Coolier - 新生・東方創想話

映姫の雪、阿求の庭

2010/03/19 01:17:22
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 雪が、降っているらしかった。
 彼女にはそれがわかる。風の音とは違う、雪の粒がさらさらと障子紙を叩く音が聞こえるから――。誰に聞かれずとも心中でそう答えた彼女は、薄明るく光る障子から視線を移動させ、部屋の中にいる人影に目を舫った。

 雪が降っているなら寒いはずだ、それも相当に。部屋の中が暑いのか寒いのか、それすらもう彼女にはわからないのだった。

 目だけ動かし、「その人」の隣に火鉢が置いてあるのを確認したが、その火鉢から煙が出ている気配はない。寒くないですか? と視線で問うてみてみる、枕元に座る人影はゆっくりと首を振り、再び思いつめたような表情をこちらに向けてきた。

 こういう人だと判っていたはずなのに、馬鹿なことを聞いてしまった……。彼女が少し後悔して視線を逸らそうとすると、始めて「その人」の表情に変化が生じた。何かを言わんとして少しだけ開かれた口が、すぐに閉じられる。生じた“変化”はそれだけだった。「その人」は再び唇を引き結ぶと、じっとこちらを見てきた。

 堅いのは相変わらず、か。苦笑しようとして果たせず、彼女――稗田阿弥はやけに重く感じられる布団の中で再び目を閉じた。


 阿弥は、自らの命が終わりつつあることを理解していた。

 いよいよ身体の自由が利かなくなり、医者が首を振ってからは、阿弥は徹底的に人払いを命じておいた。そんなわけで、今この部屋には「その人」と自分しかいない。やや寂しい旅立ちと言えただろうが、阿弥には充分だった。床に伏せる前、友人たちは懇ろに礼を述べておいたし、家財の整理もあらかた済ませておいた。あとは“あれ”を目の前の「その人」に託せば、自分がやるべき仕事はすべて終了する。いまはもう、そう信じてそのときを待つしかないのだった。

 冷たく、ねっとりとした死が、身体を包み込んでゆく。暗い口腔を覗かせ、まるでこちらの反応を楽しむかのように。もう足ぐらいは喰われているのかも知れないな……自らの身体が怪物に飲まれる光景を幻視した阿弥は、かといってそれに抗う術も持たない自分を十二分に知悉してもいた。

 もう立つことはおろか、上半身を起こすこともままならない。そんな身体では土台逃げ遂せられる道理はないと諦めて、布団の中でそのときを待つしかないのだった。

 御阿礼の子は三十を数える前に死ぬ。そう聞かされたのは、果たして何代前の自分だったのか。

 転生という、人間の理を無視した運命に翻弄される存在。要はその一言に集約される自分の生に、最初から大した意味は含有されていないのと同じ。意味を持たない生と死の永遠の循環。千を数える年月の間、人の世の塵芥を覗き、書物にしたため続けてきた存在だからこそ獲得できた達観を抱いて、阿弥の生は今滅びようとしているのだった。


 カタカタ……という寂しい音を立てて障子が揺れ、阿弥は思考を打ち切った。

「雪が降ってきましたね――」

 不意に、視線を逸らしたまま「その人」が呟いた。薄目を開けるのを精一杯の反応とした阿弥に、「その人」はふと笑いかけてきたようだった。

「外を、見てみませんか?」

 その言葉は、まるでちり紙のように頭の中を漂い、阿弥は一瞬その言葉の真意を測りかねた。やがて止まっていた頭が回転を始めると、自分の意志とは無関係に顔の筋肉が痙攣した。どうやら自分は笑ったらしいと思った刹那、ずきりと胸に疼痛が走った。

 過去数千年に渡って自分の命を打ち消してきた、原因不明の病が生じさせる痛みだった。その痛みはやがて指先までに届き、神経という神経を磨り潰すような激痛を与えて彼女を苛む。いっそ死んだ方がいいと思える激痛は、転生という方法で天理に逆らい続ける自分への罰に違いなかった。

 これだけはいつまで経っても馴れることがないな……と阿弥が顔をしかめた瞬間だった。さっとうなじに手が回り、身体が抱き起こさる感覚が知覚された。

「痛みますか?」

 努めて感情を押し殺した声だった。やせ我慢を重ねて首を振った阿弥を抱き起こした「その人」は、寝巻きの上から腰に手を回し、ぐっと持ち上げて見せた。

 自分とほとんど変わらない体格なのに、その細腕は奇妙に力強かった。自分を包む細腕に文字通りすべてを預けた阿弥は、「その人」が障子を開け放つのを見た。

 障子が開け放たれると、馬鹿になった肌にもはっきりと冷たさが感じられた。


 目の前に広がったのは、白い綿帽子の宴だった。鉛色の空から落ちてくる雪の結晶は、折り重なり、まどろむようにして降り積もってゆく。雪囲いを施した庭木にも、縁側にも、ふぅふぅと荒い息をつく自分の頬にも、雪は無遠慮に降り注いでくる。

 阿弥はちょっとだけ無理をして、塀で囲われた庭の隅の方に目をやった。庭石やししおどしの陰にひっそり植わっている楓の木は、阿弥のお気に入りで、秋には燃えるような赤に紅葉する。その楓も、冬が来る少し前にはすべて葉を落として冬に備えていたが……。

 熱のせいで滲んだ目を凝らすと、楓はじっと寒さに耐えるようにして立ち、降ってくる雪を枯枝の上に降り積らせていた。雪化粧という言葉ではまだ足りぬ、静と動が不思議に交錯したような自然の芸術に、阿弥はほぅ、とため息を漏らした。

 美しい――。何の気負いもなく、彼女はそんな感想を抱かせる光景だった。



 自分――稗田家の八代目である稗田阿弥という存在――がこの世に生を享けたのは、二十年も前のことだった。

 転生の術と言っても、前世から引き継げる記憶は虫食い以下のもの。一代前の自分、稗田阿七という人物が全うした人生の記憶ですら、思い出そうとしてもよく思い出せない。もっとも、一日ごとに鮮明になる『阿礼』としての記憶だけは、十を数える前にはほぼ完璧に復元され、彼女はそこから自分が何者なのかを理解した。

 すべては『幻想郷縁起』なる歴史書の絶えざる編纂を行うため。それ以外の理由を持たないで生まれてくるのが『御阿礼の子』であり、自分は数千年の時を転生してきた稗田阿礼の八代目……。思い出せたのはそれだけだったし、そんな記憶がすっかりと復元されても、それはリアルな実感を持たない空虚な記憶だった。濡れた服を着せられたような、奇妙な違和感を伴う記憶を抱いたまま、彼女は「稗田阿弥」としての人生をスタートさせた。

 物心ついてすぐ――正確には簡単な読み書きの能力を取り戻して間もなく――彼女は元服した。十五を数える遥か前に成人の仲間入りを果たした彼女は、それと同時に稗田家当主の名前も継ぐことになった。当主らしい所作や、なんやかやの言葉遣いの刷り込みも終わると、彼女はすぐに『幻想郷縁起』の編纂を開始した。


