日が落ち、妖が闊歩する夜。紅魔館の地下に位置する図書館にはひとつの動きがあった。
それは、図書館の主が本のページを捲る動きである。
パチュリー・ノーレッジは一冊の本を読んでいた。特に感情の起伏を表に出すことなく、しかしその心と指は好奇心に突き動かされていた。本と己の対比だけが彼女の世界だった。
その世界に新たな動きが加わる。一見して人間の姿を持ちながら、しかし人外であることを象徴する悪魔の翼を持った少女が、本を抱えて歩いてきた。
そして彼女はパチュリーに気付く。その反応はパチュリーに気付いたというより。
――私が読んでいる本が気になっているようね。
彼女――小悪魔は私が読んでいる本を見て不思議そうな顔をする。
「パチュリー様、何の本を読んでおられるのですか?」
彼女は尋ねる。さしずめ私が読んでいるこの本の仔細が気になって堪らなくなったというところだろう。
――そしてそれは、彼女もこの本のことを詳しく知らないということを意味していた。
私は彼女に見えるように本を持ち上げる。
「これは『夢幻館』って本で、さっきそこで拾ったのよ」
そう、この本、『夢幻館』は床に落ちていたのを拾ったものだ。最初は小悪魔の管理不足を疑ったものだが、この図書館の蔵書でないのなら合点がいった。
小悪魔は不思議そうな顔のまま、『夢幻館』と私の顔を見比べる。
「拾い読みですか? お行儀が悪いですよ」
笑みを浮かべて彼女はいう。普通なら意味の通らない言葉だ。「拾い読み」というものは、本の必要な部分だけを読んでいくことだ。それに殊更、行儀の悪い、作法のなっていないことなどない。そも、読書を他人に指図される謂れは無い。そして、私がこの本を拾い読みしていると判る要素など彼女には見つけられないはずだ。
思考を戻す。私はこの本を拾ったといった。なら「拾い読み」のここでの意味は、拾った本を読んでいることなのだろう。それにはどこか、行儀の悪い意味も含まれるかもしれない。拾い食いにも似ているな、と思う。
彼女はそのようにして、彼女の管理外の本を私が読んでいることを戒めたのだ。私がこの本を読み終わり、規則性を無視して本棚に突っ込むことがあれば、この図書館の整合性は失われる。
しかしそれが判らない私でもない。私がこの図書館の価値を貶めるようなことをするだろうか。私がそこまで不精すると考えているのだろうか。私はそれほどまでに信頼を得ていないのだろうか。いや、違う。
彼女は「拾い読み」と「拾い食い」を掛けていって見せたに過ぎない。この言葉遊びは彼女のユーモアなのだ。そして私に、ユーモアと主としての品格を問うているのだ。切り返す一言で、私の価値を決めようとしているのだ。
ならば、と思う。私が返すべきユーモア溢れる品格高い言葉とは何か。それを言葉にする。
「路傍の石にも世界の理を見つけ、究めていくのが魔法使いの美徳よ」
そして、笑みを見せる。私の鼎の軽重を問おうなど、小悪魔は甘い。この笑みは、優位を見せ付ける勝者の余裕だ。さあ感服しろ。だが、彼女は取り乱さない。小悪魔もこの図書館を預かる司書としての矜持があるらしかった。そしてその矜持にかけて、この本、『夢幻館』のことを知る必要があるのだろう。
その意気に答えるのも勝者の余裕か。私はそう考えて笑みを深くする。彼女にこの本を説明したところでこの本の詳細を得られるわけではないが、そんなことは読み進めていくうちに判ることだろう。そう、私はこの本について、何も知らないといっても過言ではない。冒頭を少し読んだだけで、私は疑問しか持ち合わせていない。しかしその疑問は私の好奇心をくすぐって止まないでいた。
その疑問とは。
「この本、何故か幽香が出てくるんだけど――」
疑問を放った、まさにその時だ。ドアの弾かれる音が耳に飛び込んできた。開かれる、ではなく、弾かれる、だ。そこまでに激しく、ドアを開いた本人は急いでいるか、気が立っているのだろう。そのどちらも、私にとって良いものになるとは思えなかった。
