霧雨魔理沙。
自称、普通の魔法使い。ひょんな事から出会った。
出会ってからは、ほとんど毎日のように私の家にやってくる。
来る事自体は別に構わないけど……。流石に毎日ってのは。うーん……。
「どーした? アリスゥー、ぼーっとしてるぜー」
「あ、いや。何でも無いわ」
テーブルを挟んで、私と魔理沙は向かい合って座っていて、さっきから魔理沙は私が淹れた紅茶をちまちまと啜っている。
時折、「あっちぃ」とか言って舌をペロッと出してみたりする仕草が可愛い……。
って何を考えているのかしら私は。
「うーむ、やっぱアリスの淹れる紅茶は美味いな! どこで淹れ方覚えたんだ?」
それはまぁ、頑張って調べて練習したからなんだけど、魔理沙の為だけに紅茶の淹れ方を覚えたなんて、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
「さぁね。普段から淹れてたら美味しくなるんじゃない?」
適当に返事しておく事にする。ごめんね、魔理沙。
ちょっとした罪悪感を感じている私を前に魔理沙は悪戯っぽく笑って、
「そーかそーか。だったら私もアリスに良いヤツを淹れれるようになるまで、毎日紅茶を淹れるとするかー?」
と言うのだ。これが冗談じゃなきゃ良いんだけどね……。魔理沙が本気でこんな事を言わないのは百も承知だ。
「ふふ。まぁ、期待しておくわ」
これも適当に返事する。でもこの場合、私の気持ちに気付いてくれない魔理沙が悪いんだから。
……。うん、そうだ。勝手に一人で納得していると、
「ん~っ……。っはぁ。じゃ、もう帰るかな。そろそろ暗くなってきたしな」
魔理沙は窓の外の夕日を見ながら大きな伸びをして、席から立ち上がった。
「ああ、そうね。完全に日が落ちると、空を飛んでいても危ないからね」
まぁ、その危ない場所に住んでいる私は何なんだろうと思うと微妙な気分になるけど。
魔理沙は、壁に立てかけてあった箒を手に取って、窓を開けた。
「それじゃ、お暇するぜ。また明日も来ると思うから、紅茶の準備は忘れないでくれよー」
「はいはい。ていうか、ちゃんと玄関から出てくれるかしら?」
言っても聞かない事は、もう分かりきっている事だけど一応口に出してみる。
「はっはっは。明日は玄関から出てやるよ」
棒読みでそう返事した魔理沙は箒に跨って床を思い切り蹴って飛び立った。
「じゃあなーっ!」
こちらを向いて、手を振りながら飛んでく魔理沙。
その笑顔は夕日よりも眩しく見えた。
そんな魔理沙を手を振り返して見送りつつ、ここで私はふと考えた。
「魔理沙って……。普段何をやってるのかしら?」
そういえばそうだ。考えてみれば、魔理沙と出会って結構日は経っていると言うのに、私は魔理沙の事について何も知らない。
朝、私の家に来て、この日が暮れそうな時間までのんびりしてて……。
って、これが毎日なんだから殆ど私の家で過してるじゃない。そう考えると、ますます何をしているのか分からない。
プライベートな活動をする時間は今から明日の朝まで、という事になる。
夜。夜だわ。魔理沙、夜は何をしているのかしら。
「気になる……」
そんな事を考えていると、気になって仕方がなくなってきた。
居ても立っても居られない……! 考えが纏まった頃には私はもう外に飛び出していた。
空に昇ってみた。
紅い夕日が目に眩しい。とりあえず私は、魔理沙を探してみる。
すると、魔理沙はまだ視界に見える範囲に飛んでいた。しめた、この距離なら十分追跡できる。
「ごめんね、魔理沙」
とりあえず、一言だけ謝って追跡を始める事にする。
私が読んできた本の中で、こうやって追跡して相手の事を調べるお話があったようななかったような。
確かアレは……。ハッピーエンドだったかしら。だったら間違いないわ。
さて、そんなこんなで追跡を始めたは良いけど、魔理沙は飛ぶのが早い。
先程からビュンビュン飛ばしていて、それを必死に追いかける私は何度か鴉とぶつかりかけた。
それに、結構長い距離を飛んできた。もういい加減に魔理沙の家、もしくはもっと違う目的地か何かに辿り着いても良さそうだけど……。
ってちょっと待った。人里が見えてきて気付いたけど、魔理沙は人里に用があるのかしら?
