Coolier - 新生・東方創想話

金色の妖獣

2010/02/13 23:55:29
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春も麗な季節。

幻想郷では春告精が飛び回り、陽気な日の幸せを喜ぶ。

さて、そんな幸せな季節にも関わらず

薄暗い森の麓で、静かに暮らしてる者が一人。

名を霖之助と言い、店の主人をしている。

「おや、もうこんな時間か」

霖之助は、切りの良い所で本を閉じ、

昼飯を食べるべく、厨房へ向かった。

「今日は朝から霊夢達が来ないな。まぁ僕にとってはいい事なんだけど」

と、一人ぼやいてる辺り、なんだかんだで寂しいものがあるのだろう。

誰と喋ることもなく、黙々と食べ物を口へ運ぶ霖之助。

霖之助にとって、とても迷惑な事が起きたのは

昼食が終わりかけの頃だった。









もうすぐで昼食も終え、午後から何をするか考えていると、

森の方から、叫び声が聞こえてきたのだ。

少し距離があった為、誰の声までかは分からなかったが、

恐らく少女のものであると考えられる。

何かの理由で、森へ入りちょっとしたミスで妖怪を起こしてしまい、

追いかけられてる…といった具合だろう。

非情ではあるが、もうどうしようも無いと彼は静かに思った。

距離もあるし、自分ひとりでは向かったところで意味のないことだ。

そして悲鳴も聞こえなくなり、最悪の事態を想像してしまい

心の中で合掌すると同時に、

店のドアが勢い良く、それも壊れそうな勢いで開かれた。

「な、なんだ…い…」

店の中へ入ってきたのは妖怪でも、死にそうな少女でも無く

綺麗な金色の毛を纏った猫だったのだ。

それも普通の大きさではなく、

四足であるにも関わらず霖之助の膝辺りまである。

「え、えっと…」

さすがに長く商売を続けてる彼であっても、

このような事態は初めてのようだった。

すると、その猫が口を開き

「香霖!私だ、魔理沙だ!助けてくれ!」

と、言い出したのだ。

「え…?」

暫く霖之助は開いた口が塞がらなかったようだ。









―少女説明中―







「つまり、君の意見を纏めると、

 昨日までは普通だったのに、今日起きたら猫になってたと」

「ああ、別に晩飯の茸もいつもと変わらないやつだったしな」

「なるほど。で、何でここに来たんだい?僕より永琳の方が詳しいだろうに」

すると、彼女は霖之助をじっと睨み、

「お前なあ。この姿で竹林に行って無事に永遠亭につけると思ってるのか?

