於ける、三途の川。三途の川の水先案内人。小野塚小町の独り言
ようこそ三途の川へ!
おっとそんなにビックリしないでおくれよ。この鎌はサービスの一環見たいなもんだからさぁ。
死神ってこんな鎌持ってるのがそれっぽいじゃん?だからここの死神はみんな鎌を持ってるってわけ。
大丈夫だって!実際に切れはしないよ?多分。いやホントに。
自己紹介が遅れっちまったね。
あたいは三途の川の水先案内人、小野塚小町ってんだ。
ここからあたいの舟で三途の川を渡って、彼岸まであんたを送り届けるのが仕事さ。
彼岸についたらあんたは閻魔様の裁きを受ける。そしたらあんたは罪の重さによって処遇が決まるわけさ。
地獄に落ちるか天国に行けるかは、生前の善行次第だね。あたいの上司様は口酸っぱくして善行を積みなさい!っていってるよ。
ああ、その上司様があんたを裁くだろうけど安心していいよ。四季様は公明正大だし、なんだかんだで可愛いところもあるんだ。
さてと、それじゃあ舟に乗ってもらう前に渡し賃を払ってもらうよ。
なんだ?タダで行けると思ってた?甘い甘い!こちとら慈善事業でやってるわけじゃあないんだよ。
世知辛いと思われるかもしれないけど、あたい達の組織も財政難でねぇ。ここはびた一文まける訳にはいかないんだ。
お金は生前あんたに親しくしてくれた人たちが、あんたの為に使ってくれたお金の分だけ持っているはずだよ、出してご覧。
ひい、ふう、みい……っと、これはちょっと少ないかなぁ。ただこのお金は……
うーんあんた結構悪い事してた?なんて。冗談冗談。そういう理由じゃないねこれは。
あんた、生前は人に恵まれなかったみたいだね。言わなくても魂の色を見りゃなんとなく分かるんだ、生前どんな人だったか。
本当の悪人って奴は魂自体が気持ち悪い色してるんだ。たとえるならナメクジを半透明にしたみたいな……うひゃー!鳥肌が!
そんな奴は渡し賃も持ってないから、彼岸までたどり着けないし、あたいが三途の川に蹴落としてやるのさ!さっきの客みたいに。
あんたは不器用な人生だったけれど、人に優しくする事だけは忘れなかったみたいだね、見返りはなくとも。ん?ちょっと色が陰ったけど、大丈夫かい?
ともかく、ちょっと少ないから彼岸まで着くには時間がかかるだろうけど。そこはあたいがいるから寂しく無いはずさ!
ささ、乗って乗って。小さなボロ舟だけどタイタニックに乗った気分でドーンと座ってなよ。
せっかくの舟旅だから、のんびりあたいの歌でも聞いていっておくれ。
オホン。では一番!「千の風に……」
☆
於ける、町はずれの屋台。事件の第一発見者、作次へのインタビュウ。
―――ではお話を聞かせて貰います。最初に現場を発見したのはあなたとの事ですが、どんな様子だったんですか?
いやぁそれがもう。ビックリしたんだぜ天狗の姉ちゃん!その夜は一階で店番をしてたんだけどなぁ。タチのワリィ客ばっかでよぉー大変だったんだ!
旦那も店ほったらかしでどこかへ出ちまうし、全く少しは給料上げてくれても……おっとスマネェ。つい愚痴っちまったな。
で。突然二階から悲鳴が聞こえたんでな、なんだって思って見に行ったんだよ。すっとなぁ……聞いて驚け姉ちゃん!
何と!目ん玉がギョロっとして爪生やした妖怪が……女将さんを殺してやがったんだ!いやーあの光景は今思い出してもぞっとするなぁ。
―――はぁ。そうですか。
なんだよそれは。もっとこう、キャーとか、ウヒャア怖いですーとか反応してくれよ。そんなんじゃあこのインタビュウ?ってのしてやらねえぞ?