私の予想は的中、魔理沙は人里に降り立った。
もう日は暮れて、そろそろ出店が並んでいる時間帯。
おでんだとか、焼き鳥だとか。美味しそうだとは思うけど、人が多いからあんまり行きたくない。
そもそも、外食をしないし……。って、魔理沙は外食しに来たのだろうか?
箒から降りて地面に立った魔理沙は、ツカツカと歩き出した。
私も地面に降りて、こっそりと、バレないように後を尾ける。
魔理沙は客寄せをしている屋台を全てスルーして、歩き続けている。
どうやら、外食が目当てで来た訳では無いようだ。
どんどんと奥に進んでいき、やがて、出店が並んでいるゾーンから抜けてしまった。
出店に客足を取られたのか、並んでいる八百屋さんとかお肉屋さんとかは閑散としていて、店の主人であろう人も暇そうにしている。
やがて、魔理沙はある建物の前で立ち止まった。
建物の看板を見てみると、それは私が普段お世話になっている紅茶の葉を売っている店の名前だった。
その光景を見て、私の脳裏に魔理沙の言葉が過ぎった。
『だったら私もアリスに良いヤツを淹れれるようになるまで、毎日紅茶を淹れるとするかー?』
嘘じゃ……無かったんだ……。あ、いや。ももも、もしかしたら私の為じゃなくて、ただ純粋に魔理沙が飲みたいだけなのかも……!
そうだ、糠喜びになるところだったわ。……ほんとに私の為じゃないよね?
「誰か居るかーっ?」
魔理沙は店の中に向かって、誰か居ないか問いかけている。
「はいはい」
あ、居たみたい。いつも私と話をしてくれる、おばあちゃんが出てきた。
「よーし、じゃあダージリンくれ。ダージリン」
「はいはい」
ダージリンと言えば……。私が一番好きな銘柄なんだけど……。
さて、これはどうとるべきかしら。魔理沙が純粋に飲みたいだけなのか、それとも……。
そして、魔理沙はおばあちゃんからダージリンを受け取り、お金を払って箒に跨った。
「そいじゃ、ありがとな! もしかしたらまた来るかもしれないぜ」
「まいど。来てくれるなら嬉しいねぇ」
おばあちゃんは笑いながらそう言った。
魔理沙もニッコリと笑って、地を蹴り上げてまた空へと浮かび上がった。
ああ、いけないいけない。早く追いかけないと。
それから、また空を飛んだ。魔理沙はまだまだビュンビュンと飛ばしていて、私を振り切ろうとしているのではないかと錯覚してしまう程だ。
うう……。疲れた。もうやめてしまおうかしら? で、でもまだ紅茶を買った所しか見てないし……。
今から家に帰るのも考えたけど、暗いし、遠いしで難しいし……。
「なー、アリスー?」
「何かしら?」
「紅茶の淹れ方を教えて欲しいんだが……」
「ええ、いいわよ……。ってええええええ!?」
色々考え事をしていて周りの事を全く見ていなかった私は魔理沙がいつの間にか隣で飛んでいた事に気付けなかった。
そして私は思わず急ブレーキ、行き過ぎた魔理沙はUターンして戻って来た。
「どど、どうして私が分かったの!?」
私の問いに、魔理沙は「何で?」という表情で、
「いや、どうしてってお前。お前の家から飛び出して、ちょっとしたとこで気付いてたぜ。何で付いてきてるのかと思ってたが」
と返してきた。
か、完全に最初からバレてた訳……!? 魔理沙ってば感が鋭いのね……。
「まぁ、それはどーでも良いか。私は紅茶の淹れ方を教えて欲しいんだ」
「そ、それは良いけど……!」
私がとっさにそう返すと、
「よしよし。断られたらどうしようかと思ってたぜ」
魔理沙は穢れの全く無い笑顔でこちらを見つめていた。
とりあえず、そこから魔理沙の家に直行した。今度は箒に乗せて貰えたから、苦労はしなかった。
私は今、魔理沙の家の中で椅子に座っている。
目の前にあるテーブルの上には、魔理沙が買っていたダージリンの葉、そして紅茶を淹れる為のポットなどが置かれている。
魔理沙の家の中なんて始めて入ったけど……。
思ったよりも普通の部屋? まぁ、もしかしたらまだ隠された部屋とかあるのかもね。
「さぁ! アリス!」
魔理沙は腕を組んで仁王立ち、そして自信たっぷりに、
「紅茶の淹れ方を教えてくれ!」
と言い放った。……いや、良いんだけどね?
