Coolier - 新生・東方創想話

それは小さくて大きな一歩

2010/03/05 09:54:56
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このお話は『銀と紫』の続きとなります。

このお話のみでもお楽しみ頂けますが、

そちらの方を先に読んで頂いた方がもっとお楽しみできるかと。



















魔理沙たちが動物になって早一週間が経とうとしている。

未だに見た目は最初と全く変わってはいなかったが、

精神的には大きく変わってる者がいた。

まず特に目立つのが神奈子だ。

動物になるまでは、

サバサバとした大人としての振る舞いのある女性であったのに、

動物になってから副作用でなのかは知らないが、

少しだけ幼くなったようにも見える。

それに変わり魔理沙は動物になってから、

何を思ったのか急におとなしくなった。

霖之助自身何をしたというわけでもないので、

彼にはまったくわからない。

それに加え、対処がまったくできないという点が

一番大きいと言える。

原因、経緯、そして対処法が全くと言っていい程分かっていない。

分かっているのは精神的に影響が出ることと、

神奈子たちの他に動物になってる者がいないということだけである。

「…どうしたものか…」

霖之助は一人、庭を見て考える。

(神社に篭りきりだからあまり強くは言えないが、

 早苗が言うには他にはいないそうじゃないか。

 ということは感染源は押さえたのか…?)

「――霖。香――」

(いや、まだなっていないだけということもあるし、

 ならないとは言い切れない。八方塞か…)