私は見る。開け放たれたドアをすでに後方においている飛翔体を。淡い紅を基調とした衣装に身を包んだ少女が、背から生やした悪魔の翼を鋭角的に伸ばしていた。それが、風を切る音とともに、私達の前に飛び込んできた。床を滑り、その勢いを殺す。ドアを開いた本人は、その様子から、急いでいたのだろう、と思った。
その少女は、この館、紅魔館の幼い主人である。吸血鬼、レミリア・スカーレット。それが彼女の名だ。レミリアは、制動が済んだところですっくと立ち上がると、私達の方を向いた。その表情は不機嫌そうだった。必死の形相にも見えた。
「私の――」
その語気は怒りだ。
「私のケーキを食べたのは誰っ!?」
レミリアは叫んだ。その語勢で、私の細い身体は吹き飛ばされるかと思った。事実、身体が傾いだ。
しかし、なぜ彼女が怒りに身体を震わしているのか、判らなかった。理由の判らない怒りなど迷惑なだけだ、と思う。だが、レミリアは私の友人だ。その友人はこの紅魔館の主である。友人の名誉のためにも私は彼女を駆り立てた理由を考えることにする。
彼女の叫んだ言葉を思い出す。「私のケーキを食べたのは誰か」という問いだ。そこから想像するに、彼女が大事に取って置いたケーキが、気が付いたら無くなっていたのだろう。レミリアは失意し、そして、ケーキを盗った犯人に怒りに燃やしたのだろう。たかだかケーキ如きで、と思うかもしれないが、個人の価値観は尊重すべきだ。しかしレミリアは紅魔館の主。彼女のケーキを奪うということは、その報酬に打ち首獄門に晒してもらえる。それが抑止力。この紅魔館に仕える者達が、主人のケーキを奪うことなどないだろう。なら、一体誰がそんなことをするだろうか。そんなことをしても平気な存在は一体誰だろうか。それは、例えば私だろうか? なるほど、そう考えると、ケーキを盗った犯人を捜す彼女が図書館を訪れたのも納得がいく。彼女のケーキを盗るなど普段の行いからして私しかいない。ははは、傑作だ。
そんなことはどうでもいいが、私はレミリアに言葉に違和感を覚えていた。それは本来有り得ないはずの既視感だ。一体どこでその言葉を聞いたのだろうか。私は無性に気になった。しかも、それはついさっきのように思えた。
心当たりがある。まさか、と思い、瞬時に身体は動き始める。言葉を探す先は、手の中の本、『夢幻館』だ。表紙からページを開く。言葉を探す。そして見つける。
『夢幻館』の冒頭。そこには、レミリアの叫んだ言葉がそれに近い形で記されていた。
それは、何故か。判らない。疑問は浮かぶばかりだ。答えを探して私は文章を読み進める。そして、私は気付く。この本の内容。それが。この現在の状況が。
「……シチュエーションがそっくりだわ……」
私は驚きのあまり声を上げた。
□
幽香はまるでこの事態を予言していたかのような本――『紅魔館』を閉じる。
今はくるみに本のことを説明しようとしているところだった。が、まずは部屋に飛び込んできた幻月の話を聞こうと、くるみに目配せする。
――一体どうなっているのかしら? その疑問を飲み込む。この『紅魔館』と実際に起こっていることの関連性は私しか知らないのだから、それを問うのは愚直だろう。私は夢幻館の主だ。夢幻館の主は動じない。まずは遠回しに、幻月に問う。
「ケーキがどうしたの、幻月?」
愚問だったかな、と思う。だが、状況を整理するためにも、幻月を落ち着かせるためにも、この質問は必要だと思った。しかし、そんな意図に反して、幻月は落ち着かない。
「私のケーキがないのよ!」
幻月は私を指差して叫ぶ。まるで私がケーキを盗った犯人とでもいうようにだ。例え本人に悪気が無かったとしても、周りから見れば私が犯人だと思われるだろう。誰がケーキを盗ったというのか。
