Coolier - 新生・東方創想話

虎柄の種

2010/02/22 19:14:57
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これは、ある初夏の日のお話。
「ん~、確かこの辺のはずなんですけど…」
そう呟きながら、辺りを見回して歩いているのは、寅丸星である。
ここ幻想郷に広がる広大な草原を歩きながら、彼女はある物を探していた。
「あっ、ありました! ようやく見つけたぁ…」
彼女が探していたもの、それは目の前に広がる黄金の大地。
向日葵畑である。
「さて…、それでは早速収穫に移りますか!」
だが、意気揚々と駆け出した彼女の足に一本のつたが引っ掛かる。
「うにゃっ!」
初っ端から派手に転んでしまった。
「いたたた…、あっ!」
見ると、転んだ拍子に数本の向日葵が星の下敷きになってしまっていた。
「あわわわわ…、どうしましょう…。と、とりあえず種だけでも…」
慌てながらも、倒れてしまった向日葵から種を採ろうとする星。
すると、
「あら。貴女そこで何をしているのかしら?」
「!?」
星が驚いて振り返ると、そこには日傘を差した緑髪の女性がいた。
ここ向日葵畑の主、風見幽香である。
「人の向日葵畑に無断で入り、さらに向日葵を3本も倒しておいて…。挙句には種を盗んでいこうなんて、図々しい泥棒ね」
「えっ! ど、泥棒!? 私がですか!?」
「まさか盗みの自覚も無いなんて。ここが誰の向日葵畑だと思ってるの?」
幽香は倒れた向日葵を起こし、枝で作った即席の支柱に固定しながら言う。
「ここの向日葵は、全部私が育てたのよ」
「そっ、そんな…。私はてっきり自生しているものだと…」
星はオドオドしているが、そんな彼女などお構いなしに、幽香は倒れた向日葵を起こそうとする。
そして、木の枝を星に差し出しながら、
「ほら、あなたも手伝いなさい。自然を壊してしまったら、ちゃんと治すのが私たちの義務よ」
「え…、はい」
「全く、最近は妖精やら何やらもこの辺で暴れまわるし…。参っちゃうわ」
幽香は憂鬱そうな溜息をつきながら呟く。
「本当にここの向日葵を大切にしているんですね。やっぱり家族みたいなものですか」
「それもあるけれど、植物を大切にするという事は、自然を大切にするという事。自然を大切にする事は、幻想郷を大切にすることに繋がるのよ」
そう言いながら作業を終えると、幽香は星に問う。
「そういえば、なぜ貴女はここに来たのかしら?」
「ええ、実は…」
星は手にしている向日葵の種を見ながら言う。
「以前私たちのお寺に来た人が見せてくれたんです。くるくる回る滑車の中を、一生懸命走る小さな鼠を」
「ふぅん。でも、なぜそれがここに来る事に繋がるのかしら?」
「その人が言っていたんです。こいつらは向日葵の種が大好物なんだ、って」
「うんうん」
「で、その滑車の中を必死になって走っている姿をみて思ったんです。私の部下もこの鼠みたいに必死になって働いてくれてるって」
星は空を見上げながら、自分に言い聞かせるように言う。
「私も彼女に苦労をかけすぎてるし…。たまには美味しいものを食べさせてあげようって。それで、ここの向日葵畑の話を聞いて…」
「向日葵の種を採りに来たってわけね」
幽香は一息つき、星に言う。
「つまり、貴女の部下はハムスターって事ね」
「えっ、は、はむすたー…?」
「何? 貴女もしかしてハムスターを知らないでその話をしてたわけ?」
幽香は呆れたように訊く。
「あのねぇ、向日葵の種を好んで食べる鼠っていうのはハムスターの事よ。貴女の部下の種族はハムスターなのかしら?」
「えっ、そんな…。それじゃあ私の苦労は一体…」
星は思わず泣きそうになってしまう。
それを見た幽香は、
「ま、まぁ例外があるかも分からないし。向日葵の種だって調理の仕方によっては結構いけるようになるのよ?」
「ほ、本当ですかぁ…?」
「本当よ! お酒の肴にもうってつけよぉ! ちょっとしたトッピングにもなるし、向日葵の種を甘く見ちゃ駄目よ?」
「え、じゃあ…。ナズーリンも喜んでくれるでしょうか…?」
「大丈夫、きっと喜んでくれるわよ!」
幽香の必死のフォローのおかげで、星は次第に笑顔を取り戻していった。
「その種は持って帰って良いから、早くその部下に食べさせてあげたら? でも、探し物をする時はしっかりと調べてから来る事ね。うっかりミスで全て水の泡なんて洒落にならないわよ?」
「そ、そうですね…。もううっかりしないようにしないと…」
そう言うと星は、元気良く走り出して行った。
「それじゃあ、ありがとうございます!」
星は向日葵畑を駆け出していった。
その直後、地面にあった小石に足を躓かせ派手に転んでしまった。
「本当に大丈夫かしら…?」
幽香はそんな星を見ながら、つくづく思うのであった。