―――いやでも私こう見えて一応天狗ですからねえ。それに妖怪が殺したっていってもまぁ何と言いますか、幻想郷の様式美と言うか何と言うか。
わかってねえなぁ姉ちゃん。そりゃこの郷で妖怪に殺されたっていやあ余程そいつが間抜けだったか運が悪かったってことだろうよ。
それを一々悔いて、やれ妖怪憎しだとか妖怪を殺せだなんて喚いてる連中もいるようだがな。俺に言わせりゃ奴らこそ妖怪だな。
妖怪ってのはよぉ、つまるところ人間がそいつらの事を理解できないから勝手に境界を作って「妖怪」って呼んだ奴らの事だろう?
それならそんな事言う奴らを俺は理解できねえから「妖怪」ってことになる訳だぜ!
そうしたらこの幻想郷にいる奴は妖怪だろうが悪魔だろうが神様だろうが、みんな同じ仲間だってことだ!なぁ?分かったか姉ちゃん。
―――ええ、よーく分かりました。あなたが妖怪だってことに。では作次さん、妖怪になった感想を一つ。
おっ、言ってくれるじゃねえか、そういう切り返し方好きだぜ。じゃあ熱燗のおまけついでに事件の事について話してやるよ。
店は変わった造りでちょっと小洒落た料亭みたいな感じでさあ。ちょんと仕切られた小部屋にお客が入ってよ、色々な料理を振舞うわけさ。
評判の方は俺っちの腕が良いお陰だな、お客さんも美味い!って言ってくれてるぜ。あ、ここの部分は新聞に大きく書いといてくれよ。
二階の方は上客相手に使う大きい部屋があってな。予め話を貰っとくとかしない限りは通さねえのさ。
まぁ・・・中には断りきれないお客もいるけどな。特に天狗やら妖怪やらの中には突然来ちゃあ使わせろって言う奴らもいるよ。
その日も何組か妖怪が来てなぁ。幸い無茶言う奴は居なかったけど、大変なんだぜ?妖怪の酔っ払いさんを相手にするのは。
―――あやや、それはいけませんね。天狗仲間にも注意喚起しておきます。出来る範囲で。
おう助かるぜ!それでな、その日も朝から晩まで俺は頑張ったわけさ。
旦那は店にあんまり居ねえし、女将さんも忙しくなったら店に来てくれるぐらいで、実質店を回してんのは俺っちと小間使いのお琴さんぐらいさ。
ああ、店のすぐ裏にある小さな離れが女将さんが住んでる所でさぁ。店とは別々なんだよ珍しい事に。
しかもあんな狭そうな小屋……もとい屋敷になんのか?あそこには女将さんだけが暮らしててな。旦那さんはあそこには住んでないみたいなんだ。
でも女将さんは女将さんで旦那の事は愛しているって言ってたし旦那も度々顔を見せてたから……仲が悪かった訳じゃないと思うがなぁ。
話がまた逸れちまったな。
で、夜もずいぶん更けてそろそろ店仕舞いしようかって頃かな。二階から突然悲鳴が聞こえたんだ。まぁこのくだりはさっき俺が言った通りだ。
二階の大部屋の前にきたらな、襖が大きく開かれてたんで、ゆっくり、そーっと。中を覗いたんだよ。
そしたら背丈は俺くらいの目ん玉がギョロっとしてて、人間なら容易く切り裂けそうなほど鋭い爪はやした妖怪が、血だらけで倒れてる女将さんを見下ろしてたんだ。
暗がりで行燈くらいしか明りは無かったが、あれだけの特徴があれば流石に妖怪だって分かったぜ。俺を見たその妖怪は驚いたのか、窓から逃げて行きやがった。
その後はもう大変だったんだ。部屋は血まみれ。女将さんは死んでる。しかも真夜中と来たもんだからどうしたらいいか分からなくてなあ。
とりあえず寺子屋の慧音先生を呼んで事の次第を説明したんだ。しかしこんな時でも慧音先生は冷静でなあ、本当に頼りになったよ。
その後は姉ちゃんも知っての通りさ。店は里の自警団が取り調べしてて入れないし、巫女様はその妖怪の退治を頼まれたりして、まあ大騒ぎだよな。
俺はと言えばあれ以来店にも入れないし肝心の旦那も帰ってこねえってことで、ご覧のとおり屋台を引いてるって訳だ。
屋台になったからって味が落ちるわけじゃねえ。むしろ俺は何だかもっと美味い料理作れる気がしてきたね。
と、ここまでが事件が起こってから今までの話さ。どうだい姉ちゃん、満足してくれたかい?
