Coolier - 新生・東方創想話

正直の副産物

2010/02/22 15:11:31
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冬のある日の雲ひとつない夕方。魔法の森の上空に魔理沙はいた。
彼女は博麗神社からの帰りであり、この日は彼女にとってライバルである博麗霊夢から白星を奪った日であるためか、幾らか意気揚々とした表情で箒にまたがりながら口笛を吹きつつ自宅を目指していた。
現在、彼女の所からは霧がかかった湖、冬の寒さのせいかどうも人の流れが少ない人里、そして人形遣いが住む家が見渡せる。
(いや全く、寒いったらありゃしないぜ。手袋でもしてくれば良かったな。
しかし、私の家に手袋なんぞあったか?いやあるにはあるだろうが探すの
はかなり面倒だ)
寒さを和らげるために彼女はスピードを落としたが、それでも寒いためか一回身震いをして箒から手を放し、両手を合わせ、息を吹きかけた。
(しょうがない明日にでもアリスの家に行って手袋を作ってもらうか。ア
イツにはそういうのがよく似あうし、なんだかんだ人の頼みには弱い奴
だからな)
そんなことを考えつつ自宅へ着いた彼女はいつもより気分良くドアを開け、いつもより気分良く寝る準備をして、いつもより気分よく寝た。



翌朝、彼女の気分はまだ優れているようだ。
その証拠に彼女は手ぶらで行けば文句の一つは言われるだろうと思い、実験向けの薬草を持っていくことにした。
冬の早朝かつ冬でも鬱蒼とした魔法の森には日光は届かず、前日は晴れていたため寒さは際立っている。
そんな寒さのなかわざわざかじかんだ手で薬草を集めていた。
(私としてはキノコにしたいところなのだがどうも反応がよろしくないん
だよなアイツ、キノコならたくさんあるんだが。それにしても私が人に
気を使うなんて我ながら珍しいことだぜ。立派だぜ。だがそんなことよ
りも考えるべきことは手袋の色だな。黒か?それとも白?いやいや妥当
に白黒二色か?だが手袋まで白黒はなぁ・・・)
手袋のない手で薬草を集めること数十分、手は汚れたがだいぶ集まった。
珍しいのも幾つか。
もちろん珍しい物は自分の物にしてしまう。
ちょうど魔理沙は薬草全般を切らしていたところだったのでむしろ自分の為に集めていると言っても過言ではない。
そのためアリスに渡すものは必然的によく見受けられるものになる。
そうしてもういいだろうと腰を上げると目の前の茂みに何やら膨らみのある袋が落ちている。
だいぶ前からここにあったのであろうか土や雨やらのおかげでだいぶ汚れている。
もちろん魔理沙がそのようなもの見過ごすはずもなく、手に取り中身を確かめる。
中にはラベルが剥がされた跡があり隅にはサビがこびりついている缶それと防水がしてある袋があった。
缶の中には緑茶の茶葉が入っており彼女が見た感じまだ腐ってはいなかった。
一方、袋には万年筆、十枚程度の白い紙、ピンクの紙が一枚あった。
ピンクの紙には何かが書いてあり、そこにはこう書いてあった。


 ― あなたがこれを手にしたのはなんともいえない事実です。
はっきり言えばつまらないおもちゃでしょう。しかし、使い方によっては
役に立つおもちゃになるかもしれません。
いきなり使い方の説明にはいりますと、このおもちゃは人の心知ることが
できます。
ここまで読んであなたはおもしろいじゃないかと思ったでしょう。
残念ながら違うのです。読めるのは自分の心なのです。缶の中にあるお茶
を飲んだ相手ならだれでもあなたはその人に対する自らの心が分かります。
どのように分かるのかといいますと相手がお茶を飲んだあと、一緒に入れ
られている白い紙になんでもいいので書くものを当ててください。すると
勝手に手が動きあなたの相手に対する心を書き出します。しかもその文章
はあなたにしか分かりません。誰かが見ようすると文字が虫のように紙面
を動き出します。そして一人になるとまたもとの文章となります。
ただ、お茶の効力は30分きっかりであること、文章表現に関してはあなた
と相手の立場が影響すること、一度書き出すと書き終わるまで止まらない、
これらに注意してください。それでは ―


