、そんな急に…」
「やっぱり…やっぱり、ろくでなしなんだ…」
「いや、だから…」
「本当だから戸惑ってるんでしょ…!アタイは……ロクデナシ。」
「ちょっと…」
リグルの声に耳を傾けることなく、チルノは飛び去っていった。

「なに……?」
取り残されたリグルはまだ何がなんだかわからず、ただその場に立ちすくしていた。

◆2
霊夢と魔理沙がお茶を啜っている博麗神社。
そこに、春一番の蟲が入ってきた。
「ごめんくださー…」
「…っ!? ゴ キ ブ リ !」
殺すが早く、霊夢は手に取ったゴキキラー(殺虫剤)を噴射した。
が、間一髪リグルはそれをよけた。
「ちょ、ちょっと…人に向けちゃだめだってば!しかも私ゴキブリじゃない!」
「うるさい、あんたは虫!ゴキブリでも何でもいいの!」
リグルと格闘している霊夢を、魔理沙が止めに入った。
「おいおい、リグルが可哀相だぜ。」
「え~…めんどくさくなりそうなのよ。」
「話だけでも聞いてやろうぜ?」
「ん~……しょうがないわね。」
「助かった…。」
ゴキキラーを置き、渋々リグルを神社の中に招いた。
「で、何のよう?」
「チルノちゃんの様子が変なの…。」
「ふ~ん。バカが直ったんじゃない? ってことで解決~。」
投げやりに解決しようとする霊夢の代わりに、魔理沙が質問を続ける。
「変ってなんだ?」
「んとね…、湖で一人で泣いてて、アタイはロクデナシかって聞いてきてどっか飛んでったの。」
「……なんじゃそりゃ?」

ふと、会話が途切れたとたん、外に異変が起きた。
春に染まっているはずなのに、突然雪が降ってきたのだ。
「雪だ…。」
「あ~もう。誰かが来ると、絶対異変だのなんだの持ってくるから嫌だわ。」
霊夢はこれが来るのを避けたかったので、リグルを家に入れたくなかったのかもしれない。
だが霊夢くらいしか異変を解決しないので、結局動くことになるんだよと魔理沙はおもった。

◆3
「これは…チルノの仕業ね。」

霊夢達はそう睨み、神社の外へ出た。
さっき降ったばかりなのに、地も草も木も全て凍っている。
まだ足りないというかのように、ピキピキとあちこちで凍ってゆく音が響く。
「……なにあれ」
リグルが山のほうを向き、ポツリと呟いた。
意外にも、チルノは早く見つかった。
妖怪の山よりも、もっと高く聳え立っている謎の建造物の天辺で……。
「いくわよ!」
「おう!」
三人は、巨大な建造物に向かって飛んだ
近づくにつれて、だんだん吹雪になり寒さが増してゆく。
「寒くないか!?完全に冬だぜこれ!」
「ねえ、あれみて!」
霊夢達は下を見て気づいた。これは湖から伸びる氷柱らしい。
湖の氷柱付近に、幻想郷の野次馬達が集まっている。
いや、野次馬だけではない。
輝夜など普段外に出ない人も、厚着をして人ごみにまぎれている。
「これが珍しいのかしら?」
「ちがう!この柱から…」
「…人を引き寄せる魔力がでてる。」
魔理沙に続いてリグルが言った。
二人にはこの魔力が感じられるようだが、霊夢はあまり感じ取れないようで、
やはり春ボケしているのかもしれない。
下から、訳わからずに集まってきた村人や妖怪たちのどや声が聞こえてくる。
『もう帰っていいかしら?パソコン付けっぱなしなんだけど…』
『だめよ姫様。いい機会だし、外の空気でも吸いなさい。』
『慧音、寒くないか?私が温めてあげるよ。』
『ありがとう妹紅…温かいぞ……。』
『麻理沙は私のよ!』
『ゲホッ、私のよ…ゴホッ。』
『秋は遠いと、出番少ないねぇ。』
『出番よりも人気欲しいよ…。』
『お腹空いた~。お肉食べたい~。』
『あ、幽々子様。あんな所に鳥がいますよ。』
『チンチン、チンチン』
『これってもしかして…巨大ロボですか!?』
『そうだよ。世界最強のロボだよ。』
『諏訪子、嘘言うな。』