「分かったわよ。で、どこから分からないの?」
「全部だ!」
「威張って言うな!」
という訳で、最初からやり方を知らない魔理沙に、私が紅茶の淹れ方を教える事にした。
どれ位分からないのかと言えば、軟水と硬水の違いが分からないくらい。
……流石に呆れるわ。ダージリンは、香りを楽しむためとりあえず軟水。これ基本。
「へー、ためになるぜー」
私の解説を熱心にメモを取りながら聞く魔理沙の目はキラキラと輝いているように見えた。
魔理沙はメモを閉じて帽子の中に仕舞った。
「……よしっ! じゃあ、早速教えてくれ!」
「はいはい。じゃあ、とりあえず水を沸かしましょうか」
私がそう言うと、魔理沙はいそいそとヤカンを取り出して、水を注いで火にかけた。
「うん、美味いぜ! 私にしては上出来だ」
自らが作った紅茶を、さっきから魔理沙はグイグイ飲んでいて、私も魔理沙が作った紅茶を飲ませてもらっている。
「な、アリスも美味いと思うだろ!?」
「そうね。初めてにしては上出来じゃない?」
私がそう言うと魔理沙はふっふっふー、と笑った。
その無邪気な笑顔は、とても輝いていて、私には眩しすぎる物だった。
その後、淹れた紅茶は全て飲んだ。
美味しかったしね。まぁ、ほとんど魔理沙が自分で飲んじゃったけど……。
そして、ティーカップ等を片付けている時に、ふと魔理沙が口を開いた。
「でさー、アリス」
「んー?」
ティーカップを洗いながら返事する。
「何で私を追いかけてたんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、私は思い切りカップを落としてしまう。
カップが儚く散っていく音が家に響く。
それに驚いた魔理沙が慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「うわわわ、だだだ、大丈夫かアリスっ!?」
多分大丈夫じゃない。
「ああああ、怪我は無いか!? どこも痛くないか!?」
割れたカップの心配よりもまず私の心配をしてくれる魔理沙。
そうやってあちこち私の体を触る魔理沙。
その優しさとかもう……。
「好きだからよっ!」
思わず、私は叫んでしまっていた。もう後戻りは出来ない……。
「す、好きだから……? それが理由なのか……!?」
魔理沙は目を白黒させてこちらを見つめている。
「ええ、そうよ。好きだから……。あんな事してしまったの」
好きじゃなきゃ魔理沙の日常を知りたいだなんて思わなかったし、嘘じゃない。
普通に考えたら、変な子だと思われちゃうかもしれない。
「そうか……。そんなに……」
魔理沙はうつむき気味に、
「紅茶が好きだったのか……」
そっちじゃない!
