今日は恒例となった博麗神社での花見の日。
パチュリー様の魔法によって曇り空となったおかげで、吸血鬼であるお嬢様と妹様と共に、メイド長を務める私、十六夜咲夜と門番である紅美鈴は料理とお酒を持って博霊神社に訪れた。
「遅いわよ。」
私たちを見つけた途端、博麗神社の巫女博麗霊夢が笑顔で私たちに声をかけてくる。
見ると博霊神社の境内の桜の下では既に霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイト、冥界の西行寺幽々子と魂魄妖夢、守矢神社の東風谷早苗、河童の河城にとり、烏天狗の射命丸文、鬼の伊吹萃香、命蓮寺の聖白蓮を始めとする面々が集まっていた。
持ち寄ったお酒や料理を並べると霊夢が嬉しそうに料理の前に座り、その隣にお嬢様が座る。私はお嬢様の隣に座り、その隣には美鈴が座る。
妹様は料理もお酒もそっちのけで魔理沙と弾幕ごっこを始めた。
そして、霊夢は早速、凄い勢いで食べ始める。
「美鈴~!負けちゃったよ~!!」
しばらくすると、妹様が美鈴に背中から抱きついてきた。
丁度、美鈴は赤ワインを飲んでいた最中だったので、抱きつかれた衝撃で飲んでいた赤ワインを零してしまう。それも結構の量が入っていたので、首から腰の辺りまでびっしょりと。
赤ワインはシミになると洗ってもなかなか落ちないので、私は急いで美鈴の服に零れたワインを拭いてあげる。
「情けないわよ、フラン、見ていなさい。」
そう言いながらお嬢様は立ち上がると、妹様を連れて、魔理沙に弾幕ごっこを挑みに行く。
一通り赤ワインの拭き取った私はふと視線を感じ振り向くと霊夢が私を見つめている。
「どうしたの?」
「なんでもない。」
私の問いにそう答えた霊夢はまた料理を食べ始める。
(変な霊夢。)
そう思って私はお嬢様がいなくなった場所を詰め、霊夢の隣に座り直す。
時々横目で霊夢を見ながら、黙々と食事を続ける霊夢がいきなり食べるのをやめると私の方に一気に身体を寄せる。
その瞬間、今まで霊夢がいた場所に、お嬢様と魔理沙の弾幕ごっこの流れ弾が通り抜ける。
「こらー!こっちに飛ばすな!零れちゃったじゃない!!!」
お嬢様と魔理沙の方を見て霊夢は大声で文句を言う。
どうやら一気に身体を動かしたので食べていた肉じゃがが零してしまったようで、霊夢の服の胸の辺りを汚している。
そこにちょっとした違和感を感じる。
いつもの霊夢ならばこんなに身体を大きく動かさなくても流れ弾くらいかわしてみせる。
それも食事中ならば、すばやく結界を張り、防御している筈。
「あ~あぁ~。シミになったらどうしてくれるのよ。」
そう言いながら霊夢はチラチラと私の方を見る。
そこで私は先程感じた違和感の正体に気付いた。何のことはない、美鈴の零れた赤ワインを私が拭いてあげていたいる所を見ていた霊夢は嫉妬しているのことに気付いた。
あの程度のことで嫉妬する霊夢が可愛いと思うと同時に私の些細な行動に嫉妬してくれることが嬉しくも思う。
「霊夢、シミになる前に拭くからこっち向いて。」
私がそういうと霊夢は嬉しそうに私の方を向く。
「まったく子供なんだから。」
霊夢の服についた汚れを拭き取りながら、私は困ったものねと言う意味を込めて溜息の真似をする。
「仕方ないじゃない!」
そんな私の言葉になぜか怒りだす霊夢。
「そうね。仕方ないわよね。はい、終ったわよ。」
いきなり霊夢が怒りだした理由が分からないが、取り合えず同意して、霊夢に拭き終わったことを伝える。
「ありがとう。」
それだけ言うと霊夢はそれ以上何も云わず、食事を再開する。
(何が気に障ったのかしら?)
考えても理由が分からない。ふと見ると、霊夢のコップが空になっている。
「ワインで良いかしら?」
ワインのボトルをかざして、霊夢に問うが、霊夢は食べるのを止め、何かを一心に見ている。
霊夢の視線の先には幽々子がいる。
「霊夢、聞いている?」
「えっ?何?」
「ワインで良いかしら?」
「あっ、うん。ありがとう。」
そう言って、霊夢が差し出したコップに私はワインを注ぐ。
霊夢は、少しワインを飲むとまた食事を再開する。
(何で亡霊なんて見ていたのかしら?)