 魔理沙はひとまずその説明書を読み、眉をひそめる。
なんて胡散臭いものひろってしまったのだろうかと思っていた。
また誰がこの落としたのだろうか?
説明書の効果を読む限り竹林に住む薬剤師が怪しいが説明書の書き方がどうも違うオーラをもっている。
でも彼女は霧雨魔理沙なのでとりあえず箒に引っ掛けることにした。
向かうべきはアリスの家なのだが、どうも先程拾った道具が気になる。
ちょっとした興味と妙に惹かれるものを感じた彼女はひとまず道具の効力を確かめるべく、自宅で茶を淹れるのに必要な道具を探して湖へ向かった。



 湖に着いた魔理沙はおおかた紅魔館から拾ってきたであろうと思われる文々。新聞を一生懸命に一人でぐしゃぐしゃにしているチルノを見つけ声をかけた。

「チルノお前、何してんだ?」

魔理沙を確認したチルノは立ち上がり腕を組みそして鼻を鳴らしてから自慢気に答えた。

「山を作っているんだよ」

「は?」

「そんなことも知らないの?魔理沙は弱いな」

チルノは得意になり、くしゃくしゃになった文々。新聞紙を広げ説明し始めた。

「この新聞紙をね25回折り畳むとなんか富士山ていう山くらいの高さになるんだよ、そして山なんかつくれるのは最強であるアタイしかいない。だからアタイがわざわざ一人で切磋琢磨しているんだよ」

その答えを聞き爆笑をした魔理沙を見てチルノは悔しそうな表情で声をあげた。

「アンタに出来るの?この最強であるアタイですらあと一歩なのに」

魔理沙は一人で切磋琢磨やどこがあと一歩なのかについてツッコミたかったがそれは面倒なのでスルーしてチルノを見て答えた。

「それは私にも無理だな。25回もきっと折れんし、多分いや確実に山の高さにはならん。富士山とやらは砂山のお友達なのか?まぁそれより誰に聞いたんだその話?」

「橙だよ」

魔理沙はその言葉に反応しようとしたのだが

「橙が藍から聞いたって言ってた」と続けた。
それを聞いた魔理沙は急に分が悪くなった。
(あの藍が橙に嘘をつくとは思えんし紫なら話は別なのだが・・・これは本当なのかもしれん。)
そういう訳で魔理沙は話を逸らすべくお茶の話を出した。

「それよりもお前、お茶飲みたくないか?正体不明の珍しい茶があるんだ。最強であるお前ならこれがなんであるかなんてすぐに分かるよな」

「当たり前だろう。そんなことも分かんなきゃアタイじゃないよ」

「そういうことだ。お前は氷を作ってくれ。それを溶かしてお湯にするんだ」

 そうして寒空のもと魔理沙はチルノが作った氷を器にいれ、ミニ八卦炉をとりだし火にかけた。
周りには冷たい風を防ぐものはなくは魔理沙の顔や手先は少々の赤みと白さが広がっていた。
そして手のひらを火にかかげ暖をとった。
手の平に熱を感じるがやはり寒い。
一方チルノは座り込んで風が吹く度に少し揺れる火の様子見ていた。
しかしすぐに飽きるとどこからか小枝を持ってきては火をつけていた。
火がチリチリとついた枝を顔の前にもってきながらどこか感心した様子で魔理沙に話かけた。

「魔理沙って意外にこんな器用な真似ができるんだね」

「私を褒めているんだろうがどちらかというとこれを作った奴のほうが凄いかもしれんな。私には強力なパワーがある。しかしこういう細かい感じのことは少しでも力があれば出来ることだ。それを表現できるコイツが凄いんだよ。まぁ使う奴がいてこそ道具であるわけなのだが。それよりもどうやらお湯が湧いた。さぁ飲むぞ」

