Coolier - 新生・東方創想話

霧雨魔理沙には野菜が足りない。

2010/03/05 15:15:10
最終更新
サイズ
2.93KB
ページ数
1
閲覧数
1300
評価数
7/23
POINT
820
Rate
7.04

分類タグ


「そうだ、野菜を食おう。」

 唐突にそう呟いたのは、魔法の森に住む白黒の魔法使い・霧雨魔理沙。
 自称『普通の魔法使い』だが、そう呼ぶ人間はまずいない。
……魔理沙の知り合いに妖怪変化の類が多いのは事実だが、決してそういう問題ではない。

「最近実験で調子が出なかったり、どこに何置いたか忘れちまうのは、きっとビタミン不足が原因に違いないぜ。」

 言うが早いか、早速台所に立つと包丁をくるりと回す。
 一人暮らしが長いので、調理器具の扱いも慣れたものだ。

「確かこの辺に人参とほうれん草があった筈……お、ごぼう発見!こりゃきんぴらにするのがいいかな……」

 年中散らかりっぱなしな霧雨家の備蓄食材には、便利な腐敗防止の魔法がかかっている。
 なので、研究に没頭して買い出しを忘れてしまったり、逆についつい物を買いすぎて何を買ったか忘れてしまっても大丈夫。
 結構複雑な魔法だが、いつだったかの夜を止めた魔法に比べれば大したことではない。

「はじめちょろちょろ中ぱっぱ~♪。後は、カツオダケで出汁をとって……っと。」

『あっ』という間にご飯を仕掛け終えた魔理沙は、次の作業に取りかかる。
(自称)幻想郷最速は伊達じゃない。といったところだろうか。
 因みに、『カツオダケ』というキノコの名前は「良い出汁のとれるキノコだから、今日からこいつの名前はカツオダケだぜ!」というなんとも単純な魔理沙の命名からきていたりする。

“ザクッザクッ……トントントントントントン……”

 その魔理沙の手によって、ごぼうに人参、多種多様なキノコ類がどんどん切り分けられていく。
 普段の『弾幕はパワー』のような発言とは裏腹に、野菜の断面は長さ・幅共にきれいに揃っている。
 もしかすると、案外繊細なところがあるのかもしれない。

「よっ!……ほっやっはっ……とぅ!」

“ジャッ……ザッザッザッ……ザッ!”

 あとは、ゴマ油をひいたフライパンでごぼうと人参を炒め、醤油・砂糖・出汁を少々加えて味付けすれば……

「ふーっふーっ……シャクッ……んぐんぐ。
流石は魔理沙さん。思わず、一合しかご飯を炊かなかったコトを後悔してしまうほどの出来だぜ。」

 美味しいきんぴらの完成である。小鉢に盛って軽く白胡麻を散らしてやれば、食感・味・見栄え全てが満点の出来だ。

“シューッ!シューッ!シューッ!”

「お、飯もあと少しで炊き上がりか。我ながら完璧なタイミングだぜ。」

 ご機嫌にそう呟いた魔理沙は、味噌汁の最後の仕上げ、味噌溶きに取りかかる。
 味噌汁の具は、たっぷりのキノコと人参、ささがきごぼうだ。
 様々な食感と人参の赤が目にも嬉しい、具だくさんの味噌汁である。
『多重操作の同時進行は魔法使いの十八番!』とばかりに、いつの間にか完成していたほうれん草のおひたしを添えて一汁二菜。
 主菜こそ無いものの、一人暮らしの栄養不足を補ってあまりある豪華な食事だ。

「和食派魔理沙さんの、渾身の力作。独り占めだなんてもったいないな~♪……あ゛!!」

 出来上がった料理をお盆に乗せて、ご機嫌に鼻歌を歌いだす魔理沙。
だが次の瞬間、その足は床に落ちていた空き瓶を見事に捉え、つるりと滑った身体はお盆ごと宙を舞った。

「あっちゃー……そういや、部屋の掃除が途中だったのを忘れてたぜ。」

 華麗な後方二回宙二回捻りを決めながら落ちていく『渾身の力作』たちをスローモーションで視界に捉えた魔法使いは、自身も落下しながらそうぼやくのだった。
 霧雨魔理沙が家の掃除を始めてから、僅か二時間後の出来事である。
 みなさん二度目まして。クロスケです。
 何か他にするべきことがある時に握る包丁って、どうしてあんなに軽いんでしょうね?