まだ先へ進もうとする魔理沙を霊夢が止めた。
「ちょっとまって!これ以上進んだら脇が寒い!」
「そうだな…あんまり進んだら凍え死ぬかも知れない…」
氷柱から少し離れ、霊夢が大声でチルノに呼びかけた。
「チルノーっ!!」
チルノはこちらに視線を向けたが、返事は無い。
チルノの目はあいかわらず曇っていて、光の入らない死んだ目をしていた。
「なにかあったのーっ?!」
「……。」
何かを呟いたが、今の距離では何も聞こえない。
「なんだってーっ?!」
「嫌な夢を見たって…。」
「えっ?」
リグルの耳には、はっきり聞こえたらしい。
さっきのチルノの口の動きと同じだから、リグルが言った事はあっているかもしれない。
そしてチルノはまた、ぶつぶつと呟いている。
「…、……。…………。」
「夢で、みんなにろくでなしって言われた。お前はバカでロクデナシ…。ロクデナシのバカ妖精…。」
「………。」
「アタイはバカじゃない。ロクデナシじゃない。……だって。」
「じゃあ、夢ごときでこんな大事にしてんのか?」
「あのバカ…。」
下の連中も、いつの間にかこちらに耳を傾けていた。

「・・・・・…。」
「ロ ク デ ナ シ …。」

◆4
チルノの声がだんだん通るようになってきた。
「アタイはロクデナシじゃないのに……証明するもの無い…。
何やっても出来ない。だから何も無いの…。
アタイには…未来なんか無い。ロクデナシに未来なんか………」

「チルノちゃんはロクデナシじゃないっ!」

リグルの突然の大きな声が、チルノをビクリと震わせた。
チルノよりも、隣にいた霊夢と魔理沙の方が震えたかもしれない。

…少しの沈黙が流れた。

「チルノちゃんは…全然、ロクデナシなんかじゃないよ!」
「そ、そうそう。こんなすごいことできるんだから立派だぜ!」
「アンタなんかよりももっとロクデナシはいるわよー。」
霊夢が言葉を発した直後に、どこにあったのか隙間から紫が顔を出した。
「バァっ!」
「ぅわッ!!」
「霊夢なんか修行は投げ出すわ、金はないわで…ろくでないわねぇ。どうにかしようとする妖精の方がよっぽど大人だこと。」
「脅かさないでよ!あんただって隙間に頼ってばかりで、自分から動かないとロクデナシババアになっちゃうわよ。」
霊夢たちに続いて、下の連中もチルノに声をかけ始めた。
『そーだそーだー』
『私も動かないロクデナシよ…、ゲホッ。』
『ロクデナシといえば、毎日夢見てる中国…。今頃寝てるかしら?』
『私ここにいますっ!中国じゃないですっ!』
『降りてコーイ!』
『チルノはロクデナシじゃないぞー』
『ん~…帰りたいわ。』
『姫様、ロクデナシの例はあなたみたいな人なんですよ。』
『巨大ロボー!うぉーっ、うぉーっ!』
『キャラ崩壊してない…?』
『あーあ。諏訪子のせいだー…。』

「チルノちゃんはロクデナシなんかじゃない!私が知ってるのは最強のチルノちゃんだけだよ?!
遊びを提案できるのはチルノちゃんだけ!助けてくれるのもチルノちゃん!
頼ってばかりの私なんかよりずっとすごいよ!!
だから…だから、そんなに落ち込まないで元気出してよ!!!!」

