レミリアはパチュリーと食事をしていて、ある癖を発見した。
「ねぇ、パチェ」
「むきゅ、むきゅ……何かしら、レミィ」
「何で噛むときにむきゅむきゅって言うの?」
「むきゅ、むきゅ……レミィは何で自分が幼児体型か考えたことある?」
「え? あ、あぁ……」
「それと同じよ。むきゅ、むきゅ」
「……今、馬鹿にされなかったか?」
「むきゅ、むきゅ……気のせいよ、レミィ」
パチュリーはそのままむきゅむきゅと食事を続行した。レミリアは馬鹿にされなかったか? と、頭を手で抑え、うー……と唸った。
「……レミィこそ、何で考え事をする時にうー…って唸っているのかしら?」
「は? いや私は……あ」
その時、レミリアは初めて自分の癖を自覚した。
「意外と気づかないものね……癖って」
「無意識のうちに行っている行為だもの。気づかないのが当たり前よ」
「そういうものか……。んじゃ、美鈴や咲夜にも癖ってあるのかしら?」
「あるんじゃない? むきゅむきゅ」
「そう……ちょっと見てみたいわね」
レミリアは好奇心から従者を観察することにした。一方、パチュリーはむきゅむきゅと頬を膨らませて噛んでいた。
美鈴は門番なので当然門にいる。美鈴の性格から、門にいなかったらまず男が出来たと見て間違いない。その場合は厳しい査定の末、グングニルとレミリアは決めている。
美鈴は暇そうに欠伸をしていた。至って自然体である。癖が出るのには絶好の条件だ。
無理やり連れてきたパチュリー共々レミリアは物陰から美鈴の様子を窺う。
「何で私まで……」
「いいじゃない。面白いわよ、きっと」
「もう……私は日陰少女であって物陰少女じゃないのよ?」
「自分で日陰を言うなよ……」
二人がコソコソと話合っている内に、美鈴にある変化が起きていた。
「ねぇ、あれが美鈴の癖じゃない?」
「あれ、ねぇ……」
美鈴は暇そうに体を揺らしていた。縦に。
普通体は横に揺らすものだが、美鈴は縦に揺れるようだ。そして、縦に揺れることによって、連鎖的に揺れるものがある。
ばゆん、ばゆん、ばゆん
「……壮大な光景ね」
「揺れてる。めっちゃ揺れてる……てか跳ねてる」
美鈴のバストは縦に揺れる度に、ばゆんばゆんと跳ねていた。
美鈴自身、無意識によるものなので、気にしている素振りはない。恐らく、貧乏揺すりと同系統の癖ではあるようだが、美鈴の貧乏揺すりは爆弾級だった。
「……パチェ。次、行かない?」
「そうね……行きましょうか」
パチュリーとレミリアは美鈴を襲うような変な気を起こさないうちにその場から立ち去ることにした。一方は性的衝動から。もう一方はパルパルによる八つ当たりから。
咲夜は廊下を掃除していた。
レミリアとパチュリーは再び物陰少女と化していた。
「さて、咲夜はどんな癖を披露してくれるのかしら」
「癖は無意識からの行動であって、披露するようなもんじゃないと思うんだけど……」
「シャラップ、黙らっしゃい。このレミリア様が見るのよ。それなりのもんじゃないと許さないわよ」
「――ということは、さっきのバウンドはそれなりのもんだったってことね」
「……あれは視覚兵器よ。特に私みたいに残念な奴にとっては」
レミリアは自分のバストに手を当てて、舌打ちをする。
パチュリーはそんなレミリアを見て、レミリアの手を取り、優しい声音で囁いた。
「……レミィ。焦っても仕方ないと思うわ。だって、まだあなたは幼いんだもの。私は今後ゆっくりと成長していけばそれでいいと思うわ」
「パチェ……」
「それに、あなたが巨乳になったら霊夢が退治しにくるしね」
「異変ってか!? 私の胸が大きくなることは幻想郷を揺るがす大事件なのか!?」
「しっ! 静かに! 咲夜に気付かれるわよ!」
「パチェは本当に私の親友なのよねぇ!?」
しかし、パチュリーはすでに聞いていなかった。
(くそっ! これからは毎日揉んで、これでもかっ! ってくらい大きくなってやるっ!)