鬱陶しく感じたのでその指を握って関節と逆方向に捻った。彼女は苦い声を出し、もがき、呻く。が、逃がさない。気持ちを落ち着かせることが必要だ。気持ちが落ち着くまでこうしておくことが必要だ。手を低い位置に持っていく。体重をかけて手前に引くことで、彼女の指に大きな力を加える。こちらに近づくことで固めが緩まるため、空いた手で彼女の肩を押さえることも忘れない。幻月の悲鳴はもう声になっていなかったが、暴れているうちはまだまだ続ける必要が、
「幽香様泡吹いてますから――!」
くるみの叫びに気付く。確かに幻月は口から泡を吹き出していた。ついでに目が虚ろ。なるほど、暴れているというか痙攣してたのか。……そうなるまでのことだったろうか? とにかく私は彼女の指から手を放す。一歩下がり、取り繕う言葉を考えたが、良い案が浮かばなかったのでそのままにしておく。
「――状況を説明するくらいしたらどうかしら?」
少しして幻月は落ち着きを取り戻した。息を吐き、あのね、と前置きをする。
「……私の部屋に置いてあったケーキが無くなってたのよ」
「へえ」
適当に相槌を打つ。その程度のことである。無くなっていたのなら、またメイドに要求すればいいだけのことだ。それをなぜ幻月は怒りに狂い、私のところまでやって来たのか、理解に苦しむ。
彼女は顔つきを真面目にする。その粛々とした雰囲気は、断罪者を思い起こさせる。そして彼女は罪を宣言する。
「これは由々しき事態です。我々は早急に対策本部を立ち上げなくてはなりません」
……ひとりでやってればいいのに。
時間の無駄だった。私は踵を返し、幻月に背を向ける。しかし彼女に慌てた様子は無い。彼女は厳粛な空気を纏ったまま、そこに凝然としていた。やはり彼女は断罪者であり続ける。
「私は――そんなさもしい根性を持った奴がこの館に居るということが、許せないわ」
その声は真剣そのものだ。たかだかケーキごときに、と私は思う。しかしそれはきっかけだけの話で、彼女はもっと重いものに目を向けているのかと勘繰ってしまう。
目を伏せる。その真剣さに当てられてしまったようだ。この悪魔にも悪魔なりに許せない意地があるのなら、それを手伝ってやらねばいけないような気がしていた。いわゆるお情けというものだ。それに、この館に盗みをはたらく者がいるというのは、私にとってもやはり気分のいいものではなかった。
それに――この『紅魔館』の謎を解かなければならない気持ちが止まない。この本が本当に未来を予知しているのか、そしてこの本が何を示そうとしているのか、確かめねば溜飲が下りないのだ。
「――わかったわ」
了承してしまった。幻月の頼みを断れない、腐れ縁のようなものを自覚した。そして、そんな格好の悪いことになっていても、悔しいとかみっともないとか、感情が何も起こってこないのだ。やはり腐れ縁なのかもしれない。私は、どうも幻月に弱いらしかった。
その幻月の顔がぱあっと明るくなる。それを見て、胸がすく思いだった。
「そう来なくっちゃ。じゃあ、私が探偵役ね」
そういって、楽しそうに辺りを跳ね回る。そこでやっと、嵌められた、という悔しい思いが沸き起こってきた。
私はその肩を強く押さえる。自らの立場を知れ、と。
「――まずは被害者から事情聴取を行うわ」
□ □ □ 現場調査&事情聴取1 被害者
紅魔館のテラス。月の光だけが辺りを照らしている。テラスからは整えられた庭が見下ろせる。時折緩やかな風が吹き、木々や草花を揺らす。それらは月光を反射して輝いていた。
――何だか珍しい物を見た気分ね。まあ、普段は図書館に閉じこもっているのだから仕方ないのだが。加えて、この眺めは紅魔館の主のために設けられているのだから当たり前なのかもしれない。たまに来るけれども、こうやって見下ろしたのは初めてかもしれなかった。
私は隣に目を遣る。そこには、その紅魔館の主――レミリア・スカーレットが不機嫌そうに頬を膨らませて立っている。
その彼女がいうのは、このテラスがケーキを盗られた現場らしい。
