「おっす霊夢。」
「おはよう魔理沙。」
春になり、桜が満開の博霊神社いつもの客が来た。
黒と白の服を着て、大きな帽子をかぶった金髪の少女。
霧雨魔理沙である。
彼女はいつものように神社に来るが、今日みたいに朝早くから来ることは稀だ。
彼女が朝早くに神社を訪れるのは、気まぐれか・・・
厄介事を持ってくる時である。
「まだ朝の6時よ・・・」
「気にするな。」
「今日はいったい何なの?」
「実は・・・とある噂を聞いたんだ。」
「噂・・・?まさか、徳川の埋蔵金が見つかったとか!?」
「それはねーよ。」
その考えは魔理沙に一蹴された。
「まあ、考えようによっては金になる話かもしれないが・・・」
「金」という単語を聞いた途端に霊夢の目の色が変わる。
「マジで!?どんな噂!?さっさと言いなさいよ!」
興奮しすぎて霊夢は魔理沙の襟首をつかんでいた。
「おおおお、落ち着けって!死ぬから手を離せ!」
「あ・・・ごめん。」
霊夢の手から開放された魔理沙はげほげほと咳き込んでいる。
「はあはあ・・・一瞬、死神が見えたぜ・・・」
発作がおさまってから魔理沙は切り出した。
「その噂って言うのはな・・・なにやら森の奥で新種のキノコが取れるという噂なんだ。」
「・・・はい?ごめん、もう一回言ってくれない?よく聞こえなかったわ。」
「だから、新種のキノコが森の奥で取れるらしいんだよ。」
言い忘れたが、魔理沙の数ある趣味のひとつはキノコ採集である。
そのため新種キノコの情報が彼女のキノコ魂に火をつけたのだろう。
「・・・で?なぜわざわざここに来たのよ。」
「決まってるだろう。一緒に『キノコ探しの旅』へ出かけるんだよ。」
「パス。」
霊夢は金になると期待して話を聞いていたのに、
訳のわからんキノコの話をされてやる気がなくなったようである。
「ちょっと待て!いくらなんでも断るのが早すぎないか!?」
「断るわよ!何で一銭にもならないような苦労を私がしなくちゃならないのよ!」
「・・・そうか。残念だな・・・それじゃあ私一人で行ってくるよ・・・」
さっさと行け。と霊夢は魔理沙に向かって言った。
「・・・レア物だから売ったら高く売れるはずなのにな。」
「よし、行きましょう。今すぐ支度してくるわ。」
やはりこの巫女は金に弱いようであった。
支度をするといっても特に何も変わらない二人。
変わったところというと・・・食料などを入れたバックを背負っているところくらいだ。
「さて、霊夢隊員。我々『キノコ捜索隊』はこれからキノコ探索に向かう。」
「サー、イエッサー!」
二人とも意外とノリノリである。
特に霊夢は金が絡んでいることもあってテンション急上昇中だ。
「サー!、まずは何処へ向かうんでしょうか、サー!」
「お前は人の話をちゃんと聞いとけ。『森の奥』って言っただろうが!」
「サー!申し訳ありません、サー!」
「とりあえず癇に障るからそのしゃべり方はよそうぜ。というかやめてくれ。」
そんなこんなで魔法の森の入り口へ向かう二人。
歩いて数十分すると魔法の森の入り口についた。
「さて、早速踏み込むわけだが少し注意しておきたいことがある。」
「何よ?」
「ある程度奥に入ったところまでは私もわかるんだが、そのさらに奥についてはまったく知らない。
つまり・・・森の奥深くは未知の領域と言ってもいい・・・」
「えーっと・・・それは簡単に言うと何があるかまったくわからないってこと・・・?」
「そうなるな。」
考え方を変えると「何が起きても私は責任取らないぜ!」と言っているとも捉えることができる。
「じょ、冗談じゃないわよ!下手すれば死ぬかもしれないじゃない!」
「大丈夫だ・・・たぶん。」
「『たぶん』はやめて!私は自分の体が大事だからやめにするわ!」
そう言ってくるり、とターンする霊夢に向かって魔理沙はつぶやいた。
「・・・新種キノコ売ったら金持ち。」
「やっぱり行くわ。」
命より金を取る霊夢であった。
森の中に入りしばらく歩くと魔理沙の家が現れた。
この家ならよく遊びに来ているので、ここまでなら一人でも迷うことなく来ることができる。
だがこの先は霊夢はもちろんのこと、魔理沙ですら詳しいことがわからない場所である。
しかし彼女たちは森の奥へと進む。
見たことのないキノコと大金を目指して。
「結構来たけどキノコがあるのはまだ先なの・・・?」
「ああ、おそらくもっと奥にあるはずだ。」
二人はさらに奥へと進む。
周りの景色がだんだんと不気味になってきた。
