このお話は『お泊まりから始まるもの』の続きとにゃっております。
「あ、アリス……良いっ、んっ!」
「ちょっと、変な声出さないでよ」
「だってアリス、上手いんだもの……あぁっ! そこもっと!」
「はぁ……」
ベッドに俯せになっているパチュリーの背に、アリスは軽くまたがりながら、背中や肩のツボを押す。普段読書ばかりしているせいか、かなり凝っている。
アリスは指先に力を入れ、押す。その度にパチュリーがわざとらしく変な声を上げるものだから、アリスは参っていた。
「次変な声上げたら止めるわよ」
「む……分かったわ」
アリスの言葉に素直に頷くパチュリー。なんだかんだで、普通に気持ち良いから、止めて欲しくは無いのだろう。
「あー……流石人形を指先で器用に扱ってるだけはあるわね。指のテクニックが素晴らしいわ」
「これくらい誰でも出来るわよ。大体マッサージだったら美鈴の方が気を使える分凄いと思うけどね」
「いつも門番して疲れてる美鈴にそんなこと頼めないわよ。気を使うなんて、簡単に見えて実はかなり難しいのだから」
「へぇ……」
素っ気無いように見えて、実はちゃんと見てあげている。
パチュリーの意外な一面を見たなぁとアリスは感じる。
「まぁその分美鈴は、合間を見て勝手に眠ってるみたいだけど」
「そういえば、たまに美鈴の体にナイフ刺さってるのって……」
「咲夜のお仕置ね。咲夜は戦闘や状況把握などは鋭いけれど、近い人物ほど近すぎて、逆に分かって無いみたいね。美鈴は何も言わないで笑ってるし」
「あれ? でも近すぎるって、一番はレミリアじゃないの? レミリアにとっては完璧みたいだけど」
アリスは疑問に思ったことを口にする。
パチュリーは一瞬だけアリスをチラッと見て、溜め息を吐いた。
「貴女、鋭いようで鈍いわね」
「な、なんでよ?」
「レミィは主。常に気にかけるべき存在。それに対して美鈴は……そうね、咲夜にとっては、頼れるべき仲間、いやそれ以上なのかもね。とにかく、レミィが主だから接し方が違う。レミィを除外した場合、最も近いのが美鈴なのよ。だから、気付けない」
「……やっぱりパチュリーは凄いわね」
図書館に引き籠もってるだけかと思えば、そんなことはなかった。
やはり魔女というべきか、恐るべき観察眼だった。
「でも、それなら咲夜にそれを教えてあげたりしないの?」
「自分で気付かなきゃ、意味無いでしょう」
そして、魔女は厳しかった。
「そういうものかしらね」
「いや、まぁただ面白いから黙ってるのだけどね」
「……」
訂正、魔女は意地悪だった。
◇◇◇
「えーと……」
「何よ?」
「何でパチュリーは恥ずかしくないのよぉ……」
「魔女だから」
「ぅー意味分かんないわよ」
お風呂、というか大浴場。
使い勝手が分からないだろうと、パチュリーも一緒に入ることになった。パチュリーが服を脱いでいく度に、アリスは顔を赤くして、ぅーとか唸っている。
そんなアリスは、羞恥心のせいか、未だに何一つ脱いでいない。
「何? 一人じゃ脱げないの?」
「ち、違うわよ!」
「私が脱がしてあげましょうか? 実況しながら」
「最悪! わ、分かったわよぅ」
唸りながら、もたもたと恥ずかしそうに脱いでいく。
それを見たパチュリーは、
「なんか普通に脱ぐより、やらしいわ」
「っ!?」
と言った。その言葉に、顔を真っ赤にしながら勢いよく、というかやけくそ気味にアリスは全て脱いだ。ほぼ一瞬で。息切れしている。
「何をそんなに恥ずかしがるのよ。魔法使いでしょ?」
「関係無いでしょ!」
「アリス、綺麗ね」
「なっ!? どこ見て――」
「もちろん髪の毛よ」
「あ……そうよね、うん」
「どこだと思ったのかしら?」
ニヤニヤしながら訊いて来るパチュリーに、とうとう限界を超えたアリスは、無言で戸を開き、大浴場へ足を踏み入れた。
「あ、足元気をつけなさい」
「……」
パチュリーの忠告に無言で返す。どうやら怒ってしまったようである。