 日夜歴史書を紐解き、転生した際に失われた知識を補完してゆく毎日。それと平行して、彼女の代までに新しく創られた歴史を整理し、編集して書物にしたためてゆく作業が、それからの彼女のすべてになった。時に深夜にまで及ぶ編纂作業は事業と言うより単調作業のそれで、知力よりも根気が試されるのが常だった。

 しかし、元々書物を読むことは嫌いではなかったし、やらなければいけないことでもあった。書物を読むことによって得ることができる、過去という時間に接続され、自分の存在が永遠になったような感覚。それは最初から常人とは違いすぎる生を送る彼女には一服の清涼剤に等しかった。一度見聞きしたことは忘れない求聞持の特殊能力も手伝って、彼女はすっかりと歴史の編纂作業にのめりこんでいった。

 自分はこうして史書を編纂し、来るべき転生の日に向けて準備をする。子を為す前に死を迎える自分にとって、『幻想郷縁起』は我が子に等しい存在ですらある。自分という存在のすべてを傾けて産み落とすに相応しいものに仕上げなければならないという思いも手伝うと、筆を取る彼女の手にもそれなりに力が篭った。

 最初から特別な意味を持たない生ならば、自分で意味を賦課することぐらいはできる。
 否、そう信じていなければ、自分は人間という生物の在り様を完全に失い、真実化け物になってしまう。
 そうすることが人としての稗田阿弥の役目なのだと信じなければ、自分が何者なのかわからなくなる。
 人間でなくなるのは嫌だという恐怖はあったし、実際にそう自分に言い聞かせると、身にまとわりつく倦怠感も虚無感も不思議と薄らいでゆくのだった。何事もそうやってロジカルに割り切る術を習得した阿弥は、歴代の当主に勝るとも劣らない勢いで編纂を続けていくことができた。


 面白くもなければつまらなくもない、ただただ異様な緊張感と義務感に支配されたモノクロの毎日。そんな日々が五年以上も続き、人より遥かに短い折り返し地点を過ぎた辺りのことだった。稗田家当主の仕事が倍増する頃合だったが、そんなある日、阿弥は出会うべくして「その人」と出会った。



「見えますか、阿弥さん」

 そんな声が耳元に聞こえた。なんとか頷きたいと思った彼女だったが、もう自分のものではなくなりつつある身体は言うことを聞いてくれない。必死の思いで顔を動かし、視線で答えるしかない阿弥を、「その人」の笑顔が許した。
「その人」は阿弥を抱きかかえたまま、すっと縁側に腰を下ろした。

 しばらく、二人は黙って外の景色を見ていた。

 阿弥が掴んだ「その人」の袖から、ほのかな体温の温かさが伝わってくる。奇妙に静かで、永遠にも感じられる静の時間が流れたときだった。「その人」がすっと上を向く気配が伝わり、阿弥もその横顔を見上げた。
「もう冬です。妖怪の山の木々はもう真っ白になっている頃合でしょうか。ずっと向こうの丘の上で子供たちが遊んでいるのが見えます。おや、西の空を飛んでゆくものがある。あれは氷の妖精ですね。なんと優雅に空を飛ぶのでしょう。私はあれほど美しく飛ぶことは出来ませんが、あれが美しいということならば幸いにも理解できます。私は冬が嫌いではありません。次に来る春が待ち遠しくなるから……」

 そこで言葉を区切った「その人」は、喋りすぎた自分を恥じているらしかった。阿弥は「その人」の袖をぎゅっと握った。阿弥の意図を悟った「その人」は、少し困った顔で続けた。

「冬は嫌な季節だと人々は言います。確かにその通りでしょう。寒いのは当然のこと、生き物は皆土に潜らなければ生きて行けない厳しい寒さ……人だってそれは同じです。しかし、生き物にはそういう期間が必要なのではないでしょうか。次にくる春に向けて準備をする時間が」

 希望。およそ普段の「その人」からは想像できない言葉に、阿弥はくすりと笑声を漏らした。「……言わせておいて、笑わないでくださいよ」と、ちょっとヘソを曲げたようなその人の顔がさらに可笑しく、阿弥はさらに笑った。笑うたびに胸の激痛が増したが、可笑しさは消えてくれなかった。




 本当の元服の年齢を迎える辺り、阿弥は「その人」に出会った。

 転生の前には、やらなければならないことがあった。それは地獄――幻想郷風の言い方をすれば彼岸――の裁判官たる閻魔王に、転生の許しを乞う事だった。

 人の命は一度きり。だからこそ人は努力し、短い時間を空費せぬよう最善の選択肢を選ぼうと努力するのであり、転生とはそんな人間の理を平然と否定する業に他ならない。どう言い繕おうとも、それは単純に人間の生への冒涜であって、到底許されることではない。だが、どういうわけか自分はその冒涜を許されている。その理由は阿弥ですらよく覚えていない。自分の能力に目をつけた何者かと稗田家の間に何らかの取引があったのだろうことを朧に想像するだけで、阿弥には最初から興味もないことだった。

 自分は自分のすることをやるだけで、あれこれ呻吟しつつその理由を考えることはない。そんな割り切りを処世にしてきた阿弥に、それはまさに突然訪れた青天の霹靂だった。

 この度新任致しました。よろしくお願いいたします。

 屋敷を訪ねた「その人」は、そう言って折り目正しく礼をしてきたのだった。

人材が払底して久しい彼岸に近く大量の新任者登用があるとは耳にしていたが、まさか本当にやるとは。驚きと呆れがない交ぜになって、つい不躾にも返礼を遅らせた覚えがある。
 第一、目の前の人は『閻魔』の名に相応しいとは思えなかったのだ。人一倍華奢な身体に、自分と同じくらいの背丈。目だけは凛々しい光りを湛えてこちらを見据えていたが、それにしたって閻魔のそれとは根本的に違うように思えた。にもかかわらず、「その人」は閻魔王の証である悔悟棒を手に持ち、懐に浄瑠璃の鏡を忍ばせた黒衣を着て参上してきたのだから驚きだった。
 それまで出会ってきた閻魔王は往々にして男が多かったし、態度も当然のように尊大なのが常。赤ら顔の中心にぎょろりと光る目は、下げられる頭はあっても下げる頭はないと無言のうちに主張してもいた。そんなな閻魔たちの傲岸不遜な態度に馴れきっていた阿弥に、その「新任者」の謙虚そのものの一礼は、好感を抱く前に異様に思えたのだった。

 え? なぜって、それが普通ではないですか。

 なぜ閻魔王が人の子に頭など下げる。阿弥より先にその一礼をたしなめた家人への、それが「その人」の解答だった。その場にいた誰もが驚きの声を上げて顔を見合わせる中で、「その人」は一人キョトンとしていた。
 よろしくお願いするはずだったのによろしくお願いされた。その事が自分の腹の底で可笑しさに変わり、阿弥がまず最初に笑い声を上げた。客人、それも彼岸の最高裁判官たる閻魔王を笑うということが最悪の粗相であることはわかっていたが、それでも可笑しさは後から後から沸いてきて、阿弥は暫くの間一人で笑い続けた。
 とんでもないことをしてしまったかな、と阿弥は後に冷静になったが、そのことは稗田家によって有耶無耶のうちに処理され、阿弥はほっと胸をなでおろした。その後完全にヘソを曲げてしまった閻魔様のご機嫌取りの方が関心事になったことと相俟って、その一件が「その人」と阿弥の間でしこりとなったことはなかった。
 もっとも、後で白状させた事だが、「その人」の方も阿弥のその反応を悪くは思っていなかったのだという。二交代制でありる事からもわかることだが、その職務の特殊性を考慮しなければ、閻魔という存在はサラリーマンでしかない。慣れない仕事を前にしてガチガチになっていた「その人」の緊張をほぐし、この人とならやっていけると確信させたという点では、阿弥の爆笑事件は思わぬ怪我の功名だったと言えたのだった。