「・・・なんだか変なものが出てきそうな雰囲気ね。」
「いきなり白玉楼の幽霊でも出てくるんじゃないか?」
そう魔理沙が冗談を言ったときだった。
ぐにゅ。
二人は何かやわらかいものを踏んだような感触に気づいた。
「・・・何か踏んだ?」
「・・・ああ。踏んだとも。」
二人の体が少しずつ地面に埋まっていく。
そう、二人は底なし沼に足を踏み入れてしまったのだ。
「これってさ・・・かなり危ない状況・・・?」
「ああ、やばいぜ。このままだと二人とも泥の中でおねんねだ。」
「ど、どうするのよ・・・!?」
「助けを呼びたいが・・・こんな森の奥深くに来るやつはまずいないな。」
「冷静に言うなぁ!」
二人の体は腰の辺りまで埋まっている。
なんとか這い出そうと体を動かす二人だが、動くことによってさらに埋まっていく。
「ああ・・・こんなところで寂しく死んでいくのなんて嫌よ・・・!」
霊夢はすでに泣きそうな声だ。
「あれ?そういえば私たちって飛べたよな?」
「あ。」
飛ぼうとすると少しずつ体が浮き上がっていくのがわかる。
一分もすると、完全に底なし沼から脱出することができた。
「最初からこうすればよかったな・・・」
「全くね・・・ああ、もう!服が泥まみれだわ!」
泥まみれの二人は地面に着地すると、今度は川を探して歩き始めた。
幸運なことに、二人がはまった底なし沼から少し歩いたところに川が流れていた。
二人はそこで服を洗うことにする。
といっても彼女たちは花も恥らう乙女なので、服を脱いで裸になり洗うということはしない。
そのため服を着たまま水浴びをするような格好で服を洗うことにした。
「知ってるか、霊夢。外の世界では服を着たまま入浴したりするらしいぜ。」
「これは入浴とは言わないけどね・・・」
そのまま二人はしばらく服の汚れを落とすことに集中するのであった。
しばらく経って、汚れはだいぶ落ちた。
しかしまだ服はずぶ濡れ状態である。
「水もしたたるいい女ってか?」
「冗談はやめて、早く服を乾かさないと。このままじゃ、風邪引いちゃうわ。」
「よし、私に任せろ!」
そういって彼女がごそごそと服の中から取り出したのは小さな箱型の物体。
これこそ魔理沙の武器であり、生活必需品でもある「ミニ八卦炉」だ。
この道具を使えば料理用のとろ火から果ては大火力のレーザーまで出すことが可能である。
八卦炉を使って魔理沙は焚き火くらいの炎を発生させる。
「よし、これくらいなら服も早く乾くだろ。」
「・・・思ったんだけど、どうやったらこんなちっこい箱から火が出るのかしらね。」
「おっと、それは企業秘密だ。」
何が企業秘密だ。
そう思いながら霊夢は八卦炉の前に座り込んで、服を乾かした。
服が乾いたところで、さらに奥に向かうことにした。
しかし、先にはまだまだ大変なものがあった。
毒ヘビやハチの大群。
毒の成分がたまった池。
デコボコしていて歩きにくい道。
などなど・・・
それでも二人はめげずに奥へと進む。
キノコを採集するために。
そしてようやくたどり着いた。
「お!もしかしてあれか!?」
そう叫ぶ魔理沙の視線の先には大きなキノコが生えている。
キノコにしては大きすぎる。
直径はおそらく、人が両手を広げたくらいあるだろう。
「でかいわね・・・」
霊夢は予想外の大きさにそうつぶやいた。
「確かにこれは新種だぜ。自称・キノコ博士の私が見たことないキノコだからな。」
新種のキノコを発見するという目的は達成できた。
「・・・これで私は大金持ちよ。くっくっく・・・」
霊夢はすでに大金持ちになった自分を想像して笑っている。
「よし。こいつを家まで持って帰れば今日の冒険は終了だぜ。」
そういって魔理沙はキノコを引っ張って持ち帰ろうとする。
しかし・・・どう頑張ってもキノコを引っこ抜くことができない。
魔理沙は霊夢に声をかける。
「このキノコ、抜けないぞ。霊夢、抜くの手伝ってくれよ。」
「わかったわ。・・・これで私はお金持ち!」
「そんな想像はあとでしてくれ。」
二人でいっせーの!と掛け声をかけて強く引っ張る。
それでもキノコは抜けない。
「何なのよ、このキノコ・・・」
「こうなったら、下の部分を焼き切って・・・」
そういって魔理沙が八卦炉を構えたときだった。
キノコが小刻みに震え始めた。
「なんだ?地震か?」
「いえ・・・震えているのはこのキノコだけよ。」
さらにキノコの震えが激しくなる。
そして・・・
「グアァーーーーッ!!」
キノコが地面から抜けた!
