冥界、白玉楼へと続く長い階段の始まり。
その場所に、私、ルナサ・プリズムリバーはいた。
こんな所で何をしているのか、と思われるだろう。
というか、先程聞かれたのだが……
事の起こりは、今朝のことである。
妹たちが家から出て行った後、私は一人悠々とヴァイオリンを弾いていた。
するとそこに、一体の幽霊が家を訪れたのである。
幽霊が言うことには、何でも妖夢が相談したいことがあるらしい。
妖夢とはそれなりに親しい友人でもあった私は二つ返事で引き受けた。
そして今に至るということだ。
「しかし、遅いな……」
時間には厳しいはずの彼女が、こうも遅れてくるということは、
逆に何かあったのではないかと心配になってくる。
何か厄介事に巻き込まれているのだろうか……
「そう……例えば、幽々子に無理難題を押しつけられたとか……」
あり得る話である。
幽々子は妖夢を困らせて楽しむことが大好きなのだ。
好きな子ほどいじめたいというやつだろうか、私には理解しかねる。
例えば、私が妹たちをいじめて楽しいか、と聞かれれば。
……リスクの方が大きそうだ。というよりも、私が二人にいじめられているんだが。
あの二人は、私のことが好きなのか?
少し考え、逆に嫌われてないなら良しとしよう、と判断。
発想の逆転は重要である。
などという事を考えているところに、ようやく妖夢の姿が現れた。
色々と考えてしまっていた私は少し安堵する。
「おはようございます、ルナサさん」
「ああ、おはよう妖夢」
妖夢は普段通りだ、予想は外れたということか……
そんなことよりも、妖夢が私を呼び出したという事実の方が気になっていたので、
私は早速話を切り出した。
「ところで妖夢。私に何の用なんだい?」
「あ、はい。実は折り入って相談がありまして……」
「……相談?」
特段驚くようなことでもない。
普段から妖夢は私に様々な相談をする。
幽々子があんなことをさせる、幽々子がこんなことを言った、
幽々子が……、などと幽々子関連だ。
しかし、妖夢は初めから私に相談してきた訳ではない。
妖夢は何でも自分で貯め込んでしまう癖があるのだ。
そんな妖夢を見かねた幽々子は、私に妖夢の相談に乗ってほしいと頼んできた。
それから、私は妖夢とよく話をすることにした。
私にとっては妹が一人増えたようなものだ。
そして、妹たちの面倒を見てきた私にとって妖夢なんて可愛いものである。
……あの二人は妖夢を見習え。そう思ったことが何度あったことか。
とにかく、そんなこともあって妖夢と親しくなった私に、
色々相談を持ちかけてくれるようになったということだ。
妖夢はいつも通り、少し考えてから話し出した。
「私、最近少しおかしいんです」
「おかしい?」
「はい……あのですね、最近よく考え事をするんですが、
考え出してしまうと仕事が手に付かないんです」
「ふーん、考え事ね……」
「私はどうすればいいんですか、ルナサさん?」
どうすればいい?などと聞かれても、
まずは、何を考えているのか聞かなければなるまい。
だから私は問うた。
「それで、どんな考え事なのかな?」
「はい、それはですね……」
妖夢は少し考える素振りをし、
そして若干恥じらいながら言った。
「そのですね……ある方のことを考えてしまうんです」
妖夢はどうしてか分からない、といった表情でこちらを見る。
私は少し考え、気づき、そして笑った。
ニヤニヤなどではなく、声に出して笑った。
私の様子を見てか、妖夢は少し驚いたが、やがて怒り始めた。