 私んちからここまで来るのも命がけだったのに」

それもそうだと霖之助は思う。

猫の状態になってるので、スペカを使えずおまけに箒も使えない。

その状態で単独で、竹林に向かうとどうなるか。

「別に一人じゃなくても、霊夢とかに頼めばいいだろう?」

「…だって、この姿見られたら何て言われるか…」

霊夢のことだ、きっと大笑いするに違いない。

とは言え、一緒に行かないって事はないだろうが。

「とりあえず、今日鈴仙が薬の事で、ここに来るはずだから、

 その時に相談してみようか」

「すまないな」

「ほんと「本当にすまないと思ってるならツケを払え…だろ?分かってるぜ」

自分が言おうとしたセリフを取られ、

少し不機嫌になる霖之助。

彼女は、霖之助の前まで来ると、

「そう機嫌悪くなるなって。感謝してるのは本当なんだからさ」

と、言いペロッと舌を出した。

「こうゆうのは今回だけにしてほしいね」

「激しく同感だぜ」

二人してやれやれと呆れた顔をしてたそうな。









魔理沙がまだ昼食どころか朝食も終えてないとのことで、

少なめの昼食を出してやると、

彼女は急にもじもじしだして、一向に食べる気配がない。

「どうしたんだい?どこが具合でも?」

と、霖之助が話しかけると、

「なぁ、香霖。私だって今は猫だけど、人間なんだ。

 手を使わず、口だけで食えというのはその…私にだってプライドがあるし…」

と、言われはっと気づく。

仕方ないとは言え、ペットの犬や猫のように口だけで食事をするのだ。

並の人間なら、どれ程の屈辱が分かったものではない。

「それはさすがに酷だね…。しかし、それ以外にどうやって…」

霖之助が言い終わる前に、彼女が慌てながら、

「だ、だからさ。香霖が、た、食べさせてくれれば…」

それもそれで、どこか屈辱的な絵にならなくもないのだが。

「今のところ、それしか方法はないようだね」

迷いも無く、そう言い切る霖之助に

魔理沙はどこか、不満な顔色になる。

もちろん、彼に分かるはずがないのだが。

「じゃあ、隣に来てくれるかい」

霖之助にそう言われ、ちょこんと遠慮気味に座る。

「ほら、ちょっと熱いが食べれるかい?」

もし彼女が人間の姿なら、とても良い絵になるのだが

如何せん猫である。

「もうちょっと雰囲気とかあってもいいんじゃないか?」

静かにそう漏らす魔理沙。

「何か言ったかい?」

「いんや。あーん」

食事が終わるしばらくの間、二人は無言だったと言う。










彼女の食事も終わり、

霖之助は店番、彼女はぼーっと外を見ていると、

「ごめんくださーい。店主さんいますかー?」

と、透き通る声を挙げて入店してきたのは、

永琳の弟子である、鈴仙であった。

「ああ、よく来たね」

「先日話した薬の件なんですが…」

「ああ、用意できてるよ。ちょっと待ってなさい」

そう言うと、奥の倉庫へ引っ込んでしまった。

一人手持ち無沙汰になってしまった鈴仙は、

店の中を見渡してると、

居間のほうから、ちょこんと顔を出した魔理沙を見つけた。

とは言っても事情を知らない鈴仙からしてみれば、

綺麗な毛の色をした猫にしか見えない。

「ちっちっちっ。怖くないよー、おいでー」

と、こっちに来るよう誘ってみた。

すると、

「誰が来るか、ばか」

その時の鈴仙の顔は、見たら忘れられない顔だったと魔理沙の談。

「きゃーー!!!!!!」

店内で金切り声を挙げる鈴仙。

まぁそりゃあ驚いても不思議ではない。

現に魔理沙もそうだったので、妙に同情するところがあった。

「ど、どうしたんだい!?」

奥から慌てて飛び出してきた霖之助に、飛びつく鈴仙。

「ね、猫が喋って…!」

事情を知ったのか、急に落ち着く霖之助は

彼女に事情を話すことにした。

「ああ、言ってなかったね。実はかくかくしかじかなわけで、

 相談しようと思ってたんだよ。先に説明しとけばよかったね」

とは言っても、後の祭りであったが。

「そ、そうなんですか・・・?」

改めて見てみると、確かに毛の色といい先程の発言といい、

魔理沙と言えなくもない。

「ほんとに魔理沙…?」

脅えながら質問をすると、

「ああ、正真正銘見た目は猫、頭脳は魔女の名探偵魔理沙様だぜ。

 それより、3秒以内に香霖から離れないと戻った時が酷いぜ」

そこで、ようやく自分が霖之助に抱きついてるのに気づき、

急いで離れる。

「あ、その、すいません」

「いや、気にしなくていい。それよりこれはどういうことかな?」

赤くなりながら謝る鈴仙に平然としている霖之助。

どこかおもしろくない魔理沙は先程から不満オーラで体が覆われているようだ。

「え、えっと…。私もこういうのは初めてで師匠に聞かないと、どうにも…」

医者の弟子でも何でも分かるというわけではない。

それが初めてのケースならなおさらだ。

「すまないが、魔理沙を永遠亭に連れて行ってくれないか?