私はこの「ケーキ消失事件」を探偵として捜査する任を請け負った。まずは被害者の事情聴取を行うのだが、やはり現場で事件発生当時の状況を説明してもらった方が早いと思ったからここに来た。テラスには一組のテーブルと椅子。その傍にはティーセットを載せた配膳台が放置されている。お茶を楽しもうとするその直前だったということが容易に想像できた。
その楽しみが奪われ不機嫌になっているレミリアに向き直る。そして、いう。
「では始めましょう、レミリア・スカーレット。事件はいつ起こったのかしら?」
問いにレミリアは、ふん、と鼻を鳴らす。
「ついさっきのことよ。ケーキが無くなったと判ってすぐに図書館に行ったの。……パチェに事件を解決してもらおうと思って」
最後はどの口がいっている。――やはり真っ先に私のところへ飛んできたようだ。友人を疑うなど、なんてふざけた奴だ。その行いは心に刻んでおこう。まずは事件の解決が先だ。
次の問いに移る。
「ケーキが無くなる直前は何をしていたのかしら? もちろんお茶の用意を含めて直前のこと」
レミリアは紅い悪魔と呼ばれる吸血鬼である。強い力を持ち、弱点を突かれることが無ければ真正面で向かって勝てる者はそうそういない。だから、真っ向からケーキを奪っていったとは考えにくい。もちろん、弱点を突いてまでケーキを奪ったとも。考えられることは、レミリアが気を抜いていたか、目を離していたということだ。彼女の答えは後者らしかった。
「――花壇を見ていたら下から門番に声をかけられてね。ちょっと話してたのよ」
いって彼女は庭を見下ろす。視線の先には彩りの華やかで、目立った印象を受ける花壇があった。花形、という言葉が思い浮かんだ。
その門番というのは、紅美鈴のことだろう。彼女が非番のときに庭をいじっている姿は私も見たことがあった。
「会話の内容は?」
踏み込んだ質問。後に美鈴に話を尋ねて、会話の内容が合っているか確かめるのだ。
レミリアは首を捻る。
「そんな些細なこと、憶えていないわ」
憶えていない、か。美鈴の話の材料がひとつ減ったが問題ではない。
なら、これはどうだろう?
「さっき図書館まで飛んできた道程を憶えてる?」
その問いに、レミリアは眉を顰める。質問の意図が見えないようだ。だが、そんなことは問題ではない。私は答えを急かす。彼女は目を伏せて考えているようだが、両の手を挙げて、
「怒った勢いで飛んでたもの。そんなの憶えてないわ」
そう、と私は答える。もしやとは思ったが、彼女はほとんど何も憶えていないらしかった。
私はそれを知っている。レミリアには辛いことだろうが、私はその事実を教えてやらねばならない。彼女の友人として。
だから私は、宣言する――。
「貴方……痴呆症が始まっているわ」
レミリアは眉をひそめる。私を訝しむ。無理もないだろう。健忘の症状には自覚がない。突然自らが痴呆などといわれて認められない気持ちも判る。だが、これは変えようのない事実なのだ。
「貴方は自分でケーキを食べたのに、それを忘れてしまったのよ!」
「食べてないから。腹切って見せてもいいけど、食べてないから」
ならば腹を切ってケーキが出てきたら彼女はどうするのだろうか。
私はそれをしない。もしもケーキが出てきたら、彼女は自らの痴呆を認めざるを得なくなる。そのとき深い絶望に襲われてしまうだろう。それは避けたかった。自発的に判って欲しかった。
「レミィ、貴方は永遠に幼いまま介護が必要な生活を送るのよ。でも安心して、私がずっと付き添ってあげるから」
「――本気で頭に来てるからそろそろ止めてくれない?」
……むう。やはり理解は得られないか。しかしいつかはわかってもらいたい。そうなったとき、私達は共に歩んでいけるのだろう。だから今は我慢だ。
レミリアはこちらを半目で睨む。
「正直にいいなさい。――私のことを疑っているでしょう?」