霊夢の行動が分からない。
「分かった?フラン。弾幕は優雅で美しく、その上で勝ってこそよ。」
「そんなこと言って、お姉様だって危なかったじゃない。」
「それでも勝ったのは私よ。」
お嬢様と妹様がそんな会話をしながらこちらに戻ってきた。どうやら魔理沙との弾幕ごっこは、お嬢様に軍配が上がったようだ。
私は急ぎ美鈴の方に寄り、先程までお嬢様が座っていた場所を開けると、お嬢様は早速その場所に座る。妹様は美鈴の隣に座り、美鈴と話をしている。
「霊夢も見ていた?私の華麗な弾幕を。」
お嬢様の言葉につられ私も霊夢の方を見ると霊夢はまた食べるのを止め一心に何かを見ている。
(また亡霊を見ているのかしら?)
そう思い、霊夢の視線を追うと今度は白蓮を見ている。
「霊夢、聞いてるの?」
お嬢様は霊夢からの返事がないので今度は大声で霊夢で問いかける。
「あぁ、終ったの?」
「終わったわよ。……見てなかったの?私の華麗な弾幕を。」
「見てないわよ。こっちは食べるのに忙しいんだから。」
(忙しいと言っている割には、先程の亡霊に続いてお寺の住職を一心に見ていたみたいだけど、どうしたのかしら。)
ふと気付くと視線を感じ見ると、今度は霊夢が私の方を見ている。
(なにかしら?)
今度は霊夢が私の方を見ていると思うと緊張してしまうが、微妙に視線が私からズレていることに気付いた。
改めて視線を追うと私の隣に座る美鈴を霊夢は見ている。
(何故、私じゃなくて美鈴を見ているのよ……)
私もがそう思った瞬間、霊夢が私の視線に気付いたのか私の方を見て、ふっと溜息をついた。
(……何か言いたいことでもあるのかしら?)
そう思い霊夢を見ていたが、霊夢は何も云わずにまた食事を始めた。
その後、霊夢は何度か同じ行動をしている内にお酒も料理も尽きて、お花見はお開きになった。
私はお嬢様達と一緒に紅魔館に帰ると、食器の洗浄を始める。
洗いながらも霊夢の今日の行動を考えてみる。
西行寺幽々子と聖白蓮、そして紅美鈴を一心に見ていた。そして私と目を合わせて溜息。
考えている内に一つの仮定に辿り着いた。
それは胸の大きさ。
西行寺幽々子と聖白蓮、そして紅美鈴の3人(?)の共通点は皆、胸が大きい。
そして、私はと言うと……いや、決して小さいわけではない。ただ、あの3人が私より大きいだけ。
だいたいあまり大きいと仕事をするにしても、弾幕ごっこをするにしても邪魔になる。
それに胸と言うのはただ大きいだけではいけないと思う。
大きさだけでなく形と張りや色だって大事だと思う。そう考えれば私の胸は美乳と言って良いと思う。他人に見せて回る気はないけれど……
それに胸が大きい方が良いなんて霊夢がオヤジ臭い事を考えるとも思えない。
私は思いついた仮定を否定した。
しかし、母性イコール胸の大きさとは思わないが、母性を示す一要素とは考えられなくもない。そして、霊夢はかなり前から母親がいない。そう思えば母性に飢えていないとも限らない。
次々に否定した仮定を肯定する考えが頭に浮かぶ。
胸に手を当て、大きさを改めて確認する。
(確かに小さくはないけれど、特に大きいとは言い難いわね。もう少し大きくても良いかもしれないわ。それで霊夢が喜ぶなら……)
最後に、そんな結論が頭に浮かび、明日早速、図書館に豊胸の為の本を探しに行くことにした。
翌日、一通りの仕事を終わらせると図書館に行き、本を探す。
小悪魔が『何かお探しですか?』と声を掛けてきたが、はぐらかして答えて一人で本を探す。
そして、それらしい本を何冊か見つけ読んでみると、豊胸にはいろいろな方法があるみたいだけど、基本は食事と運動。