 その日から、「その人」とのつき合いが始まった。訪ね、訪ねられる日々は、阿弥にとっては画期的に新鮮な毎日だった。名目上、それは閻魔様に転生の許しを請うということなのだが、実際は世間話をするのが目的だった。季節の話や食事の話、彼岸の動向まで、「その人」の話は彼岸の最高裁判長に相応しく多岐に渡った。長たらしく説教を垂れられたことも一度や二度ではないし、「その人」に部下がついたときからは圧倒的に仕事の愚痴が多くなったが、それでも阿弥にとっては未知の世界の体験に思われるのだった。部屋に閉じこもり、書面とにらめっこするだけでは掴めなかっただろう情報は、大概がこの時期のお喋りで入手したものだ。
 一ヶ月もすると、「その人」がどんな人なのか冷静に観察するようになった。物凄く頭が固く、とにかく細かいことに小言をまけたがる性格。白と黒、あるいは可か不可か。中庸というものを一切持たない杓子定規ぶりは、どうやら「その人」の地らしい。閻魔になる前は地蔵をやっていて、給料はちょっとだけ少なくなったがなんとかやっていけているという。閻魔になったのは、仲間の地蔵からその説教臭い性格を閻魔のようだとからかわれたことが半分。地蔵という、使命はあっても規則のない仕事に疑問を感じたからが半分らしい――等々。
 
 かたや閻魔、かたや『幻想郷縁起』の編纂者。お互いそうそう自由な時間があるわけではなかったが、「その人」がやってきたときは必ず手を止めて応対し、茶を出すのが常になった。茶葉は遠く宇治から取り寄せた高級品だったが、「その人」が来るようになってから茶の消費量が倍増し、下女から小言をまけられたこともあった。
 阿弥の方も、編纂の隙を狙っては三途の川のほとりへ足を運んだ。露天屋台が甍を連ねる中有の道を抜けると、そこは苔むした不気味な岩が多数佇立する三途の川原……なのだが、生者である自分が行けるのはそこまでだった。
 阿弥が訪ねてくると、件の“部下”は決まって鼻提灯を破裂させて飛び起き、特急で彼岸へ取って返って「その人」を連れてきてくれる。そして岸に着いたら早速小言を言われる。阿弥さんを待たせるなんて言語道断です、また幻想郷でサボっていたのですか……叱責されても、“部下”はバツが悪そうに頭を掻くだけ。割れ鍋に綴じ蓋の諺を連想させる二人のやり取りが可笑しくて、それ見たさに彼岸を訪れることもしばしばだった。
 ずいぶんと話好きな“部下”は、「その人」と一緒になっていろいろな話を聞かせてくれた。彼岸の財政状態についての話、近々幻想郷計画が実行に移されるらしいという話、上司の話……。もっとも、「その人」は“部下”に自分の勤務態度を詳らかにされることが苦手だったようで、彼女がその話を始めると、途端に顔を真っ赤にして怒り出すのが常だった。いやホント、この人は彼岸でも特別カタい人で……とにやけ面で耳打ちしてくる彼女に、涙目になりながら、黒です、黒ですと悲鳴を上げる姿は、外見相応に可愛らしいものだった。
 他にも、幻楽団の下手糞な演奏を聴いて顔をしかめたり、「その人」と“部下”でウサギ鍋をつつきながら、飲めない酒を飲んでへべれけになってみたり。「その人」と出会ってからの時間はことさら早く流れた。瞬く間に暦は三巡目に突入し、『幻想郷縁起』の編纂も佳境を迎えつつあったときだった。阿弥の、『幻想郷縁起』を編纂する手が止まった。



「あなたが……」
 全身全霊を傾けて、阿弥は「その人」の腕の中で呟いた。
「あなたが、私を連れ出してくれたのも……こんな雪の日でしたね……」
 一言言葉を搾り出すたび、自分という袋に空いた穴から命が漏れ出してゆくのがわかった。一息息を吸うごとに全身に激痛が走り、そのまま意識が薄れそうになる。ここで意識を手放したら終わりだ。からからに乾ききった身体から命を搾り出すように、阿弥は言葉を紡ぎ続けた。
「あのとき、あなたがいなかったら……私を、連れ出してくれなかったら……私は、とうの昔に終わっていたような気がします……」
 その人は無言だった。無言で、庭に降り積もる雪に視線を預けていた。その瞳は、何かを耐え忍ぶような、反面諦めてしまったような、複雑な色が揺れていた。



 断筆の原因は異変だった。
 日ノ本の開国と、それに伴う文明開化がもたらした有象無象の影響。それによって妖怪勢力が弱体化の極みにあるといえど、相変わらず異変は起こり続けてはいた。もっとも、それは幻想郷そのものを揺さぶるような大異変では有り得ず、稗田家にとっても阿弥にとっても特筆すべきようなものではなかった。
 だが、確実に異変は起こっていた。それは通常の異変などとは違って、もっと静かに、しかし確実に幻想郷に忍び寄ってきていたのだった。

 近代化によって急速に牙を失ってゆく妖怪たち。それは同時に、他ならぬ人間たちにとって、妖怪たちがすでに脅威とは言えなくなったことを意味してもいた。
 元々、如何にして人々に必要な知識を与え、妖怪たちの魔手から身を護ればよいのかを啓発するために創られたのが『幻想郷縁起』という書物だった。必然、妖怪と人間が平和に共存する時代が来れば、その存在意義が揺らぎ始めるのは自明の事――必然、それは『幻想郷縁起』を編纂するためだけに生まれてくる阿弥の存在意義をも揺らがせる事になる。それは阿弥にとっては比類するもののない大異変であって、転生の理由をすべて崩壊させかねない危険な兆候だった。
 実際、その兆候はあった。三途の川に連なる屋台には妖怪も人間も分け隔てなくやってくるようになっていたし、それどころか、人里に降り、人間と共存を図ろうとする妖怪が大量に現れる始末――。人間にとって適度に弱体化した妖怪は敵ではなくなり、善き友へと変化してゆく。阿弥がいちいち対処法を書くまでもなく、人々は勝手に妖怪たちと打ち解けて仲良くなってゆく。他ならぬ阿弥自身そうだったのだからお笑い種だった。
 何かがおかしい、とも思っていたし、ゆくゆくはそういう時代がやってくるという確信は、幼い頃から彼女の胸の中にあった。それにいちいち反応することをしなかったのは、他ならぬ阿弥自身がそれを考えることを禁じていたからだった。
 自身に価値があると思わなければ、自分は自分を見失ってしまう。書き続けるのだ、『幻想郷縁起』を……。そんな強迫観念に駆られて筆を取っても、頭に浮かんでくるのは明文化できぬ取り止めのない閉塞感ばかりだった。相変わらず「その人」は阿弥に会いに来続けていたが、阿弥はもうまともにその瞳を見ることが出来なかった。
 私はもう要らないのではないか。一度モノを考え出すと、そんな弱音ばかりが頭を埋め尽くす。妖怪の危険性を啓発するということが時代遅れになった今、もう『御阿礼の子』は要らない――。そんな自分の声が頭に反響し出すと、取るものも手につかなくなるのだった。食事も喉を通らなくなり、満足に眠れない日々が続いた。



