Coolier - 新生・東方創想話

【錨の羅針盤】東方星蓮船 一の歌

2010/02/19 16:00:53
最終更新
サイズ
7.14KB
ページ数
1
閲覧数
1154
評価数
4/16
POINT
650
Rate
7.94

分類タグ

【錨の羅針盤】

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_
東方星蓮船 一の歌
/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_



(ふん~ふふん~♪今日はお月さまが隠れる日~♪)
闇の中緑の影がゆらゆらと揺らめく。
(声をかけては惑わせ~腕を伸ばして引き込む~♪)
海の底、岩場の影に白い影が見える。
(ほの暗い水の底ではフンフフン~♪)



暗闇の海原。
若い二人の男が海へと小舟をこぎ出していく。
海は凪、魚も眠る静かな海だ。
星灯りが照らし、時折陸から風がピュウと吹き抜ける。
「ここいらでいいか」
「お頭、バカに静かですねぇ…」
確かに静かすぎる。
この辺りは潮が混じる事で何時でも荒海なはずだ。
「イイことじゃねぇか、魚もおねんねしてんだ。ごっそり頂くぜ!」
「へ…ヘェ…」

都から遠く、瀬戸内の海を遥か西へ。
かつて、3つの海が交わる場所に貧しい漁村があった。
漁村は時の帝が交代した折、各地を結ぶ交易地点の整備され、
貧しかった漁村も急速に人の出入りが増えていった。
港が整うと、陸だけでなく海からも人・物・金を乗せた船が盛んに行き来するようになった。

少し前まで 漁で日の糧を繋いでいた村が、急激に町へと変わっていく。
村人は大層困惑したが、それでも人が増えれば食いぶちも増す。
魚は採れば採るだけ売れていった。
若い漁師は躍起になって海原へ出て行った。

~『新月の晩は漁に出るな、■■■に海に連れて行かれるぞ』~
村にはそんな言い伝えがあったが、若い漁師ははやる血気に老いた者の言葉など聞かないのが世の常。
今宵は丁度新月。星灯りがまぶしく海を照らす。

男たちは網を抱えてヨイセと投げ込む。
「もたもたすんな、明け前には片を付けねぇとジジイ共がウルセェからな」
「へ、ヘイ…うおっ!お頭!」
投げた網が急に重くなる。
「うお、何だこりゃぁ!?」
「お頭!お頭!網が千切れちまう、いったん上げましょうや!」
あわてた二人は船べりに足を掛けて網を引く。
尋常じゃない重さだ。
「クジラでも掛ったかァ…ぬりゃぁあ」
「ひぃ!ひぃ!お頭、手が抜けちまう!」
船が大きく傾き、今にも転覆しそうだ。
「気張りな!それ、もう一息だ!」
「ひー!こりゃたまらん!」
やがて海が銀色に泡立ち、なにやら塊が引き上がってくる。
「うおおおお!!」
「ひょえーー!なんじゃぁこりゃーー!」
現れた銀色の塊は、魚の腹だった。
見る限り魚・魚・魚の山だ。
「海にでて20年、こんなのは初めてじゃぁ…」
「すごいですぜ、お頭ァ!」
ヒイコラ言いながら魚を引き上げると、それだけで船は半分も魚に埋まってしまった。
「ハァ!ハァ!どうよ、言ったとおりだろう?」
「ひぃ!ひいぃ!こりゃたまげた」
興奮冷めやらぬ中、ふと足元にたまった海水に気がついた。
「こりゃいけねェやァ、オイ!水を掻きだしな」
「ヘェ!ここで沈んじゃあ 死んでも死にきれねぇや!」
二人はザバザバと船底にたまった水を柄杓で掻きだしていく。

……く……こせェ…

「くそ、いつのまにこんなに水が入ったぁ?
「そりゃー網引く時、船ェえれぇかしいだからァ…」
しかし、おかしなことに掻きだしても掻きだしても一向に水は減らない。
「お頭ぁ!船底に穴でもあいてんじゃねえですかい?」
「バカ言えおめぇ、さっきまで乗ってきたじゃネェか」

……ひしゃく……よこせェ…

「お頭…なんか言いやした?」
「あんだよ!言ってねぇよ!」
いつの間にかあたりは霧が出始めていた。
「霧がでてきやしたが…」
「分ってるよバカ野郎!しっかり水掻きだせ!」
おたおたし始める男。お頭は柄杓じゃ埒あかない、と水桶を使い始める。
「ででででも、霧で何も見えネェですぜ…」
「今は水を出してんだよ!見える見えねぇは関係ネェだろバカ野郎!!」

(…ふふ、お頭さん頑張るねぇ…)

「何かにぶつかったら…」
「船止めてるだろう!バカ野郎!」
お頭が ああもう!とばかりに振り向いて水面をパシャんとひっぱたく。

……ひしゃくを……よこせェ…

「おおおおお頭!お頭ぁ!!」
「なぁんだよウルせぇな俺も聞こえてるよ、気にすんな!」

(…気にすんな…って…さすが海の男だ肝が据わってるねぇ…)

水面がにわかにはじけて、船べりに透明な物がへばりつく。
「ひ!ひいいいいい!ててて手が!手が!」
「ああ?…良く見ろバカ野郎!クラゲだよクラゲ!」
お頭が手でパシっとはじくと、ビシャと男の足元に滑ってくる透明なヌルヌル
「ひいいいい!?く・・・クラゲ?」
「ったく、とっとと立ちな!」

(クフ…くひひ…じゃあもうちょっと怖がってもらっちゃおうかな…)