「なんで笑うんですか!こっちは真面目に困ってるんですよっ!!」
「―――はははっ!!いやー、すまない。
妖夢もお年頃なんだなぁと思っただけだよ」
「……お年頃?」
「そうだよ妖夢、その人の事を考えたら胸が苦しくなったり、
嬉しくなったりするんじゃないのかな」
「……そう、ですね」
妖夢は、どうして分かったのだろう、とでも言いたげな顔をしている。
確信を得た私は、
「つまりだ、妖夢はそうなってしまうから考えたくないけど、ついつい考えてしまうわけだね」
「そうです、よく分かりますね」
「それはそうさ、私は妖夢よりも長生きだしな」
「それは分かっていますから、原因を早く教えて下さい」
「そうだな、妖夢もお年頃だし教えておくかな」
勿体ぶるな、という顔で睨まれる。
しかし、私はこれ程面白い相談だとは思ってもみなかった。
精々幽々子関連だと思ってしまっていた。
慌てるな、と前置きし、
「妖夢、それはだね……」
「はっ、はい!」
「それはきっと、初恋だよ」
「はつ……こい……?」
言われた意味が分からない、という顔から急に真っ赤になり、
「―――は、初恋ですか!?」
「うん、おそらく」
「初恋って、あの……!」
「誰かを好きになる、ってことじゃないかな?」
「―――っ!!!」
慌てふためく妖夢を、ニヤニヤしながら見る私。
……すごく面白い。
幽々子が妖夢をいじめたくなる気持ちが少しわかった気がする。
少ししてから妖夢はようやく落ち着きを取り戻した。
「落ち着いたかい?」
「は、はい!私は落ち着いています!」
「若干の虚偽報告を見逃すけど、妖夢はどうしたい訳かな?」
「どうする、とは……?」
「好きな人には告白するのが普通さ、だから告白するのかなと思っただけさ」
「―――こここ、告白!?」
「しないの?告白」
「……すいません、告白って何ですか?」
「んぁ?告白を……知らないのかい?」
どうやら恋愛事には全くの無関心だったみたいだ。
仕方なしに私は妖夢に恋愛とは何たるかを教えることにした。
▼
ルナサ姉さんの恋愛教室が進むほど、妖夢は真っ赤になっていった。
そして、終了時には完熟トマトが出来上がっていた。
更には肩で息をするほど消耗している。
……疲れるような所はなかったはずだけど、
どうやら妖夢には刺激が強かったみたいですね。
「―――と、まぁ、こんなところかな」
「……あ、ありがとうございます」
「妖夢……大丈夫?」
そう言って顔を覗き込む。
妖夢が私の行動に気付く、そして、
「―――う、うわぁ!!!」
あまりにも近過ぎたのか、驚いて顔を離す。
「妖夢……そこまで驚かれると、ショックなんだけど」
「す、すいません!でも大丈夫です!!!」
些か不安ではあるが、本人が大丈夫だと言っているから大丈夫だろう。
妖夢は驚き過ぎたのか、心臓を抑えている。
ここで、あることが気になった。
妖夢は誰のことを考えているのだろうか、ということだ。
まぁ、予想はつく訳だが、とりあえず聞いてみることにした。
「ところで妖夢、誰かの事、って誰のことかな」
「……ふぇっ!だ、誰の事って!?」
「いや、まあ、気になるからさ、特徴だけでいいから教えてほしいなぁ」
「い、いえ、それは、その、ですね……」
「ルナサ姉さん頑張ったから教えてほしいなぁ」
妖夢は考えて、考えて、よく考えている。
しかし、ここまで言われたら教えない訳がないだろう。
私だって頑張ったんだ、知りたい!
