『ねぇ、美鈴……今晩、空いているかしら?』
『どうしたんですか、咲夜さん? 改まって。』
『貴女に……大事な話があるの……。』
『それは……此処では出来ないお話ですか……?』
『ええ……。』
『分りました……では何時もの時間に、私の部屋でお待ちしてます。よろしいですか?』
『ええ……お願いするわ……。』
『…………じゃあまた後でね……咲夜。』
『うん……ありがとう、母さん……。』
夜──
私は約束どおり、こうして彼女と向かい合っていた。
彼女は私のベッドに腰掛けて、立っている私に対し真っ直ぐ瞳を向けてきている。
向けれたその瞳からは、底知れぬ不安と大きな決意とが入り混じっているかのように感じられた。
──あの時約束を持ちかけられた時から……いいえ、本当はもっと前から気付いてました。
「それで、咲夜……大事な話と言うのはなんですか?」
「それは……その……。」
──貴女が何を思い、何を悩んでいるのか……。
「良いんですよ、咲夜……無理はしなくて、話しづらいことなら母さん──。」
「違うの! 私っ! 私……母さんに、聞いて貰いたいの……!」
──そう、こんなところで挫けては駄目。貴女は強い子なんだから……。
「そう……母さんなら大丈夫ですよ。時間はありますから……。」
そう言って彼女の正面にしゃがみ、華奢なその両手を包み込むように握ってやる。
「ありがとう……母さん……。」
それだけで彼女は安心しきったように、柔らかく微笑んでくれた。
──大丈夫……貴女のその思いは、決して間違いなんかじゃない。
「母さん……私……。」
──辛かったでしょう。苦しかったでしょう……本当なら私は、貴女に謝らなくてなりません。
「なんですか、咲夜……?」
──それでも私はそしらぬ顔で平然と貴女の前にいる……なんてズルイ女でしょう。
「私……! 私、母さんの事が…………ス、キ……なの。」
──分ってます。だってそれは、
「私も咲夜の事、大好きで──」
「そうじゃないの……! 私は……、私は母さんの事、愛しているの……! 一人の女性として……!」
──私が、そうなるように仕向けた感情(もの)だから。
「咲夜……貴女……。」
「ごめんなさいっ……私、いけない事だって分ってて……でも、でも私……母さんしか居なくって……!」
──それはもう、ずいぶんと昔から。
「ごめんなさい、咲夜……。」
「っ……!」
──そう、貴女をお嬢様から預かった、その夜から。
「貴女の気持ち……気付いてあげられなくて……酷い母さんだったね……。」
「そんなことないっ……! 母さんは悪くないわ! 悪いのは全部──。」
──貴女を私のものにすると、そう決めていました。
「それじゃあこうしましょう。」
──だから貴女は何も悪くなんてありません。
「貴女の心を……私にくれますか?」
──だって私の期待通りに、育ってくれたのだから。
「そしたら私は、貴女の生涯、ずっと傍に居ること誓います。」
──離れる事なんて、許しません。
「ああぁ……もちろん誓います……私の心はすべて母さんのもの……。」
「ありがとう……咲夜……愛してますよ。」
──アナタノアイハワタシダケノモノ。
『どうしたんですか、咲夜さん? 改まって。』
『貴女に……大事な話があるの……。』
『それは……此処では出来ないお話ですか……?』
『ええ……。』
『分りました……では何時もの時間に、私の部屋でお待ちしてます。よろしいですか?』
『ええ……お願いするわ……。』
『…………じゃあまた後でね……咲夜。』
『うん……ありがとう、母さん……。』
夜──
私は約束どおり、こうして彼女と向かい合っていた。
彼女は私のベッドに腰掛けて、立っている私に対し真っ直ぐ瞳を向けてきている。
向けれたその瞳からは、底知れぬ不安と大きな決意とが入り混じっているかのように感じられた。
──あの時約束を持ちかけられた時から……いいえ、本当はもっと前から気付いてました。
「それで、咲夜……大事な話と言うのはなんですか?」
「それは……その……。」
──貴女が何を思い、何を悩んでいるのか……。
「良いんですよ、咲夜……無理はしなくて、話しづらいことなら母さん──。」
「違うの! 私っ! 私……母さんに、聞いて貰いたいの……!」
──そう、こんなところで挫けては駄目。貴女は強い子なんだから……。
「そう……母さんなら大丈夫ですよ。時間はありますから……。」
そう言って彼女の正面にしゃがみ、華奢なその両手を包み込むように握ってやる。
「ありがとう……母さん……。」
それだけで彼女は安心しきったように、柔らかく微笑んでくれた。
──大丈夫……貴女のその思いは、決して間違いなんかじゃない。
「母さん……私……。」
──辛かったでしょう。苦しかったでしょう……本当なら私は、貴女に謝らなくてなりません。
「なんですか、咲夜……?」
──それでも私はそしらぬ顔で平然と貴女の前にいる……なんてズルイ女でしょう。
「私……! 私、母さんの事が…………ス、キ……なの。」
──分ってます。だってそれは、
「私も咲夜の事、大好きで──」
「そうじゃないの……! 私は……、私は母さんの事、愛しているの……! 一人の女性として……!」
──私が、そうなるように仕向けた感情(もの)だから。
「咲夜……貴女……。」
「ごめんなさいっ……私、いけない事だって分ってて……でも、でも私……母さんしか居なくって……!」
──それはもう、ずいぶんと昔から。
「ごめんなさい、咲夜……。」
「っ……!」
──そう、貴女をお嬢様から預かった、その夜から。
「貴女の気持ち……気付いてあげられなくて……酷い母さんだったね……。」
「そんなことないっ……! 母さんは悪くないわ! 悪いのは全部──。」
──貴女を私のものにすると、そう決めていました。
「それじゃあこうしましょう。」
──だから貴女は何も悪くなんてありません。
「貴女の心を……私にくれますか?」
──だって私の期待通りに、育ってくれたのだから。
「そしたら私は、貴女の生涯、ずっと傍に居ること誓います。」
──離れる事なんて、許しません。
「ああぁ……もちろん誓います……私の心はすべて母さんのもの……。」
「ありがとう……咲夜……愛してますよ。」
──アナタノアイハワタシダケノモノ。
光源氏作戦大成功?
月並みですが、これも一つの幸せの形ってやつですか。
貴方の作品は面白いから大丈夫。
でも美鈴なら下心はありつつも、ちゃんと本心から咲夜のことを大切に想ってることでしょう。
つまり、な~んの問題もありませんね!