自称、普通の魔法使い。ひょんな事から出会った。
出会ってからは、ほとんど毎日のように私の家にやってくる。
来る事自体は別に構わないけど……。流石に毎日ってのは。うーん……。
「どーした? アリスゥー、ぼーっとしてるぜー」
「あ、いや。何でも無いわ」
テーブルを挟んで、私と魔理沙は向かい合って座っていて、さっきから魔理沙は私が淹れた紅茶をちまちまと啜っている。
時折、「あっちぃ」とか言って舌をペロッと出してみたりする仕草が可愛い……。
って何を考えているのかしら私は。
「うーむ、やっぱアリスの淹れる紅茶は美味いな! どこで淹れ方覚えたんだ?」
それはまぁ、頑張って調べて練習したからなんだけど、魔理沙の為だけに紅茶の淹れ方を覚えたなんて、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
「さぁね。普段から淹れてたら美味しくなるんじゃない?」
適当に返事しておく事にする。ごめんね、魔理沙。
ちょっとした罪悪感を感じている私を前に魔理沙は悪戯っぽく笑って、
「そーかそーか。だったら私もアリスに良いヤツを淹れれるようになるまで、毎日紅茶を淹れるとするかー?」
と言うのだ。これが冗談じゃなきゃ良いんだけどね……。魔理沙が本気でこんな事を言わないのは百も承知だ。
「ふふ。まぁ、期待しておくわ」
これも適当に返事する。でもこの場合、私の気持ちに気付いてくれない魔理沙が悪いんだから。
……。うん、そうだ。勝手に一人で納得していると、
「ん~っ……。っはぁ。じゃ、もう帰るかな。そろそろ暗くなってきたしな」
魔理沙は窓の外の夕日を見ながら大きな伸びをして、席から立ち上がった。
「ああ、そうね。完全に日が落ちると、空を飛んでいても危ないからね」
まぁ、その危ない場所に住んでいる私は何なんだろうと思うと微妙な気分になるけど。
魔理沙は、壁に立てかけてあった箒を手に取って、窓を開けた。
「それじゃ、お暇するぜ。また明日も来ると思うから、紅茶の準備は忘れないでくれよー」
「はいはい。ていうか、ちゃんと玄関から出てくれるかしら?」
言っても聞かない事は、もう分かりきっている事だけど一応口に出してみる。
「はっはっは。明日は玄関から出てやるよ」
棒読みでそう返事した魔理沙は箒に跨って床を思い切り蹴って飛び立った。
「じゃあなーっ!」
こちらを向いて、手を振りながら飛んでく魔理沙。
その笑顔は夕日よりも眩しく見えた。
そんな魔理沙を手を振り返して見送りつつ、ここで私はふと考えた。
「魔理沙って……。普段何をやってるのかしら?」
そういえばそうだ。考えてみれば、魔理沙と出会って結構日は経っていると言うのに、私は魔理沙の事について何も知らない。
朝、私の家に来て、この日が暮れそうな時間までのんびりしてて……。
って、これが毎日なんだから殆ど私の家で過してるじゃない。そう考えると、ますます何をしているのか分からない。
プライベートな活動をする時間は今から明日の朝まで、という事になる。
夜。夜だわ。魔理沙、夜は何をしているのかしら。
「気になる……」
そんな事を考えていると、気になって仕方がなくなってきた。
居ても立っても居られない……! 考えが纏まった頃には私はもう外に飛び出していた。
空に昇ってみた。
紅い夕日が目に眩しい。とりあえず私は、魔理沙を探してみる。
すると、魔理沙はまだ視界に見える範囲に飛んでいた。しめた、この距離なら十分追跡できる。
「ごめんね、魔理沙」
とりあえず、一言だけ謝って追跡を始める事にする。
私が読んできた本の中で、こうやって追跡して相手の事を調べるお話があったようななかったような。
確かアレは……。ハッピーエンドだったかしら。だったら間違いないわ。
さて、そんなこんなで追跡を始めたは良いけど、魔理沙は飛ぶのが早い。
先程からビュンビュン飛ばしていて、それを必死に追いかける私は何度か鴉とぶつかりかけた。
それに、結構長い距離を飛んできた。もういい加減に魔理沙の家、もしくはもっと違う目的地か何かに辿り着いても良さそうだけど……。
ってちょっと待った。人里が見えてきて気付いたけど、魔理沙は人里に用があるのかしら?