 鬱屈に鬱屈を重ねた阿弥の手がついに止まったのは、「その人」と出会ってから迎えた三度目の冬のことだった。
 もう書けない。まるで糸がぷっつりと途切れてしまったかのようだった。使命感も強迫観念もすっかり熱を失ってしまい、筆を取る手に力が入らなくなったのだった。
 御阿礼の子として前代未聞の出来事だった。阿弥は白紙に近い原稿を前に呆然とするばかりで、何日も筆を握れない日々が続いた。すわ一大事とばかりに血相を変え、侍女たちは阿弥の真意を問いただしたが、物言わぬ石になった阿弥に、それ以上の詮索は無駄だった。
 こんな姿、「その人」には見られたくなかった。絶筆後も「その人」は会いに来てくれていたらしいが、阿弥は会うことができなかった。何日も私室に閉じ篭る阿弥を前に家人はおろおろするばかりで、誰も阿弥の真意に気がつくことは出来なかった。
 このまま死んでしまいたい。私室に篭りきりになった阿弥が考えることは、それ以外になくなった。転生など、もうしなくていい。自分という存在を消してしまいたい。自分が知る世界のすべてから否をつきつけられた存在が、不要になった体を引きずってこれ以上何を為せというのか。
 阿弥は慟哭した。自分という存在をこの世に生み出し続ける何かを、呪い、詰り続けた。



 絶筆状態になってから一ヶ月も経った、ある日の冬の夜。深夜になっても寝付けない阿弥が私室でうなだれているときだった。コンコン、と雨戸を叩く音があった。誰だろう。枯れた身体を引き起こし、雨戸を開けた瞬間だった。阿弥の指先が凍りついた。

 人様の敷地に不法侵入するなんて、これ一回きりです。

 自分に言い訳する声を発した「その人」は、阿弥が空けた雨戸の隙間に手を突っ込むと、遠慮なく屋敷の中に上がり込んで来た。
 何しに来た、とは言えなかった。それどころか、言葉が枯れて久しい喉はひくひくと上下するだけで、その行動の真意を問いただす一言も吐けなかった。結局、顔を合わせないように後ろを向くしかない阿弥の背中に、「その人」は静かに言った。

 阿弥さん、私、今日初めて仕事をサボりました。

 その言葉に、まんまとハメられた。えっ? と思わず振り返ってしまった阿弥に、「その人」は悪戯を告白する子供の目で続けた。なぁに、チョロいもんです。今頃彼岸は大騒ぎでしょう。どこぞの死神と違って、私がサボるなんて事は今日これ一回こっきりになる予定ですから。十二分に騒いでくれなきゃ困ります。なんなら二、三日逐電した方がいいでしょうか……?
 軽口で誤魔化しても、それは想像を絶する事態だった。最高裁判官である閻魔王の不在は今頃彼岸の是非曲直庁にも伝わり、上を下への大騒ぎになっているのだろう。そんなことを朧に想像した阿弥に、「その人」は笑みを消した顔で言った。

 では行きましょう。私が連れて行きますから。

 そう言って、「その人」は阿弥の手を取り、その体躯からは考えられない強力で阿弥の手を引っ張った。バランスを崩し、思わずたたらを踏んでしまった阿弥が、どこへ? と問うと、「その人」は再び悪童の顔で言った。

 空を飛ぶのです。どこへなりとも行けますよ。



 一分後、阿弥は空を飛ぶことになった。
 有無を言わさず阿弥を連れ出し、軽々と抱きかかえた「その人」は、ささやかな阿弥の抗議も無視して飛び立った。阿弥の身体を抱えたままぐんぐん高度を上げた「その人」は、数分後には雲をつくような高さにまで上昇してみせた。
 阿弥はというと、「その人」の体から落ちてしまわないよう、首元にすがりついているしかなかった。堅く目を瞑り、歯を食いしばって上昇の恐怖に耐えていた阿弥の耳元に、ごう……という風の音が聞こえ続けていた。

 寒くないですか?

 不意に、「その人」がそんな呟きを漏らした。確かに今晩は雪が降っていたはずだが、ガチガチと歯の根が合わないのは恐怖のためで、外気温など判別のつくことではなかった。それでも反射的に頷いてしまった阿弥に、「その人」はよかった、と安堵の笑顔を向けた。

 阿弥さん、下を見てください。大丈夫、怖がらないで。

 「その人」が言い、阿弥は恐る恐る下を見た。
 見下ろした遥か下界に、ぽつぽつという感じで明かりが見えた。あれは……? 刹那、恐怖も忘れて阿弥が目を見開くと、その数は瞬く間に増え、高度を上げる数秒のうちに百を数えるまで増えていった。
 そこには、阿弥が初めて見る幻想郷の全図があった。高高度から俯瞰すると、狭いとばかり思っていた幻想郷はあまりにも広く見えた。少なくとも阿弥の目にはそう見えた。暗中でもその威容を偲ばせる妖怪の山の尾根に、月の光りを反射して輝く湖の水面。まばらに点在する光点は人家から漏れ出る光りに違いなく、雪の中でじっと春を待っているであろう人々の姿を予想させた。それはともすれば夜の闇に飲み込まれてしまいそうな小さな明かりだったが、それでいてどこか懐かしく、しんしんと降り積もる雪をも融かしてしまいそうな、圧倒的な温かさをも孕んで揺れているのだった。
 綺麗ですね。思わず、そんな独白が阿弥の口から漏れた。幻想郷はこれほど美しい場所だったのか。千年以上も転生を繰り返してきたにしてはずいぶん今更と言えたが、「その人」は満足げに頷いてその感動を肯定し、静かに言った。

 私もここが……幻想郷が好きです。私が閻魔王になって初めての夜も、こうして空を飛んだんです。転職したとき、正直怖かったし、不安でもありました。柄じゃないですよね……。でも、こうやってしばらく空を飛びながらこの明かりを見ていたら、まぁいいか、と思えたんです。これだけ大きなもの、美しいものがあるのに、自分は何を不安に思ってたんだろう、って。

 思わず見つめた「その人」の顔は、月光に照らし出されて奇妙に青白く見えた。その横顔にどこか寂しげな苦笑が浮かぶまで、阿弥はその顔をまともに見ることが出来なかった。
 阿弥が後で知ったことだが、「その人」もまた疲れていたのだった。折りしもそのとき、外の世界で勃発していた大きな戦のせいで、こんな僻地でも裁くべき亡者の数が増加していたらしい。苦々しげに耳打ちしてくれた“部下”も相応に草臥れた顔をしていたが、阿弥には想像も驚愕もできない事態と言えた。
 人が人を殺すことへのどうしようもないやるせなさ。それは人の生に白黒を言い渡し続ける職務の苦しさと相俟って、それは阿弥の悩みとは到底比べるべくもないほどのものだったろう。同時に、妖怪が人を殺めていた時代は終わり、これからは人が人を殺める時代になるのだという予想は、そのとき初めて阿弥の胸の中で確信へ変化したのだった。
 阿弥が言葉を探しあぐねているのを察してか、「その人」は思い切ったように言った。