彼女は問う。違う、とはいえない。私はレミリアが痴呆症であると疑っている。それはもう確信であるといってもいい。しかし、まだ理解が得られないというのなら、ここは隠し通そう。
「そんなことないわ。誰が友人を疑うものですか」
貴方とは違って、と出そうになる言葉を飲み込む。恨み辛みではいけない。
では、どのように説明つければいいのだろう。どのような言葉を付け加えればいいのだろう。出来るだけレミリアを傷つけないいい方で。こう、柔らかい言葉で。
「……貴方の事情聴取だけで事件が解決すればいいなって」
「それを疑ってるっていうのよ!」
わからず屋な。うーむ、そろそろ痴呆の相手をするのも疲れてきた。そういうのは咲夜にでも任せておけばいい。
苦し紛れに私は手の中の『夢幻館』を開く。
多少の違いはあるものの、やはりさっきまでの行動や会話が記されている。己の行動が予測されているのかと考えると不快だ。
既視感に襲われながら読み進めると、今現在私達がいる場面まで進む。捜査官の幽香は被害者である幻月と共にテラスを訪れている。そして、被害者は事件のあらましを語り始めるのだ。地の文は幽香の一人称になっている。どうやら幻月も健忘のきらいがあったらしい。しかし幻月も頑なに認めようとしない。お互い苦労するね、と物語の中の幽香に同情する。
ページを捲る中、ふと気付く。
「これを読み進めたら全部解決するんじゃないかしら?」
と、更なるページを開こうとするが、つっかえたように動かない。いくら擦っても、まだ現実に起こっていない出来事は読ませてもらえないようだった。
「そうは問屋が卸さない、ってわけねぇ……」
目次までページを戻す。それによれば、すでに解決編まで用意されているらしい。
――未来が決定されているとでもいうのか。私はこの『夢幻館』の通りに行動する運命の下にいるとでもいうのだろうか。そこに私が尽力する意味はあるのだろうか。……ただでさえ気が進まないのが、より一層やる気が削がれた。
それでも謎を解決しなければ気が済まないという矛盾が、私を苛めた。
□
現実の状況が進行しなければ、『紅魔館』の読める範囲も限られる。続きが読めれば未来が判るというのに、なんて面倒な仕組みなんだろう。このシステムを考えた奴は頭が悪い。
とにかく。
「さっさと説明しなさい。――私はこれ読んでるから」
「話聞く気ないよね」
口答えを無視して、私は顎で促す。幻月はうんざりしながらも説明を始める。
「……今日のティータイムはケーキにするつもりだったのよ。だから、ほら――」
幻月が指を差した先には、ティーポットやティーカップなどを載せた配膳台が佇んでいる。しかしそこには茶菓子にあたるものがなかった。彼女は手で形を示しながら説明する。
「ここにケーキが一切れ、置いてあったはずなの。それが門番との話が終わって振り返ったら無くなってたのよ」
その話が確かなら、犯行時間は話をしていた間になる。
「どれくらいの時間話し込んでいたのかしら」
「話し込んでいた、ってほどじゃないわよ。ほんの短い時間」
その短い時間にケーキを盗られたというのだろうか。目を離していた隙に、気付かれずに忍び寄ったというのだろうか。にわかには信じられないことだ。
「……まあいいわ。エリーに聞けば、アリバイの確認が出来るわね」
私は『紅魔館』を閉じ、腰を上げた。その時、正面に幻月の顔が映る。その表情は哀。
「ねえ、やっぱり私信用されてないの?」
それは犬にも似ていると思った。普段の自由奔放さは猫っぽい。そのギャップは嫌いではなかった。私は少しいい気分になったので。
「さあ?」
と、首を捻って見せた。
続きに期待
なおかつ、二つの本の存在を知っていてキャラクターのあたふたする姿を面白おかしく誘導することが出来る人物・・・そう!、犯人はじじじさん、貴方ですね!!
最初の作品で全何作になるか書いてないと
みんな食指を伸ばし辛いんじゃないかな?