お茶の味に関して魔理沙はおいしくもなく、まずくもないと思った。
だがこの寒さの中、湯のみから手のひらへ伝わる温かさと口に含んだ時に伝わる緑茶の落ち着いた感じは悪くなかった。
しかしチルノは火傷するなよと魔理沙に言われたのだがいきなり飲み、舌を火傷した。
チルノは言われたのにもかかわらず火傷になったのを悟られたくないのか、涙目になりながら火傷して味が分からない状態のまま何も言わずチビチビと飲んでいた。
チルノがチビチビと飲んでいる間に魔理沙は飲みほした湯のみを地面に置き、すぐに紙と万年筆を取り出し紙に万年筆を当ててみた。すると本当に勝手に手が動き出した。
しかしすぐに止まった。
そこにはこう書いてあった。
― まるきゅー ―
(う~んなんかこれだけの文章だとどうも説得力にかけるよな。とい
うか文章ですらない。思わず本音がでたともとれなくはない。しかし
⑨だけでよくないか?)
そこにお茶をやっと飲みほしたチルノが何かおもしろそうなことをしているなという感じで寄ってきた。
すると文字は紙面を目で追えないような速さで動き出した。
(どうやらこれは本物らしいぜ。)
 魔理沙は実感した。
そのためもう用は済んだのでアリスに家に行くかと腰をあげたのだが、チルノが無理やり紙と万年筆をひったくり新しい紙面をだした。
「アタイもお絵かきする」と言い。
紙に万年筆をあてた。
案の定、チルノの意思に反して動き出した。
チルノは勝手に動いている自らの手にびっくりしているようだったがすぐに書き終わった。魔理沙は相手がどう自分を思っているか書いている途中、紙面を覗きこめば分かるかもしれないと考えたが、書いている途中の文字は手が邪魔で読めず、文字は完成したあとすぐに動き出し全く読めなかった。
ただ魔理沙には何が書いてあるかだいたい予想がついた。
(多分あれだろうな。― アタイ、さいきょう ―)



アリスの家は暖かった。
早朝というほどではないがまだ朝であるのに十分に暖かった。
それを表すかのように窓はくもっており、そのことは魔理沙にとってもちろん喜ぶべきことであった。
アリスの家に入った直後、ドアを開けてくれたアリスの言葉を無視し、すぐさま帽子を脱ぎ暖炉の前に座り込んだ。

「全く、朝から人の家にあがりこんどいて家主を無視するとはあなたは一体どういう過程を経て構成されたの?あなたの親御さんの顔を見てみたいわ。」

「朝からそんなカリカリすんなよ、朝は笑顔だよ。しかもあれだ。うちの親の顔はつまらんぞ、これは確定している。それよりもだ今日は魔理沙さんからアリスに素敵なプレゼントがあるんだぜ」

と言い魔理沙は今朝採ってきたばかりの薬草を詰めた袋をいまだ座りながらアリスにさしだした。
受け取ったアリスの顔は怪訝そのものであり、どうせ何か面倒なことを一緒にもちこんできたのだろう暗に示していた。

「そんな顔すんなよ今朝採ってきたんだぜ。確かお前この前に会ったとき薬草が不足しているって言っていたじゃないか。それを思い出した私が寒空のもと集め、新鮮なうちに届けてやろうという考えにいたったんだぜ」

魔理沙は薬草が不足しているとアリスが言ったことを思い出したと言ったが、それは湖からの帰りに思い出したのであり、別にそのことを思いだした結果、薬草を集めたわけでないことを一応ここに記しておく。

「確かに言ったけど、わざわざこんな朝っぱらからこなくても。ただ確かに全体的に薬草は不足しているし、袋の中身を覗いた感じちょうど徹夜で研究をしていて足りないのがあったから採りに行く面倒が省けて助かったわ」

(なるほどだから朝からこんな暖かいのか、それならこっちとしても
ちょうどよい。だいぶ頼みやすくなったぜ)

「そうだろ、そうだろ、そこでだな大した頼みではないんだが、手袋を1セット作ってほしいんだ。なんせ今の時期は冷えるからな」

「そんなことだろうと思ったけど、あなた前に確か手袋作りたいと言って1セットここで私と一緒に作ったのを家に持って帰らなかった?」

「残念だがそんなことはすっかり忘れてしまっているぜ。思ったが吉日、さぁ早く取りかかってくれ、デザインはすでに完成しているんだ。それと腹も減ったな」

魔理沙には全く悪びれた様子もなく、それどころかせかすような感じがあった。

「まだ何にも答えてないじゃない、それに普通に頼んでくれればもっと気分良く取りかかれるのに。」

アリスは分かるように溜息をつき、魔理沙からもらった薬草を種類別に分けるよう人形に命令したあと。
「とりあえず作ってあげるからお願いだから静かにしててよね」とだけ言い残し台所へ向かった。


