Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

わらう、あの子

2011/10/07 01:10:15
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 吸血鬼が治める紅魔館の地下に設けられている図書館。ここには“利用者”という名の泥棒が現れる。
 名前は霧雨魔理沙。魔法使いである。
 ある時は一冊、またあるときは五冊、時には風呂敷一杯ほどの魔導書を持ち去っていくのだ。今日もまた、彼女はおもしろそうな本数冊を片手に箒へとまたがり、家路につくつもりだった。だが、この日はいつもと勝手が違っていた。
「待ちなさい、魔理沙!」
 図書館の主、パチュリー・ノーレッジが追いかけてくるのだ。紫色の重たそうなドレスで、本棚の合間を器用に飛んでくる。
「何だよパチュリー! 今日はやけにしつこいじゃないか」
 振り向きざまに叫ぶ。対してパチュリーも普段は聞くことの出来ない怒鳴り声で答えた。
「あんたが今日持っていった本の中に、私が研究に使ってるのがあるのよ!」
「はっはーん、そういうことか……じゃあ、百年ぐらい後まで覚えておいてくれ!」
 私が死んだら返すからさ、と魔理沙は太陽みたいな笑顔で告げた。そして、箒に勢いよく覆いかぶさり、一気にスピードを上げた。
 これなら大丈夫だろう。振り返って、どんどん小さくなっていくパチュリーを見て判断する。普段から引き籠りがちな彼女では、とてもじゃないが追いつけまい。
 そう、勝利を確信してほくそ笑んでいたときだった。
「っと、おわぁ!?」
 突如、幾つもの魔弾に行方が遮られた。ぎりぎりで避けることはできたが、バランスを崩した魔理沙は不時着を余儀なくされる。
 誰の弾幕だ? 小悪魔は来るときにブッ飛ばしたし、レミリアと咲夜は神社に遊びに行っているのを確認済だ。美鈴は、安らかな眠りについている…………文字通りの意味で。
「と、いうことは……」
「ふふふ、こんにちは、魔理沙」
 喜びに満ちた少女の声が聞こえる。声の主は手を後ろで組んで、おもちゃを見つけたみたいに楽しそうに笑っている。
 悪魔の妹、フランドール・スカーレットだ。
「あー、フラン。今日は悪いが本を借りに来ただけだから、もう帰るぜ」
「当図書館の貸し出しカードはお持ちですか?」
 会話が噛みあっていない。フランドールが浮かべる妙に、にこやかな笑みと相まって嫌な予感しかしなかった。
「いや、持っていないが」
「お作りになりますか?」
「ああ、どうすればいいんだ?」
「んーとね……コイン一個♪」
そう言って、彼女はどこからともなく黒い魔杖を取り出す。すると表情が一変、かわいらしい少女の笑顔は、牙をむき出しに嗤う吸血鬼のそれになった。
「そんなこったろうと思ったよ」
 魔理沙も八卦炉を構え、帽子を目深に被りなおす。
 予想外の展開だが、突破は不可能じゃない。出口は目の前に見えているのだから、こいつさえ倒してしまえば……。
「違うわよ、妹様。コインは一個じゃなくて二枚よ」
 パチュリーが魔理沙の後ろに降り立ち、冷えきった声で告げる。その手には開かれた魔導書が乗せられており、見てるだけで魔力が高まっているのが分かる。
「……ははは、マジ?」
 前門には狂気の笑みを浮かべた吸血鬼。後門は冷たい怒りに燃える魔女。
 今まででかつてないほどの大ピンチ。
「まぁ、いいさ。ここを抜ければゴールだからな、二人まとめて相手してやろうじゃないか!」


















「ちくしょー、覚えてろぉぉ!」
 ありがちな捨て台詞を残して、魔理沙は飛び去って行った。その情けない姿を見て、パチュリーは顔には出さないものの満足していた。
 本も無事にすべて取り戻すことが出来たし、あの魔理沙に一泡吹かせてやったのだから。
 落ちた本をまとめ終えると、パチュリーは今回の勝利の立役者を探した。目標は程なくして見つかる。彼女は、何もせずに図書館の床にただ突っ立っていた。パチュリーに背を向けて、白黒の魔法使いが出て行った扉をじっと見ている。
「フラン、ありがとう。おかげで助かったわ」
 パチュリーが声をかけると、フランドール・スカーレットは振り向き、そしてクスクスと笑いだした。
 何か笑われるようなこと言ったかしら? パチュリーが表情を険しくすると、それを見てフランは笑いながら言う。
「パチュリーは面倒くさいなぁ」
 告げられた言葉に、更に機嫌が悪くなる。
「どうして、礼を言っただけなのに面倒扱いされなきゃいけないのよ」
「だって、二人きりじゃないと、わたしのこと名前で呼んでくれないんだもの」
 そう言われて、普段の自分の言動を思い返してみる。そんな風に彼女の呼称の使い分けに気なんて回していただろうか?
「そうだった?」
「そうよ」
 自覚無いんだ、とまた笑われる。
 屈託なく笑ってくれる彼女がかわいらしくて、何だか怒る気が失せてしまった。
「それで、わざわざここまで訪ねてくるなんて何か用事でもあるの?」
 ただし、癪に障ることには変わらないので、対応はそっけなくした。
「魔法で上手くいかないところがあってさ、炎の出力がいまいち安定しないの」
「…………それだったら、幾つか参考になりそうな本を見繕ってから、見てあげるわ。小悪魔が起きるまで少し待ってて」
「うん、ありがとー」
 要件を終えても、フランはその場から動かずにパチュリーの顔をニコニコと見つめていた。
「まだ何かあるの?」
「んー別に。パチュリーはこれからどうするの?」
「少し寝るわ。ちょっと疲れちゃったから」
「そっかぁ……じゃあ!」
 言葉を発すると共に、フランが飛びついてきた。吸血鬼のスピードに反応できるはずも無く、パチュリーの二の腕は細い体に抱きすくめられてしまう。
「わたしが寝室までエスコートしてあげるわ」
 綺麗に整った紅い瞳に見上げられる。姉とは少し違って、悪戯っぽい光を称えたそれに見つめられると、何だかくすぐったい。
「歩きにくいんだけど」
「いいから、いいから。パチュリーのかびくさい匂い、わたしは好きだよ」
 嚙合わない会話で無理矢理絡める腕に力を込めてくる。彼女らしい、と言ってしまえばそれまでかもしれない。
「まったく、フランは人を褒めるセンスが壊滅的に無いわね」
「えへへ」
 何も言わずにただ笑い返してくるフラン。そのまま許してしまう自分も大概だな、とパチュリーも小さく笑った。
 その日は結局、ベッドから離れないフランに添い寝させてあげることで終わってしまうのだった。
レミリア「親友と妹の組み合わせって最強じゃないかしら?」

と、お嬢様に代弁していただいた通りの内容です。
パチェさんは妹様の監視役および家庭教師紛いなことしてて、接する機会が多いけど、何故懐かれてるか分からないみたいな関係だと俺得。
レイカス
http://twitter.com/kusakuuraykasu
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
これは好い組み合わせだ。
2.名前が無い程度の能力削除
家庭教師…アリだな!
お嬢様の言葉は全力で肯定せざるを得ない
3.奇声を発する程度の能力削除
何だか上手く言葉では表せないけど、
読み終わった後に凄く良いなと感じました
4.名前が無い程度の能力削除
俺得だぜヒャッホーウ!!
紅EXのタッグとか無理ゲー過ぎるw
5.名前が無い程度の能力削除
これは良い。すばらしい組み合わせだ。
パチェとフランの関係がこうなら最高ですね。