やがて、妖夢は口を開いた。
「……その方はですね、私のことをよく考えてくださるんです」
「ふむふむ、それから?」
「それでですね……すごく優しくて、包容力のある方なんです」
「へぇ……」
「気づいたらその方のことを目で追ってしまったりして、
四六時中その方のことを考えてしまっていたという訳です…」
「なるほど……教えてくれてありがとう妖夢」
話し終わった時の妖夢の顔は本日最高の赤色だった。
しかし、私はここで一つ確信に至った。
妖夢の想い人のことである。
特徴を鑑みて、相手は……
▼
妖夢と別れた後、私は白玉楼を訪れた。
私は到着すると、すぐに幽々子に先ほどの事を報告した。
「―――。というわけだ」
「……うふふふふ、妖夢ったら仕方のない子ねぇ」
口では何か言っているが、顔の緩みっぷりは半端ない。
幽々子とは長い付き合いがあるが、このような顔は見たことがない。
呆れを通り越して、逆に恐怖すら覚える。
「……幽々子、流石に怖い」
「あら~、ごめんなさいルナサ」
「まぁ、妖夢の想い人は幽々子だった、というわけだな」
「うふふ、最近の妖夢はどこかおかしかったけど、そういう事だったみたいね」
やはり、幽々子も妖夢の只ならぬ様子に気付いていたようだ。
話では、庭の植木を整えるはずが、真っ二つにしていた、
包丁でまな板ごと食材をたたき切っていたとか、
明らかに様子がおかしかったそうだ。
妖夢のから回りっぷりを見かねた幽々子は、
それとなく私に相談するように促したらしかった。
とりあえず、妖夢のことを気にしている私は、尋ねた。
「どうするの幽々子?」
「どうする、って?」
「妖夢のことだよ」
「そうねぇ……」
幽々子は物凄くにやけた顔から、急に真剣な顔になり、
「とりあえず様子見ね」
「そうなのか?」
驚いた、幽々子のことだから一気に畳み掛けるかと思っていた。
そんな私の様子を見て、幽々子は語り出した。
「別に今動くのも良いけど……」
「けど……何だ?」
「今の妖夢を見守るのを優先するわ」
「今の……?」
「ええ、妖夢は今ようやく自分の気持ちに気付いたのよ、
きっと今、もの凄く悩んでいるはずよ」
確かに、私と別れる時の妖夢はとても悩んでいた。
告白すべきかどうか、失敗したらどうしよう、とか色々考えていた。
しかし幽々子は妖夢に力を貸さず、自分で解決させようとしているのか。
私は幽々子の親心に感心した。
「困っている妖夢……想像するだけでゾクゾクするわ~」
「まてこら」
前言撤回。
コイツ、楽しんでいるだけだ。
妖夢に想い人ができた事を聞いた時は、
「別に相手を殺しても構わないわよね?」、といわんばかりの様子だったが、
相手が自分だとわかれば、すぐこれだ。何この余裕?
私は、これからの妖夢の苦労を想像し、そっと心で涙した。
▼
しばらく幽々子と雑談に興じているところに妖夢が帰宅した。
部屋に入り私の姿を確認するや否や、物凄いリアクションをとったが。
幽々子に全部話したとは言えない私はとりあえず、何も言っていないよとフォローしたのだった。
妖夢は納得したような、してないような顔だったが、一応納得はしたようだった。
そんな妖夢に向かって幽々子は、
「ねぇ妖夢~、私お腹すいた~」
「は、はい只今!」
「ルナサも食べていきなさい」
「ん?私は別に……」
妹達は、今日家に帰ってこないと言っていた。
しかし、ここでわざわざ厄介になることはないだろう、そう思っただけだ。
だが、妖夢は慌てて、
「いえ!ルナサさん、是非食べていってください、今日のお礼もありますので!」
「いや……別に気にしてもらう程のことはしてないけどなぁ」
「妖夢~、ルナサに何かしてもらったのかしら~?」
「ゆ、幽々子様!何でもありません!」
妖夢またしても真っ赤である。
この子は嘘がつけないんだなぁ、と幽々子と二人でニヤニヤする。
私たちの様子を訝しみつつ、では、と残して部屋を後にする。
私は、すぐさま幽々子を見た。
幽々子はプルプル震えながら、呟く。
「やっぱり最高ね、妖夢は……!」
その顔は、もはや表現することはできず、
ただ一言述べるならば、カリスマ消滅。
もう私は友人を直視できない。
妖夢が料理を運んでくるのをひたすら願った。
そんな私に対して、
「あら、やっぱりお家に帰りたかったの?」
「そういう訳でもないけど……」
「なら、食べていきなさい、妖夢があんなに言ってくれてるのよ~」
幽々子は笑っているが、目が笑っていない。
幽々子の、「まさか妖夢の気持ちを無碍にするつもりなのか?」という無言の圧力が私を襲う。
圧倒的カリスマの前に動くことのできない私。
冷汗が止まらない、悪寒が酷い、何これ、風邪かしら?助けて八意先生!