 どうやら箒もスペカも使えないようなんだ」

「そうなの…。まぁ私は構わないけど…」

「ありがとう。じゃあ早速頼むよ」

そういうと、霖之助は魔理沙を抱きかかえ

鈴仙の前まで持って行く。

「は、離せよ!大丈夫だって!」

妙に嫌がる彼女を見て、

「もしかして注射が怖いとか」

と、霖之助がぼそっと言うと

嫌がってた彼女の体がぴたっと止まった。

「大丈夫ですよ。誰でも注射は怖いものですから」

と、言葉は宥めているが、顔は「弱点見たり」とでも言いそうだった。

「うぅ…。殺してくれ…」

魔理沙の嘆きは誰にも届くことはなかった。











「じゃあ、持っていきますね」

魔理沙を宥め終えた頃には、少し日も過ぎていた時間だった。

さすがにこれ以上長引くと、

大変なので急いで持っていってもらうことにしたのだが、

魔理沙が霖之助の腕を離さないのだ。

「離してくれないか」

「やだ」

「先程の事は謝るから」

「やだ」

駄々を捏ねて一向に離す気配がない。

「はぁ。じゃあ一体僕はどうすればいいんだ」

「私と一緒に来ればいい」

まぁ予想していた答えだ。

別に力ずくで離せない程の力は無い為、

解こうと思えば解ける。

が、そうしない辺り霖之助の甘い所だと言えよう。

「僕は空を飛べないし、鈴仙だって僕を運ぶことはできない。

 歩いていったら日が暮れてしまう」

ということを理由に一緒に行くことを拒もうとしたのだが、

「店主さん位だったら大丈夫ですよ?」

「…空気を読んでほしかったね…」

仕方なく、霖之助も一緒に同伴することになった。

その日の夕暮れ。

女性に担がれて飛んでる男と猫が竹林の傍を飛んでいたそうな。










すっかり日も暮れ、夜になりかけてる時間に

2人と1匹は永遠亭に着くことができた。

鈴仙は永琳に事情を話し、

さっそく診察が始まったのだが、

数億年生きてる彼女も、こういうのは稀にしか見たことがなく、

対処法も毎回違っていたので、信憑性が無く、

薬を出すことを渋っていた。

そして悩んだ末に、

「この薬を数日間1杯の水に入れて飲むことで、治ると思うけど…」

「さすが、永琳だぜ。これを飲めばいいんだな」

「ちょっと待って。これには続きがあって、特別な飲み方じゃないとダメなの」

すると、霖之助と魔理沙二人して首を傾げる。

「特別な飲み方って…鼻で飲めとか言うんじゃないだろうな」

「そういう飲み方じゃなくて、

 これは異性の唾液を通じて効果を発揮するものなの」

すると、当然魔理沙は驚き、

「はぁ!?冗談にしては笑えねぇぞ!?」

「冗談なんかじゃないわ。これは異性のつまり男性ね。

 その唾液に含まれる男性特有のDNAに反応するタイプなの」

すると魔理沙の顔が赤になり、青になって真っ赤になった、ように見えた。

傍で聞いてる鈴仙も少し赤みを帯びている。

「ということは口移しになるのかい?」

魔理沙の隣で聞いていた霖之助は、

ふと疑問に思ったことを口にしてみた。

すると、今度は鈴仙まで真っ赤になり始める。

「あら、口移しが希望なの?別に口移しじゃなくても、

 唾液が含まれてれば良いのだから、コップに戻しても構わないわ」

見た目的に汚くなるけど、と付け加える。

こうなると、魔理沙の脳内では色々と大変なことになってる。

(香霖と、く、口移し!?ってことは、そ、その…キ、キス…するんだよな…。

 え、やばいって!!まだ私心の準備も…、で、でも…香霖なら…)

ペットに限らず、動物とキスすることは回数に入るのやら。

「そうかい、じゃあ魔理沙」

急に名前を呼ばれ、

「ひにゅ!」

妙な声を挙げて、恥ずかしさで耳まで真っ赤にさせる(ように見える)魔理沙。

霖之助は薬を水に入れ、数回掻き混ぜると

半分程口に含み、魔理沙に近づく。

1cm近づくことに魔理沙は自分の心臓の鼓動は早くなってるように思えた。

(い、いよいよ香霖と…)

だが、彼女の口に入ったのは、水でも霖之助の唇でもなく、

(ス、ストロー?)