キノコの下の部分は怪物だった。
「な、なんだこいつ!?」
「キノコの妖怪・・・!?」
二人は驚く。
キノコの妖怪は二人を見下ろす。
「ガァー・・・!」
二人を敵と認識したらしい。
「霊夢、こいつは私たちを敵だって思っているようだぜ?」
「ええ、殺気が感じ取れるわ・・・」
妖怪は二人のいた場所に向かって強烈なパンチを叩き込む。
しかし、弾幕で鍛えた身体を持つ二人には止まっているようにしか見えなかった。
ひょい、とパンチをよける。
二人の立っていた場所にはパンチによって大きな穴ができていた。
「おやおや、こいつはすごい怪力だ。今度はこちらから行くぜ!」
魔理沙は星型の弾幕を妖怪に向かって放つ。
しかし妖怪の身体は硬いらしく、弾はすべて弾かれてしまった。
「こいつ、硬いぞ!」
霊夢も弾幕を放つが、こちらも弾かれてしまった。
弾幕が駄目なら・・・
「肉弾戦よ!」
そう言ってキックやパンチを繰り出すが、ほとんど効果はない。
むしろ自分たちの手足がダメージを受ける。
「な、なんて硬いのよ・・・」
「ああ・・・手足がヒリヒリするよ。」
攻撃をやめた二人に向かって妖怪の拳が飛んできた。
何とかよけることに成功するが、近くにあった巨大な木があっさりと倒れる。
「あっぶねーな。あんなの食らったら痛いじゃすまないぜ。」
弾幕も肉弾戦も通用しない。
こんな怪物を倒す術はあるのだろうか。
「しょうがない・・・キノコだけは無傷で回収したかったんだがな・・・」
魔理沙は八卦炉を取り出した。
「ちょっと待って!もしかしてあいつをそれで吹き飛ばすんじゃないでしょうね・・・!?」
「そのつもりだが?」
「キノコが消滅したら私のお金持ち計画が水の泡になるじゃない!」
「ちょっとは目の前のこと考えてみろ!こうするしか手はないじゃないか!
それともお前は自分の命より金がいいのか!?」
「もちろんよ!」
「一回死んどけ、このアホ巫女!」
そんな会話をしていた二人に向かって妖怪の一撃が飛んでくる。
またもや大木が粉砕される。
「ええい、埒があかん!もう、吹っ飛ばしてやる!」
「ちょっ!やめ・・・」
「食らえ!マスタースパーク!!」
霊夢が言い終わる前に魔理沙の必殺技が妖怪をキノコごと消滅させていた。
「ああ・・・私のキノコ・・・!私のお金が・・・!」
妖怪はチリひとつ残らなかった。
霊夢は妖怪が立っていた場所へ来て、がっくりとうなだれる。
「う~ん・・・私もあのキノコにすごい興味があったんだけどなあ・・・」
魔理沙も腕を組んでそう言った。
「まあ、お互い命があっただけでもよかったよ。な、霊夢。」
魔理沙は霊夢の肩をポン、と叩く。
「・・・返せ。」
「は?」
「私の・・・私の金を返せええええ!!」
「待て!落ち着け!だから首は・・・あばばば・・・!」
こうして二人のキノコ探しの冒険は骨折り損のくたびれもうけという結果に終わった。
それから数日が経った。
「まったく、この前はひどい目にあったわ・・・!」
神社の周りを掃除しながら霊夢はつぶやく。
「おーい、霊夢。いるか?」
「魔理沙・・・!」
霊夢の前にまた魔理沙が現れた。
「あんたのせいでこの前は・・・」
「まあ、聞いてくれ。面白い話を持ってきた。」
魔理沙は霊夢の言葉をさえぎって言う。
「この新聞を見てみろよ。」
そう言って突きつけられたのは天狗が発行している文々。新聞だ。
しぶしぶと受け取って目を通す。
そこには「湖にて巨大魚確認!?」と書いてある。
「で?これが?」
「ああ。面白そうだろ。」
「確かにね。釣り上げればきっとお刺身が数十人分は作れるんじゃない?」
霊夢はそう返す。
「だろ?そこでだ。」
・・・なんだろう、嫌な予感がする。
「・・・この巨大魚とやらを釣り上げに行こうぜ!」
ゴスッ!