現在二人はテーブルで向かいあいながら朝食をとっていた。
魔理沙は和食派であるがアリスの家では頻繁に洋食を御馳走になる。
そのため様々な洋食を食べてきたのだが、何故か主食であるパンは絶対に食べなかった。
アリスとしては自分だけが食べるのが気まずいのでそのことについて尋ねたことがあるのだが
「私はいままでに食べてきたパンの毎数を忘れないようにするためにもう食べないことにしたんだ。あのやりとりは嫌いじゃなかったぜ」と答えた。
 その答えにアリスは納得いかなかったが魔理沙の妙なこだわりだと思えばなんとなく納得出来た。
ただ納得はしたがやはりテーブルの真ん中にパンを置いてあるのに自分だけが食べるのは奇妙に思えて仕方がなかった。
 食事の間はずっと魔法に関する話である。お互いパワーとブレインという両極端な考えを持っているので話が衝突して進まないと思われるかもしれないが、両者は聞く耳を持ち、それを踏まえ、それはこうではないか、あれはそうすべきではないかといった会話がなされているのである。
そのことがお互いの盲点を突くことが時たまあるのでお互い勉強になる。
また魔理沙が聞く耳を持つのは意外だと思われるかもしれないが魔法に関しては別なようである。
ただ最終的にはパワーにであるらしい。
会話が一区切りついたとき、アリスはパンに手を伸ばした。
ふと魔理沙の食器を見るとどうやらすでに食べ終わっていた。
アリスは紅茶を淹れようかと思い、立ち上がろうとしたのだが、すでに魔理沙が立ち上がったっていた。
 「お茶いれてくるぜ」と言い魔理沙は台所へ向かった。
アリスは妙に楽しそうな魔理沙の背中を見つめながら平和なまま終わらないかなと思った。


魔理沙がお茶を淹れて戻ってくるとそこにはアリスがいなかった。
(お茶を淹れてくるって言ったのにいないとはアリスのやつ何か勘付いたか?)
 そのとき急に奥のドアが開きアリスが出てきた。
その片手にはすでに手袋が1セット握られていた。

「なんだアリス私がお茶を淹れている間にもう作っちまったのか、しかしいくらなんでも早すぎじゃないか?私が思うにいくらお前が器用でもさすがに無理だと思うが」

それを聞いたアリスは何故か少し顔に落胆の色が見えた。
しかしお茶の方に目を向けそれが緑茶であることを確認するといつもの調子を取り戻した。

「あのねぇ、普通に考えて紅茶を淹れるでしょ。なんで緑茶なの?私の家には紅茶が置いてあるでしょ。それを使えば良かったのに。わざわざ緑茶を持って来て淹れるなんておかしくない?」

「アリスたまにはな非日常的なことを味わないと人間も妖怪も腐ってしまうんだぜ、そういう意味ではなこれはお手軽でいい非日常だと思わないか?そんなことよりもだもう出来てしまったのか手袋?せっかくデザインを考えたのに。これだよこれ」

 魔理沙は持っているデザインが書かれた紙を指さした。

「私がもっているのは色々事情があってね。それより今からそれを作るから別に大丈夫よ。時間にしてそう10分くらい」

 そう言ってアリスは椅子に腰かけ緑茶を一口飲んだ。
おいしいともまずいとも言わず、表情もまた変えずに作業に取り掛かり始めた。
一度作業に取り掛かるとアリスは生返事しかしてくれないのだが、魔理沙は真剣な表情のアリスが編む姿を見ていると不思議と居心地がいいので寡黙になる。
そのため気にすることではない。



 アリスの家には暖炉で薪がパチパチと燃える音、糸が擦れる音、魔理沙がお茶を啜る音がする。
ただアリスは編んでいき、魔理沙は黙って見ているだけ、そうやって10分は過ぎた。



