※いきなりですが、バランは関係ありません。
バランが出てこないんだなんて絶対に許さないよ! という方は額にドラゴンの紋章を輝かせながら戻るボタンを押してください。
ちゅんちゅん……
一匹の小鳥が囀る朝。
今日は幻想郷の空気が、どことなくそわそわしだす特別な日である。
そう、今日はバレンタインデー。女の子からチョコレートを貰える、うきうきわくわくの日なのだ。
しかしフラグだとか、恋愛度が足りてない奴はもらえない悲しい日でもある。
そんな素敵な一日の始まりに、小鳥の優雅なメロディを聞きながら台所に一人の女性がいた。
魔界の神、神綺。またの名を「ドラゴンを跨いで通る」もとい、「魔界を歩いて渡る(マカアル)」と呼ばれている。
名づけたのは幼い頃のアリスだが、多分本人も忘れているだろう。
それはともかくとして、神綺は台所に居る事。それが重要なのである。
別に神綺が台所に居るのが珍しいわけではない。
むしろ朝ごはんは毎日神綺が作っている。
もちろん味は絶品で、アリスが時々里帰りしているのはこのためだと本人が言っている。
では何が重要なのか。それはただの台所ではなく、当たり一面が流血によって真っ赤にそまった台所だということである。
すでに乾いている血痕もあり、さらに禍々しい台所の中心に神綺はいた。
頭を垂れ、右手には包丁、彼女の赤いドレスが暗い赤に染まっている。
そして彼女の足元には、血のたまりがどんどん広がっている。
まるで地面から湧き出るように、とめどなく湧き出ている。
否、それは地面から出ているのは無い。
その血が湧き出ているのは……
「あうぅ~(ぼたぼた)……」
神綺の鼻からであった。
<バラン足りんでー?>
「神綺様おはようございま……きゃぁぁぁぁぁ!!」
魔界神一家が住む屋敷から悲鳴が響き渡った。
叫んだのはいつも朝早く仕事を開始する、魔界メイドの夢子だ。
魔界メイドとは、神綺にご奉仕することで毎日の活力を得ることが出来る特別に鍛えられたメイドの事である。
似た言葉に、紅魔館メイドというものがあるが、それはまた別の話。
いつもはゴキブリが現れたときくらいしか悲鳴を上げない夢子だが、台所の惨状を見てつい悲鳴をあげてしまった。
それもそうだろう。
人がすっぽり入るくらいの大きなお皿に溜まった血の池に、「裸」の神綺がうつ伏せになって倒れていたのだから。
「神綺様どうなされたのですか!?」
夢子は急いで神綺に駆け寄り、血によってくっ付いたお皿から神綺をバリバリと引っぺがした。
お皿には綺麗に1/1の神綺の型が取れていた。
あほ毛も、潰れた胸も、まだ産毛な魅惑のΔゾーンの部分も忠実に再現されていて、夢子は後で部屋に持ち帰ろうと思ったが、それもまた別の話。
「うに……あれぇ夢見ちゃんおはよー?」
「夢見は別人です。私は神綺様の可愛い娘の夢子ですよ」
「んー夢子ちゃんが二人いる……えへへ」
寝ぼけた神綺は、えぃっと夢子に抱きつき、胸に顔を押し当ててぐりぐりとした。
「ごはぁ! 裸の少女に抱きつかれる夢がまさかここで叶うだなんて!」
「はだか~? だれがはだかなの~?」
「いや、その、神綺様がですが」
「はえ?」
頭にクエスチョンマークを三個くらい浮かべた神綺は、スッと夢子から離れると自分の体を見下ろした。
みるみる内に顔が赤くなり耳が赤くなり、ぷるぷると体を震わすと、ぎゅっと目を閉じて地面にしゃがみ込んだ。
この間約30秒。
そして……
「……きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
本日二度目の悲鳴が、屋敷に響き渡った。
一日に二回も悲鳴があるのは、ゴキブリに遭遇した夢子の叫び声に駆けつけた神綺が、ゴキブリを殺そうと殺気立った時に、ゴキブリが逃げた先に夢子が居て、また叫び声があがった時くらいである。
「どどどどどどうして私裸なの!?」
「それは私が聞きたいくらいですよ。私が台所に入ったら血の溜まったお皿の上に神綺様が倒れてましたよ?」
「ユキちゃんとマイちゃんね!?」
おそらく、朝方に帰ってきたユキとマイの魔法使いコンビが、鼻血をどくどくと流しながら倒れている神綺を見て、お皿の上に盛り付けたんだろう。
そして貧血でうつ伏せに倒れて、そのまま一日が経過したのだ。