「ってーな!何をするんだよ!」
「あなたはまだこの前のこと懲りてなかったの!?」
魔理沙に拳骨を食らわせながら霊夢は叫ぶ。
「この前?いつのことだ?」
「あ、ん、た、ねぇ~・・・!」
「すまん。冗談だ。」
霊夢が恐ろしい顔をしたので魔理沙は謝った。
「今回はさすがに前みたいに襲われる・・・ってことはないだろ。ただの魚釣りだぜ?」
「それでもあんたにはこの前ひどい目に合わされたから一緒に行く気がしないわ。
さっさと帰るか、一人で行きなさい!」
「そうか・・・それじゃあ、私は帰ることにするよ・・・」
とぼとぼと帰り始める魔理沙。
「・・・巨大魚を釣り上げた人には賞金が出るらしいんだけどな。残念だよ。」
「待ちなさい。さっさと釣具の準備をして!巨大魚はこの博霊霊夢のもんじゃーい!!」
(・・・ちょろいもんだぜ。)
最後の最後まで金に弱い霊夢であった・・・
「おはよう魔理沙。」
春になり、桜が満開の博霊神社いつもの客が来た。
黒と白の服を着て、大きな帽子をかぶった金髪の少女。
霧雨魔理沙である。
彼女はいつものように神社に来るが、今日みたいに朝早くから来ることは稀だ。
彼女が朝早くに神社を訪れるのは、気まぐれか・・・
厄介事を持ってくる時である。
「まだ朝の6時よ・・・」
「気にするな。」
「今日はいったい何なの?」
「実は・・・とある噂を聞いたんだ。」
「噂・・・?まさか、徳川の埋蔵金が見つかったとか!?」
「それはねーよ。」
その考えは魔理沙に一蹴された。
「まあ、考えようによっては金になる話かもしれないが・・・」
「金」という単語を聞いた途端に霊夢の目の色が変わる。
「マジで!?どんな噂!?さっさと言いなさいよ!」
興奮しすぎて霊夢は魔理沙の襟首をつかんでいた。
「おおおお、落ち着けって!死ぬから手を離せ!」
「あ・・・ごめん。」
霊夢の手から開放された魔理沙はげほげほと咳き込んでいる。
「はあはあ・・・一瞬、死神が見えたぜ・・・」
発作がおさまってから魔理沙は切り出した。
「その噂って言うのはな・・・なにやら森の奥で新種のキノコが取れるという噂なんだ。」
「・・・はい?ごめん、もう一回言ってくれない?よく聞こえなかったわ。」
「だから、新種のキノコが森の奥で取れるらしいんだよ。」
言い忘れたが、魔理沙の数ある趣味のひとつはキノコ採集である。
そのため新種キノコの情報が彼女のキノコ魂に火をつけたのだろう。
「・・・で?なぜわざわざここに来たのよ。」
「決まってるだろう。一緒に『キノコ探しの旅』へ出かけるんだよ。」
「パス。」
霊夢は金になると期待して話を聞いていたのに、
訳のわからんキノコの話をされてやる気がなくなったようである。
「ちょっと待て!いくらなんでも断るのが早すぎないか!?」
「断るわよ!何で一銭にもならないような苦労を私がしなくちゃならないのよ!」
「・・・そうか。残念だな・・・それじゃあ私一人で行ってくるよ・・・」
さっさと行け。と霊夢は魔理沙に向かって言った。
「・・・レア物だから売ったら高く売れるはずなのにな。」
「よし、行きましょう。今すぐ支度してくるわ。」
やはりこの巫女は金に弱いようであった。
支度をするといっても特に何も変わらない二人。
変わったところというと・・・食料などを入れたバックを背負っているところくらいだ。
「さて、霊夢隊員。我々『キノコ捜索隊』はこれからキノコ探索に向かう。」
「サー、イエッサー!」
二人とも意外とノリノリである。
特に霊夢は金が絡んでいることもあってテンション急上昇中だ。
「サー!、まずは何処へ向かうんでしょうか、サー!」
「お前は人の話をちゃんと聞いとけ。『森の奥』って言っただろうが!」
「サー!申し訳ありません、サー!」
「とりあえず癇に障るからそのしゃべり方はよそうぜ。というかやめてくれ。」
そんなこんなで魔法の森の入り口へ向かう二人。
