「ようアリス。今日の土産はショートケーキか?」
「そうね。我ながら律儀なことだわ」
魔理沙が憎まれ口を叩きながらドアを開いて私を招く。
もう恒例になったことなので、腹も立たない。
「あんたちょっとは論文進んだの?」
「いやいや、先駆者とはいかなるときも困難につきあたるものだぜ」
「つまり進んでないのね」
研究者らしい世間話をしながらお茶をいただく。
魔理沙は緑茶派らしいが、私が来るときには断固紅茶を押し通させてもらっている。
お茶請けもこちらが用意することが多いのだ、そのくらいは構うまい。
そのまま魔理沙の研究に付き合い、夕食を作り(魔理沙はいまだに料理が上手くない)
食後の一服をしたあたりで外が暗くなってきた。そろそろだろうか。
エプロンで手を拭きながら居間に戻ると、いつものように魔理沙がそわそわしていた。
「えーと、その、アリスは……」
言いかけて言葉を濁す。それ以上言うのが恥ずかしいらしい。
帽子を掴んで下ろすのが魔理沙の照れ隠しだということにはもう気づいている。
「そうね、今日も別に無いわよ」
わざと素っ気無く言う。そうでもしないと私も恥ずかしい。
「その、もし良かったらだけど……」
「ええ、そうさせてもらうわ」
そういって視線を交わし、どちらからとも無く服に手をかけた。
「というか、このやり取りもいつものことだと思うんだけど」
「アリスに用事があったら悪いじゃないか」
湯上りに二人で話す。
あれからパジャマを取って、温泉に浸かったのだ。
魔理沙の家には天然岩風呂が用意されているので二人で入っても十分広い。
風呂上りに冷えたミルクを飲みながら魔理沙と話すのも、もう恒例になったことだ。
注がれた分を飲んだらあとは寝るだけ。
そんなゆっくりした時間になると、魔理沙は私をベッドに誘う。
「なあアリス、いつものしてくれないか」
「いいわよ。じゃあアレとっておいで」
「ああ。待ってろよ」
魔理沙が背中を私に預ける。
「きつくないか?」
「魔理沙の背中はやわらかいわよ」
ベッドに座り、背を壁に預けた体勢で魔理沙を受け入れる。
しばらくごそごそしていたかと思うと、ちょうどいい場所にはまったらしく、魔理沙が力を抜いた。
あごは魔理沙の頭に、手はゆるくおなかの上で結んで。
できるだけ肩を広げて魔理沙を包むようにしてあげる。
そうすると魔理沙はため息をついてぎゅっとくまをだきしめる。
きっかけは泊り込みで研究していたときのことだ。
寝ていた魔理沙がごそごそするから、一言言ってやろうと振り向いておどろいた。
腕で布団を抱きながら魔理沙が泣いているのだ。
とりあえず布団を取ろうとしても、イヤイヤをして後ずさりするのでどうしようもない。
仕方なく後ろから抱きしめて、しばらく頭を撫でてやった。
落ち着いたところで話を聞いてみると、どうも、人恋しさが極まってしまったらしい。
すぐ後ろで私が寝ているのもそれに拍車をかけたようだ。
(私がどうなってもお前が気にしないような気がして、と魔理沙は言っていた)
普段ならば悶々としたまま夜が明けて、そのころには収まっているらしいのだが。
それから、私が魔理沙を訪ねると、魔理沙は私が泊まっていくのを期待するようになった。
もじもじするのもそわそわするのも、そういうことだと受け取っていいのだろう。
魔理沙を後ろから抱きしめて考える。
魔理沙がこうなったのはきっと早くから一人で自立した生活を送ってきたからだろう。
それは悪いことではない。誰もが通る道でもある。魔理沙はちょっとそれが人より早かっただけだ。
きっと、私が居なくても何とか乗り切るのだろう。それはわかっている。
でも私が手助けをしてもいいじゃないか。
私の手をぎゅっと握り締めた魔理沙を見てそう思う。
私の作ったくまを抱いて、私の腕に包まれて。
いい夢を見なさい、と願いながら私は目を閉じた。
「そうね。我ながら律儀なことだわ」
魔理沙が憎まれ口を叩きながらドアを開いて私を招く。
もう恒例になったことなので、腹も立たない。