 こんなに広い世界がある。この光の数だけ、この世界の広さだけ、人や妖怪の営みがある。それを記録し、世にとどめてゆくことが必要だと思うのです。人にも妖怪にも、お互いに学ぶべき大事なものがある。それがこれからの幻想郷の百年を築く礎になると、私はそう信じます。
 阿弥さん、私からの個人的なお願いです。『幻想郷縁起』を書き続けて下さい。不躾な頼みであることはわかっていますが、それが出来るのはあなたしかいない。だから私からお願いします。そしてそれが完成できた暁には、是非とも私を第一の読者にさせてください……。

 命令するでも、叱咤するでもない。ただ静かに自分の思いを伝えたらしい声は、降りしきる雪に吸収されることもなく、はっきりと阿弥の耳に突き通った。
 言いようのない感傷が埋める胸に、絶望とは違うほのかな熱源が生まれた。はいともいいえとも言えず、阿弥は無言で「その人」の首に手を回してしがみつく力を強くするしかなかった。そんな阿弥の心情を悟ったのか、「その人」もそれ以上何も言わず、それから一時間ほどで空の旅は終わってしまった。
 具体的に何かが解決したわけではなかったが、それでも阿弥の中でしこっていた何かが融けて消えてゆく感覚はあった。事実、阿弥はその空の旅から帰ってすぐ、白紙の帳面に向き合うことができた。
 書けるだろうか。そう自問してみると、書ける、と何の疑いもなく思えた。紙に筆をつけると、頭の中で文章が爆発的に湧き上がり、それを筆記する手がとまらなくなった。自分は何を悩んでいたんだろう。なくし物が見つかったような、懐かしいような嬉しいような、そんなおもはゆい気持ちを墨と一緒に塗りつけ続けると、白紙だった帳面は一夜で真っ黒になった。
 形容しがたい安堵感があった。「その人」の言葉によって、心の中にもやっていた不安もどこかへ消えてしまった。一度筆を取った手は止まらず、ものの一週間で一ヶ月間の断筆を挽回することが出来た。実に一ヶ月ぶりに、阿弥は『阿礼』を取り戻したのだった。
 覚醒し続ける機械となった体はあちこち不調を訴え始めたが、構っている暇はなかった。これからは「あの人」のために頑張る。「あの人」を最初の読者にするために書く。そう思うと不思議に力が沸き、阿弥の身体は食事も睡眠も不要で動き続けることを望むのだった。



 やらなければいけないことがあるんだろう。そんな声が頭の中に響き、阿弥の頭の空洞を激震させた。はっと目を開けた阿弥は、今まさに命を落としかけていた自分を省みてぞっとした。
 同時に、頭を激震させた声の残滓を掴み取った阿弥の身体に、ほんの少しだけ力が戻った。そうだ、自分にはやらなければならないことがある。そう思い立って、阿弥は「その人」の肩に捕まる力を強くし、ぐっと顔を上げた。
「阿弥さん……?」
「すみません、私の書棚を……」
 口を開いた途端、神経を引っ掻き回す激痛が胸に走り、視界が黒白に明滅した。「早く……!」と続けた阿弥の言葉に戸惑う視線で応じた「その人」は、阿弥の身体を抱えたまま私室に戻ると、部屋の隅にある書棚の前にしゃがみこんだ。
 必死の思いで手を伸ばし、書棚の一番下にある本を取り出そうとする。何度も手に取ってきたはずなのに、今のそれは巨石のように重かった。全身をバラバラにする痛みに耐え、それを取り上げようと躍起になる阿弥を見かねて、「その人」がその本を手に取ってみせた。
「この本は……?」
 それを見つめてから、「その人」は解答を求めるように阿弥の顔を見遣った。脂汗の浮いた顔を痙攣させ、微笑してみせるのを返答の代わりにした阿弥に、「その人」はやおら目を見開き、手を震えさせた。
「これが……完成していたのですか?」
 いつから? そう言いたげな声だったが、答える余力はもうない。汗が浮いた顔を再び微笑の形にすると、阿弥は大きくため息をついた。
「よかった……約束を違えることがなくて……」



 こうして、阿弥は最大のスランプを乗り越えることが出来た。しかし、異変は立て続けに起こった。
 今度は懊悩とは全く別の理由で、阿弥は再び「その人」の目を直視することが出来なくなった。
 変化が現れたのはあの月夜の逢瀬以降のことだった。「その人」と目を合わせると胸が苦しくなり、その場を逃げ出したいような、そのくせもっと近くに寄っていきたいような、正体不明の感情が頭の中を渦巻くのだ。「その人」と会話しようとした途端、百もの言葉が頭の中で明滅して閉口するしかなくなる。何か言わなければ、と一念発起し、あの、と阿弥が声をかけると、同時に「その人」も、その、と顔を上げる。見事なタイミングで声を唱和させると、また再びバツが悪そうに俯く……こんな日々が一週間以上続いたのだった。

 どこかお体の調子が……?

 とぼけた顔でこちらを見てくる「その人」も「その人」だった。次の日屋敷にやってきて、減給で済みましたと頭を掻いていた「その人」は、あの一夜がいかに阿弥を変えてしまったかを理解していない風だった。あなたのせいです! と絶叫したいのを押さえ、なんでもないですと真っ赤になった顔を横に振る以外にない自分も歯がゆかった。
 それでも、「その人」が訪ねてきてくれるのが嬉しかった。「その人」は相変わらず三日に一度はやって来るし、編纂作業も最後の締めくくりに入りつつある。義務でも、自分を慰めるためでもない。これからは「その人」のために『幻想郷縁起』を編纂し続ければいいという思いにも疑いはなかった。
 そうして『幻想郷縁起』が完成したら、少し休もうと阿弥は決めていた。日が沈むまで寝ているのもいいし、好きなものを好きなだけ食べてもいい。ゆっくり湯浴みでもしながら飲めない酒を熱燗でやるのもいいかも。旅行に行くのも選択肢の一つから外してはいないし、何なら世界一周だってやってやれないことはないだろう。
 そして一番最後に……そう、それは最後でいい。自分の気持ちに素直に向き合おう。そして、完成した『幻想郷縁起』を持って「その人」に会いに行こう。自分を支え、叱咤してくれた「その人」に最初の読者になってもらうことこそ、何よりの恩返しだと信じるから。そのときなら、自分の想いを隠さず伝えることだってできるかもしれないから――。
 そんな思いを抱いていた、秋の日だった。
 阿弥が硯の上で墨を磨っていたときのこと。突如として胸に異様な感覚が疾り、阿弥は激しく咳き込んだ。
 まるで気管に穴が開いてしまったかのようだった。たっぷり一分ほど咳き込むとようやく咳は治まった。呼吸を整えつつ、ふと書きかけの『幻想郷縁起』の上に見慣れぬ赤い点が飛び散りっているのを見て、目を見開いた。
 はっとして見た手のひらにも、べったりと血が付着していた。何だこれはと思った刹那、今度は激痛と共に嫌な感覚が喉下から這い上がってきて、堪らず阿弥は畳の上に血を吐いた。
 何事かと飛んできた下女が腰を抜かし、慌ててどこかへ走り去ってゆく。その後姿を放心した目で見た阿弥は、それからようやく愕然とした。
 馬鹿な、まだ早い。
 まだ私は二十を過ぎたばかりじゃないか、一体なぜ――?
 自問してから、罰、という言葉を思いついてしまった阿弥は、悔しさに震えた。“人間”になってはいけない。すでに千年の年月を生きている人間に、今更普通の人間としての幸せは認められない――。遥かに早くやってきた死の足音に、自分をこの世に産み落とし続けた何者かの意志を汲み取った阿弥は、血に濡れた手のひらをぎゅっと握り締めて“なぜ”と慟哭した。
 なぜ私からあの人との時間を奪うのか。
 私は人間として生きることを許されないのか。
 私は私を慰めることすら許されないと言うのか――?
 一秒ごとに畳に染み込んで行く赤に、血とは違う透明な滴が落ちた。阿弥は結局何もできなかった自分の人生を理解して、人目はばからずに泣き続けた。