私の予想は的中、魔理沙は人里に降り立った。
もう日は暮れて、そろそろ出店が並んでいる時間帯。
おでんだとか、焼き鳥だとか。美味しそうだとは思うけど、人が多いからあんまり行きたくない。
そもそも、外食をしないし……。って、魔理沙は外食しに来たのだろうか?
箒から降りて地面に立った魔理沙は、ツカツカと歩き出した。
私も地面に降りて、こっそりと、バレないように後を尾ける。
魔理沙は客寄せをしている屋台を全てスルーして、歩き続けている。
どうやら、外食が目当てで来た訳では無いようだ。
どんどんと奥に進んでいき、やがて、出店が並んでいるゾーンから抜けてしまった。
出店に客足を取られたのか、並んでいる八百屋さんとかお肉屋さんとかは閑散としていて、店の主人であろう人も暇そうにしている。
やがて、魔理沙はある建物の前で立ち止まった。
建物の看板を見てみると、それは私が普段お世話になっている紅茶の葉を売っている店の名前だった。
その光景を見て、私の脳裏に魔理沙の言葉が過ぎった。
『だったら私もアリスに良いヤツを淹れれるようになるまで、毎日紅茶を淹れるとするかー?』
嘘じゃ……無かったんだ……。あ、いや。ももも、もしかしたら私の為じゃなくて、ただ純粋に魔理沙が飲みたいだけなのかも……!
そうだ、糠喜びになるところだったわ。……ほんとに私の為じゃないよね?
「誰か居るかーっ?」
魔理沙は店の中に向かって、誰か居ないか問いかけている。
「はいはい」
あ、居たみたい。いつも私と話をしてくれる、おばあちゃんが出てきた。
「よーし、じゃあダージリンくれ。ダージリン」
「はいはい」
ダージリンと言えば……。私が一番好きな銘柄なんだけど……。
さて、これはどうとるべきかしら。魔理沙が純粋に飲みたいだけなのか、それとも……。
そして、魔理沙はおばあちゃんからダージリンを受け取り、お金を払って箒に跨った。
「そいじゃ、ありがとな! もしかしたらまた来るかもしれないぜ」
「まいど。来てくれるなら嬉しいねぇ」
おばあちゃんは笑いながらそう言った。
魔理沙もニッコリと笑って、地を蹴り上げてまた空へと浮かび上がった。
ああ、いけないいけない。早く追いかけないと。
それから、また空を飛んだ。魔理沙はまだまだビュンビュンと飛ばしていて、私を振り切ろうとしているのではないかと錯覚してしまう程だ。
うう……。疲れた。もうやめてしまおうかしら? で、でもまだ紅茶を買った所しか見てないし……。
今から家に帰るのも考えたけど、暗いし、遠いしで難しいし……。
「なー、アリスー?」
「何かしら?」
「紅茶の淹れ方を教えて欲しいんだが……」
「ええ、いいわよ……。ってええええええ!?」
色々考え事をしていて周りの事を全く見ていなかった私は魔理沙がいつの間にか隣で飛んでいた事に気付けなかった。
そして私は思わず急ブレーキ、行き過ぎた魔理沙はUターンして戻って来た。
「どど、どうして私が分かったの!?」
私の問いに、魔理沙は「何で?」という表情で、
「いや、どうしてってお前。お前の家から飛び出して、ちょっとしたとこで気付いてたぜ。何で付いてきてるのかと思ってたが」
と返してきた。
か、完全に最初からバレてた訳……!? 魔理沙ってば感が鋭いのね……。
「まぁ、それはどーでも良いか。私は紅茶の淹れ方を教えて欲しいんだ」
「そ、それは良いけど……!」
私がとっさにそう返すと、
「よしよし。断られたらどうしようかと思ってたぜ」
魔理沙は穢れの全く無い笑顔でこちらを見つめていた。
とりあえず、そこから魔理沙の家に直行した。今度は箒に乗せて貰えたから、苦労はしなかった。
私は今、魔理沙の家の中で椅子に座っている。
目の前にあるテーブルの上には、魔理沙が買っていたダージリンの葉、そして紅茶を淹れる為のポットなどが置かれている。
魔理沙の家の中なんて始めて入ったけど……。
思ったよりも普通の部屋? まぁ、もしかしたらまだ隠された部屋とかあるのかもね。
「さぁ! アリス!」
魔理沙は腕を組んで仁王立ち、そして自信たっぷりに、
「紅茶の淹れ方を教えてくれ!」
と言い放った。……いや、良いんだけどね?