歩いて数十分すると魔法の森の入り口についた。
「さて、早速踏み込むわけだが少し注意しておきたいことがある。」
「何よ?」
「ある程度奥に入ったところまでは私もわかるんだが、そのさらに奥についてはまったく知らない。
つまり・・・森の奥深くは未知の領域と言ってもいい・・・」
「えーっと・・・それは簡単に言うと何があるかまったくわからないってこと・・・?」
「そうなるな。」
考え方を変えると「何が起きても私は責任取らないぜ!」と言っているとも捉えることができる。
「じょ、冗談じゃないわよ!下手すれば死ぬかもしれないじゃない!」
「大丈夫だ・・・たぶん。」
「『たぶん』はやめて!私は自分の体が大事だからやめにするわ!」
そう言ってくるり、とターンする霊夢に向かって魔理沙はつぶやいた。
「・・・新種キノコ売ったら金持ち。」
「やっぱり行くわ。」
命より金を取る霊夢であった。
森の中に入りしばらく歩くと魔理沙の家が現れた。
この家ならよく遊びに来ているので、ここまでなら一人でも迷うことなく来ることができる。
だがこの先は霊夢はもちろんのこと、魔理沙ですら詳しいことがわからない場所である。
しかし彼女たちは森の奥へと進む。
見たことのないキノコと大金を目指して。
「結構来たけどキノコがあるのはまだ先なの・・・?」
「ああ、おそらくもっと奥にあるはずだ。」
二人はさらに奥へと進む。
周りの景色がだんだんと不気味になってきた。
「・・・なんだか変なものが出てきそうな雰囲気ね。」
「いきなり白玉楼の幽霊でも出てくるんじゃないか?」
そう魔理沙が冗談を言ったときだった。
ぐにゅ。
二人は何かやわらかいものを踏んだような感触に気づいた。
「・・・何か踏んだ?」
「・・・ああ。踏んだとも。」
二人の体が少しずつ地面に埋まっていく。
そう、二人は底なし沼に足を踏み入れてしまったのだ。
「これってさ・・・かなり危ない状況・・・?」
「ああ、やばいぜ。このままだと二人とも泥の中でおねんねだ。」
「ど、どうするのよ・・・!?」
「助けを呼びたいが・・・こんな森の奥深くに来るやつはまずいないな。」
「冷静に言うなぁ!」
二人の体は腰の辺りまで埋まっている。
なんとか這い出そうと体を動かす二人だが、動くことによってさらに埋まっていく。
「ああ・・・こんなところで寂しく死んでいくのなんて嫌よ・・・!」
霊夢はすでに泣きそうな声だ。
「あれ?そういえば私たちって飛べたよな?」
「あ。」
飛ぼうとすると少しずつ体が浮き上がっていくのがわかる。
一分もすると、完全に底なし沼から脱出することができた。
「最初からこうすればよかったな・・・」
「全くね・・・ああ、もう!服が泥まみれだわ!」
泥まみれの二人は地面に着地すると、今度は川を探して歩き始めた。
幸運なことに、二人がはまった底なし沼から少し歩いたところに川が流れていた。
二人はそこで服を洗うことにする。
といっても彼女たちは花も恥らう乙女なので、服を脱いで裸になり洗うということはしない。
そのため服を着たまま水浴びをするような格好で服を洗うことにした。
「知ってるか、霊夢。外の世界では服を着たまま入浴したりするらしいぜ。」
「これは入浴とは言わないけどね・・・」
そのまま二人はしばらく服の汚れを落とすことに集中するのであった。
しばらく経って、汚れはだいぶ落ちた。
しかしまだ服はずぶ濡れ状態である。
「水もしたたるいい女ってか?」
「冗談はやめて、早く服を乾かさないと。このままじゃ、風邪引いちゃうわ。」
「よし、私に任せろ!」
そういって彼女がごそごそと服の中から取り出したのは小さな箱型の物体。
これこそ魔理沙の武器であり、生活必需品でもある「ミニ八卦炉」だ。
この道具を使えば料理用のとろ火から果ては大火力のレーザーまで出すことが可能である。
八卦炉を使って魔理沙は焚き火くらいの炎を発生させる。