 血相変えた「その人」が、“部下”を伴って屋敷に飛び込んできたのは夕刻だった。
 すでに医者は帰っていて、阿弥が身を横たえる布団を囲んでいるのは数人の家の者だけだった。全身で息を整え、呆然と立ち尽くす「その人」に阿弥が薄い笑みを返すと、縁側に立った「その人」はよたよたと座り込んでしまった。 存外元気そうだと思ったのか、それとも逃れられぬ運命を知った故の絶望なのか。縁側の上で固く握り締められた拳を見た阿弥は、その場で人払いを命じた。下女たちもそこは慣れたもので、私室に一切近づくなと厳命した阿弥に眉ひとつ動かさずに応じてくれた。

 また仕事をサボって来たわけじゃないですよね?

 人払いが済んでから、阿弥は冗談交じりでそう聞いてみた。「その人」は答えなかった。上がってください、と言ったときだけ「その人」は素直に屋敷の中に入ってきたが、いつまで経っても畳んだ膝の上に白くなった拳を乗せているだけで、夜になっても一言も発しようとはしなかった。
 憔悴しきった「その人」の身体は、見る影もなく萎んでいた。自分の急を聞いた「その人」がそこまで案じてくれたことは正直嬉しくもあったが、精気という精気が枯れた「その人」を見るのはその何倍もつらかった。
 
 驚きました。まさか二十を超えた途端にこんな事になってしまうとは……ちょっと想像もしていませんでした。可笑しいですよね、いつ死んでもおかしくないはずなのに、今更……。

 そこで阿弥が口つぐんだのは、手のひらで握られた「その人」の拳が震えているのを見たからだった。
 帽子を被った頭を俯けて、「その人」の身体は震えていた。白くなった拳を握り締め、怒るでもなく、軽口を叩くわけでもなく、ただただ両肩に重みを感じ続けている。人事を人事と思えず、すべてを己の身に背負い込んでしまう底なしの生真面目さを滲ませて、その華奢な身体はあたかもじっと何かに耐えているようだった。
 閻魔王と稗田阿礼。職務上の関係でしか有り得ないはずの両者の関係が、とっくの昔に別の何かに変化していたことを裏づける反応だった。その変化がもたらした絆が、今は毒となって「その人」を苛み、無力な自分を恥じさせている――阿弥にはそれがわかった。いざとなったら閻魔王は、阿弥にとっては職務の執行者でしかない。彼岸に行った阿弥を使役し、次の百年を生きる身体を用意する……結局はそうすることが当初からの目的なのだったとしても、ういままでそれを忘れていたのだろう自分への怒り。それらすべてが、「その人」の肩に圧し掛かり、押し潰さんとしているかのようだった。
 ずきり。阿弥の胸が病とは違う理由で痛んだ。自分は一体何をしていたんだろう。この人に新たに紡がれた人生を生きていながら、自分は何をしているのか。まだこの人に救われるつもりでいたのか。今助けを必要としているのは、自分の目の前で震える「その人」の方なのに――。
 羞恥心と悔しさがこみ上げてくるのを、唇を噛み締めてこらえた阿弥は、低く言い放った。

 私は、まだ死にはしません。

 その一言に、「その人」は虚を突かれた顔を上げた。隣に立つ“部下”までもが、阿弥の真意を問う視線を向けてくる。阿弥は枕元に置いてあった本を一冊、「その人」に向かって突き出して見せた。戸惑う視線を書面と阿弥に往復させた「その人」に、阿弥は決然と言った。

 これが私の人生のすべて、『幻想郷縁起』の第八巻です。ようやく完成が見えてきたところで、あと一月のうちには完成を見るでしょう。私の命が尽きるまでにはなんとか、あなたを最初の読者にすることが出来ると思います。
 そうなったら、約束は覚えていますね? 最初の読者になってください。それまで私は死にません。誰に逆らうことになろうと、絶対に死ぬわけには行かないのです……。

 「その人」とその部下はしばし呆気に取られた風だった。ぽかんと開けた「その人」は、それから十秒ほど経って、未完成の『幻想郷縁起』を手に取った。ずっしりと重く、費やされた年月を反映してボロボロになった表紙を愛おしそうに指でさすってから、「その人」はぽつりと呟いた。
 阿弥さんはお強い人なのですね。そう言った「その人」の顔にようやく笑みが浮かび、“部下”の顔も少しだけ綻んだ。阿弥は、それはそうでしょうと答えておいた。え? と首を傾げた「その人」の顔が可笑しくて、阿弥はまた笑った。
 この強さはあなたに貰ったものだから。あなたという存在がいたおかげで、私は『稗田阿礼』を取り戻すことが出来た。あなたが私の人生に意味をくれた。時代に取り残され、忘却の淵に沈められそうになっていた私を、あなたは這い上がらせてくれた。その手の力強さ、寂しげな横顔、その思い……すべてに報いるために、私はまだ死なない。だいぶちびてしまったけれど、この命には出来ることがある。あと少しの命を削って、この本を完成させてみる――。
 もう、秋も終わりに近づいた日の事だった。ふと外を見ると、何かが夜陰に紛れて空から落ちてくるのが見えた。綿埃のようにも見えるし、小さな羽虫のようにも見えた。よく目を凝らして、阿弥はため息をついた。

 雪が、降ってきましたね……。

 その言葉に、「その人」と“部下”が後ろを顧みた。あぁ、と頷いて、三人は笑った。
 風に弄われ、地面に到達した途端に消えてしまう儚い運命。それでも雪の子は臆することも呪うこともせず、それだけが自分の定めと信じて落ちてくる。一途なものだ、と感心してから、自分もそうなれる、という確信を抱いて、阿弥は最後の作業の前の静謐を「その人」と共に過ごす事にしたのだった。