切り替え早いなこんちくしょう!とか思いつつ、
私は、料理が運ばれてくるまでずっと心の中で叫んでいた。
▼
妖夢の料理はとても美味しかった。
私も普段から料理を作ってはいるが、それよりも遥かに美味しかった。
食事中は会話も弾んだが、妖夢はどこか上の空で、幽々子は食事に集中していた。
……弾んだのか?
若干の疑問は残ったが、それでもやはり一人で食べる食事よりも楽しかったのは事実。
私は二人の気遣いに素直に感謝した。
食事も終わり、さて帰るかということになった。
外も暗くなってはいたが、わざわざ幽霊を襲うようなやつは巫女か魔法使い、
もしくはメイドくらいだろうし問題は無い。
しかし、そこに妖夢が食ってかかった。
「駄目ですよ!夜道に女性が一人なんて危険すぎます!!」
「……私のような者を襲う輩がいるとは思えないんだが、なあ幽々子?」
「そうね、でも妖夢の言うことも一理あるわ~」
「そうですよ、ですから今日は泊っていって下さい」
「いや、明日は用事があるからなあ。それは流石に……」
「……そうですか」
明日はコンサートの打ち合わせやらで忙しい。
出来ることならば今日のうちにやっておきたいこともあるので、
私は断ることにした。
しかし、私の回答が気に食わないのか、腑に落ちない顔の妖夢。
今も何やらぶつぶつ言っている。
そんな様子の妖夢を見かねて、幽々子が耳打ちしてくる。
「ルナサ~、本当に無理なのかしら~?」
「ああ、近々コンサートもあるからなぁ」
「どうしても?」
「できれば」
残念ねぇ、と言いながら、幽々子は妖夢を慰める。
別に私は悪いことをしてないのに、何だか罪悪感に苛まれる。
だが、ここで引いてはいけない、そう思った。
別に幽々子がさっきからこっちを睨むとか、それが怖いとか、
そういうことではない、断じてない。
私と幽々子が水面下で必死の攻防中、不意に妖夢が口を開いた。
「それでしたら、私が自宅までお送りします!」
「えぇ!」
「大丈夫です、私、鍛えてますから!」
「そういう問題じゃないと思うんだけど……」
「まぁ妖夢がそこまで言ってくれてるんだから、ねぇ?」
ちらり、というより、ぎろり、とでも言うような目つきでこちらを見る幽々子。
トラウマ再来の私はぶんぶん首を縦に振るしかなかった。
帰り道、結局私は妖夢と一緒に帰ることになってしまった。
別に私としては構わないわけだが、私のことよりも妖夢の帰り道が心配だ。
そのことを何度も聞いたのだが、大丈夫の一点張りである。
妖夢がそう言うのなら、と渋々納得する振りはしたが、納得はしていない。
私としては、年頃の少女である妖夢を夜道に一人で歩かせるような真似の方が怖い。
幽々子もそのことを危惧していたが最終的には、まぁ妖夢なら、という納得をした。
それでいいのか、そう思った私は、自らに置き換えて考える。
……これが妹たちだったらどうだろう。
別に二人とも特に問題は見当たらないので別にいいか。
考えている内に、階段の終わりが見えた。
ここらで十分だろう、そう思った私は、妖夢に言った。
「妖夢、ここらで十分だよ」
「――えっ、まだ階段を降りただけですよ」
「大丈夫だよ、ありがとう妖夢」
「そ、そうですか……」
やはり納得がいっていないようではあるが、私は頑なに拒否する。
私の最大限の譲歩なのである。
しばらく妖夢を宥めすかすと、妖夢もようやく納得してくれた。
「妖夢、今日は御馳走様」
「いえ、喜んで頂けて光栄です」
「それでは、また今度」
「はい、また今度お会いしましょう」
そう言って私は帰路を急ごうとした、その時、
突然妖夢が私の手を握った。
妖夢の予想外の行動に驚き、思わず振り返る私。
自分でも何をやっているのか分かっていない妖夢。
そのまま少しの時間が経過する。
沈黙を破るため、私は口を開くことにした。
「……妖夢、手を放してくれないかい?」