レミリアは秘めた闘気を燃やしながら、再び咲夜の観察に戻る。
咲夜は箒で廊下を掃いており、掃いた後の廊下には塵一つ残っていなかった。相変わらず鮮やかな手つきである。一家に一人、十六夜 咲夜の異名は伊達ではない。
そんなパーフェクト超人にも癖というものはあるのだろうか? ――そう、あるのだ。人間の家事能力を超越している咲夜にも、癖はある。
それは、不意に響いたメロディーから分かった。
「ふふ、ふーん♪ ふふ、ふーん♪」
「鼻歌……?」
「咲夜の癖って案外可愛いのね。でも平凡。私に見せるものではないわね」
「見せるというより、聞かせると言ったほうが妥当だわね」
咲夜は箒を掃きながら鼻歌で旋律を奏でる。どことなく楽しそうで、普段は見れない少女としての顔を見せる。
(ま、咲夜のこういう面が見れたんだし、よしとするか……)
そうレミリアが思った時だった。
「おじょーさまー、ゴー!」
「ぶっ!」
咲夜のテンションの跳ね上がり様に、レミリアは吹かざるを得なかった。咲夜は先程の普通の少女から一転、ノリノリで箒を掃きながら歌う。
「紅魔館、に構える、真紅の瞳~。スーパー、あくっまぁ! レ~ミリア・スカ~レ~ット。溢れる魔力は自分のために~。巫女も白黒も、平伏すんだYo!
ふふん、ふんふふん♪
とばせー周囲を~、不夜城レッド~。今だー、突き刺せ~、神槍グングニル!
ふふん、ふんふふん♪
レミリアー! レミリアー! レーミーリーアースカ~レーット!」
「ギィィィヤァーーーーーーーーーーーー!!」
レミリアは紛糾した。あまりの咲夜の音痴具合と、その歌詞の痛さに。そして、その内容が自分のことに関することが止めだった。
「パチェ! 止めさせて! お願い! 痛いの! 心が! 良心が!」
「悪魔が良心痛むって……。まぁ、確かにあれは聞くに耐えない痛さだけど」
咲夜は満足そうに第二番を歌い始めた。レミリアは耐えきれずにその場からグレイズしながら逃げ出した。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「大丈夫? レミィ?」
「いや……まだ悪寒が止まらない」
「でも良かったじゃない。部下の忠誠心が確認出来て」
「主人に旋律で戦慄を抱かせるような確認はしたくなかったけどね!」
最後に、とレミリアとパチュリーは地下室の扉の前にいた。実の妹、フランの癖を見るためである。
「ていうか、妹様の癖は普通に知ってるんじゃないの? レミィ?」
パチュリーがふと思ったことを尋ねた時、レミリアは苦笑した。
「いや……物心付いた時には、すでに地下室に閉じこめられてたから……」
「レミィ……」
レミリアはパチュリーに向かい合い、儚く微笑んだ。
「だから、さ。これを機に、フランの癖くらい知っておかないとね」
「……そうね。行ってらっしゃい」
「うん」
レミリアは頷いて静かに扉を開く。少しずつ、けれど確実に。
そうしてレミリアが地下室の全貌を把握出来るようになった時、
フランは黒い帽子を被った娘に押し倒されていた。
レミリアはその光景を見て、ふっ……と微笑み、そっと扉を閉めて、そしてそのまま泣き崩れた。
「ん? 何か聞こえない?」
「気のせいじゃない? それより、ビックリしちゃった。こいしが急に押し倒すんだもの」
「ごめんね。私、無意識に行動するから。お姉ちゃんとかフランとか、可愛い娘を見るとすぐに押し倒したくなっちゃうのよ。もう癖になっちゃって」
「あはは。癖じゃしょうがないね。じゃあ……これからやることも」
「うん。『癖』ってことで」
フランとこいしは笑い合って、そのまま布団に潜った。
黒い帽子は魔理沙かと思って一瞬殺意を覚えたがこいしちゃんなら仕方ないな!!
ふらんちゃんも癖になっちゃってこれから毎日ちゅちゅするといいよ!!
「実の妹、フランの癖を見るたむである。」TAM?
…おお、これはこれでなかなか…w
>3氏
貴方とは仲良くなれそうだww