「これが『幻想郷縁起』の第八巻です……遅くなりましたが、なんとか完成に……」
 一日を経る毎に、死は着実に阿弥に忍び寄ってきていた。言うことを聞かない棒になってゆく腕を叱咤し、焦点が合わない瞳を擦り続けての一ヶ月は、阿弥の執念の結晶だった。八巻の未完成は已む無しと諦めた風の侍女たちには目もくれず、文字通り死ぬ思いであとがきまで完成させたのが約一週間前。それから先は覚えていない。そこで本当に最期の力を使い切ったのだと理解はしていても、自分の身体にこれほど正直に反抗されたのは驚きだった。せめてもう少し、「その人」と一緒に、完成した『幻想郷縁起』を読むことが出来ると思っていた――否、それはもとから望むべくもなかったことなのだろう。
「私は……あなたに新しい命を貰った……」
 一言、一言、阿弥は穴だらけになった体から言葉を搾り出した。もうどこが故障し、どこが痛んでいるのかもわからなくなった身体に帯びる熱が、それでも口を開けと阿弥に命じ続ける。
「だから、それを今、その人生のすべてを……お返しします……」
 震える唇が紡いだ、偽らざる本心だった。返答を催促するように、阿弥が「その人」の顔を見た刹那だった。
 「その人」の瞳が揺れ、怒りとも悲しみともつかない焔が揺らめいた。阿弥が驚きの表情を浮かべる間もなく、阿弥の身体を支える手が動き、阿弥は「その人」にしっかりと抱きしめられた。
「何をしているのです……! こんな身体で……!」
 搾り出すように発せられた声は悲鳴のそれで、阿弥のからっぽの身体を微震させた。
 それと同時だった。「その人」と密着した頬に何か冷たいものが伝って、阿弥の頬をも濡らした。泣いている……? そう思いついてから、そんなはずはないと阿弥は否定した。
 この人は閻魔王。人間の情動とはまるで正反対にいる人。だから自分ひとりの死に心を動かされるはずがない。否、そうあらねばならぬと決めている人だからこそ、私の死に涙を流して欲しくない……。
 冷えてゆく腹の底で否定の言葉を並べ立てた阿弥は、手のひらでその人の背中を叩いて次の行動を促した。それでも、しばらく「その人」は阿弥の身体を離そうとしなかった。まるで今まさに死の泥濘に沈んでゆこうとする阿弥を渡さんとするかのように、その力は一向に弱まる気配がなかった。

「春は……」
 阿弥が唇を震えさせると、「その人」は、え? と問い返してきた。
「春は、また来るでしょうか……?」
 遊離しかけている意識を叱咤して、阿弥は聞いてみた。
 しばしの逡巡の後、はい、という静かな、しかしはっきりとした「その人」の声が耳朶を震わせ、阿弥は頷いた。
 すべてが終わったという安堵感が阿弥を満たした。
 二人だけに通じる言葉は、今この瞬間、「その人」と自分だけのものになった。
 今後、誰に聞かれても意味を成さない言葉。
 自分と「その人」だけが紡いだ新しい言葉。
 次の春が来るまで、永遠に自分たちだけのものになった言葉――。
 もう一度だけ阿弥が背中を叩くと、やっと「その人」は身体を離してくれた。

 俯けられた「その人」の顔は、阿弥に崩れた顔を見られまいという最後のプライドだったのかもしれない。それでいい、と阿弥が頷くと、「その人」は『幻想郷縁起』を手に持ったまま縁側に戻り、腰掛けた。
 その人の指が、最初の一ページをめくるのが気配で伝わった。
 ふっと笑みを湛えたのが、阿弥の最期の意志だった。吹きつけた風が最後の焔を吹き消した瞬間、阿弥の意識は永遠に途切れた。冷たく、湿り気を孕んだその風は、後に残った立ち昇る細い煙さえかき消して、阿弥を人の手が届かないどこかへと運び去っていった。
「最初の読者になれて光栄です、稗田阿弥殿――」
 その声は、もう阿弥には届かなかった。
 まだ雪は、降っていたけれど。






「四季様。私最近、前世のことをよく思い出すんです」
 まだ若い少女の声が隣で発して、閻魔王・四季映姫は口元にまで持って行きかけたティーカップの存在を一刹那忘れた。「え……?」と呆けたように言った映姫が横を見ると、視線を受けた少女は「まだ完全ではないんですけれど……」と顔を俯けてしまった。
 彼女によく似た――いや、ほとんど彼女の生き写しと言えるその横顔は、映姫につかの間の既視感を抱かせた。髪型や着ているものの差はあれど、形や立ち振る舞い、匂いまでもそっくり同じ。中身だけが違うという奇妙な存在は、相変わらず彼女と同じ所作で茶を啜っている。映姫は思い出したようにティーカップを下げると、その紅い液面を見つめた。
 唯一変わったことといえば、出されるときに振舞われる茶が紅茶になったことだけだった。本当に彼女ではないんだろうか、といつもの疑念を頭の隅から追い出してから、映姫は「そうですか……」とカップに口をつけ、雪が消えつつある庭に視線を落とした。
 広大な稗田家の庭園は、小春日和の陽光の中にあった。植物の枝葉に生じた若芽の存在は着実に近づいてくる春の足音を感じさせている。凍りつき、今は動作を停止しているししおどしが快音を響かせ始めるのも間近のことだろうと予想して、映姫は「『幻想郷縁起』の編纂のほうは?」と話題を変える一言を発してみた。
 ふふっ、と少女は笑顔を向けた。そう言えば、この当主は自分が生きている限り『幻想郷縁起』を編纂し続ける気らしい。初めてそれを打ち明けられたときは驚いたが、反面嬉しくもあった。大結界によって現世から隔離された幻想郷においては、『幻想郷縁起』はもっと違う意味を持つようになるだろうから。彼女がこの世に産み落とす一粒種は、ゆくゆくはこの幻想郷にも立派に根を張って見せることだろう。なぁに、心配は要らない。無邪気な笑顔からはその試練に立ち向かうだけの精気が溢れていたし、先のことは誰にもわからないのだから。不安も心配もひとまず押し隠して、映姫はそのように楽観する事に決めていたのだった。
 ずずっ、と紅茶を啜る。緑茶とは違うフルーティな香りが口腔いっぱいに広がり、映姫はほぅ、とため息をついた。日本庭園に紅茶とはミスマッチもいいところだったが、これはこれでいいものだ。目の前の少女は気にする風もなく、縁側に膝をついて茶を啜っているのだから、何とも可笑しいものだった。

