【博麗霊夢が霧雨魔理沙に物申す】
翼も無しに空を飛べる訳がないでしょうと霊夢は言った。
そんな馬鹿なと魔理沙は否定した。
なぜなら幻想郷で大人気のスペルカードルールは主に空中戦だからだ。
今まで散々空中戦をやってきて、空を飛べる訳がないとはこれ如何に。
お前の能力は宙に浮かぶ程度の能力じゃないのかと魔理沙は言った。
トリックよと霊夢は暴露した。
昔から手品が好きで、空中浮遊マジックの才能がずば抜けていたのだそうだ。
え、あれ、全部、手品? 魔理沙呆然。
追いかけて、追いかけ続けた、ライバルの背中。
実は、ピアノ線によるマジックというオチ。
しかしだぜ、と魔理沙は言う。
しかし私は魔法で空を飛んでいる。翼も無しに空を飛んでいる。
実は箒だって魔法使いらしいからっていうポーズのものだから、この身ひとつで飛べるんだぜ。
すると霊夢は言いました。あなたが飛んでいるのは空じゃなくて頭よ。
そんな馬鹿な事があるものかと、魔理沙は幻覚作用のあるキノコをかじった。
【十六夜咲夜と紅美鈴が吸血鬼姉妹に物申す】
翼も無しに空を飛べる訳がないでしょうと咲夜は言った。
この翼が目に入らないのかと吸血鬼姉妹は反論した。
ところが、それは飾りですと咲夜は否定した。
そうね飾りね、とパチュリーも同意した。
飾りですね、と美鈴も同意した。
飾り扱いされて憤慨する姉妹だが、成る程、確かに空を飛ぶのに適した形はしてない。
それに、反論すべき点は翼の有無ではなかった。
レミリアは言う。私達はいつも、空を飛んで弾幕ごっこをしてるじゃない。
咲夜は暴露する。紅魔館住人は全員、私と美鈴が協力して秘密裏にワイヤーアクションさせてましたと。
以前は美鈴一人でワイヤーアクションの裏方に徹していて大変だったが、
今は時を止められる咲夜の協力が得られて助かっている。
子供の夢を壊さないために今まで続けていたけれど、二人ともそろそろ大人の階段を登るべき。
残酷な真実を乗り越えて成長してください、というのが従者達の願いだった。
ふざけるな。吸血鬼の姉妹が威嚇するように翼を広げると、翼をよく調べるよう言われた。
ワイヤーがついていた。姉妹は顔を見合わせ、子供時代にさよならを告げた。
【魂魄妖夢が西行寺幽々子に物申す】
翼も無しに空を飛べる訳がないでしょうと魂魄妖夢は言った。
そうね私は亡霊だから浮いているだけよねと西行寺幽々子は認めた。
肉体が無ければ体重も無い、故に幽々子は浮かぶのだ。
肉体が無ければ体重も無い、故に魂魄妖夢は半霊にぶら下がって浮かぶのだ。
二人が空を飛んでるように見えるのは、魂魄妖忌が下から糸で操っているからだ。
亡霊という凧を飛ばしているのだ。故に浮いている、もしくは飛ばされていると表現するのが正しい。
白玉楼は平和だったが、主人と孫という凧を引っ張り続ける仕事をしている魂魄妖忌は辞表を書いていた。
【八意永琳が蓬莱山輝夜に物申す】
翼も無しに空を飛べる訳がないでしょうと八意永琳は言った。
あらそうだったのと蓬莱山輝夜は感心した。
永琳は天才なので輝夜の疑問も察しておりすぐ解説へ移行する。
鈴仙・優曇華院・イナバが空を飛んでいるのは、狂気の瞳が見せる幻覚である。
因幡てゐが空を飛んでいるのは、嘘である。いわゆる詐欺である。
八意永琳が空を飛んでいるのは、自分で撃った矢に飛び乗っているからである。
では、と蓬莱山輝夜は問う。私や妹紅はどうやって空を飛んでいるのかと。
それは、と八意永琳は答える。妹紅は竹から竹へと飛び移っているだけである。
空中で停止しているように見えるのは、細い竹の枝に立っているだけである。
武術の達人は水面に浮かぶ枝の上に立てるというがそれと同じ理屈なのだ。
蓬莱山輝夜が空を飛んでいるように見える理由は、輝夜の美しさが見せる白昼夢である。
そういうものなのねと納得した輝夜は、妹紅と殺し合うため竹林へと向かった。
【非常識が常識に挑む】
翼も無しに空を飛べるものかと常識は言った。
そう言われてもこれが仕様だし困ると非常識は言った。