というわけで、力いっぱいに叫んだ神綺は漸く目を覚ました。
「夢子ちゃん一体全体どうなってるの!?」
「それは私が聞きたいのですが、とりあえずは神綺様は早急にお風呂に入られたほうがよろしいかと」
「あ、うんそうするね。ありがとう夢子ちゃん」
「はい。台所は私が片付けておきますので、ゆっくりと入って来て下さい」
少女入浴中……
『ふんふ~んふふ~ん♪』
「神綺様は上機嫌に入浴中。ミッションを速やかに遂行する」
夢子は耳に嵌めたイヤホンから聞こえる声に、時々身もだえしながらも台所の血をふき取り、大きなお皿を部屋に持ち帰り、冷蔵庫の中にあった1/1神綺チョコを見つけ土下座した。
少女信仰中……
「ただいまー。おぉ綺麗になってる!」
神綺がお風呂から湯気を上げながら戻ると、まるでリフォーム直後のように、台所はキラキラと輝いていた。
綺麗な台所には、綺麗なメイドさんがいた。
「あら、神綺様。お帰りなさいませ♪」
入り口に背を向けていた夢子は、同姓でも見とれるような優雅な動きと、可憐な笑顔で神綺を迎えた。
その様子は、振り向く動作が3回ほどスローで繰り返され、薔薇が顔の周りに散りばめられているような、そんな錯覚を覚えるほどだった。
そして神綺に一歩近づくと、そっとたしなめた。
「キッチンはキチンと使いましょうね?」
薔薇が散った。
「……夢子ちゃん。それを言いたいが為に、わざわざ派手な演出したの?」
「ご」
「ご?」
「ごめんな菜箸♪」
にっこり笑って菜箸を差し出す夢子。
神綺は慈悲溢れる笑顔で夢子に近づき、
そのまま歩行速度を緩めずに、夢子の右側を通り過ぎた。
「ちゃんと神綺1/1スケールチョコは固まってるかなぁ♪」
「神綺様ぁ。無視が一番つらいのですよ?」
「えっとね夢子ちゃん」
神綺は冷蔵庫に背を向け、人差し指を自分の頬に当てながら呆れた声で言った。
「夢子ちゃんがどんなキャラになっても、私は夢子ちゃんを愛してるよ? でもそのキャラは似合わないと思うな」
「あ、あ、あ、あ、あ、アイーーーーーー!?」
夢子は爆発した。
さすが魔界メイド、魔界神への信仰心は通常の3倍のゲインだった。
神綺の、親としてね。という言葉は聞こえていない都合のいい耳も、魔界メイドっぽくて素敵だった。
「とと、そんなことよりチョコチョコ~♪ 之作るのに一ヶ月かかったんだよね~」
冷蔵庫の蓋を開けたその先には、容量のほぼ100%を占めている神綺チョコ1/1があった。
本物の神綺にそっくりな出来のチョコ神綺は、ドレスの裾をふわりと広げ、両手をハートのマークにして微笑んでいる。
これぞ究極の手作りチョコ。重力だとか熱で溶けるだとかは魔界の力で全て無問題なのだ。
「どこも欠けてないよね?」
神綺が一個の巨大なチョコブロックから、手間隙欠けて切り出したチョコを入念に調べる。
パンツ部分にうっすらと浮かぶ縦一文字も、わざわざ幻想郷から歩いて帰ってきた後の状態を鏡で見て作ったのだ。
魔界の神としての、愛と夢と欲望の詰まったこのチョコ。一片の欠けも許されない。
「ん~……よし、完璧ね!」
「私も先ほど嘗め回すようにチェックさせていただきましたが、つま先の爪の長さから髪の毛の先まで、完全にトレース出来ておりましたわ。さすがです神綺様。でも胸だけは2.3cm大きく作られて……」
「夢子ちゃん。"魔界神の愛あんっ♪クロー"か"魔界の毒霧(即死級)"どっちがいい?」
「私は神綺様のその小さなお胸もちゅっちゅしたいのです!」
「神綺バスターーー!!」
「おぐほぁっ!」
本日一度目の断末魔の叫びと、背骨がやばい具合になる音が屋敷の台所から発せられた。
この声は割とよく耳にするので、小鳥たちは逆に安心したのか屋敷の屋根に戻って、またちゅんちゅんと歌いだす。
窓から2月15日の朝日が差し込み、眠らされた夢子の髪がキラキラと金色に輝く。
その輝きは彼女の淡い恋心のように。その寝顔は幸せに包まれ、その寝顔こそがまるで太陽であるかのように綺麗だった。
……と書くと綺麗だが実際には、逆さまに足を投げ出しながら白目を向いてる夢子の、染み一つ無い純白のレースパンツを太陽は照らしていた。
「バレンタインデー過ぎちゃってる!?」
場所は変わり、同日の昼の香霖堂。
なにやら昨日は騒がしい事件があったようだが、幸いなことに今日は平穏な一日なようだ。