「香霖!」

突然の魔理沙の叫びに驚き、眼鏡を落としかけた霖之助。

「魔理沙か。驚かさないでくれるかい」

「さっきから何度も呼んでるんだけどな。飯にしようぜ」

金色の小さな頭が、居間の方へ振り向く。

目を向けた先には、早苗が料理を運んでいた。

「すまないね。じゃあ食べようか」

居候でありながら、上座へと尻を落ち着かせる。

最初、霖之助もこれについて何度か話したが、

二柱の二人は、動物になってるので別段気にしないとのこと。

それでも、と霖之助は言うが、のらりくらりと流され

終いには、霖之助自身も言うのを止めた。

とは言え、

毎回というわけではないので、席に関しては本当にどうでもいいのだろう。

それと、霖之助が座ると同時にちょこんと神奈子が申し訳なさそうに座る。

ちょこんとは言っても、大きさは座った霖之助とそう大差はないので、

どしんと言ってもいいのだが、彼女の事を考え言い換えさせてもらう。

そして、小さく口を開けると霖之助が運んでくる食事を楽しみにする。

最初は、色々と言っていた早苗も見慣れた風景となり、

もはや何も言わなくなった。

それでも、やはり神奈子からしてみれば恥ずかしいのだろう。

動物の顔なので、分かりにくいが確かに顔を赤くしている。

「ほら、あーん」

「あ…ん」

ドレッシングがかけられたサラダを、静かに彼女の口へ運ぶ。

「美味しいかい?」

「ああ、さすが早苗だね」

これが犬の姿じゃなかったら、さぞかし熱々な絵だったろう。

「早苗、早苗」

同じく動物になった諏訪子も、何に対抗してるのか。

「あれ、私にもやって」

早苗の服をちょこんと引っ張り、あーんを要求する。

「あ、はい。では、あーん」

「あーん♪」

うれしそうに目を細めて体いっぱいに美味しさを表現する早苗。

「腕上げたね」

「そうですか?ありがとうございます」

褒められた早苗も、やはり嬉しいのか幸せそうに微笑む。

文章では、魔理沙はあまり出てきてないが、

寂しそうに一人で食べているのかと言えばそうではない。

「ほら、魔理沙。あーん」

「あ、ああ。あーん」

神奈子ばかりに構ってるわけではなく、

ちゃんと魔理沙にも気を配っているのだ。

もちろん、神奈子がいい顔をしないが。

ぶすっとした顔をして、

「私にも」

と、まるで子供のように要求する。

毎回のお約束というか、暗黙の了解で、

霖之助は二人が食べ終わるまで、自分の分を食べることができない。














昼食も終わり、

夕食までの間、自由な時間となる。

もちろん、霖之助は何かあってはいけないので

軽い軟禁状態にはなる。

毎日神社だと飽きてくるのか、

同じ本を何度も何度も読み直し、

そして最後には寝るだけになってしまった。

魔理沙や神奈子も動物としての本能があるのか、

昼食を食べてから、すぐ寝てしまった。

二人とも穏やかな顔をして、

魔理沙は胸の上、神奈子は膝の上でぐっすり眠っている。

動物になってはいるが、その光景はもはや家族である。

春の午後の暖かい日差しが差し込む中、

5人の寝息だけが響いたとさ。
















さて鴉が鳴き始めた午後5時頃。

さすがに夕飯の用意があるので、早苗は買い物に

霖之助も何もしないのはいけないと、マキ割りに外にでた。

諏訪子は早苗について行ったので、ここにはいない。

魔理沙と神奈子も起きたのか、ぼーっと霖之助の割る姿を眺めている。

そこで、ふと神奈子は

「ねぇ、魔理沙。店主のことどう思う?」

と、聞いてきた。

「どうって…。いつも店に引き篭もって、

 本ばっか読んでて、ちょっと変な奴だろ」

「じゃなくて、好きかどうかってことだよ」

淡々と言ってはのけたが、神奈子もほんのり赤くなっている。

「…分からん」

「…そうかい」

神奈子自身も霖之助を好きかと問われると、

即時に答えれる程よく分かってはいなかった。

確かに好きか嫌いかの二択だと、好きに入るだろう。

だが、その好きが人(神)としてなのか、

それとも友愛的なものなのかは、判断が着かない。

「お前はどうなんだよ」

「私も分からないね」

二人同時してため息をつく。

そしてその後霖之助がマキを割り終えるまでの間、一言も喋らなかったと。













早苗たちが帰宅し、夕飯の準備に取り掛かると、

霖之助も戻ってきた。

霖之助は、神奈子の後ろに座ると、

持っていた櫛で、彼女の髪の毛を梳かす。

「んふー♪」

無意識でなのか、変な声が口から漏れる。

でも、気持ちいいから仕方ないと漏らすのを我慢しようとしない。

霖之助も気にしないのか、いくら声が漏れようとも止めようとはしない。

「香霖。たまには私にもしてくれよ」

珍しく、魔理沙も彼に甘えてきた。

「今はまだ私の番だから、我慢することだね」

と、魔理沙に言うとまた気持ち良さそうに目を細める。

「らしいから、もう少し待っててくれるかい」

「あ、店主。もう少し強くしてくれるかい」

「はいはい」

言われた通りに強くすると、ぴこぴこっと耳が動く。

もう少しとは言ったが、実際終わるまで十分ぐらいしたそうな。







「次は私の番だぜ」

さあと言わんばかりに、霖之助の膝の上を陣取る魔理沙。

「別にいいけど、櫛で梳くには短すぎやしないかい」

「だから、櫛はいいから撫でてくれよ」

ほれっと言って頭の部分を指差す。

「やれやれ」

猫特有のごろごろと喉がなる。

魔理沙も気持ちがいいのか、時間が経つにつれ、

体がだんだんと横になっていき、

終いには、霖之助の膝の上で寝転がる形となった。

神奈子はこれに不満を覚えたが、

自分の番はもう終わったので、何も言うことはできない。

結局、夕飯ができるまでの間ずっと撫でてもらったらしい。

















夕食も終え、風呂の時間となる。

最初に早苗と諏訪子と魔理沙が入り、

後に神奈子と霖之助という形となる。

やはり、早苗も女の子。

入浴時間が長いこと、長いこと。

1時間経ってやっと髪を洗い始めたぐらいだ。

寝てたんじゃないだろうかと霖之助は本気で思ってたりする。

早苗たちが風呂から上がってきたのは、

それから更に40分過ぎた頃だった。

「次いいですよ~」

緑の髪を湿らせた彼女はどこか色気を含んでいる。

僅かの時間であったが、見惚れていた霖之助に

神奈子の犬パンチが決まったのは言うまでもない。








何度入っても恥ずかしいのか、

入る時は、神奈子がそそくさと先に入ってしまう。

まぁ、服を着ていないので当たり前と言えば当たり前だが、

どこか顔が赤い気がしないでもないとは霖之助の談。


浴槽に入る前に体を洗い、汚れを落とす。

「背中終わったから、前を向いてくれるかい」

神奈子にとってここが一番つらい所である。

少なくとも異性と認めている霖之助の裸を近くで直視するのだ。

鼻血するとまではいかないが、なかなかの刺激である。

霖之助自身魔理沙で慣れているため、そんな気は一切ないが。

もちろん、タオルはしている前提です。

まず喉元を擦り、そこから少しずつ下へと下がる。

胸の部分で脇に行き、そこから腕へと移る。

腹の部分から、足へと行き尻尾を擦る。

これだけの行為をするのに数十分かかる。

なぜなら、

「神奈子…。腕をどいてくれないか…」

「いやいや店主。あとは自分で洗うから」

一部の場所を洗うのに、神奈子が頑なに拒むからである。

どことは言わないが。

「自分じゃ洗えないだろう…」

「犬を舐めてもらっちゃ困るねぇ」

とは言ってるが、片手でつかむことができず

両手になってしまい、洗うことはできない。

「うぅ…じゃあ洗っていいけど…他の所は触っちゃだめだよ?」

「分かった分かった」

霖之助は持ったスポンジでその一部の場所を洗う。

「んう」

「変な声は出さないでくれると助かる」

「分かってるけど…ひぅ」

声だけ聞けば、鴉天狗の良い餌になるだろう。








長く続いた洗体時間も終え、

あとはゆっくり入るだけである。

そして神奈子は魔理沙に聞いたことをそのまま霖之助に聞いてみた。

「店主。店主はす、好きな人とかいるのかい?」

「僕かい?今の所はね…というかこれからもいないだろうね」

いないという言葉を聞いて、少しだけ落胆する。

「理由を聞いてもいいかい?」

「知っての通り、僕は半妖で中途半端な寿命だ。

 人間よりは長生きするが、妖怪よりは短命だしね。

 もし好きな人ができて、恋人或いは妻にでもしたら、

 その人を悲しませるだろ?だから…ね」

霖之助の考えを聞いて、

「それは違う」

と、言いのけた。

「違うとは?僕のこの考えがかい?」

「そうさ。確かに店主は中途半端だし、

 人又は妖怪を悲しませることになるかもしれない。

 でもだからって店主の事を本当に想ってる人が、

 悲しいという感情だけが残るわけではないだろう?