 と、そのときだった。ソーサーにカップを置いて、少女はやおら映姫の隣ににじり寄ってきた。ほとんど隙間を空けずに並ぶと、少女は悪戯っぽい笑みを浮かべて見せた。
「そうだ、四季様」
「はい、なんでしょうか?」
「そう言えば、新発見があったんです」
「ほうほう、それは?」
 茶を啜りながら先を促した映姫は、刹那、少女の目が光ったのを見逃した。
「先代の阿礼が死んでから私が生まれるまでに、八十年と少ししか経っていないんです」
 ボフッ、と物凄い音と共に映姫は紅茶を吹いた。暫く激しく咳き込んで口内の紅茶を追い出した映姫は、呼吸を整えるのも忘れて「……どういうことです?」と問うてみた。
「通常、御阿礼の子……まぁ私のことですが、阿礼の記憶を持ったものが生まれるのは百数十年に一度と言われているそうなんです。事実、過去の資料を漁ってみるとそうでした。けれど私だけ、先代の稗田阿弥が没した後、百年も経っていないときに生まれているのです。これはどういうことなんでしょうか」
 まるで書き物を読むような流暢な口調に、今更ながらに求聞持の能力の何たるかを知る一方、映姫は目の前の少女が何を言わんとしているかを理解してしまっていた。口をぱくぱくさせるしかない映姫に、少女は確信的に問うてきた。
「ねぇ、四季様。不思議ですよね。まるで閻魔様が取り計らってくれたようですよね?」
 人の失敗をあげつらう悪童の顔と口調だった。音を立てて頭に血が上る中、映姫は自分がしたことが筒抜けだったことを恥じて、苛められっ子よろしく小さくなるしかなかった。
 死後、彼岸に到達した彼女の魂は、映姫とは別の閻魔の元に預けられた。職務執行者と被執行者、それ以上の関係を築きつつあった二人の仲を認めまいという思惟を匂わせる決定だったが、そこは地獄の裁判長。裏からなんやかやと手を回して彼女の動向を監視するのはそれほど難しくはなかったし、彼女が転生する時期を大幅に繰り上げるという荒業もやってやれないことはないのだった。
 職権の濫用というのでもまだ足りない、バレれば一発でクビの汚職行為を是非曲直庁の上層部が見落とした背景は、もともと転生という特殊な事情には閻魔自身も不慣れであるというのがひとつ。日夜増え続ける人口に伴って増加する通常業務に追われ、一個人の霊魂に構っていられる時間は多くない彼岸の実情がひとつ。そして、何よりも映姫自身がそれを望んだことがひとつ――。
 黒も白もない、ただ自分の善悪観念に絶対服従するのがヤマザナドゥ。そして自分の善悪観念は白の判定を下した。自分の意に忠実に行動せよと。新たに幻想郷として完成された世界を一刻も早く見せてやるのが“白”だと。ただそれだけだ。それだけだったはずだが……。
 ごほん、とわざとらしいしわぶきをひとつして、映姫は「阿求さん」とたしなめる一言を発した。
「一代前のあなたの魂は、私とは違う閻魔に預けられました。あなたは覚えていないでしょうが、あなたの転生の年月を縮めるような決定を、私がどうして下すことができるというのです。それに、閻魔王である私の職務に関してあれやこれや詮索するのは黒です」
「そう、黒ですか」
「ええ、黒です」
 ぴしゃりと言ったつもりだったが、阿求の表情はにやにや顔のままだった。「とっ、とにかく! この話は以後しないように!」と大声を出して話を打ち切ったつもりになった映姫は、空になったカップをソーサーの上に置いて横を向いた。

「四季様」
「なんですかっ」
「私、最近よく先代の稗田阿弥の記憶を思い出すって言いましたよね?」
「もうそれは聞きました」
「そうでしたか。それでは、私が思い出した阿弥の記憶のほとんどが虫食いだと言う話は?」
「それも聞きましたよ」
「そうでしたか――」

 何が言いたいのか。映姫が横を見ると、こちらを注視する阿求の顔からは、すでに笑顔が消えていた。
 がちゃ、とカップが割れる音が響いた。
 同時に、映姫の顔が、阿求の冷たい両手で挟みこまれる。
 映姫が目を見開いた瞬間、少し幼くなった阿弥の顔が、今までで一番近くにあった。

 「思い出したことも、あるんですよ?」

 耳元に、そんな呟きが聞こえた。
 いつになく真剣な阿弥の顔が、映姫が見る視界のすべてになる。
 次の瞬間、映姫の唇に柔らかな感触が触れた。







 ストーン!
 陽光に融かされたししおどしが、一発目の快音を響かせた。
 雪の中、誰もが春の到来を待っている、ある冬の日のことだった。













                                                                 おしまい
あきゅえーきは……なんなんでしょう。思いつきません。「我が彼岸」でしょうか。いやそりゃこまえーきですね。

まぁ何はともあれ百合です。初百合です。BLなら出版できるぐらい書いてきましたが百合は初めてです。しかもあきゅえーきとなるともうどう書いたらいいもんか悩みましたが完成にこぎつけました。


【追伸】評価有難うございます。皆さんが白だ白だいうのでパンチラシーンなんか書いてないぞと思ったんですがそういうことじゃなかったですね。指摘された誤字は修正いたしました。いやぁホント私の書くヤツは誤字脱字が多いので涙が出ます。某所で指摘喰らったときは絶対私のだと思いました(笑)。
スポポ
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コメント



0.1680簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
新しいカプの誕生か
4.100名前が無い程度の能力削除
これはまごうことなき阿求×映姫(あきゅえーき)であり、ラブストーリーであり、百合であり、尚且つ【白】であるっ!
9.100名前が無い程度の能力削除
うん間違いなく白です
12.100名前が無い程度の能力削除
ナシと思ったがアリ
13.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい実に素晴らしい
16.100名前が無い程度の能力削除
早苗さんでも良いと思います。あきゅえーきの続きを書くのも良いと思います。
17.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品でした。
>子を為す前に死を迎える自分にとって、『幻想郷縁起』は我が子に等しい存在ですらある。
とありますが、まさに阿弥と映姫の子供のような存在ですね……
19.100名前が無い程度の能力削除
これはいいあきゅえーき
最後の阿求がかわいすぎて思わずニヤけた
21.無評価名前が無い程度の能力削除
矛盾点のみ失礼します。

>まだ私は二十を過ぎたばかりじゃないか、一体なぜ――?
のすぐあとに、

>驚きました。まさか二十を超える前にこんな事になってしまうとは……
とあります。
25.100名前が無い程度の能力削除
最後が幸せそうな感じでいいなぁ。
いいものを読ませていただきありがとうございました。
27.100名前が無い程度の能力削除
白、白!
28.100名前が無い程度の能力削除
これは素晴らしいあきゅえーきだ
29.100名前が無い程度の能力削除
白です!!!!
最高!
33.100ぺ・四潤削除
これほど春がやってきてくれてよかったこと思ったはありません。
ああもう、明日仕事なのに瞼が腫れちゃうじゃないか……
あとがきは……見なかったことにww

なんかまた後書き変わってるしww
コメント修正しました。
34.100名前が無い程度の能力削除
驚きの白さ。
37.100雪峰昴削除
ああ、これは……いい……
39.100ずわいがに削除
これが本当の「映姫様」の百合なんだなぁ。山あり谷あり、これはもうお手本にしたいぐらいです!
しかし稗田家の存在が揺らぐ、ですか。そんなこと考えたこともありませんでした。やはり発想が凄いですね。

>BLなら出版できるぐらい書いてきましたが
えっ 商業ですか?同人ですか?……気になる(エッ
40.無評価鏡石削除
みなさん評価有難うございます。やっと方向性が見えてきました。



>>39
もちろん同人、というか仕方なくです。せがまれるのです
もともとはハードボイルド大好きで銃撃戦とか軍事物を書いてるんですがね
いつかカーチェイスする永琳とか攻撃ヘリを操縦するチルノとか書いてみたいです