「そうだ、くらげだだだっ!」
男がガクガクと震えながら自分に言い聞かせ、船べりにつかまって立ちあがる。
「良くできたクラゲだ!!ハァッ!ハァッ」
「ったく、さっさと仕事しろ仕事!」
その時、波が大きくうねり、船が大きな音を立ててギシギシときしんだ。
「ひっ!ひいいいいい!!沈む!つぶれる!!」
「沈まねぇ!つぶれネェ!船がギシギシ言って悪いことがあるかバカ野郎!!」
お頭は波をかぶり、水浸しになった甲板を振り返ると舌打ちをした。
「チッ、オイ!またかよ! ったく、水が入りすぎだ、掻きだすぞ」
「そそそそうだよな、ふふふ普通だよな…」
眼の端にぼんやりと緑の何かが映る。
海水を振り払い、目をこすると視界がハッキリした。
「…じゃ…じゃあお頭…」
「あんだよ!」
船尾で水を掻きだしていたお頭が背中で返事する
「あ…あ…あれあれ…あれも普通でさぁね」
「…あぁ?」

緑色。
そこにはずぶ濡れの体で緑色の少女が立っていた。

「…ただの緑の娘っ子じゃネェか」
「…ハァ…」

(…笑っちゃいけない…笑っちゃいけないけどニヤニヤしちゃう…)

少女口の端がぐににゃりと歪む。
「うおぉ!?…びびびびビビったぜ、オメェどっから乗ってきた」
すうっと音もなくお頭に歩み寄り、首に腕をまわしておねだりをする。
『柄杓…柄杓をちょうだい』
「おいおい…俺の船に勝手に乗って…ぐっひっ!」
少女は唇をお頭のほほに近付けて艶めかしく囁く

(…大サービス。)

『柄杓をちょうだいよ』
「…!ち!近寄るな!」
「うひいいいい!?お頭お頭お頭!!」
ガバっと飛び退くお頭。

(つれないわネェ、漁師だけに?まぁいいわ、これだけ怖がってくれれば妖冥利に尽きるもの)

ふいともう一人の男の元に漂う
『ねぇ、あなたでもいいや、柄杓を頂戴?』
「柄杓をくれって 柄杓柄杓ー!!」
「うおお!!化け物怖くて船乗れるかってんだー!」
飛び退いたお頭が手元にあった水桶をひっつかむと、大きく振りかぶって力いっぱい少女に投げつける。
水桶は緑色の少女をスッと突きぬけ、へたり込んでいた男の顔面に直撃する。
「ぐぱ!?」
男は鼻血を吹いて魚の山に突っ伏し、水桶は宙を舞って海にパシャんと落ちる。
『ふふ、ありがとう。』
「ハァ!ハァ!き…気がすんだら出ていきやがれーーーー!うおおおおお!」
お頭はダダっと、船の櫂を取り上げ、戦国武将のように構える。

(ふふ、勇ましい事ね…でもだめよ。ダメダメ。)

『ふふ、桶のお礼にイイトコロに連れてってあげる…』
「あ…ああ?極楽にでも連れてってくれるのかい お嬢ちゃんが!」
強がって下品な切り返しをするも手元はブルブルと震えてしまう。
『もっといいところよ』
「…そりゃぁ、どこだい?お嬢ちゃんよぉ…」
少女がくすくすと笑うと、途端に足元の魚の山が急速に腐り始め、強烈な異臭を発する。
「なぁ!?」
グズグズと茶色く崩れていく中からズバっと白い何かが突きだし、お頭の足をつかむ。
「うおおお!!うおおおおおおお!!」
お頭もコレにはさすがに驚き、櫂を叩きつける。
バキィっと乾いた音を立てて転がった白い物。
人間の腕骨だ。
折れてなおぐいぐいと足首を握ってくる。
「うお!うお!うおあああああああああ!?」
思わず尻もちをつき、シャカシャカと骨腕を振りほどこうとする。
その様子をおなかを抱えて笑う少女。
『みんな、つれてってあげて』
おなかを抱えて笑った少女が片手で隠した顔をゆっくりと上げると、そこには凶気にあふれた表情があった。
「っっっっっっっっっっっっ!!!???」
『永遠に…楽しんでね?海の底のお祭り』
途端、ズバ!ズバ!バキ!と、次々船底を突き破り白骨腕が伸び、親方の腕、足、首をつかむ。
船はたちまち海水を吹きあげ沈んでいく。
「うおおお!!ぎゃあああ!あぶ!うお!うおおおおおおごぼごぼごぼ」
恐怖の断末魔は波に沈み、海は元の静けさを取り戻す。
木片ひとつ無く、元の海。
船は木端もろともに水底へ沈んだ。

『ふふ、ようこそ水底の宴へ』



~『新月の晩は漁に出るな、ムラサに海に連れて行かれるぞ』~
妖は、船幽霊ムラサと呼ばれた。
錨の羅針盤を聞いてたら書きたくなったったった。
多分1/11くらい。
それにつけてもパチュリーかわいい。
パチュリー大好き
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.370簡易評価
5.40ちちり削除
パチェが出てきません
orz
6.100tukai削除
錨の羅針盤好きなのでクリックしてた
9.無評価名前が無い程度の能力削除
タグに入れるのは、本文に関係した言葉の方がいいですよ
見た人が、パチュリーが出て来るんだと思ってしまいますし…
13.70名前が無い程度の能力削除
キャプテン怖ええ
16.70ずわいがに削除
耐久スペルモードのムラサはガチでホラー