 「出来たけどこれでいいかしら?」とアリスは魔理沙に完成したばかりの手袋をみせた。
そこには魔理沙らしく星が散りばめられた手袋があった。

 「さすがアリスいい感じだぜ。ありがとな」

魔理沙は手袋をつけてアリスに感謝した。

 「それともう一つの手袋も持って行っていいわよ。どうせすぐ失くしてまた私の家に来るのが目に見えてるわね」

そう言って魔理沙に奥から出てきたときに持っていた手袋を渡した。
それを受け取った魔理沙はまた「ありがとうな」と言いすぐさま帽子をつかみ家を出ようとした。
アリスとしてはもう少しくらい付き合ってもいいじゃないかという気持ちではいたが口には出さなかった。
しかしテーブルに目を移すと何やら見覚えのない万年筆と紙が一枚置いてあるではないか。
きっと魔理沙のであろう。そう思いアリスは魔理沙を呼んだ。

「ねぇこれ魔理沙のでしょう?忘れてるわよ。しっかりしなさい」

「あぁ確かに、だがそういえば万年筆の調子が悪かったな。済まないがアリスが持っている紙に何か書いてみてくれないか?」

アリスは怪しみながらも万年筆をあてると勝手に手が動き出し驚いた。

「ちょっと魔理沙何をしかけたの?薬草に関して感謝していることを書かせて何が楽しいの?」

 どうやらアリスは魔理沙が何らかの方法を使って操っていると考えたらしい。
そして勝手なことをされ少々怒っている。

「いや違うぜアリス。それはあのお茶を飲んだ相手に要するにアリスの私に対する思いが赤裸々に書かれるものなんだぜ。そうかアリスは私に感謝しているのか感心、感心」と満足気に魔理沙は頷いた。
一方アリスからはただららぬ気配を帯び始めていた。
紙に書かれた文面を見て顔を赤く染め始めている。
それに気付いた魔理沙がどうしたんだという感じで近づいたのだが。

「お願い今は来ないで」とアリスは叫んだ。

「大丈夫だって私にはどうせ読めないんだよ。それよりどうした?」

「いいから本当にいいから来ないで。」

そうして真っ赤な顔をして叫んだアリスはありとあらゆる人形を動かしだした。
とにかく必死である。一体どうしたというのか?
(こりゃヤバい。なんでヤバいのか分からんがヤバいのは分かる。)
魔理沙はアリスが作った手袋をはめた手で帽子を抑えて勢いよくアリスの家を飛び出した。
そして箒にまたがり空に舞った。
彼女は次に今日のメインである香霧堂を目指した。



香霧堂にて魔理沙は店主に茶葉を渡し、2つの注文を言うとそそくさと出て行った。
このとき香霧堂の店主は「魔理沙が人にプレゼントをするなんて驚きだよ店を閉めなくては」と来客に言った。
そして本当にその来客の目の前で店を閉めてしまった。
客はまだ店にすら入っていないのでもちろん文句を言ったのだが彼は全く耳をかさずにどこかへ行ってしまった。



自宅にて魔理沙は全く落ち着きを失っていた。
ペンと白い紙をもったままウロウロしていた。
(あぁ~落ち着かん落ち着かん自分の気持ちに整理をつけるだけなのに全く。そういえば
アリスからもらった手袋で似たようなものがさっき落ちていたな・・・いやそんなことは
今の私に関係ない私がこれから生きていくうえで重要な問題があるんだ。アイツちゃんと
時間どうりに飲むかな?時間どうりに飲んでなかったら永久に分からんままになるのか。
それならそれで・・・いやそんな逃げは私らしくない。あぁ~しかしなんで時間をこんな
に遅く設定しちまったんだろうか怨む過去の私を怨む。だが時間にはなってほしくない・・・うがぁ~!)