その静かな香霖堂の中に、絆創膏と包帯だらけの店主が座っていた。
今日も外から流れ着いた「きまぐれオレンジ○ード」という漫画を読んでいた。
「こんにちわー……すいません部屋間違えました」
「多分だけど間違ってないよ。いらっしゃい」
「霖之助さん!? どうしたんですかそのミイラ男みたいな格好は?」
駆け寄る神綺を確認した霖之助は、本の開いているページを下向きにしてカウンターに置いた。
いつもなら頭から突撃して膝の上を占領するのが神綺スタイルなのだが、今回ばかりは霖之助の前でおろおろするばかりであった。
霖之助は、専用のベッドを洗濯されている猫みたいだな、と苦笑いしたが包帯のせいでよく分からなかった。
そしてこんな状態になった訳を話そうと、頭に巻いている包帯をぐるぐると解き話しだした。
「昨日の午前中にいきなり霊夢が来てね。チョコレートあげるから今までのツケをちゃらにしろと……」
「チョコレート、ですか……」
「そしてなにを勘違いしたのか、いきなりカウンターと床の隙間から出てきた紫が引っかいた傷がこれだ」
霖之助が頬に張ってあるガーゼをめくると、綺麗に4本のスジが出来ていた。
蚯蚓腫れとかいうレベルを超えて、鋭利な刃物で斬りつけたような傷になっている。
「うわぁ……痛そうですね」
「勘違いして悪かったと、お詫びにゴディ○?のチョコレートを置いていったんだが一緒に食べるか? はい、あ~ん」
「え? えっとぉ……遠慮しておきます」
「そうか、美味しいんだが。神綺がいらないというなら僕が貰おう」
「あ……(おしいことしたかな。むしろ全部私が奪った方がよかったかな……?)」
神綺から出てる黒いオーラに気が付かない霖之助は、チョコを一個口に含むと話を続けた。
「そして二人が帰った後、いつもながらいきなり魔理沙が突撃してきて、毒見をしろと……」
「そこに何故かパチュリーとアリスとその他大勢が押し寄せて、できたアザ達がこれだ」
おもむろに上半身裸になると、日常生活で鍛えられたしなやかな筋肉が姿を見せた。
しかしその体にはアザだけでなく、ひっかき傷や刺し傷、噛み跡まである。
実に痛々しい状態になっていた。
「そして彼女達も商品を壊したお詫びとしてチョコを大量に置いていってな……処理しきれないから里の子供達に配ろうと思ってるんだ」
神綺から、プッチンっとなにかが切れる音がした。
それと同時に、押さえていた黒いオーラが部屋中に広がる。
笑顔のまま立ち上がった神綺は右腕を伸ばすと、霖之助に対して死刑宣告を告げた。
「とりあえず"魔界神の愛あんっ♪クロー"です☆」
「なっ!? 神綺ちょっと待て、本気で黒いオーラが出てギャアァァァァァァ!!」
「う……ん……あれ、僕は気絶していたのか」
窓から差し込む月明かりが、霖之助の顔を薄く照らす。
額に乗っている濡れタオルはおそらく神綺が置いてくれたのだろう。
まだ冷たいところからして置かれて間もないようだった。
ふと何かの気配に気付き辺りを見回してみると、窓の傍に人影が一つあった。
「神綺か? そんなところに立って何を……」
めがねを掛け直し神綺へと近づく。
そしてその人影を目の前にして、漸く気が付いた。
「これは銅像……いや、この甘い匂いはまさか、チョコレート?」
そこには1/1神綺チョコが立っていた。
溶ける様子もなく、かわいい笑顔を霖之助に向けている。
「すごいな。実は神綺がチョコを上からかぶっているということは……ないか」
人差し指の部分をひと舐めして、これは100%チョコレートであると確信した。
そう、彼の能力が告げていたのだ。
――名称:1/1神綺型チョコレート
――使用用途:霖之助に食べてもらう事
「まいったなこれは……他の人にあげられないじゃないか」
もっとも、だれかほしいといってもあげるつもりも無いが、と言いつつメガネを外した。
そして1/1神綺型チョコレートの顔を正面に見据える。
「神綺、ありがとう。これは僕の気持ちだ」
そして顔を近づけると唇をそっと……
「あ、霖之助さん。起きられたんですね」
「いやーすごいなー! 造形が細かいし、髪の毛の流れとかまさに芸術だね! 本当にすごいなーハハハ」
「? はい! 気合いれて作ってみました!」
「うん、なんだか食べるのが勿体無いよ」