「―――あっ!すいません!!」
「うん、離してほしいんだけど……」
返事はあるが、行動に出てくれない。
そんな状況がまたしばらく続く。
ふと妖夢の顔を窺うと、今までにない深刻な顔をしていることに気付いた。
やはり、先ほどの相談が妖夢を悩ませているのだろうか。
私がそう思っていると、不意に妖夢は、
「あの!ルナサさん!!」
「―――ひゃい!?」
私に向って叫んだ。
不意を突かれた私は思わず変な声を出してしまったが、
妖夢は構うことなく続ける。
「実は……あれから色々考えたんですが」
「う、うん……」
「私、頑張って告白することに決めました!!!」
妖夢の突然の告白に驚く私。
まだ一日も経っていないというのに決断するとは、
優柔不断の私にとって、純粋にすごいと思わせるのに十分だった。
友人の決意表明を聞いた私は、素直に応援することにした。
「そう、妖夢はもう決断したんだね。なら私は妖夢を応援するよ」
「あ、ありがとうございます!」
「がんばれ妖夢」
「はい、がんばります!」
私の心からの応援に感動したのか、妖夢はふるふると震えている。
私は心の底から妖夢の幸せを願った。
「ルナサさん、大好きです!私と付き合って下さい!!!」
おっと、どうして私は壁に寄りかかっているんだ?
しかも少しざらざらして気持ちが悪いなぁ……
ところで、私はどうしてこんなことをしているんだろう。
少し記憶が曖昧になってしまったようだ。
えっと、確か私は家に帰る途中だったはずなんだけどなぁ。
おや?あれは妖夢じゃないのかな。
そういえば、私は妖夢と少し話をしていた気がする。
何を話していたんだっけ?
確か、そう、告白が……告白を……妖夢が……私に……
「って、なんじゃそりゃー!!!!」
「―――みょん!?」
叫び、立ち上がる。
先ほど壁だと思っていたものは、どうやら地面だったようだ。
私はあまりのショックに一瞬気を失い、倒れてしまった。
そして、キャラを忘れて叫んだ、そういうことだったのか。
などと冷静に思考していると、ある事実を思い出す。
妖夢が好きだったのは、幽々子じゃなくて……私!?
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あ…あ…ああ、ルナサ姉さんは大丈夫なのか?」
「……本当に大丈夫ですか?」
「よよよ、妖夢、どういうことなのか、一から説明してくれないかな?」
「で、ですから、私はルナサさんのことをお慕い申し上げているということです……」
「そ、そういうことなんだ……」
強烈なショックだ。
私はずっと勘違いしたまま、妖夢に色々なことを教えてしまった。
そして、そのまま幽々子に大変な誤解を与えてしまった……
やばい、やばい、幽々子やばい。
思わず背筋が凍りつくほどの恐怖を感じてしまう。
私は一体、どうすればいいんだろうか……
「それで……ルナサさん返事を頂けますか?」
「……へ、返事!?」
「はい、教えてもらった通り、告白をした後は、相手の返事を待つんですよね」
「そう……ですね」
ここで私は落ち着いて熟考する。とにかく考える。
妖夢のことは好きだ。しかし、それは友人としてであり、
特別恋愛感情のようなものを抱いているわけではない。
さらに言えば、幽々子のことだ。
もしもの話、例えばの話、幽々子がもし、このことを聞けばどうなるだろう。
……私幽霊だけど、もう一度死ぬのかな。
思わず遠い目になる。
……メルラン、リリカ…姉さんちょっと長い旅に出るかも……
色々と考えたが結論は出ない、でも出さなきゃならない。
そう考えたとき、不思議と口が開いた。
「……ごめん、わからない」
「……え?」
「私は、妖夢のことが好きなのかわからない、だから、答えられないかな」
嘘は言っていない。
ここで、不用意な回答を出してしまうのはあまり良くないと考えたからだ。