偶然なのか外の世界の本もあったが、聞きなれない言葉が満載で良く分からなかった。
なんでも、女性ホルモンという物質が関係していて、好きな人に胸を揉んで貰うと大きくなるという話もこれで説明がつくと言う胡散臭い解説が付いていた。
パチュリー様に読み解いて貰えば詳しく解説して貰えるのかもしれないが、恥ずかしくて頼めない。
第一、好きな霊夢に頼みたくても、恥ずかしくて胸を揉んで欲しい等と頼めないし、何より大きくなってから霊夢に会って喜ばせてあげたいと思う。
仕方なく基本に忠実に食事法とと運動法をすることにした。
まず、食事は大豆、卵、肉、魚、牛乳、玄米、野菜、果物を使い、栄養のバランス良く取ることに心がける。そこで、いつもしている料理と何も変わらないことに気付いたので、食事に関してはそのままとする。
そして、運動をして太らないように気をつけると同時に筋肉、特に胸の筋肉をつけて身体を引き締める。
後、いつもは仕事をするに邪魔になる時があるので少し小さめな下着で無理に抑えつけていたが、丁度良い大きさの下着を着用する。
それを毎日続けると、2ヵ月過ぎた頃には、誤差ではなく確実にトップとアンダーの差が今迄より1cm増えた。
(ほんの僅かな1cmだけど、私と霊夢の二人には大きな1cmだわ。)
加えて、気をつけて運動をしたことによりお腹も腰回りもお尻も太股も今まで以上に引き締まり、本来のサイズに合わせた下着をつけたことで、服を着た状態では分かりにくいが今迄以上にプロポーションが良くなっていた。
早速、博霊神社に霊夢を尋ねると、げっそりとやつれた霊夢が出てきた。
「あっ、咲夜……」
「どうしたの?」
「ちょっとね……」
それだけ言うと霊夢は気を失ってしまった。
あわてて私は霊夢を抱き止めると、霊夢が以前より痩せていることに気付いた。
急ぎ、布団を敷き霊夢を寝かせ、額に手を当て熱がないことを確認し、続いて脈をとる。
特に異常がないようだが、以前より痩せたと言うことはろくに食事をとっていない可能性がある。
胃腸が弱っていると思われるので梅干しとお米だけでお粥を作る。
お粥の香りに気付いた霊夢が目を覚ましたので、お粥をお椀によそり、霊夢の所に持っていく。
「お粥、食べるでしょ?」
「うん……」
そう答えた霊夢に私はお粥を渡すと、霊夢は少しずつお粥を食べる。
「本当にどうしたの?」
「なんでもない……」
「こんなになって、なんでもないわけないじゃないの。」
「一寸いらない脂肪を落とす為に食事制限をしていただけ。」
「なんでそんなことしたの?」
「……ちょっと、お腹なんかの脂肪を落とせば結果的に胸が大きくなるかと思ったのよ……」
最初の内は適当に誤魔化そうとしていた霊夢だが、私が本気で怒っていることが分かったのか小さな声で答えを返す。
「そんなことしても大きくなるわけないじゃない。」
大きい胸が好きな霊夢だからと言って、霊夢自身が胸を大きくする意味があるのかよくわからない。だいたい脂肪を落とすも何も元々霊夢は痩せているくらいなのだ。
「わかっているわよ。私だって。本当は沢山食べれれば良いんだけど、私の所には食べ物がそんなにあるわけじゃないし……だったら、食べる量減らしてお腹がへこめば、胸の大きさがそのままなら少しは大きく見えるかと思って……」
「だから、なんで、そんなことを……」
「だって咲夜は、胸が大きい方が好きなんでしょ?」
「そんなことないわよ。」
予想外の霊夢の質問に驚きながら私は答えを返す。
「嘘!お花見の時に美鈴の胸は触った後、私の胸触って『子供ね』って言った挙句、溜息までついてたじゃない!」
(……そんなことしたかしら?)