そうしているうちに時間は訪れた。
魔理沙は一回深呼吸をして椅子に座り、このときのために整理した机をじっと睨み、目を閉じて意を決したように紙にペンを置いた。
読むのは全て書かれてからにしようと事前のうちに決めていた。

(それぐらいの逃げはいいだろう?いや駄目か?霧雨魔理沙は一度決めたこ
とは曲げないぜ。そういうわけでここは目を閉じる。だがしかし長い。もう
マジ私の手よ止まっておくれ。)



そして手は止まり全てを書き終え霧雨魔理沙は閉じていた目を開けた。あとは読むだけだった。



― 私は今まで多くの人や妖怪に会ってきました。その経験上、私は自分の性格を好かれる人物に値すると思っていません。
素直ではないし自分の欲に忠実で周りをよく見ませんし極度の負けず嫌いであることも知っています。
ただ負けず嫌いに関しては長所でもあり、あなたにもそういうものを幼い頃から感じていました。
そんな私ですから人里でも妖怪の山でも良い噂は耳にしないでしょう。
ある書物には英雄という立場でしたが私を知る人や妖怪にとってそのようなものは私を見るうえで関係ありません。
そのような人や妖怪の中には私に付き合ってくれる優しい方々がいます。
私が自分の欲に従って行動しても最終的には許してくれ方ばかりです。
私はとても幸福なのだと思います。ただあなたは職業柄、私の行為を許せないものだとおもいますが。
ここまで私は自分のことばかり話してきました。
あなたはこんな私をどう思いますか?
私はあなたにたいして非常に複雑な気持ちを抱えています。
ひとつはあなたに理解してもらいたい気持ち、ひとつはあなたに認めてもらいたい気持ち、ひとつはあなたからの愛情を受けたい気持ち、ひとつはあなたを憎む気持ち、そして確かなことはあなたについて考えない振りをするなんていうのはとても無理だということです。
私は自分の使う魔法に誇りをもっています。
しかしなぜあなたは魔法を使う私を認めてくれないのか。そればかりが悔しくてしょうがありません。

私はあなたの娘であるというのに。

私とあなたの関係はもはや戻ることがないのでしょうか?
私から魔法を奪うことは決してありえません。
しかしあなたはそれを受け入れられない。この地獄からどう抜け出せばよいのでしょうか?
このような状況でせめて私はあなたの健康を祈りたい。
そして、もしあなたが遠く離れた我儘な娘の幸せを願ってくれるのであれば私はせめもの親孝行のために自らの声で自らの幸せをあなたに伝えたい。

私は幸せですと。 ―



魔理沙は森近霖之介に人里にいる父に渡してほしいものがあると頼んだ。
そして飲む時間を指定した。
そしてこの文章はきっと親子という立場の影響を受けたなものであろう。
説明書にもそのようなことが書いてあった。
結果的には魔理沙らしくはない文章になった。
しかし霧雨魔理沙は自分の中にある父への思いを読み終え、自らの幸福を噛みしめ涙を流した。
同時に自らの不幸も噛みしめさらに涙を流した。
果たしてこの親子いつになれば幸せになれるのであろうか。








ただ思うことが一つある。森近霖之介を通して茶葉が勘当した娘からの贈り物であるということを知っており、訳も分からないのに時間どおりお茶を飲むような父親がいるのである。
この親子がいつの日か幸せになるだろうと思わずにいられないのは不思議なことではない。
初投稿のワジンコです。こんなぶつ切り作品を最後まで読んでくれたことに感謝します。
頑張って日常の魔理沙らしさを第三者視点で書いてみようとしましたが遠く及ばず、一日で書いたわけではないので本当にぶつ切り状態。また親子についても書いてみようと思っていました.
全く未熟です。
とにかくssだけでなくあとがきまで読んでくれたことにも感謝します。

家族は大事ですね。

今更ですが段落をいじってみました。
ワジンコ
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コメント



0.410簡易評価
2.30賢者になる程度の能力削除
会話が説明文っぽくて、くどく感じました。
12.70名前が無い程度の能力削除
くどいのが好きな俺がいる
そこらへんは人それぞれなのかしら
13.無評価ワジンコ削除
時が経つと確かにくどい部分が多く感じられます。
ただわざとくどくした部分はあるのですが全面的に出すぎたかもしれません。
次回に活かせるよう練っていきます。
そして貴重なコメントをいただいたことに感謝します。
14.70ずわいがに削除
文章はちょっと読みづらかったです。どうすれば、という指摘は俺なんかの言えたものではありませんが;ww

それにしても発想は面白いです。ストーリーも良い。
自分の素直な気持ちを知れる、というのは確かに興味深いです。
ただ、もうちょっと薬の出所も補足とかしてもらえるとさらに良かったかもしれません。