チルノは声の束を受けながら、ボーッと立ちすくしている。
そしてすっと頬に涙が流れたかと思うと、とめどなくあふれて零れ落ちた…。

◆5
チルノが泣いている途中、あの寒さはいつのまにか消え雪も降り止んだ。
地や草木の凍結も溶け、あの氷柱はゆっくりと沈んでいった。
霊夢がチルノを抱きかかえ地上に降ろすと、周りの連中も集まってきた。
「エグっ、……。」
「夢なんかでこんなことするなんて…、バカね…。」
「ヒグっ…、ばか、じゃ…ないもん……。」
「なんであんな柱立てたんだ?あんな事できるなんて正直ビビったぜ。」
「ひとりに…なったら…、さみし…かっ、たから……。」
あの柱からでていた魔力は、寂しかったから人を引き寄せたのかと納得した。
「さみしかったらみんなの所にいけばいいじゃない。手荒くだけどみんな歓迎はするわよ。」
「そうだぜ。私もいるし、霊夢もリグルもいるじゃねぇか。」
チルノは、周りを見わたした。
涙でぼやけたその視界には、霊夢、魔理沙、リグル、そのほかにも知らない人まで映った。
これがひとりじゃない証拠。そしてロクデナシじゃない証拠……。
「チルノちゃん、あした遊ぼうね!」
リグルが、元気よく遊びに誘った。
嬉しさと安心感でまたも涙がでてきたが、これは悲しみの涙じゃない…。
暖かい涙を拭おうとはせず、震える声で元気にリグルに返した。

「うん、ありがとう…!」
旧作アレンジ「Bad Apple!! feat.nomico」を元ネタにした短編。
にしたかったけど、地味に長くなっちゃった。

×麻理沙 ○魔理沙 ←修正致しました。
無銘の名無し
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コメント



0.300簡易評価
2.30名前が無い程度の能力削除
とりあえず、
×麻理沙
○魔理沙
4.20名前が無い程度の能力削除
人に殺虫剤吹き付ける霊夢がロクデナシだと言うことは分かった。
5.無評価名前が無い程度の能力削除
麻理沙って誰?
8.20名前が無い程度の能力削除
なんだかなぁ…。
って感じです。

まだ、麻理沙のままの所が二ヶ所ほど在りますよ。

投稿する前に文章はしっかりと読み直した方がいいと思います。

後、キャラ名などよく使う漢字は辞書登録などすると便利ですよ。

以上長文失礼しました。
11.無評価名前が無い程度の能力削除
原作やって設定熟読してからもう一度どうぞ
15.50名前が無い程度の能力削除
志村ー! 修正できてへん!
18.無評価名前が無い程度の能力削除
無茶しやがって……
19.40即奏削除
良いお話でした。ただのバカじゃないチルノって良いですね。

楽曲を元ネタとしたストーリーは個人的にとてもおもしろいと思います。
しかし、なんというか、元ネタのアレンジ曲は比較的エゴイスティックで遊惰でポジティブな想いを綴った詞でありましたが、その割にはこのお話の主人公であるチルノはやけにネガティブ思考に走ってしまっているように感じます。正直、楽曲からインスピレーションを受けたというよりも「ろくでなし」という単語からインスピレーションを受けて書かれたお話なのではないか、と思ってしまいました。
個人的には“チルノがどうしてここまで夢の内容を気にしてネガティブになっているのか”という点の説明があればもっと素直に楽しめたでしょうか。

……元ネタがある作品というのは、その元ネタの解釈の差異がそのまま作品に対する感想に繋がってしまうので評価をするのが難しいですね。
20.50名前が無い程度の能力削除
有名処の名前を使うからには相応の内容じゃないと、必要以上に作品の印象・評価が悪くなりますよ。
作品自体はそこまで悪くなかったんじゃないかと思います。

次への期待を込めてこの点数を
22.60名前が無い程度の能力削除
悪くはないんだが……
作者の書き方にクセが強すぎるかなぁと思う
あと文章の骨格ははっきりしてるけど、それを支える背景が足りないのかなぁ
次に期待する
23.無評価名前が無い程度の能力削除
人に向けてってリグルは妖怪でよ
27.60ずわいがに削除
>『麻理沙は私のよ!』
まだ未修正の箇所が残ってました

色々と物足りない感じはしましたが、良いところも確かにある。なんか惜しいッス。