霊夢の言葉にお花見の時のことを思い出す。そして思い出した。確かにそれらしいことをしていた。
しかし、それは全くの誤解。
「霊夢、誤解よ。私が言ったのは美鈴に嫉妬して業と服を汚した霊夢のことを言ったのよ。一寸からかった言い方になってしまったのは悪いと思うけど。だいたい、胸が大きいのが好きなのは霊夢の方じゃない。」
「私?私はそんなこと気にしないわよ。」
「でも、霊夢は幽々子や白蓮、美鈴の胸をずっと見た後に私の胸を見て溜息ついてたじゃない。」
「確かに幽々子達を見ていたけど、あれはあのくらい胸が大きければ咲夜が私のこと子供なんて言わない好きになってくれるかと思ったから……」
「だから、胸を大きくしようとして、無茶したの?」
「……うん」
私なんかの為に無茶をしてくれた霊夢が愛おしくなり思わず抱きしめてしまう。
「馬鹿ね、霊夢。胸の大きい小さいなんて関係なく、私は霊夢が好きなの。だから霊夢の胸の大きさなんて気にしていないわよ。」
「私だって咲夜が好きなだけで、咲夜の胸の大きくたって小さくたって気にしないわよ。」
霊夢はそう言って私を抱きしめてくれる。
「……咲夜……胸大きくなった?」
私を抱きしめてくれたまま、霊夢はそんなことを尋ねてくる。
「えぇ、ほんの一寸だけど……」
「もしかして私の為?」
「えぇ。」
変な気を回して想いがすれ違ってしまった為、霊夢に無茶なことをさせたことを反省し、素直に私は答える。
「ごめんね、咲夜。そして、ありがとう。」
「良いのよ。でも、ほんの少しだからわからないと思ったんだけど、なんでわかったの?」
「咲夜のことだから。」
「嬉しいわ。」
「お願いがあるんだけど。」
「何かしら。」
「胸を大きくする方法教えて。」
霊夢の意外な言葉に私は霊夢から身体を少し離し、霊夢の顔を覗き込む。
「霊夢、私は本当に胸の大きさなんて……」
「うん。咲夜がそう言うなら信じるけど、でも、咲夜は私の為に胸を大きくしたのよね?」
「えぇ。」
「だから、私も咲夜の為に大きくする。そうしないと咲夜が私を想ってくれてる気持ちに私の咲夜を愛する気持ちが負けた気がするから。」
「気にすることないのに。」
「駄目!絶対に負けたくないの!」
「わかったわ。覚悟知っておいてね。」
そう答えながら、私は図書館にあった外の世界の本に書いてあった方法を霊夢に試してみようと決めた。
2012.04.23 誤字訂正(ご指摘ありがとうございました)
パチュリー様の魔法によって曇り空となったおかげで、吸血鬼であるお嬢様と妹様と共に、メイド長を務める私、十六夜咲夜と門番である紅美鈴は料理とお酒を持って博霊神社に訪れた。
「遅いわよ。」
私たちを見つけた途端、博麗神社の巫女博麗霊夢が笑顔で私たちに声をかけてくる。
見ると博霊神社の境内の桜の下では既に霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイト、冥界の西行寺幽々子と魂魄妖夢、守矢神社の東風谷早苗、河童の河城にとり、烏天狗の射命丸文、鬼の伊吹萃香、命蓮寺の聖白蓮を始めとする面々が集まっていた。
持ち寄ったお酒や料理を並べると霊夢が嬉しそうに料理の前に座り、その隣にお嬢様が座る。私はお嬢様の隣に座り、その隣には美鈴が座る。
妹様は料理もお酒もそっちのけで魔理沙と弾幕ごっこを始めた。
そして、霊夢は早速、凄い勢いで食べ始める。
「美鈴~!負けちゃったよ~!!」
しばらくすると、妹様が美鈴に背中から抱きついてきた。
丁度、美鈴は赤ワインを飲んでいた最中だったので、抱きつかれた衝撃で飲んでいた赤ワインを零してしまう。それも結構の量が入っていたので、首から腰の辺りまでびっしょりと。
赤ワインはシミになると洗ってもなかなか落ちないので、私は急いで美鈴の服に零れたワインを拭いてあげる。
「情けないわよ、フラン、見ていなさい。」
そう言いながらお嬢様は立ち上がると、妹様を連れて、魔理沙に弾幕ごっこを挑みに行く。
一通り赤ワインの拭き取った私はふと視線を感じ振り向くと霊夢が私を見つめている。
「どうしたの?」
「なんでもない。」
