「お嬢様」
「何?咲夜」
「魔理沙達から今夜肝試しをするから来ないか、と誘われたのですが……」
「ふ~ん、肝試しねぇ……良いんじゃないの、行ってらっしゃい」
「お嬢様は来られないのですか?」
「私が肝試しに行って何するのよ。
脅かされても怖くないし、脅かしても誰も怖がらないでしょ。
あなた一人で遊んできなさい」
「分かりました。今晩は休ませていただきます」
「楽しんでくるのよ」
*
「……というわけで今日は咲夜がいないのよ」
「ふ~ん、咲夜ちゃんが一人で遊びに行くなんて珍しいわね」
「そうね、以前の咲夜だったら考えられない事だわ。
色んな奴等と会ってから大分丸くなってきたわね」
「それはお姉様もでしょう」
「あら、そうかしら?」
「自覚がないなんて重症ね。
そもそも側近をあっさり遊びに行かせてる時点で平和ボケの程が知れるわよ」
「そういうアンタは全然変わらないわねぇ」
「ずっと地下室にいるんだから当然でしょう。
私はお姉様達と違ってほとんど誰とも会ってないから角がとれないのよ」
「フランドールも丸くなってみない?
外で遊ぶのも楽しいわよ~」
「遠慮させていただきますわ。
私は地下で遊べてれば十分幸せよ」
「やれやれ」
「ところで」
「何?」
「お姉様何の用で来たわけ?」
「愛しの妹と親交を深める為」
「そういう冗談はいいから」
「可愛くない奴ねぇ。まあ違うけど」
「やっぱり違うんじゃん」
「全くの嘘でもないのよ。
……たまには上で一緒にご飯食べない?」
「それも冗談かしら」
「これは本当。
咲夜がいない日なんてめったにないからせっかくだから誘ってみたのよ」
「壊れるモノがなければ間違いも起きないからね」
「そういう事。どうかしら」
「う~ん……まあたまにはいいか。
メニューは?」
「ラーメン」
「これまた随分庶民的なメニューだこと」
「咲夜がいない間に満漢全席なんて食べたらかわいそうでしょ」
「咲夜ちゃんは本当に愛されてるわねぇ」
「あら、あなたの事だって愛してるわよ」
「分かってるわよ。毎日感謝を欠かさない程にね」
*
「久しぶりね、美鈴」
「おや、フランドール様じゃないですか。
随分久しぶりですね」
「最近はお姉様が咲夜ちゃんにかかりきりだからね。
会ったら嫉妬の余り潰しちゃいそうだから外に出ないようにしてるのよ」
「ははは、そういえばフランドール様は咲夜さんに会った事がありませんでしたね。
ところでお嬢様が今日はフランドール様も一緒に夕飯を召し上がるとおっしゃっていましたが」
「ええ、そうよ」
「分かりました。では今晩は腕によりをかけて作らせていただくのでもう少しお待ち下さい」
「待ってるのも暇だから手伝ってあげるわよ。
この唐辛子なんてどうかしら」
「フランドール様、そんなたくさん唐辛子の入った坦々麺なんて作ったらパチュリー様が死んでしまいます」
「超高高度までわざわざ遠征してスペルカードゲームしてくるような似非病人にそんな気遣いは無用よ」
「気質異変の時は何か魔法を使ってたんだと思いますよ……多分。
ま、まあそれ抜きにしても今夜は豚骨にする予定ですから唐辛子はいりませんよ」
「そう?じゃあ適当に具材でも切っておくわ」
「まな板まで切らないように気をつけて下さいね」
「指じゃなくて?」
「ただの包丁じゃあフランドール様の指は切れないでしょう」
「それもそうね」
「はい、お待たせしました。美味しいラーメンですよ~」
「豚骨ラーメン四人前入りまーす」
「ご苦労、美鈴……ってアンタ何してるのよ」
「フランドール様は私がラーメン作るのを手伝ってくれたんですよ」
「へえ、妹様って料理もできたのね」
「パチュリー、私だって伊達に引きこもってる訳じゃないのよ」
「フランドールもご苦労様。それじゃあ熱い内に食べましょう」
「「「「いただきます」」」」
「ご馳走様~。あ~お腹いっぱい」
「お粗末様でした。じゃあ私はお皿を片付けてきますね」
「行ってらっしゃい……あら?パチュリー寝ちゃってるわね」
「ああ、パチェなんか昨日は夜遅くまで色々やってたみたいだから疲れたんでしょう」
「魔女でも頑張ると流石に疲れるのね。
ふふふ、自慢の髪を椅子に結んでやろうかしら」
「こらこらやめなさい。パチェなら椅子を壊して抜け出しちゃうわよ」
「この娘も案外過激よね」
「……ねぇ、フランドール」
「どうしたのお姉様、急に真面目くさった顔して」
「あんたずっと地下に篭ってて本当に楽しいの」
「何を言い出すかと思えば……楽しいに決まってるじゃない。
本は好きなだけ読めるし、何を壊しても気にする必要ないし、魔法の研究だってやり放題。
好きじゃなきゃ引きこもりしてないわよ」
「分かんないわねぇ。
私だったら退屈で死んでるわ。やっぱり人生他の奴と遊ばなきゃつまらないわよ」
「それはお姉様だからでしょう。
私は今の人生で十分満足してるの。
勿論私以外誰もいなくなったら流石に退屈だろうけど」
「あんたと私の能力が反対だったら、また違ってたのかしら」
「さあね、そんな事分からないわよ。
ただし私にもあんたの咲夜ちゃんみたいな娘ができたら……
或いは変わるかも知れないわね」
*
「ただいま帰りました、お嬢様」
「お帰り咲夜。肝試しはどうだった?」
「楽しかったです」
「そう、それは良かったわね。
私も今日は楽しかったわ」
「?」
とっても面白かったです
カワイイのかもね。
>>1
咲夜をちゃん付けするのはフランドールの方が年上だから、という単純極まりない理由ではありますが気に入っていただけたのであれば幸いですw
>>奇声を発する程度の能力様
ありがとうございます!
シンプルな話ですが楽しんでいただけたようで嬉しいです。
>>3
自分は可愛いフランドールも好きですが、書籍文花帖のフランドールの言動に惚れたのでスレた性格にしてみました。