幻想郷に蔓延した常識は次々に非常識を喰らい、侵食していく。
これは火星人の陰謀だ、と八雲紫は言った。
紫様がそう仰るならそうなのだろう、と八雲藍は得心した。
しかし、だとしたら、幻想郷を火星人の好き勝手にさせていいのか。
いい訳がない。
八雲紫、幻想郷の守護者として火星人を叩きつぶす所存。
しかし、しかしである、地上の人間は月の住人にさえかなわないというのに、相手は火星。
水金地火木土天海(冥)というように、月よりもはるか彼方から干渉してくる火星の常識力は脅威。
(冥)扱いされる冥王星が不憫で、藍は心の中で涙した。
さあ、行こう。八雲紫に翼は無いけれど、スキマを開けて旅立つ事ができるのだから。
こうして幻想郷と火星の壮絶な常識非常識戦争は幕を開けたのだった。
それは歴史に記されぬ裏の歴史の物語であった。
だが妖怪の賢者でさえ気づかぬ真相、火星を裏から操る黒幕の存在。
暗躍するレティ・ホワイトロックは、妖怪の賢者が予定通り火星に赴いたと"本国"に報告した。
これでいい。これで幻想郷と火星は同士討ちするだろう。
その時こそ――木星帝国(ジュピター・エンパイア)がこの太陽系を支配するのだ!!
【大空は誰のもの】
翼も無しに空を飛べるものか。幻想郷に住まう大多数の人妖は、空を飛ぶすべを失った。
しかし、翼を持つ者は違った。
賢者、八雲紫が姿を消した事もあり、妖怪の山の首領、天狗の長、天魔は勢力拡大を試みた。
尖兵となったのは射命丸文。同属である鴉天狗を率いて、幻想郷の空を黒く塗り替えた。
これに対抗するは、地底からの使者、霊烏路空。通称、お空である。
山の勢力である八坂神奈子から頂いた究極の力は、お空が愛する古明地さとりのために振るわれた。
幻想郷からも見捨てられ、地底に追いやられた妖怪達のため、地上の覇権を求め立ち上がったのだ。
成る程、確かに鴉天狗の数は膨大だ。
しかしこのお空、伊達に究極の力を得てはいない、一騎当千の強者である。
こうして、幻想郷は核の炎に包まれた。
【銀河に響く歌声】
天狗と地底の争いに疲弊した幻想郷を慰問するのは、翼を持つ夜雀ミスティア・ローレライであった。
飢えた者には人妖の分け隔てなく八目鰻を振る舞い、そして活力あふれる歌声で人々を慰めた。
これに注目したのが河城にとりである。
夜雀の歌が持つ魔力から歌エネルギー理論を発表。
歌の持つ波動により世界を救済しようと計画し、サウンドエナジーシステムを製作。
ミスティアにサウンドブースターを装着させ、戦場を歌声で満たしたのだ。
戦争なんて下らない! 山よ、銀河よ、今日こそ動かしてやる。私の歌を聴け!!
【これってなんの話だっけ?】
八雲紫と八雲藍が火星と木星帝国に奇跡的勝利を飾り幻想郷へ帰還すると、
非常識は常識を押し返し翼が無くても空を飛べる環境へと戻っていた。
これですべては元通り、だと思ったのだが、ひとつ、大きな変化があった。
スペルカードルールが廃止されていた。
ソングカードルールが普及されていた。
歌で幻想郷を救ったミスティア・ローレライは歌姫として祀られ、平和と歌を司る神となっていた。
妖怪が神として祀られる、よくある話である。
そして弾幕の代わりに歌声で戦うソングカードルールは、平和の象徴として今日も幻想郷を満たしていた。
THE END
バランス的には、輝夜が妹紅に会いに出かけた次のあたりでさっぱり落としていたら良かったと思う。
ギャグ話に暴走は付き物かも知れませんが、これは単なる迷走でしょう。
道を見失ったのが話なのか作者なのかはともかくとして。
後半は暴走しすぎだろwww
しかし、本文よりコメント読んで笑ってしまったのは何故だろう
最初から黒幕見抜いてるじゃねーか
後、玄爺は前足を翼上にして、後ろ足からジェット噴射を…
>これい対抗するは、
→これに対抗するは、
ソングカードルール
面白そうですね。
ワイヤーとか凧とか矢とか……
ズレている?
ひじょうしきってすごいね!
もしかしてル・グゥインの「世界の合い言葉は森」をご存知とか?