私は、自分の体が次第に熱を帯びていくのを感じた。
「……それは、どういう答えなんですか?」
「……イエスでもノーでもない答えかなあ」
「……私はどういう状況なんですか?」
「本当に申し訳ないんだけど、少し考える時間が欲しい。
しっかりと考えてから答えを出したいから、少し待っていて欲しいな……」
「…………」
妖夢は少し考えてから、私を見つめた。
私の答えが気に食わないのか、少しうるんでいる。
だが、私はその目から逃げないよう、目をそむけないようにする。
そして、優しく語りかけるように、
「私の我が儘だけど、少しだけ我慢して妖夢」
「……………」
「……ダメ……かな……?」
手を組んで上目遣い、ルナサ必殺のお願いポーズ。
これで落ちないメルランはいない。
今回に限り、涙もプラスしてみた。
本来は、お小遣いをあげてもらう時に使う技だ。
……別に、計算とかじゃないよ。
私の姿を見て、観念したように妖夢は言った。
「……わかりました。でも一つだけ質問してもいいですか?」
「うん、私が答えられる範囲なら」
「ルナサさんは私のことが嫌いな訳ではないですよね?」
「もちろんさ、私が妖夢を嫌う訳ないだろう」
「そうですよね、だったら私にはまだチャンスが残されている訳ですね」
「……チャンス?」
「はい、ルナサさんから良い返事を頂くために、私のことを好きになってもらうチャンスです」
顔を赤く染めながらも、にこやかに話す妖夢はとても可愛らしく、
思わず私は見惚れてしまっていた。
……妖夢ってこんなに可愛かったっけ?
そして我に返り、私も笑って答える。
「そうだね、私が妖夢のことを好きになったなら、きっと良い返事ができそうだよ」
「はい、では私頑張りますね!」
そして、互いに声を出して笑う。
どうやら返事をするのはまだまだ先になりそうだ。
しかし、きっとお互いに良い結果が訪れるだろう。
私はそう願った。
「妖夢遅いわね~」
妖夢の帰りを待ちわびる幽々子は、二人が何をしているのか、まだ知らない。
彼女の頭にあるのは、これから訪れるであろう妖夢との甘い日々の妄想だ。
彼女はこの後、帰宅した妖夢に真相を聞かされ、それから様々な事件が起きるのだが、
それはまた別のお話。
これはアリですね
楽しく読ませてもらいました。
是非続編をっ
続編読みたいです。
別に何もおかしいことは有りませんね
寧ろこの続編が見たいです
しかし流れ的にツッコメない!くやしい……でも(ry
ビクンビクン
責めから一転した哀れな幽々子様おいしいです(^q^)
ありがとうございます。
少しでも妖ルナが好きになって頂ければ嬉しいです。
>>2様
ルナ姉はきっと天然なのです。
>>3様
妖ルナっていいですよね!
>>4様
微笑ましい感じが出ていたでしょうか。
読み取っていただけてうれしいです。
>>奇声を発する程度の能力様
続編はきっと近い内にお見せできると思います。
ゆっくり待っていってね!
>>6様
きっと友人は我儘です。
>>7様
友人の要望に応えてみました。
きっとこんなものを望んでいたはずですよね。
>>てるる様
友人には眼科を勧めてみます。
全部分かっている幽々子さま…ゴクリ……
>>9様
幸せになるはずだった幽々子様がこんなことに…
きっとゆかりんが慰めてくれるはずです。
>>10様
続編は、ルナ姉さんへの愛がまだ温かい内にお届けします。
>>GUNモドキ様
私にもフラグが見えます……一緒に八意先生の所に行きましょう。
……姉さんに明日が来ますように。
むしろ末永くお付き合いしてくださいルナサさんと妖夢さん。
幽々子様「私の嫉妬心はパルスィをも凌駕するいきおいだ!」
>手を組んで上目遣い、ルナさ必殺のお願いポーズ。
名前ミスってますー。
ゆゆ様好きの私はこの一言でどれ程救われたことか……