ぺちぺちぺち。
時は昼の刻。ぽかぽか陽気が心地よい白玉楼の縁側。
しゃがんだ妖夢の小パン連打を背中に受け続け、正座することはや二時間。
痛みは無い。むしろ心地よい。いいぞもっとやれ。
この感覚を言葉にて説明せよと言われても非常に困るが、敢えて応じるならば次の一言に尽きる。
気持ちいい。
儂の思考をよそに、妖夢のぺちぺちは尚も続く。
ぺちぺちぺち。
その間妖夢はひたすらに無言である。
語るべき事など無いと思っているからなのか、それともぺちぺちするのに必死で言葉を発する余裕など無いからなのか、それを察するのは難しい。
だが可愛い。この上なく可愛いではないか。
ぺちぺちぺち。
そういえば、とある世紀末を駆け抜けた覇者はこの小パンぺちぺちで高みへ上り詰めたと聞く。
大の男が膝を地についてひたすらに小パンを連打するのはシュールであり何とも情けない光景としか思えないが、見栄や外聞をかなぐり捨ててでも勝利を手にというその執念は驚嘆に値する。
要は勝てばいい。それが全てなのだ。
ぺちぺちぺち。
ああ妖夢。お前はその小パンに何を見出し、何を求めているのだ。
何故そこまで小パンにこだわるのだ。
痛みを以て訴えるならば他にも手段があるだろうに。
腰の刀を抜き払い、問答無用で斬り捨ててもよい。
半霊と同時に弾幕を展開し、蜂の巣にしてもよい。
だがお前はそれをしない。そのような素振りは欠片も見せない。
何故なのだ。何故ろくなダメージも与えられずリーチも短く判定も弱く出の速さくらいしか取り柄の無い小パンに執着するのだ。
ぺちぺちぺち。
小パンの嵐は止むことなく、さらに続く。
気のせいか妖夢が涙目になっている気がする。
「妖夢よ……効かぬ、効かぬのだ……!」
敢えて強面を作るも本音は漢の汗となりて頬を伝い落ちる。
何故だ。とうに情など枯れきったというのに、何故涙が止まらぬのだ。
妖夢のいじらしさに錆びついた心の歯車が動かされたとでもいうのか。
それともあまりの心地よさについつい涙腺が緩んでしまっただけか。
できれば前者であってほしい。むしろあってくれ。頼む。
「お師匠様」
「む」
ここへきて、ようやく妖夢が口を開いた。
どうやらこの苦行に耐えきれなかったとみえる。まだまだ青い。
「お師匠様。この妖夢、恥を偲んで口にはすまいと決め、それでも何とか伝えようとひたすら一つの行動を繰り返していました。しかし、それももう限界。差し出がましい事かもしれません。ですがどうか、この未熟者が進言する事をお許しください」
成程。あのぺちぺちは矢張り、何らかの意思疎通の為に行われていたものであったか。
それに気付けど、その真意を推し量れぬようでは儂もまだまだ未熟。
よもや孫子に教わるとは思わなんだ。これもまた一興か。
「構わぬ。ただ行為のみでは伝わらぬと察せたならば、それは立派な成長である。褒めるに値すれど叱るには値せぬ。さぁ、遠慮などいらぬ。堂々と述べるがよい」
「では、お言葉に甘えて。………お師匠様」
「お尻が破けてます」
幼妖夢可愛いよ
妖夢可愛いよ
つーか妖忌気付けよwww
そしてジジイ妖夢にナニみせてんだ