―――それくらいは里の瓦版程度の情報です。私がわざわざ作次さんに話を伺いに来たのは、もっとスクープ級のでっかいネタが欲しいからですよ
だろうな。そうだと思ってたよ。あの出鱈目な文々。新聞を作ってる暇な記者さんがそんな情報で満足する訳がないよなあ?
旦那もあれから姿も見せないし、店の事に関しちゃ俺も気になってる事もあったし未練もねえ……いいぜ。もう少しあの夜の事を話すよ。
その妖怪は血まみれで倒れている女将さんを見下ろしていたんだが、俺の見たまんまの感想だと、なんか悲しそうだったんだよなぁ。
今にも泣きそう……とまでは行かないが、それこそ俺みたいどうしたらいいか分からなくて呆然と立ち尽くしている様子だったな。
俺が声をかけたら驚いて逃げちまったが見間違いじゃないと思うぜ。
―――ほほう、それはまた興味深い。妖怪が取るに足らない愚かで欲深で傲慢な人間の死を見て悲しそうにしていたと?
ね、姉ちゃん毒がきついぜ。暇っていったのは冗談だから……え?出鱈目のところも?ま、まあまあ落ち着いてくれよ。もっとおまけするから。
それで女将さんの死体なんだが、切り裂かれたっていうよりは喉元だけを切られて死んでたな。死体にもそんなに傷はついてなかったぜ。
あともう一つ気になるのが……その現場に包丁と汚い風呂敷包みが落ちてたんだよ。包丁には血がべったりついてて、風呂敷は同じように血まみれだった。
風呂敷包みを開いちゃあいないが、少しだけ見えたのは何かの肉のようだったなぁ。俺が考えるところだとあれは何か動物の肉だ。
あの夜の妖怪は包丁と風呂敷に包んだ肉を持って店に忍びこんだんだな。趣味は人間の肉集めか何かで。
それで、偶然二階にいた女将さんに出くわしたところを包丁で喉元を切り裂いて、肉を持ち去ろうとした……ってところまでが俺の推理さ。
―――それもまた面白い。何故そんなことしてるんでしょうかねえ。これは殺された事件よりそっちの方が気になってきちゃいますねえ。
まあ強引なこじつけもあったりはするが概ねそんなところだろうさ。この郷で人間が殺されるってのはさっきも言ったが間抜けか運が悪い奴だ。
でもそんな理由で何人も殺されちゃあたまんねえからなあ。その為の巫女様だしスペルカードルールってのもあるんだろうよ。
頭回んねえ俺っちはこうやっていかに美味い料理を作るか悩んで、人の喜んだ顔を見るだけさあ。
今の俺の夢は夜雀の姉ちゃんに負けないくらいの、幻想郷で一の屋台を引く事だな。
さ、これくらいで満足して頂けましたでしょうかねえ?天狗様。
え?料理は美味かったが話は上手くなかった?
ははっ。これはまた一本取られましたねぇ、それじゃあ今度来て頂けたときはもっと良い話と料理で迎えますよ。
お代はこちらで……はい、どうも。
毎度ありっ!またのお越しを!