※コメントでの指摘をもとに、作品を一部改変。貴重なご意見、ありがとうございます。
クロスケ
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.430簡易評価
5.30賢者になる程度の能力削除
んー、なんか投げやりな感じを受ける。
作品に雰囲気が感じられないのかも。
俺にはそう感じた。
7.30名前が無い程度の能力削除
タイトルが生かされていないなー
野菜が足りない。→じゃあ食べる。
これじゃあなんか物足りない。

あと部屋が大惨事になっていることをもっと上手く使ってオチれたらなぁ、と思いました。
9.50名前が無い程度の能力削除
掌編として小さく纏まりすぎている感じがしました
もう少し、意表を突くオチなら楽しかったかも?
でも料理をする描写が可愛かったです
12.70不動遊星削除
非常に簡単な作品ですね。野菜炒めのようなシンプルさ。悪くはないと思いますが……如何せん単純明快でありすぎると思います。端的に言えば、短い・軽い・薄いといった所でしょうか。「シンプル・イズ・ベスト」は確かですが、これでは尺が足りなさすぎると思います。内容も料理するだけ。善し悪しといった所でしょうか?そして、メッセージを感ずるべきタイミングがない。
この作品の行き着く場所をどこにさだめていますか?作品の主題はなんですか?料理だとすれば、料理の内容なのか、料理する魔理沙なのか。コメディならオチをどうひねるか?ヤマ・オチ無しにするにせよ、注視点がぶれている。そこに少し気を付けて書かれては如何でしょう?
頑張って下さい。では。
13.60名前が無い程度の能力削除
なんだか中長編、もっと言えば短編の導入で終わってしまったという気がします。
料理するだけの作品。それ自体は全然ありだと思いますが、いかんせん描写が少ない。
こういう題材なら、もっとこちらの腹が減るくらい料理を描いてほしいです。
でもきんぴら食いたくなったのでこの点数で。
16.80○○●削除
料理を作ろうとしたきっかけから料理を持ったまま転ぶまでの流れは
良かったのですが、転んでからの描写が圧倒的に少ない。
それがすごくもったいなかった気がします。
最後にもう一つ何か付け加えられれば尚良かったように思えます。
文体とかは特におかしいと感じるとこはなく
すらりと読み終える事が出来たし
途中のカツオダケなどの小ネタなど良かったので
次作も是非期待してますね!
17.無評価クロスケ削除
 まずは、拙作をお読み頂きありがとうございました。
 早速ですが、コメント返しをさせて頂きます。

>>賢者になる程度の能力さん
 厳しいご意見、ありがとうございます。投げやり、ですか……精進します。

>>7さん
 こちらも厳しいご意見、ありがとうございます。意見をもとに、オチを改善(改悪?)してみました。
 もっと、切れ味のあるオチを目指したいです。

>>9さん
 これまた率直な意見を、どうもありがとうございます。
 今回は『出来るだけぐだぐだせず、すっぱりと落としてみよう。』という試みだったのですが、『小さく纏まりすぎ』とは。勉強になります。
>でも料理をする描写が可愛かったです
 ありがとうございます。このシーンは割とノリノリで書けたので、そう言って頂けるととても嬉しいです。

ここから3/6追記分。
>>不動遊星さん
メッセージ……強いていうなら『もっともらしい言い訳して逃げないでやるべきことをやろうぜ。』という(主に、いつもだらしない自分に向けた)ものでしょうか。
正直、今まであまりそういうことを考えたことがなかったもので……新しい視点に困惑していますが、次回からはそのあたりももう少し意識してみます。

>>14さん
>もっとこちらの腹が減るくらい料理を描いてほしい
『料理の美味そうな話には名作が多い』を持論として掲げる私にとって、『料理を美味しそうに書くこと』はこの作品で結構重要なポイントでした。
……そう言う割には、自分の経験不足で薄い描写しか出来ず、このような感想を頂いてしまったことが悔しいので、いつかリベンジしたいです。
>でもきんぴら食いたくなった
っしゃあ!ありがとうございます!!

>>○○●さん
>転んでからの描写が圧倒的に少ない。
>最後にもう一つ何か付け加えられれば尚良かった
ここに関しては、>>7さんの意見をもとにオチを変えてみたのですが、そのとき『例え空想のSSの世界でも、食べ物を粗末にしたくない。』という思いが働いて、どうしても決定的な描写は避けたかったのと、
もともとyuzさんの『阿求の華麗なる昼下がり』のような、『それまでの雰囲気を、ラスト数行でひっくり返す』作品を書きかったのとで、出来るだけ短く(私なりに)切れ味の鋭いオチとしてこの形に落ち着いたのですが……
うん。どうみても自分の力不足に対する言い訳ですね。精進します。
>次作も是非期待してますね!
ありがとうございます!期待に応えられるよう、頑張ります!
18.70ずわいがに削除
あ、これは良いですね、まさに掌編って感じがしました!

やっぱ料理する前にちゃんと掃除を終わらせとくべきだったなww