Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

蒼と緋

2009/12/16 01:01:45
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或る日、ひとりの少年が世界の最果に有ると云う宝物を探し求めて、ひたすらに道を歩いていました。
道は遥か遠くまで果てしなく続いています。十字路を曲がり、坂を登って彼は歩き続けました。
沢山の人達とすれ違い、並んでは追い抜き追い越されながら歩き続けました。
そして道中、少年はひとりの少女と出逢います。
少女も又、世界の最果に有る宝物を探している旅人でした。
なんとなく、2人は連れ添って歩く事にしました。
他愛の無い会話をして色んな風景を見て歩いて行く内に、2人は今まで感じた事の無い喜びを感じるように成りました。
少年「あの角を曲がらなかったら君に逢えなかっただろう。」
少女「あの坂を登らなかったら貴方に逢わなかったでしょう」
2人はそれを運命だとまでは知りませんでしたが、2人で歩く楽しさに嬉しくなってお互いに微笑みました。
だけど或る時、些細な事で口喧嘩になり、2人は仲違いしてしまいました。
そして少年は西に、少女は東に向かって歩いて行ってしまいました。
最初は酷く相手を非難していた2人でしたが、やがて冷静になってみるとザワザワと後悔の気持ちが胸を締め付けてきました。
そしてその気持ちは、彼らがふと後ろを振り向いた時に確かなモノになりました。
彼らの通った道には綿々と足跡が続いていました。
それは彼らの心に刻まれた決して消える事の無い「想い出」でした。
少年「もう一度やり直したい。」         
少女「もう一度逢って謝りたい。」
少年は胸に切り裂かれそうな痛みを抱え、少女は胸に疼くような不安を抱きながら、少年は東を、少女は西を目指して歩き彷徨い始めました。
行き止まりを引き返し、凸凹道に足を取られ、擦り切れ泥塗れになりながら、2人は再び巡り合いました。
少年「やあ久しぶりだね。」
少女「そっちこそ久しぶりね。」
汚れた身体を抱き合い貪るように接吻を交わし、涙と洟と洟でグシャグシャになった容貌を見つめ合った後、少女は声を上げて泣き始めました。
空が張り裂けそうになるような嗚咽でした。
少女「うああああああん!」
少年も涙を止めどなく溢しながら、少女をしっかりと抱き締めました。
こうして2人は再び共に歩き始めました。
ゆっくりと愛しむように歩き始めました。
暫く歩いて行くと、別れ道がありました。2人は直感で離別を悟りました。
少年は南へ、少女は北へ行かなくてはなりません。
2人はこのまま一緒に留まっていたいと願いました。
離れるには2人で過ごした時間は楽しすぎて、しかし留まるには2人は若すぎました。
歩みを止め旅をそのまま終わらせるには早い時機だったのです。やがて佇む2人の足元が乾いた砂のように沈み始めました。
このまま沈んでしまうのか、このまま終わってしまうのか。
その時少年が叫びました。
「この道が何処に続くのかは解らない。だけど僕達がきっと再会出来る道だと信じる事は出来るじゃないか。」
少年は少女の手を取り、埋もれかけた砂の坩堝から抜け出しました。
そして2人は、また必ず逢えると約束して別れました。
少女「さよなら。またね。」
少年「ああ、またね。」
少年は南へ、少女は北へ各々の道を今度は確固たる足取りで歩き始めました。
迷う事はなく、羅針盤に導かれるが如くひたすらに歩いて行きました。
永久でもなく刹那でもない。ある程度の時が流れ、2人は約束通り再会しました。
少年も少女も、その道のりで多くの物事を見聞きし、自信に満ちた瞳を輝かせていました。
少年と称すには精悍にして逞しく、少女と称すには柔和にして優しい彼らの姿は、2人がそれぞれ歩んだ成長の軌跡でした。
男「また逢えたね。」
女「約束したもの。」
2人は一緒の道を手を繋ぎ、或いは腕を組んで共に歩いて行きました。
果てしない道も、いつかは終わるものです。とうとう2人は世界の最果に辿り着きました。
其処は見渡す限りの白い平原でした。山も川も谷も町も何も無い、月夜の雪原のような原っぱでした。
だけど彼らには虚無感など微塵もなく、満ち足りた表情をしていました。
繋いだ手から伝わる温もり、抱擁した身体から香る匂いと聴こえる心臓の音。
孤独ではない幸福が彼らの確かな宝物だったのですから。
男「僕の隣に君が居て、」
女「私の隣に貴方が居る。」
男「凡庸な幸せだけど、」
女「ずっと求めてきた大切な幸せ。」
男「僕は自分の無力さで君を傷つけるだろう。」
女「私は私の傲慢さで貴方を苛めるでしょう。」
男「そんな僕を君が許してくれるならば、」
女「そんな私を貴方が認めてくれるなら、」
男「僕は君を世界の終焉まで護り続けよう。」
女「私は貴方を世界の終幕まで愛し続けよう。」
両者「2人で共に生命の終わりまで生きて行こう。」

こうして2人は生命の終わりまでこの幸福に感謝し、幸福を享受しながら共に生きて行きました。

〓グランドフィナーレ〓

得られた宝は、比翼連理の幸福感。

男は蒼。狩衣に烏帽子の荘厳な姿でゲートを守護する。
女は緋。洋服に髪留めの優雅な姿でゲートを守護する。


これは、とある神社と異界を隔てる境界の番人となった御魂の、宿世における邂逅の物語。
願わくば、この現実世界に於いても、静かな情愛が幻想となりませんように……
第一区
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
つまり神玉のことか
2.名前が無い程度の能力削除
wktk