私の問いにそう答えた霊夢はまた料理を食べ始める。
(変な霊夢。)
そう思って私はお嬢様がいなくなった場所を詰め、霊夢の隣に座り直す。
時々横目で霊夢を見ながら、黙々と食事を続ける霊夢がいきなり食べるのをやめると私の方に一気に身体を寄せる。
その瞬間、今まで霊夢がいた場所に、お嬢様と魔理沙の弾幕ごっこの流れ弾が通り抜ける。
「こらー!こっちに飛ばすな!零れちゃったじゃない!!!」
お嬢様と魔理沙の方を見て霊夢は大声で文句を言う。
どうやら一気に身体を動かしたので食べていた肉じゃがが零してしまったようで、霊夢の服の胸の辺りを汚している。
そこにちょっとした違和感を感じる。
いつもの霊夢ならばこんなに身体を大きく動かさなくても流れ弾くらいかわしてみせる。
それも食事中ならば、すばやく結界を張り、防御している筈。
「あ~あぁ~。シミになったらどうしてくれるのよ。」
そう言いながら霊夢はチラチラと私の方を見る。
そこで私は先程感じた違和感の正体に気付いた。何のことはない、美鈴の零れた赤ワインを私が拭いてあげていたいる所を見ていた霊夢は嫉妬しているのことに気付いた。
あの程度のことで嫉妬する霊夢が可愛いと思うと同時に私の些細な行動に嫉妬してくれることが嬉しくも思う。
「霊夢、シミになる前に拭くからこっち向いて。」
私がそういうと霊夢は嬉しそうに私の方を向く。
「まったく子供なんだから。」
霊夢の服についた汚れを拭き取りながら、私は困ったものねと言う意味を込めて溜息の真似をする。
「仕方ないじゃない!」
そんな私の言葉になぜか怒りだす霊夢。
「そうね。仕方ないわよね。はい、終ったわよ。」
いきなり霊夢が怒りだした理由が分からないが、取り合えず同意して、霊夢に拭き終わったことを伝える。
「ありがとう。」
それだけ言うと霊夢はそれ以上何も云わず、食事を再開する。
(何が気に障ったのかしら?)
考えても理由が分からない。ふと見ると、霊夢のコップが空になっている。
「ワインで良いかしら?」
ワインのボトルをかざして、霊夢に問うが、霊夢は食べるのを止め、何かを一心に見ている。
霊夢の視線の先には幽々子がいる。
「霊夢、聞いている?」
「えっ?何?」
「ワインで良いかしら?」
「あっ、うん。ありがとう。」
そう言って、霊夢が差し出したコップに私はワインを注ぐ。
霊夢は、少しワインを飲むとまた食事を再開する。
(何で亡霊なんて見ていたのかしら?)
霊夢の行動が分からない。
「分かった?フラン。弾幕は優雅で美しく、その上で勝ってこそよ。」
「そんなこと言って、お姉様だって危なかったじゃない。」
「それでも勝ったのは私よ。」
お嬢様と妹様がそんな会話をしながらこちらに戻ってきた。どうやら魔理沙との弾幕ごっこは、お嬢様に軍配が上がったようだ。
私は急ぎ美鈴の方に寄り、先程までお嬢様が座っていた場所を開けると、お嬢様は早速その場所に座る。妹様は美鈴の隣に座り、美鈴と話をしている。
「霊夢も見ていた?私の華麗な弾幕を。」
お嬢様の言葉につられ私も霊夢の方を見ると霊夢はまた食べるのを止め一心に何かを見ている。
(また亡霊を見ているのかしら?)
そう思い、霊夢の視線を追うと今度は白蓮を見ている。
「霊夢、聞いてるの?」
お嬢様は霊夢からの返事がないので今度は大声で霊夢で問いかける。
「あぁ、終ったの?」
「終わったわよ。……見てなかったの?私の華麗な弾幕を。」
「見てないわよ。こっちは食べるのに忙しいんだから。」
(忙しいと言っている割には、先程の亡霊に続いてお寺の住職を一心に見ていたみたいだけど、どうしたのかしら。)
ふと気付くと視線を感じ見ると、今度は霊夢が私の方を見ている。
(なにかしら?)
今度は霊夢が私の方を見ていると思うと緊張してしまうが、微妙に視線が私からズレていることに気付いた。
改めて視線を追うと私の隣に座る美鈴を霊夢は見ている。
(何故、私じゃなくて美鈴を見ているのよ……)
私もがそう思った瞬間、霊夢が私の視線に気付いたのか私の方を見て、ふっと溜息をついた。
(……何か言いたいことでもあるのかしら?)