「よし、これくらいなら服も早く乾くだろ。」
「・・・思ったんだけど、どうやったらこんなちっこい箱から火が出るのかしらね。」
「おっと、それは企業秘密だ。」
何が企業秘密だ。
そう思いながら霊夢は八卦炉の前に座り込んで、服を乾かした。
服が乾いたところで、さらに奥に向かうことにした。
しかし、先にはまだまだ大変なものがあった。
毒ヘビやハチの大群。
毒の成分がたまった池。
デコボコしていて歩きにくい道。
などなど・・・
それでも二人はめげずに奥へと進む。
キノコを採集するために。
そしてようやくたどり着いた。
「お!もしかしてあれか!?」
そう叫ぶ魔理沙の視線の先には大きなキノコが生えている。
キノコにしては大きすぎる。
直径はおそらく、人が両手を広げたくらいあるだろう。
「でかいわね・・・」
霊夢は予想外の大きさにそうつぶやいた。
「確かにこれは新種だぜ。自称・キノコ博士の私が見たことないキノコだからな。」
新種のキノコを発見するという目的は達成できた。
「・・・これで私は大金持ちよ。くっくっく・・・」
霊夢はすでに大金持ちになった自分を想像して笑っている。
「よし。こいつを家まで持って帰れば今日の冒険は終了だぜ。」
そういって魔理沙はキノコを引っ張って持ち帰ろうとする。
しかし・・・どう頑張ってもキノコを引っこ抜くことができない。
魔理沙は霊夢に声をかける。
「このキノコ、抜けないぞ。霊夢、抜くの手伝ってくれよ。」
「わかったわ。・・・これで私はお金持ち!」
「そんな想像はあとでしてくれ。」
二人でいっせーの!と掛け声をかけて強く引っ張る。
それでもキノコは抜けない。
「何なのよ、このキノコ・・・」
「こうなったら、下の部分を焼き切って・・・」
そういって魔理沙が八卦炉を構えたときだった。
キノコが小刻みに震え始めた。
「なんだ?地震か?」
「いえ・・・震えているのはこのキノコだけよ。」
さらにキノコの震えが激しくなる。
そして・・・
「グアァーーーーッ!!」
キノコが地面から抜けた!
キノコの下の部分は怪物だった。
「な、なんだこいつ!?」
「キノコの妖怪・・・!?」
二人は驚く。
キノコの妖怪は二人を見下ろす。
「ガァー・・・!」
二人を敵と認識したらしい。
「霊夢、こいつは私たちを敵だって思っているようだぜ?」
「ええ、殺気が感じ取れるわ・・・」
妖怪は二人のいた場所に向かって強烈なパンチを叩き込む。
しかし、弾幕で鍛えた身体を持つ二人には止まっているようにしか見えなかった。
ひょい、とパンチをよける。
二人の立っていた場所にはパンチによって大きな穴ができていた。
「おやおや、こいつはすごい怪力だ。今度はこちらから行くぜ!」
魔理沙は星型の弾幕を妖怪に向かって放つ。
しかし妖怪の身体は硬いらしく、弾はすべて弾かれてしまった。
「こいつ、硬いぞ!」
霊夢も弾幕を放つが、こちらも弾かれてしまった。
弾幕が駄目なら・・・
「肉弾戦よ!」
そう言ってキックやパンチを繰り出すが、ほとんど効果はない。
むしろ自分たちの手足がダメージを受ける。
「な、なんて硬いのよ・・・」
「ああ・・・手足がヒリヒリするよ。」
攻撃をやめた二人に向かって妖怪の拳が飛んできた。
何とかよけることに成功するが、近くにあった巨大な木があっさりと倒れる。
「あっぶねーな。あんなの食らったら痛いじゃすまないぜ。」
弾幕も肉弾戦も通用しない。
こんな怪物を倒す術はあるのだろうか。
「しょうがない・・・キノコだけは無傷で回収したかったんだがな・・・」
魔理沙は八卦炉を取り出した。
「ちょっと待って!もしかしてあいつをそれで吹き飛ばすんじゃないでしょうね・・・!?」
「そのつもりだが?」
「キノコが消滅したら私のお金持ち計画が水の泡になるじゃない!」
「ちょっとは目の前のこと考えてみろ!こうするしか手はないじゃないか!