☆
於ける寺子屋、里の守護者。上白沢慧音へのインタビュウ。
―――いやな……事件でしたね。
何を柄にもなくしおらしく言っているんだ。しかも顔はものすごくにやけているじゃないか。全く……どうせネタも無いからこの事件を追っているんだろう。
懲りないだろうが一応忠告しておく。毎度のように興味本位で事件を追わない方がいいぞ、知らないうちに敵を作って困るのはお前自身だろうに。
―――心配御無用。トラブルの種が増えるほど私のネタとスクープも比例して増えていくのです。これは記者として本望、むしろ喜ばしいことです。
そうか……まあ良いだろう、そのインタビュウに応えてやる。先日起こった事件についてだったな。
正しお前が望むような事を言えるとは限らない。私の分かっている範囲で答えよう。
―――はいはい有難うございます♪ではまず事件当夜のことから伺いましょうか。
最近評判になっていたあの店の料理人に、真夜中に叩き起こされてな。寝付く前だったから幸い状況をちゃんと把握することができたが、
話を聞いている内に大変な事が起こったと内心動揺して仕方がなかったよ。
そんなイメージじゃないって?それは私だって動揺する事はあるぞ、いつだって冷静な風に振舞っているが、実際私も怖い時は本当に怖いんだ。
だがそういうところを里の人々にはもちろん、寺子屋の子供たちにも見せるわけにはいかないからな。
皆の規律となるように心を強く持っていないといけないんだ、冷静そうにみえたのはその裏返しだよ。
オホン!ともかくだ。私が起こされて件の店に向かったのは皆も寝静まった時刻の事だ。
しかし夜遅くやっている店もあるようだから、事件が起きたその店もそんな口だったらしい。
中に案内されて現場を見た時の感想は、凄惨の一言に尽きる。首から噴き出した鮮血が天井まで達して部屋中に飛び散っていたんだから。
そこのところを詳しく?あんまり思い出したくないものだが答えると約束はしたからな。仕方ない、話してやるよ。
まず部屋の雰囲気なんだが……ただの料理屋と言うには何やらきな臭い感じがしたんだ。料理屋と呼ぶには違和感があるというか。
行燈の数も広い部屋を照らすには少ない、しかも布団まで敷いてあったなあの部屋は。
そう考えるとあの部屋はまるで……ああ、なるほど。そういうことか。それで納得がいくなこの事件は。
しかしまだ謎はあるな、どうしてそんなところにいたのだろうか……
―――突然考え出したあげく黙り込んで考え事ですか。しかも私の事は無視ですかそうですか……しくしく。
ああ、すまない。つい悪い癖が出てしまった。お前の話を聞いていて一つ分かった事がある、それを教えてあげるから機嫌を直してくれ。
まずその料理屋なんだが……どうやら娼婦宿として使われていたようだ。そう、人間が歴史に現れてから一番最初に行われた商売、売春だ。
この幻想郷では結界が張られて以来売春が行われるのは少なくなった。この結界から外に出られない以上里の人と繋がりを持たないといけない。
そうなると娼婦といっても里の人を相手にするなら顔も素性もすぐに割れてしまうし、風紀上堂々と娼館を作るわけにもいかないしな。
そういう背景もあって売春の話も聞かなくなって久しかったんだが……最近になってまた売春の報告が増えてきている。
つい先月の里長との話合いでもこの状況を見過ごすわけにも行かないということで対応の善後策を話し合ったところだ。
―――御盛んですねえ人間たちは。そんなに元気が有り余っているなら、私が相手してあげても良いんですけど……?ふふふ……。
冗談か本気かは分からんが、そんなに単純な話でも無いんだ実は。
その売春を取り仕切っているというのがな、ここからは大きな声では言えないが……里の有力者かもしれないんだ。
お前も知っているだろう。里で最も大きい料亭「夜行」を。その「夜行」の息子が事件の起きた店の主だったんだ。
里の管理者は内部情報にも精通してないといけないからな。プライバシーの侵害だ?お前に言われる日がくるとは思わなかったよ。
事件が起きた店「百鬼」は最近できた店と言う事だったんだが、つまりあの店は売春目的で作られていた可能性が高い。
それ以外にも夜遅くまで営業するようになった店も娼婦宿として使われている事が考えられるだろうな。
大きな料亭の一人息子とは言え店を出すには一人前と認められなければいけない筈だ、仮に認められなくとも親子の目的が一致していたら……?
娼婦宿として新たに店を出す事も大いに考えられることだ。
―――うーん。「夜行」さんへは天狗仲間と何回か行った事がありますけど。美味しい料理とお酒で良い店と思ったんですが。
それともう一つ売春が増えた原因の心当たりがある。
何年か前に幻想郷を大規模な凶作が襲ったろう?ああ、これもあまり思い出したくは無かったがな。里の事を考えても辛い歴史だ。
しかし辛いからといって無かった事にするのは愚かなことだ。自然に対する冒涜でもある。
この凶作の年に里の農家で口減らしが行われたんだ。お前たちのところにも……そうか。供養してくれているか。ありがとう。
その中で件の「夜行」が口減らしに出された子供達を奉公人見習いで雇うと言って大勢引き取っていった。
その時は心の広い御仁だと関心をしたものなんだが、後々の内部調査で虐待が行われている事が分かったんだ。
今更子供達の虐待を止めて親元へ戻せと言えるはずもないし、それに親自身子供を売ったという後ろめたさから何も言う事が出来なくてな。
当時の里長にも掛け合ったが、静観するしかないと言われた。それでも諦めきれなかった私は直接「夜行」の店主へも話をしに行ったさ。
結果としては……何も出来なかった。店主は頑なに否定するし子供達も報復を恐れてか口を閉ざしてしまってな……
それ以来この件には全く触れてこなかった、そしてまた最近増えてきた売春行為……この二つが意味している事は一つだ。
―――つまり、引き取った子供たちを金儲け目的で売春させていると?