そう思い霊夢を見ていたが、霊夢は何も云わずにまた食事を始めた。
その後、霊夢は何度か同じ行動をしている内にお酒も料理も尽きて、お花見はお開きになった。
私はお嬢様達と一緒に紅魔館に帰ると、食器の洗浄を始める。
洗いながらも霊夢の今日の行動を考えてみる。
西行寺幽々子と聖白蓮、そして紅美鈴を一心に見ていた。そして私と目を合わせて溜息。
考えている内に一つの仮定に辿り着いた。
それは胸の大きさ。
西行寺幽々子と聖白蓮、そして紅美鈴の3人(?)の共通点は皆、胸が大きい。
そして、私はと言うと……いや、決して小さいわけではない。ただ、あの3人が私より大きいだけ。
だいたいあまり大きいと仕事をするにしても、弾幕ごっこをするにしても邪魔になる。
それに胸と言うのはただ大きいだけではいけないと思う。
大きさだけでなく形と張りや色だって大事だと思う。そう考えれば私の胸は美乳と言って良いと思う。他人に見せて回る気はないけれど……
それに胸が大きい方が良いなんて霊夢がオヤジ臭い事を考えるとも思えない。
私は思いついた仮定を否定した。
しかし、母性イコール胸の大きさとは思わないが、母性を示す一要素とは考えられなくもない。そして、霊夢はかなり前から母親がいない。そう思えば母性に飢えていないとも限らない。
次々に否定した仮定を肯定する考えが頭に浮かぶ。
胸に手を当て、大きさを改めて確認する。
(確かに小さくはないけれど、特に大きいとは言い難いわね。もう少し大きくても良いかもしれないわ。それで霊夢が喜ぶなら……)
最後に、そんな結論が頭に浮かび、明日早速、図書館に豊胸の為の本を探しに行くことにした。
翌日、一通りの仕事を終わらせると図書館に行き、本を探す。
小悪魔が『何かお探しですか?』と声を掛けてきたが、はぐらかして答えて一人で本を探す。
そして、それらしい本を何冊か見つけ読んでみると、豊胸にはいろいろな方法があるみたいだけど、基本は食事と運動。
偶然なのか外の世界の本もあったが、聞きなれない言葉が満載で良く分からなかった。
なんでも、女性ホルモンという物質が関係していて、好きな人に胸を揉んで貰うと大きくなるという話もこれで説明がつくと言う胡散臭い解説が付いていた。
パチュリー様に読み解いて貰えば詳しく解説して貰えるのかもしれないが、恥ずかしくて頼めない。
第一、好きな霊夢に頼みたくても、恥ずかしくて胸を揉んで欲しい等と頼めないし、何より大きくなってから霊夢に会って喜ばせてあげたいと思う。
仕方なく基本に忠実に食事法とと運動法をすることにした。
まず、食事は大豆、卵、肉、魚、牛乳、玄米、野菜、果物を使い、栄養のバランス良く取ることに心がける。そこで、いつもしている料理と何も変わらないことに気付いたので、食事に関してはそのままとする。
そして、運動をして太らないように気をつけると同時に筋肉、特に胸の筋肉をつけて身体を引き締める。
後、いつもは仕事をするに邪魔になる時があるので少し小さめな下着で無理に抑えつけていたが、丁度良い大きさの下着を着用する。
それを毎日続けると、2ヵ月過ぎた頃には、誤差ではなく確実にトップとアンダーの差が今迄より1cm増えた。
(ほんの僅かな1cmだけど、私と霊夢の二人には大きな1cmだわ。)
加えて、気をつけて運動をしたことによりお腹も腰回りもお尻も太股も今まで以上に引き締まり、本来のサイズに合わせた下着をつけたことで、服を着た状態では分かりにくいが今迄以上にプロポーションが良くなっていた。
早速、博霊神社に霊夢を尋ねると、げっそりとやつれた霊夢が出てきた。
「あっ、咲夜……」
「どうしたの?」
「ちょっとね……」
それだけ言うと霊夢は気を失ってしまった。
あわてて私は霊夢を抱き止めると、霊夢が以前より痩せていることに気付いた。
急ぎ、布団を敷き霊夢を寝かせ、額に手を当て熱がないことを確認し、続いて脈をとる。
特に異常がないようだが、以前より痩せたと言うことはろくに食事をとっていない可能性がある。
胃腸が弱っていると思われるので梅干しとお米だけでお粥を作る。
