「咲夜。いい加減目障りだわ。始末なさい」
「仰せのままに」
紅魔館当主、レミリア・スカーレット。
彼女は幾千幾万の悪魔を統べる絶対最高の存在にして人々の畏怖の対象である紅い悪魔。
容姿は人間の幼女さながらであるが、背中にその身体に不釣合いなほどの大きな翼を持つ。
特級妖怪としての強大な力に加え、吸血鬼特有の特異な力も有している。
人々はその特異な力を─「運命を操る程度の能力」─と呼ぶ。
抗いようの無い力を有す彼女が、傍にいることを許した人間、十六夜咲夜。
彼女もまた人間とはかけ離れた尋常ではない力を有す。─「時間を操る程度の能力 」─人々にはそう、呼ばれている。
紅魔館でメイド長としてその傍ら、当主であるレミリアの従者として仕えている。故に、悪魔の狗と呼ばれることもある。
当主の命により、咲夜は動きだす。
「奴を始末せよ」…まったくもって簡潔で単純明快な命令だ。
戦闘を想定し、準備を整える。時間を操る力により、瞬きの間にそれは完了していた。
彼女は紅魔館の門を出た。奴、亡霊の西行寺 幽々子を倒すために─
咲夜は目標の棲む住居に降り立った。
そこは冥界に建ち、幽霊を管理する立場にある家である。白玉楼、そう呼ばれている。
「……居ない」
目標の姿形は確認できなかった。
手がかりになるものを探してみるも、それらしいものはない。
仕方なく、おおよその見当をつけ、そこへ赴くことにした。
目標の居る可能性が次に高いと考えた場所は、人里の茶屋。
亡霊の奴が楼の外をうろつくこと自体が稀なのだが、楼に居ないとわかった以上少しでも可能性のある場所を捜索せねばならない。
ということで第一の目標地点がこことなった。
「いらっしゃいませー」
茶屋の娘が愛想良く挨拶をする。普通に席につく振りをしながら、周囲を確認する。
「緑茶と串団子ひとつ」
不審がられないように適当に注文をする。
かしこまりました、とこれまた愛想よく返事をした娘は奥へ戻っていった。
目標、確認不可。重要人物、発見。
次の瞬間、世界が凍てつく。刹那、否それよりも速く、彼女は重要人物の向かいの席へと身体を移動した。
「ごめんあそばせ。とても美味しそうですわね」
「おや、こんにちは。咲夜さん。ここの団子は人里では有名でしてね」
重要人物。名は魂魄 妖夢という。
彼女は白玉楼の庭師、そして楼の主である西行寺 幽々子の剣の指南役としてある。
彼女ならば、主の行方を知っているであろうと考えた。
「でしょうね。私も知っているもの」
「そうですか。貴方も頼んだらどうです」
「そのつもり。でも、そんな時間はないみたい」
「時間がない。貴方らしい言葉だ」
「あなたに用があるの。いいかしら」
「……」
空になった湯呑。空になった皿、転がる竹串2本。
彼女は立ち上がった。勘定を済ませ、外へ出る。
ありがとうございました、愛想のよい声だ。この店の人気の理由のひとつだろう。
「いいんですか、咲夜さん。あなた注文したままでしょう」
「そういえばそうね。お店には悪いけどお団子は食べられないみたい」
気がつけば後ろにいる悪魔の狗。妖夢は、些か嫌悪感を覚えながら返す。
「ここじゃあできませんよね」
「私はどこでもいいのだけれど」
会話が途切れる。同時に、妖夢が脚に力を込めて、弩弓に弾かれるが如く駆け出した。
しばらく疾走し続けた後、ザッ、と砂煙を上げ立ち止まる。
周囲は障害物も無く開けた土地。人気も無く、静寂としている。
瞬きをすれば眼前にまたもや悪魔の狗。ここまでくるともはや自然だ。
ここで初めて、彼女らの視線がぶつかる。
刺すような視線に、お互い身動きが取れない。
先に動いたのは、悪魔の狗。
一瞬にして妖夢の周囲には無数のナイフが展開される。それぞれ切っ先を彼女に向けて空気を切り裂く。
─桜風剣「桜花天衝斬」
剣を横向きに振りぬく。そのまま一回転、剣から放たれた凄まじい剣圧が全てのナイフを弾き返す。
間髪入れず宣言する。
─瞬刹「冥王羅刹瞬断斬」ッ!!