「足元に地雷一つ埋めといたから」
「何してんの!?」
無視出来ない状況だった。
「平凡な日々にちょっとしたスリリングを……」
「いらないでしょ!」
「咲夜が設置してって」
「咲夜が!?」
「レミィがお風呂苦手だからね。逃げないようにって」
「あーそんなに吸血鬼って水苦手なの?」
「力が一切入らなくなるってレミィが寝言で言ってたわ」
「へぇ……でも吸血鬼なら再生出来るけど、私とかパチュリーが踏んだら」
「大丈夫、踏んでも善行を積んでいれば地獄に落ちないって射命丸文が盗撮しまくりながら言ってたわよ」
「外す気は無いのね」
大きく溜め息を吐いているアリス。とりあえず魔法障壁を全開にする。それをパチュリーが解除。
「……」
「……」
再び魔法障壁全開、パチュリー解除。
「マホトーン」
「なっ!? 魔法障壁が出ない!」
「はいはい、私は埋まってる場所知ってるから私について来なさい」
「凄く怖いんだけど……」
足元の恐怖に怯えているアリスをパチュリーは、手をギュッと握る。
「ふえっ!?」
「……私から離れちゃダメよ」
一歩ずつ手を引きながら歩く。
カチリと音が聞こえた。
「えーと、パチュリー?」
「ごめん、踏んじゃった」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
現在パチュリーの足元に地雷。パチュリーが少しでも動いたら爆発だ。
ただでさえ暑さで汗が出ているのに、今度は冷や汗が流れる。
「アリス、貴女だけでも逃げなさい……」
「そんな……パチュリーを置いていけないわよ!」
本当はパチュリーは魔法で簡単に抜け出せるのだが、演技をしている。
「大丈夫、私には賢者の石があるから」
「貴女が死んじゃったら意味無いじゃない!」
というか既に足元に魔法を展開している。地雷、凍結完了。しかしアリスは気付かない。
「待ってて! 今咲夜を呼んで来るから! 時を止めれば脱出なんて楽に」
「全裸で?」
「はぅっ!? か、関係無いわよ! パチュリーの命の方が大切じゃない!」
パチュリーは走って行こうとするアリスの腕を掴み、そして――
「嬉しいわアリス」
「ひゃあ!?」
抱き締めた。
肌から直接伝わる体温が、妙に熱い。
「あ、パチュリー……貴女、騙したわね」
「いや、嬉しいわよアリス。貴女がそんなに私を大切に思ってくれてるなんて」
「ぅー……本気で心配したんだから! ていうか離れなさい!」
「あっ! そんな暴れたら……」
「きゃっ!?」
なんとベタな展開か。
アリスが暴れたせいで、パチュリーは体勢を崩してしまい、倒れてしまう。抱き締められていたアリスも必然的に倒れ込む。
結果、仰向けに倒れたパチュリーをアリスが押し倒したような、そんな状況だ。
「痛っ……」
「あ、ゴメンなさいパチュリー……って」
鼻と鼻がぶつかるような、吐息が敏感に感じられるような、そんな近い距離。
パチュリーもさすがにこの状況は恥ずかしかったのか、雪のように白い肌が、紅くなってゆく。
それを見たアリスも、紅くなる。
「……アリスのえっち」
「な!?」
「そんなジッと見つめられると、流石の私も恥ずかしいわ」
パチュリーを見たまま止まっていたアリスは、それを言われて、初めて気付いた。
そのせいで、改めて意識してしまう。
決して小さくは無い胸、もし強く抱き締めたなら壊れてしまうのではないかと思うほど華奢な体。呼吸をする度に、胸が上下する。玉のような汗までもが、光を反射し、美しさを増しているように見えた。
「あ、えーと……ゴメン」
「……うん」
その後、二人は湯船に浸かり、体を洗って、お風呂から上がった。
その間、会話は一度も交わさなかった。
◇◇◇
「ごめんなさい、これしかありませんでした」
「ううん、ありがとう」
アリスは小悪魔からパジャマを受け取る。フリルがついた、派手な装飾だが、淡い青がどこか落ち着いた雰囲気を漂わせるパジャマだった。