どこから取り出したのか、ストローの両口を塞ぎ

少しずつ薬を魔理沙の口へと入れていく。

やがて全部の薬を飲ませる事ができた霖之助は、

「これでいいのかい?」

と、永琳に振り向く。

「このヘタレが…じゃなくて、ええ、それを数日繰り返せば元に戻るでしょう」

「終わったから帰りたい所だけど…夜か…」

夜は妖怪の時間なので、不用意に出歩くことはできない。

「じゃあ、今日はここに泊まりなさい。姫には私が話しておくわ」

そういうと、診察室を出て行ってしまった。

「え、えと、じゃあ私は部屋の用意をしてきますね」

鈴仙もそそくさと出て行ってしまった。

その後、事情を聞いた輝夜が散々魔理沙をバカにしたのは、また別の話。










永遠亭で夕食をとる時、

やっぱりカップルみたいに、あーんをしたのだが。

如何せん霖之助がペットと同等にしか見てないせいか、

誰も茶々を入れることなく、時間が過ぎていった。

問題はこの後である。

夕食の後、お風呂に入ることになるのだが。

もちろん猫用のお風呂なんてあるわけがない。

ということは、誰かと同伴で入ることになる。

永琳や輝夜はおもしろがって遠慮し、

鈴仙はてゐと入るとのことで、無理だった。

ということは、必然的に、

「あの、その、一緒に、は、入る…か?」

「はぁ、一緒に入ろうか」

魔理沙とは小さい頃から付き合いがあり、

もちろん一緒にお風呂だって寝たことだってある。

だから、霖之助にとって別に一緒に入ることなど、

妹もしくは娘と一緒に入るようなもので、

別にどうとでも思ってはいない。

ただ、ゆっくり本を読みたいのに、

それさえままならないことが彼にとって一番迷惑なことだった。

「やっぱり嫌だったか…?」

彼女にいつもの元気はなく、

どこか顔色を伺い、びくびくしてるように見える。

「嫌じゃないよ。ところで、最初から服着てなかったが…」

「あ、ああ。服を着たまま猫になってるようなんだ」

もし、これが裸ならば仕方ないとは言え、皆の前でどうどうと

裸で歩いてる露出狂とも言えなくはないが、

それも杞憂だったようだ。








脱衣も終え、

最初に霖之助が、浴槽へと入り

その膝上に魔理沙が乗っかるといった感じだった。

もちろん、魔理沙の心情はさらにすごいことになっていて、

(こ、香霖の裸…。あまり肉とかついてないんだな…。というか結構筋肉も…)

そこで彼女はぼぉっと霖之助の裸を見ていることに気づき、

賺さず上を向く。

霖之助は、メガネがないので何も見えない。

色は認識できるので、魔理沙を見失うということはなさそうだが。

「さて、体洗うから1回出ようか」

そういうと、魔理沙を抱きかかえ浴場椅子に座らせ、

体全体を洗っていく。

「ば、バカ!どこ触ってるんだ、変態!」

「え?あ、気づかなかっ――」

言い終える前に、魔理沙の猫パンチが顔面にヒットした。

そんなこんなで、難関である風呂も終え、後は寝るだけである。









輝夜に風呂の中での事を聞かれ、

そのまんま、事情を話すも、

「つまんなーい」の一言で終わる始末。

何を期待してたのであろうか。

霖之助と魔理沙は一つの部屋を使うことになり、

猫1匹に布団を使うわけにもいかず、二人で一つの布団となる。

彼女も最初は強情張って、「私はここで寝る!」と、

奥の隙間に体を挟め、寝ようとするも、

春とは言え、夜はまだ気温が低く

このままでは風邪を引いてしまう。

「ほら、バカ言ってないでこっちに来るといい」

と、言うと使ってない布団の半分側の掛け布団を開き、

入ってくるよう促す。

最初は、「いい!」と言っていたものの、

じょじょに布団へ近づき、

とうとう霖之助の胸のうちに収まった。

普段ならここで、慌てる魔理沙も、

余程疲れてたのか、すぐに寝息を立て始めた。

霖之助は呆れ顔で苦笑いを作ると一言、

「おやすみ」と呟く。

すると、「みゃあ」と静かに鳴いたそうな。


                               ―続く?― 
お久しぶりです。

新シリーズはじめました。

動物が人になることを擬人化を呼ぶので、

最初擬態化シリーズだなんて本気で思ってた次第です(´・ω・`)

前回の霖之助ショタシリーズでは、

ちょっと暴走気味だったので、今回から落ち着いていこうかと思います。

遅くなりましたが、

これからも何卒この白黒林檎をよろしくお願いします。
白黒林檎
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コメント



0.1820簡易評価
6.80読む程度の能力削除
これは続きが楽しみ
9.90名前が無い程度の能力削除
幻想郷の猫な人達(星、おりん、ちぇん)に衝撃が走る―――!!
亭内のウサミミスト達にも衝撃が走る―――!!?

続きが楽しみ
13.80名前が無い程度の能力削除
これは新ジャンルだ。
続きを楽しみにしてます
17.80名前が無い程度の能力削除
まりりん! まりりん!
続きははたしてどうなるのか、楽しみです。
21.80名前が無い程度の能力削除
はてさてどうなることやら……
25.100名前が無い程度の能力削除
いや、良かった良かった
32.100名前が無い程度の能力削除
気にしては駄目ですよ、あんな連中の言う事なんて。
次もお待ちしてます。
39.100名前が無い程度の能力削除
続き読んできます
51.100名前が無い程度の能力削除
いいぞもっとやれ!