大地を蹴り、一瞬にして五間の間合いを詰め相手の懐へ飛び込み、斬り払う技だ。
決まった。はずだった。
手応えが無い。振り払った剣は空を切る。
「フフフッ、速いですわ。私もお得意の手品を披露して差し上げましょう」
─奇術「シルバーライトアヴェンジャー」
永続的にナイフを放つ。
相手が悪かったか今のところ全てのナイフを弾き落とされているが、相手は受けの態勢を取らざるを得ない。
一度ミスでも犯そうものなら無数の銀の刃の餌食になるだろう。
…百本。二百本。千本…。
何度ナイフを投げたことだろうか、それを受けきるのも流石だが、今だ底を尽きないナイフも不思議だ。
咲夜は手を止める。
「お見事ですわ。スペルカード取得になりますわね」
「……」
「これじゃ埒があきません。次で終わりにしてあげましょう」
咲夜の手に魔力がこもる。
片手には蒼色の魔法書が携えられていた。
──彼女は、紅魔館に附属する大図書館に通っていた。
自らの持つ特別な力をもっと利用できる方法は無いか。
その答えをこの大図書館に求めたのだ。
彼女は学んだ。魔法を。
魔法書を読み漁った。しかし理解できなかった。
図書館の主の魔女に、魔法書はただの媒介であると説明された。
魔女に魔法入門書を借りた。
それから、他人の数百倍の勢いで学んだ。理解した。
彼女は、魔法の発現に詠唱を要する強力な魔法を専攻した。
彼女は、究極魔法に手を出した。
通常、何時間もの詠唱を行い発現させることができる魔法だ。
本来は数十人で詠唱を行うものだが、彼女は一人で行ってみせた。
その、化け物じみた特別な力で。
時を止め、詠唱を行った。
過去に一度発現させたことがある。
魔法書から暴力的なまでのな魔力が流れ出し、術者の周囲の生物を蹂躙した。
魔法が止むと、周囲の生物は影も形もなくなっていた。
そんな魔法をこれから発現させようというのだ。
妖夢は、左手を左眼に被せる。
「……開眼ッ!」
妖夢の左眼の回りの血管が浮き出た。
そして蒼かった瞳は紅色へと変貌し、独特の模様が浮かんでいる。
その瞳は魂魄眼…そう、名づけられている。
この眼は魂魄家に伝わる魔眼であり、修行を重ねた者の中から、神に選ばれた者のみが開眼することができる。
その瞳に開眼したものは七大剣神の力をその剣に降ろし、神の力を借りることができる。
剣に剣神アグニセイバーの力が宿る。
剣を握る妖夢の手には自ずと力が篭る。
刀身から炎が噴出す。
「氷の究極魔法──」
「至高剣──」
『エターナルフォースブリザード』!!
『龍獄炎覇王斬』!!
氷の究極魔法、エターナルフォースブリザード。
一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる。
相手は死ぬ。
炎の最高剣技、龍獄炎覇王斬。
一万年もの間地獄で錬り上げられたとされる龍の炎を剣に宿し斬る。
相手は死ぬ。
史上最強の技がぶつかり合う……!
「最近あなた何書いてるの?」
「わぁっ!見ないでくださいよ~」
「…こぁ。誰にでも若き日の過ちというのはあるわ。だからこれは心の中に秘めておきなさい」
「何故ですか?」
「……」
月面波紋(ルナウェーブ)とか幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)とか
月兎遠隔催眠術(テレメスメリズム)とか、まさに厨n(アッー
こぁ、若いのね。
面白かったです。
厨二設定なんか、大好物なんだからっ!
ぐじょーぶ!ぐじょーぶよマイハニー!(なに
私の厨二設定だとポン刀持った姫様や白い軍服着たゆかりん、肉体言語でコミュニケーションするアリスさんとかしか居ないのでこあさんが羨ましい。
若さという過ちはあるのだがこぁの場合はもう年y(こアッー!!
>1番の名無しさん
鈴仙などが代表的ですよね。
他には…お嬢様?ああ、あれは小二びょ(アッー
>2番の名無しさん
「つぎにおまえ(作者)はありがとうございますと言う」
「ありがとうございます…はっ!」
僕のこぁのイメージはドジっ娘。そんでもって若い。
>3番の名無しさん
何を思ったかこの作者こんな作品を投下してしまいました。
でも面白いとの一言を貰えるのがとても嬉しいです。本当に。
>謳魚さん
僕も大好物ですよ。「ぐぅぅっ!また疼きだしやがった…こんなときにまでしつこい奴らだ…」
白い軍服のゆかりん…!?何かハマるッ!!
>5番の名無しさん
作者名でですとぉぉ!?(モニターの向こうで小躍りしてます)
こぁは年増と申したか。よし、聞いてこよう。こぁさん、何歳でs(こアッー!!
>>「~錬り上げられたされた~」→「錬り上げられたとされるorされた~」若しくは「錬り上げられた~」
ではないかと。