「分かったわよ。で、どこから分からないの?」
「全部だ!」
「威張って言うな!」
という訳で、最初からやり方を知らない魔理沙に、私が紅茶の淹れ方を教える事にした。
どれ位分からないのかと言えば、軟水と硬水の違いが分からないくらい。
……流石に呆れるわ。ダージリンは、香りを楽しむためとりあえず軟水。これ基本。
「へー、ためになるぜー」
私の解説を熱心にメモを取りながら聞く魔理沙の目はキラキラと輝いているように見えた。
魔理沙はメモを閉じて帽子の中に仕舞った。
「……よしっ! じゃあ、早速教えてくれ!」
「はいはい。じゃあ、とりあえず水を沸かしましょうか」
私がそう言うと、魔理沙はいそいそとヤカンを取り出して、水を注いで火にかけた。
「うん、美味いぜ! 私にしては上出来だ」
自らが作った紅茶を、さっきから魔理沙はグイグイ飲んでいて、私も魔理沙が作った紅茶を飲ませてもらっている。
「な、アリスも美味いと思うだろ!?」
「そうね。初めてにしては上出来じゃない?」
私がそう言うと魔理沙はふっふっふー、と笑った。
その無邪気な笑顔は、とても輝いていて、私には眩しすぎる物だった。
その後、淹れた紅茶は全て飲んだ。
美味しかったしね。まぁ、ほとんど魔理沙が自分で飲んじゃったけど……。
そして、ティーカップ等を片付けている時に、ふと魔理沙が口を開いた。
「でさー、アリス」
「んー?」
ティーカップを洗いながら返事する。
「何で私を追いかけてたんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、私は思い切りカップを落としてしまう。
カップが儚く散っていく音が家に響く。
それに驚いた魔理沙が慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「うわわわ、だだだ、大丈夫かアリスっ!?」
多分大丈夫じゃない。
「ああああ、怪我は無いか!? どこも痛くないか!?」
割れたカップの心配よりもまず私の心配をしてくれる魔理沙。
そうやってあちこち私の体を触る魔理沙。
その優しさとかもう……。
「好きだからよっ!」
思わず、私は叫んでしまっていた。もう後戻りは出来ない……。
「す、好きだから……? それが理由なのか……!?」
魔理沙は目を白黒させてこちらを見つめている。
「ええ、そうよ。好きだから……。あんな事してしまったの」
好きじゃなきゃ魔理沙の日常を知りたいだなんて思わなかったし、嘘じゃない。
普通に考えたら、変な子だと思われちゃうかもしれない。
「そうか……。そんなに……」
魔理沙はうつむき気味に、
「紅茶が好きだったのか……」
そっちじゃない!
ホントにフツーのマリアリだなというのが感想です。んー、でもこれはこれで完全なのか。
あと、コメ返しは別に義務ではないので気に病む必要はないかと。
>5様
私のセンスは古いとよく言われます(キリッ(帰
す、スミマセン……。
>11様
にょんにょにょーん。
>13様
普通過ぎましたか……。
私も起伏が乏しいと思ったんですよね……orz
コメ返は義務じゃないんですか。
あー……。でもなんかしないと申し訳ないです><;
>19様
∑し、しまった! 書けばよかった!(ぉぃ
>ずわいがに様
ありがとうございますw
ここは私も自信がありまして(ぉ
それではっ。