「アリスさん、どうしました?」
「え?」
「パチュリー様と何かありましたって顔ですね」
「え!? な、なんで!?」
「小悪魔ですから」
悪戯っぽく笑いながら、ウインクをする小悪魔。
「私でよければ相談乗りますよ?」
ニコニコ笑顔な小悪魔に、最初は相談するかどうか悩んでいたアリスだが、結局相談することにした。パチュリーを一番知っている人物だと、判断したから。
「実は、ね……」
「はいはい~」
先ほど大浴場であったことを小悪魔に話す。
それ以降、一度も会話を交わしていないこと。互いに気まずいこと。こんなこと初めてだから、どうすればいいのか分からないということ。
子どもみたいな悩みかもしれないけれど、小悪魔は決して笑わずに聞いてくれた。
優しく、微笑みながら聞いてくれた。
「パチュリー様もアリスさんも可愛いですねぇ」
「は?」
「そんな時は、どちらからでもいいからいつも通り話せば良いんですよ」
「でも、気まずいし……」
「このままだとパチュリー様と疎遠になっちゃうかもしれませんよ?」
「え? いや、流石にこんなことでそれは……」
「そう。アリスさんは今、『そんなこと』で悩んでいるんですよ」
「あ……」
「アリスさんは魔法使いでしょう。勇気も立派な魔法ですよ? ほら、だから」
アリスの背を軽く押す小悪魔。
そして笑顔で――
「頑張って下さい」
と言った。
アリスは、先ほどまでの悩みが、大分薄れた気がした。
「貴女、悪魔らしくないわね」
「な!? 失礼ですよ!」
「……ありがとう、小悪魔」
そう言って、アリスはパチュリーの部屋へ向かった。
小悪魔は、わざとらしく頬を膨らませながら小さく手を振っていた。
「パジャマを借りられたわ」
「……そう」
手始めに軽く話しかけてみるが、パチュリーは目を合わせないでベッドの上に座っている。
アリスは一歩ずつ歩み寄り、隣りに座る。それでもパチュリーは目を合わせない。
「ねぇ、パチュリー。今度一緒に研究して欲しいことがあるんだけれど」
「え?」
「ただ一日じゃ終わりそうに無い研究なのよ。だから、また泊まりに来ても良いかしら?」
笑顔でそう言うアリス。
パチュリーは、最初ぽかんとしていたが、しばらくして、
「えぇ、レミィにも伝えとくわ」
そう、クスッと笑いながら言った。
二人はその後、おしゃべりをした。なんてことないくだらないことから、魔法のことまで。
楽しそうに、少女らしい笑みで、話していた。
そして、いつの間にか話し疲れたのか、二人とも眠ってしまった。
◇◇◇
「パチュリー様にアリスさん、朝ですよ~っと」
ノックした後、小悪魔が部屋に入って来た。
「朝食の準備が調ってますよ~……ありゃ?」
そこで、小悪魔が見たものは、ベッドの上で穏やかに眠るパチュリーとアリスだった。
「……仕方無いですねぇ。また十分後くらいに来ますからね」
そう呟いて、寄り添い眠る二人に、軽く毛布を被せ、小悪魔は出て行った。
「んぅ……パチュリー」
「アリス……」
アリスもパチュリーも、今だけは、見た目相応の少女らしい、可愛らしい笑みを浮かべていた。
パチェアリ最高!!!ひゃっほー!!!!
しかし流石チョコレートより甘いことに定評のある喉飴さんのパチュアリだ!
甘さに痺れるッ!憧れるゥゥゥッ!
返事がないただの屍のようだ・・しかし、指を見ると
{アリパチュ・パチュアリはこの世の真理・そしてマイジャスティスをありがとう喉飴さん}
と砂糖の混じった血でそう書かれている
甘すぎて甘すぎてひゃっはーーー!!
脳が融けてる人はよっといでー
最近暑いからなあ、俺もアリスなめ回したい。
バカな!?遂さっきまで手元に大量の塩があったはずなのに…
まさか…全て使いきってしまったのか!?甘すぎるぅぅぅ!!
ちょっと・・・イカロ行こうかね?喉飴さんんん?
甘いなー。脳が融けそうだぜ。さて塩買いに行くか。
ぺこり。