 それが恋人や家族ならなおさらだ。

 確かに悲しいという感情が大きいのかもしれないけどさ、

 私からしてみれば、大好きな人と一緒に同じ時間を生きたんだ。

 私は、悲しいと同時に幸せだと感じるよ」

神奈子が喋ってる間彼は何も言わず、

何か考えてるようだった。

「確かに君の考えも尤もだ。

 けど、その人を残して居なくなるというのは、

 できるならば、させたくない。

 悲しい思いをさせるなら、最初から何もなければいい」

「それが違うというんだ。

 例え一人で死ぬにしても、悲しいことには変わりはないだろ?

 それなら、一緒に暮らして笑って、泣いて、怒って、楽しむ。

 そして目の前で静かに眠る。それがいいんじゃないのかい?

 私が店主の妻なら、笑って店主を見届けるだろう」

すると、霖之助も口を開かなくなった。

「今はまだ急ぐ話じゃないし、店主を困らせたことは謝る。

 けど、私が言ったことは覚えててほしいんだよ」

そう言うと、神奈子は一人で浴場を出て行った。

















先程の話もあってか、霖之助と神奈子の間に会話はなかった。

というか好きな人の話からなんで寿命という重い話にしたのかと

神奈子は一人後悔する。

そして寝る時間となった。

こういう時に、隣同士というのは中々きついものがある。

辺りはもう闇の中。

神奈子は寝付けないのか、すっと首を上げる。

「店主」

小さく名を呼ぶ。

「なんだい」

霖之助も小さくそして短く返事をする。

「さっきはすまなかったね」

と、神奈子が言うと彼は彼女の顔を見て、

「気にしないでいい。僕も自分勝手な事ばかり言ってたね。

 君の言い分も正しい所はあると思うよ」

と、囁いた。

「…嫌ってないのか?」

神奈子は小さく問う。

「寧ろ逆なのかもしれないね」

「えっ?」

神奈子は驚いて聞き返すが、もう霖之助の返事が返ってくることはなかった。

「…ばか」

そういうと神奈子は霖之助の腹の辺りへ行き、

顔を胸に押し当てる。

「おやすみ」

と囁くと、

「おやすみ」

とだけ返ってきたそうな。
お久しぶりです。

前回のはちょっと技量ミスでした。

アドバイスしてくれた方、返信できずにすいません。

久しぶりの動物シリーズです。

次あたりで最終かな?

今のところ次のシリーズは考えてません。

みなさんに満足していただけるよう頑張ります(`・ω・´)

ではまた。
白黒林檎
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コメント



0.1930簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
しんみりしますが良い話ですねぇ…。
しかし…エロい。湯上がりむんむん早苗さんとか、一人と一匹でお風呂とか…
7.60名前が無い程度の能力削除
後半の神奈子と霖之助の会話はぐっとくるものがありました。
>好きな人の話からなんで寿命という重い話にしたのか
これはそもそも霖之助から言い出したことなので、神奈子はそれほど気に病む必要はないかな、と思いました。

技量ミスというか…そもそも技量ミスってどういう意味ですか?
技量は有無であって、ミスするしないというものではないでしょう。
一度出した作品は改変しない主義なのかもしれませんが、皆さんを満足させたいならこれまでの作品をより良くする気はないのかと。
9.無評価名前が無い程度の能力削除
うーん、いい加減に自己満足から卒業したら如何でしょうか?
11.60名前が無い程度の能力削除

需要がある人にはあるし、作品の掲載は個人の自由。
だから、それを言ってはいけないと思う。

ただ、霖之助のハーレム作品を苦手とする人もいるから、
タグに「ハーレム」、「糖尿病注意」、またはその類の単語を追加して欲しいとも思う。

それと香霖コ○ス。
14.80名前が無い程度の能力削除
店主ハーレム誰得?



俺得だ!!ヒャッホーイ!!
17.80賢者になる程度の能力削除
色々言われてますが、作者が好きなように書けば良いと思います。

タグに、キャラ崩壊、簡単な注意を付けとけば、嫌いな人はスルーするかと。

内容的には、最初魔理沙がメインだった気がするので、少々違和感があるかなと。
楽しいから気にしないですがねw
21.100名前が無い程度の能力削除
誰が得するんだよ


俺もだよ
52.100名前が無い程度の能力削除
俺も得するな
逆に百合ちゅっちゅの方が損するわ