命蓮寺に帰った星は、早速ナズーリンの所へ行く。
「ほら、ナズーリン! 見てください、この沢山の向日葵の種を!」
「あらぁ、星。そんなに沢山どうしたの?」
近くにいた白蓮が訊く。
「向日葵畑で貰ってきたんですよ。ナズーリンが好きだろうと思って」
「へぇ、わざわざ向日葵畑まで…。ご主人ってそんなに活動的だったっけ?」
「きっとナズーリンの為だと思って、一生懸命探す事が出来たのよね? 偉いわぁ、星」
「いやぁ、それほどでも…」
星は照れを隠すことなく、満面の笑みを見せた。
「それにしても凄い量だ。ありがとう、ご主人」
「それじゃあ、早速料理しましょう!」
星が種を持って台所へ向かおうとした時だった。
「でも、流石に向日葵の種だけじゃあ物足りないわね」
「そうだなぁ…。そういえば、この前新聞に書いてあったチーズ。あれ美味しそうだったなぁ」
「あの牛乳から作るおつまみの事かしら? 確かに魅力的だったわねぇ」
「鼠はあのチーズが大好きなのさ」
その時、星の脳裏にある場面が浮かぶ。
それは、数日前。
「…外の世界では、猫に鼠を狩らせていたらしいよ」
「えっ…、猫にですか?」
「そうそう。でも、猫の居ない家庭では、こうやってチーズを仕掛けて、鼠をおびき出していたらしい。これがその時の仕掛けさ」
「ふむふむ、ここで鼠を挟むわけですか…。何か嫌ですね…」
「まぁ、あなたの所の部下は鼠だからね。それに、こんな物は正直ここでは必要ないだろう。珍しいだけで使い道が無いという事さ」
「でも、参考になることは色々ありますね」
(そういえば、あの時「ちーず」がどうとか…)
ガタッ!
いきなり星は居間に戻ってくると、
「聖、ナズーリン! 待っててくださいね!」
そう言うと凄い勢いで寺を駆け出していった。
「星…、どうしたのかしら?」
すると次の瞬間、
「うにゃっ!」
外から星の声が聞こえた。
「どうやらまた転んだみたいだね」
「あらあら…。あんまり慌てちゃ駄目よって言っているのに」

その後、星がチーズを探して三日三晩あても無く幻想郷を歩き回るのは言うまでも無い。
星と幽香の絡み
この2人は書いた事無かったので、色々と難しかったです
星ちゃんはうっかりキャラ
ゆうかりんはSな感じにしようか悩みましたが、結局優しいゆうかりんに

至らない部分も多いとは思いますが、感想・辛口評価お待ちしてます
天森ゆーき
[email protected]
http://tiramisu1028.blog103.fc2.com/
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コメント



0.800簡易評価
14.10賢者になる程度の能力削除
地の文が少なく、状況が解りづらい。

会話文も読みづらかったかな。
19.無評価名前が無い程度の能力削除
コメ返しするかどうかは作者様の自由とは思いますが、辛口評価は待ってるだけなのでしょうか。
前作にも色々意見が出ていたかと思いますが。

まあとりあえず、上手い作者様がどれだけ情景描写、心理描写に力を割いているか学んだほうがよろしいかと。
20.30葉月ヴァンホーテン削除
夏や向日葵畑なんてのは情景描写の宝庫です。地の文で5W1Hを描くことに慣れた方が良いです。
最初はしつこいくらいに「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どうして」「どうやって」を書く。まずはそれを習慣づけます。
それで慣れてきたら徐々に、自分が必要ないな、と思うところをけずっていけばいいのです。

それから、優しいゆうかりんは好きですが、どうにもキャラがぶれているというか、違和感がありました。
恐らくエクスクラメーションの使いどころが間違っているのだと思います。
地の文も大切ですが、台詞もその場に合った台詞を。難しいですけどね。
描写が上手くない私が、少しでも上手く見せようとするとっておきのテクなんかもあるのですが、余り多くのことを書いても、一気に全部習得するのは無理ですね。それはまたの機会にでもー。

長文失礼しました。
22.70ずわいがに削除
思いやりがあるのは良いけど、まずはうっかりを治さんとなww
……と、リアルうっかり人間の俺が言ってみる