それともお前は自分の命より金がいいのか!?」
「もちろんよ!」
「一回死んどけ、このアホ巫女!」
そんな会話をしていた二人に向かって妖怪の一撃が飛んでくる。
またもや大木が粉砕される。
「ええい、埒があかん!もう、吹っ飛ばしてやる!」
「ちょっ!やめ・・・」
「食らえ!マスタースパーク!!」
霊夢が言い終わる前に魔理沙の必殺技が妖怪をキノコごと消滅させていた。
「ああ・・・私のキノコ・・・!私のお金が・・・!」
妖怪はチリひとつ残らなかった。
霊夢は妖怪が立っていた場所へ来て、がっくりとうなだれる。
「う~ん・・・私もあのキノコにすごい興味があったんだけどなあ・・・」
魔理沙も腕を組んでそう言った。
「まあ、お互い命があっただけでもよかったよ。な、霊夢。」
魔理沙は霊夢の肩をポン、と叩く。
「・・・返せ。」
「は?」
「私の・・・私の金を返せええええ!!」
「待て!落ち着け!だから首は・・・あばばば・・・!」
こうして二人のキノコ探しの冒険は骨折り損のくたびれもうけという結果に終わった。
それから数日が経った。
「まったく、この前はひどい目にあったわ・・・!」
神社の周りを掃除しながら霊夢はつぶやく。
「おーい、霊夢。いるか?」
「魔理沙・・・!」
霊夢の前にまた魔理沙が現れた。
「あんたのせいでこの前は・・・」
「まあ、聞いてくれ。面白い話を持ってきた。」
魔理沙は霊夢の言葉をさえぎって言う。
「この新聞を見てみろよ。」
そう言って突きつけられたのは天狗が発行している文々。新聞だ。
しぶしぶと受け取って目を通す。
そこには「湖にて巨大魚確認!?」と書いてある。
「で?これが?」
「ああ。面白そうだろ。」
「確かにね。釣り上げればきっとお刺身が数十人分は作れるんじゃない?」
霊夢はそう返す。
「だろ?そこでだ。」
・・・なんだろう、嫌な予感がする。
「・・・この巨大魚とやらを釣り上げに行こうぜ!」
ゴスッ!
「ってーな!何をするんだよ!」
「あなたはまだこの前のこと懲りてなかったの!?」
魔理沙に拳骨を食らわせながら霊夢は叫ぶ。
「この前?いつのことだ?」
「あ、ん、た、ねぇ~・・・!」
「すまん。冗談だ。」
霊夢が恐ろしい顔をしたので魔理沙は謝った。
「今回はさすがに前みたいに襲われる・・・ってことはないだろ。ただの魚釣りだぜ?」
「それでもあんたにはこの前ひどい目に合わされたから一緒に行く気がしないわ。
さっさと帰るか、一人で行きなさい!」
「そうか・・・それじゃあ、私は帰ることにするよ・・・」
とぼとぼと帰り始める魔理沙。
「・・・巨大魚を釣り上げた人には賞金が出るらしいんだけどな。残念だよ。」
「待ちなさい。さっさと釣具の準備をして!巨大魚はこの博霊霊夢のもんじゃーい!!」
(・・・ちょろいもんだぜ。)
最後の最後まで金に弱い霊夢であった・・・
他の方の作品を見て、表現方法や話の流れを少し真似てアレンジしてみては……
次は頑張って下さい。
ありきたり・・・ですか。
次は頑張りたいと思います。
>>9
もっとキャラの個性を出せばよいでしょうか?
感想ありがとうございます!
どうかと。
それとキャラクターの基本的な性格や行動パターンを踏まえてないと評価に値せず、ってことに
なることが非常に多いので、一応参考までに一言。
あ、あと三点リーダーは ・・・ でなく …… を用いましょう、という慣習があったりします。
いじょ。
丁寧なご指摘ありがとうございます!
今回の投稿でいかに自分が甘かったかがわかりました^^;
次回からは・・・ではなく…を用いたいと思います。
アニメや漫画ではポピュラーな展開ですよねww
霊夢ならお金が絡むと何でもやってしまいそうです・・・^^;