「あんたちょっとは論文進んだの?」
「いやいや、先駆者とはいかなるときも困難につきあたるものだぜ」
「つまり進んでないのね」
研究者らしい世間話をしながらお茶をいただく。
魔理沙は緑茶派らしいが、私が来るときには断固紅茶を押し通させてもらっている。
お茶請けもこちらが用意することが多いのだ、そのくらいは構うまい。
そのまま魔理沙の研究に付き合い、夕食を作り(魔理沙はいまだに料理が上手くない)
食後の一服をしたあたりで外が暗くなってきた。そろそろだろうか。
エプロンで手を拭きながら居間に戻ると、いつものように魔理沙がそわそわしていた。
「えーと、その、アリスは……」
言いかけて言葉を濁す。それ以上言うのが恥ずかしいらしい。
帽子を掴んで下ろすのが魔理沙の照れ隠しだということにはもう気づいている。
「そうね、今日も別に無いわよ」
わざと素っ気無く言う。そうでもしないと私も恥ずかしい。
「その、もし良かったらだけど……」
「ええ、そうさせてもらうわ」
そういって視線を交わし、どちらからとも無く服に手をかけた。
「というか、このやり取りもいつものことだと思うんだけど」
「アリスに用事があったら悪いじゃないか」
湯上りに二人で話す。
あれからパジャマを取って、温泉に浸かったのだ。
魔理沙の家には天然岩風呂が用意されているので二人で入っても十分広い。
風呂上りに冷えたミルクを飲みながら魔理沙と話すのも、もう恒例になったことだ。
注がれた分を飲んだらあとは寝るだけ。
そんなゆっくりした時間になると、魔理沙は私をベッドに誘う。
「なあアリス、いつものしてくれないか」
「いいわよ。じゃあアレとっておいで」
「ああ。待ってろよ」
魔理沙が背中を私に預ける。
「きつくないか?」
「魔理沙の背中はやわらかいわよ」
ベッドに座り、背を壁に預けた体勢で魔理沙を受け入れる。
しばらくごそごそしていたかと思うと、ちょうどいい場所にはまったらしく、魔理沙が力を抜いた。
あごは魔理沙の頭に、手はゆるくおなかの上で結んで。
できるだけ肩を広げて魔理沙を包むようにしてあげる。
そうすると魔理沙はため息をついてぎゅっとくまをだきしめる。
きっかけは泊り込みで研究していたときのことだ。
寝ていた魔理沙がごそごそするから、一言言ってやろうと振り向いておどろいた。
腕で布団を抱きながら魔理沙が泣いているのだ。
とりあえず布団を取ろうとしても、イヤイヤをして後ずさりするのでどうしようもない。
仕方なく後ろから抱きしめて、しばらく頭を撫でてやった。
落ち着いたところで話を聞いてみると、どうも、人恋しさが極まってしまったらしい。
すぐ後ろで私が寝ているのもそれに拍車をかけたようだ。
(私がどうなってもお前が気にしないような気がして、と魔理沙は言っていた)
普段ならば悶々としたまま夜が明けて、そのころには収まっているらしいのだが。
それから、私が魔理沙を訪ねると、魔理沙は私が泊まっていくのを期待するようになった。
もじもじするのもそわそわするのも、そういうことだと受け取っていいのだろう。
魔理沙を後ろから抱きしめて考える。
魔理沙がこうなったのはきっと早くから一人で自立した生活を送ってきたからだろう。
それは悪いことではない。誰もが通る道でもある。魔理沙はちょっとそれが人より早かっただけだ。
きっと、私が居なくても何とか乗り切るのだろう。それはわかっている。
でも私が手助けをしてもいいじゃないか。
私の手をぎゅっと握り締めた魔理沙を見てそう思う。
私の作ったくまを抱いて、私の腕に包まれて。
いい夢を見なさい、と願いながら私は目を閉じた。
にしても神綺様www
じんわりいいなぁ。
勘違いさせてくれる文体でどっきどきしたのぜw
Grimoire of Marisa(仮)?なんですかそれ?
>4
それか!!
違和感が取れた。
アリスは順調に親馬鹿になっていきそうですな。
あとがきも含めてほのぼのさせてもらいました。ありがとう。