何故か顔を合わせようとしない霖之助に神綺がとてとてと近づく。
薄暗くて神綺の顔が良く見えないが、声の調子からするときっとニコニコなのだろう。
そういえば傷がほとんど治っている。神綺がなにかしてくれたのかもしれない。
「ところで霖之助さん?」
「な、なにかな神綺君」
「チョコ神綺の唇の味はいかがでしたか?」
「!? あ、アハハ。と、とても甘くて美味しかったよ?」
月明かりがやっと神綺の顔を照らす。
そこにはチョコと同じ笑顔があった。
「そうですか。どんな味なのか私も知りたいなぁ」
「しん……き?」
霖之助の目の前で、神綺は止まった。
そして両手を霖之助の肩に乗せ、背伸びをする。
呼吸がかかるほどの距離で、神綺の唇が動いた。
「唇にチョコレートが付いてますよ? 私が……とってあげますね」
* * * * * * * * * * *
<おまけ>
紅白「えっと、その……ごめん。こんなのでツケをチャラにしてもらおうと思った私が悪かったわ。他意? あるわけ無いじゃない。魔理沙じゃあるまいし」
白黒「ちょっと特殊な薬を混ぜたから、本当に毒見させようとしただけなんだぜ。他意? あるわけ無いだろう? 霊夢じゃあるまいし」
覚「ふぅ……素直になればいいのに」
小石「どうしたのおねえちゃん?」
覚「こいし!? そそそそそうだ、おやつに生チョコを作ってみたの。よかったら一緒に食べない?」
小石「ん~……外で沢山もらったから今日はいいや」
覚「なん……ですって?(ビキビキィ)」
……ああ、そういう意味だったのか!←遅い
弁当の仕切りの緑の葉っぱがどこで出てくるのかと思いながら読んでた。
誤字とか変換とかがおかしいのはまあいいとして、意味がわからないのがいくつか。
「神綺が一個んぼ巨大なチョコブロックから、」??
「私は神綺様のその小さなお胸もちゅっつしたいのです!」ちゅっちゅ?
「重力だとか熱で溶けるだとかは魔界の力で全て無問題なのだ。」
寒い部屋の中で巨大なチョコの塊から削り出せば現実に可能ですよ。
ところで神綺1/1チョコは服を着てたか着てないかそれが問題だ。
んんんんんんん霖之助の服透けろに見えた我はもう末期ですぞ~~~~~!!!11!
>ああ、そういう意味だったのか
ごめんね時期はずしててごめんね。ホワイトデーははずさないと思ったら例大祭当日じゃないですかやったー!
>意味がわからないのがいくつか。
三回集中して読み直したのに気がつかないとか我の目は節穴EYEすぎる・・・
教えてくれたありがとうございます!
>神綺1/1チョコは服を着てたか着てないか
少なくともおふぁんつは穿いてますよ?
そしておふぁんつが見える状態でもある。
あとはどういうことか分かるな?(ニヨニヨ
しかもおふぁんつが“見えている”という事は……
待て待て慌ててはいけない。
もしかしたら、覗符「下から覗き込み」を使用しているのかもしれない。
しかしこのスペカは封印されているはず……使用中に、親、妹、姉、幼馴染♀、彼女に見られてしまうという危険が伴うからだ。
>ゾクゾクするね(爆
時々中身が入れ替わおっとこれ以上はイクさん並に空気がデンジャーだぜ
>ゆかりに引っかかれたら死にそうっす
ゆかりんは実は南斗水○拳の使い手!? シャオーー!!
>愛が怖い幻想郷だな……
愛されるよりも愛したい本気で。
つまり彼女達の本気は人間を凌駕しているだけで、彼女達にとっては普通の事なんだよ!
愛コワイ愛コワイ
>タイトルのバランでダイ大でgはなくバランドランを連想してしまった。
スパロボに出てくる鉄球を振り回すってそれはバラン・ドバンや!(一人乗り突っ込み
>夢子の冗談に使用でバラが足りないのかと思った
そ、その手があったか~~~~~!!
血の型で神綺抱き枕を使って一緒に寝るときは、薔薇を散りばめて雰囲気作りですね分かります
>神綺バスターkwsk
相手の両股を手で掴み頭上に逆さに持ち上げ、相手の首を自分の肩口で支える。この状態で尻餅をつくように着地し、衝撃で同時に首折り、背骨折り、股裂きのダメージを与える。相手を逆さまに肩口に乗せるように抱え挙げてる体勢はブレーンバスターと似ているが、技の種類としては関節技に近く、威力も全く違う
(wikipedhia@筋○バスター参照)
ブレーンバスターより強力だぜ!!