ああ……忌むべきことだが、それしか考えられないだろう。奉公人として雇われた子供達は親元へも帰れず「夜行」の為すがままだ。
ただ親元へ帰ったところで身元は割れているんだ、すぐに連れ戻されてもっと酷い目にあう事を分かっているからどうする事もできない。
……本当に。何故、あの時もっと虐待を止めるよう強行に責めれなかったのか、悔しくてしょうがない。不甲斐ない自分を呪うよ。
私が身を挺してでも、あの店主を征する事が出来ていたなら……こんなことにもならなかっただろうに……
―――あーすいません。なんか重たすぎる方にお話が行っちゃってますが……事件のお話に戻っても良いですか……ね?
ああ。また悪い癖だ。本当にすまない、後悔するよりは今を変えるべく動かないとな。
それでその夜は里長と里の自警団に連絡を取って店を立ち入り禁止にすることで対応をとった。
女将の死体は死因を調査するために永遠亭へ運び込ませた。妖怪が下手人ということで、博麗の巫女にも事件の事は伝えて退治を依頼したよ。
「百鬼」の店主については料理人にも聞いたんだが、良く行方をくらます事があるらしくて、その日もどこかへ出かけたきり帰ってこなかったそうだ。
店が出来てからほとんど毎日出かけていたそうだし、おそろく今回の事件にも何か関わりがある筈だ。
私が事件について知っている事はここまでだ。良い記事がかけるといいな。
―――あやや、これは望外の御褒めの言葉、こういってはなんですが、珍しいですねえ私にそんな事いってくれるなんて。
今回の事に関しては少なからずお前に期待しているんだ。この事件を機に「夜行」を告発できるきっかけになればと考えているからな……。
私が声高に訴えても結局同じ“人間”でないという理由で躊躇して私の意見に付いてきてくれる人は少ないだろう。
それが里の有力者相手なら尚更のことだ。
その点お前も人間ではないが、新聞と言うものは起こった事実を見た者がそのまま記事にして広めるわけだからな。
それが例え文々。新聞のようなゴシップ紙だとしても、火の無い所に煙は立たないだろう。
真に受ける人間が少なくても良いんだ、この状況に波風を起こさせるだけでも。そうすればこちらも打つ手が出来るというものさ。
―――なんか散々言われましたが、これだけは言っておきます。文々。新聞に書かれている事は常に真実です。私は自分で確かめた真実しか記事にしません。
ああ、そうなる事を期待しているよ。真実を書いて皆に本当の事を知らせてくれる事を。
人間達の里は人間達の手で守るべきだ。半人半獣の私が出来る事は、その道が誤らないように道標を示すことくらいしかない。
それでも私は私なりに里の人々を守る方法を考えて行くつもりだ。
この幻想郷に住む全ての人間と妖怪が共存出来るこの里を、この先もずっと、次の代へ残すためにも……
それじゃあな。私の方でも何か分かればお前に教えるから、お前も何か分かったら私に教えてくれ。
頼むぞ。幻想郷一のブン屋、射命丸 文。
インタビュウ(下)に続く。
正直こんな重くてギリギリな話題を主題にしてしまった、どうしようもない作品が受け入れられるか不安でした。
でも私の作品を読んで下さった方がいたこと、尚且つ待っているとまで言って頂けるとは本当に思いませんでした。
改めて、本当に有難うございます。
(下)の方は少しづつですが執筆しています。
ただ(上)を今見なおすと淡々としてしまった印象が残るので、(下)はもっと動きのある構成にしたい感じがします。
書き切れるかどうか分りませんが、期待を裏切らないよう、頑張りたいと思います。