お粥の香りに気付いた霊夢が目を覚ましたので、お粥をお椀によそり、霊夢の所に持っていく。
「お粥、食べるでしょ?」
「うん……」
そう答えた霊夢に私はお粥を渡すと、霊夢は少しずつお粥を食べる。
「本当にどうしたの?」
「なんでもない……」
「こんなになって、なんでもないわけないじゃないの。」
「一寸いらない脂肪を落とす為に食事制限をしていただけ。」
「なんでそんなことしたの?」
「……ちょっと、お腹なんかの脂肪を落とせば結果的に胸が大きくなるかと思ったのよ……」
最初の内は適当に誤魔化そうとしていた霊夢だが、私が本気で怒っていることが分かったのか小さな声で答えを返す。
「そんなことしても大きくなるわけないじゃない。」
大きい胸が好きな霊夢だからと言って、霊夢自身が胸を大きくする意味があるのかよくわからない。だいたい脂肪を落とすも何も元々霊夢は痩せているくらいなのだ。
「わかっているわよ。私だって。本当は沢山食べれれば良いんだけど、私の所には食べ物がそんなにあるわけじゃないし……だったら、食べる量減らしてお腹がへこめば、胸の大きさがそのままなら少しは大きく見えるかと思って……」
「だから、なんで、そんなことを……」
「だって咲夜は、胸が大きい方が好きなんでしょ?」
「そんなことないわよ。」
予想外の霊夢の質問に驚きながら私は答えを返す。
「嘘!お花見の時に美鈴の胸は触った後、私の胸触って『子供ね』って言った挙句、溜息までついてたじゃない!」
(……そんなことしたかしら?)
霊夢の言葉にお花見の時のことを思い出す。そして思い出した。確かにそれらしいことをしていた。
しかし、それは全くの誤解。
「霊夢、誤解よ。私が言ったのは美鈴に嫉妬して業と服を汚した霊夢のことを言ったのよ。一寸からかった言い方になってしまったのは悪いと思うけど。だいたい、胸が大きいのが好きなのは霊夢の方じゃない。」
「私?私はそんなこと気にしないわよ。」
「でも、霊夢は幽々子や白蓮、美鈴の胸をずっと見た後に私の胸を見て溜息ついてたじゃない。」
「確かに幽々子達を見ていたけど、あれはあのくらい胸が大きければ咲夜が私のこと子供なんて言わない好きになってくれるかと思ったから……」
「だから、胸を大きくしようとして、無茶したの?」
「……うん」
私なんかの為に無茶をしてくれた霊夢が愛おしくなり思わず抱きしめてしまう。
「馬鹿ね、霊夢。胸の大きい小さいなんて関係なく、私は霊夢が好きなの。だから霊夢の胸の大きさなんて気にしていないわよ。」
「私だって咲夜が好きなだけで、咲夜の胸の大きくたって小さくたって気にしないわよ。」
霊夢はそう言って私を抱きしめてくれる。
「……咲夜……胸大きくなった?」
私を抱きしめてくれたまま、霊夢はそんなことを尋ねてくる。
「えぇ、ほんの一寸だけど……」
「もしかして私の為?」
「えぇ。」
変な気を回して想いがすれ違ってしまった為、霊夢に無茶なことをさせたことを反省し、素直に私は答える。
「ごめんね、咲夜。そして、ありがとう。」
「良いのよ。でも、ほんの少しだからわからないと思ったんだけど、なんでわかったの?」
「咲夜のことだから。」
「嬉しいわ。」
「お願いがあるんだけど。」
「何かしら。」
「胸を大きくする方法教えて。」
霊夢の意外な言葉に私は霊夢から身体を少し離し、霊夢の顔を覗き込む。
「霊夢、私は本当に胸の大きさなんて……」
「うん。咲夜がそう言うなら信じるけど、でも、咲夜は私の為に胸を大きくしたのよね?」
「えぇ。」
「だから、私も咲夜の為に大きくする。そうしないと咲夜が私を想ってくれてる気持ちに私の咲夜を愛する気持ちが負けた気がするから。」
「気にすることないのに。」
「駄目!絶対に負けたくないの!」
「わかったわ。覚悟知っておいてね。」
そう答えながら、私は図書館にあった外の世界の本に書いてあった方法を霊夢に試してみようと決めた。
2012.04.23 誤字訂正(ご指摘ありがとうございました)
博麗
二人を見てると微笑ましくなりますね
咲夜さんがお姉ちゃんしてて素晴らしかったです
咲夜さんが豊胸術と称して霊夢の胸を揉む話をくだs(ry