いつものように静かな図書館で私は本を読んでいた。
それは当り前のことでここ何百年とずっとそうしてきた。
その当たり前のことを簡単に破壊してくるやつが最近現れた。
人間のくせして何気に強い、博麗神社の巫女である博麗霊夢だ。
魔理沙はもう手に負えない状態だったからある程度の対策をしてあとは放っておいた。
しかし最近は霊夢までもが図書館に足を踏み入れるようになってきた。
何をするでもなく、ただぼーっと椅子に座って私を見てくるのだ。
気が散るったらないわ。
「……さっきからなんなの?」
「なにか気に障るようなことでもした?」
「さっきからじっとこっちを見て、気が散るんだけど?」
「そうなの?それは悪いことしたわね」
「悪いと思うならここから出て行ってほしいのだけれど」
「それは無理な話ね」
「なんでよ?」
「貴方の顔が見たいから」
「…はあ?」
なにこの巫女、どっか頭でも打ったのかしら?
私の顔が見たいって…、やっぱり頭打ったとしか考えられない。
「ちょっと、パチュリー?」
「…なにかしら?」
「いや、いきなり黙っちゃって…。どうかした?」
「どうかしたのはそっちでしょ?どこで頭ぶつけてきたのよ」
「べつにどこにもぶつけちゃいないわよ!」
「じゃあなにさっきのは?私の顔が見たいって、本当に頭大丈夫?」
「変な目で見ないでよ!大丈夫だから、平気だから!」
「永遠亭にでも行ってきたら?」
「ちょっと!大丈夫だって言ってるでしょ?私の話し聞きなさいよ!」
「あ~…。はいはい、わかったから本を破ろうとしないでちょうだい!」
まったく、なんなのこの貧乏巫女。
こんなくだらないことで私の読書の時間を邪魔しないでほしいわ。
「ごほんっ!えっと、まとめて言えば私、パチュリーのことが好きになったみたい」
「………ごめん、最近私耳が悪くてね、もう一回言ってくれないかしら?」
「だから~、アンタのことが好きだって言ったのよ!」
「…いきなりすぎやしない?だいたい私と貴方じゃ接点無さすぎるじゃない」
「ん~、まあ、そうなんだけどね」
「いったいなんで、その、私のこと、好き、だなんて思ったのよ?」
「パチュリーに初めて名前を呼ばれた時から、かな?」
「いつの話よ…?」
「いつだったかしらね?」
「貴方ってそんなキャラだった?」
「私だって女の子なんだから。恋する乙女になったって罰は当たらないわよ」
この巫女本当に頭がおかしい。
巫女のタイプからすると一番離れた存在の私を好きなるなど。
ありえない話だ。
きっと勘違いしているに違いない。
でなければなにか薬で操られているとか…。
「そんなわけで、ちゃんと言ったからね?」
「…なにを?」
「告白」
「えっ!?」
「返事は、いつでもいいわ。じっくり考えてちょうだい」
「ちょっと!なに勝手に話し進めてるのよ!」
「あ、でもそうね、5年以内で答えをちょうだい」
「5年って、」
「アンタにはタイムリミットをつけないといつまでも返事くれなさそうだから」
「なによそれ?」
「優柔不断じゃない、アンタ」
「そんなことないわよ!」
「はいはい。それじゃあ、私は帰るわね」
「ま、待ちなさいよ!」
「なに?」
止めてどうするのよ。
私はなんとも思っていない。
だが向こうは私のことが好き。
そんなこと知らないわよ。
私は今までそんな感情、一度も持ったことないんだから。
「貴方、本気なの…?」
「本気じゃなかったらわざわざこんなところまで来ないわよ」
「…そう。わかったわ」
「あら、少しは興味出てきた?」
「残念だけど、特に興味なんてないわ」
「落ち込んでもいいかしら?」
「そんなの貴方の勝手でしょ?」
「冷たいわね、アンタ」
「これが私の性格なの」
「知ってる」
私のなにを知ってるというの?
私は貴方のことなにも知らないのに。
それでも貴方は私のことが好きなの?
「貴方みたいなもの好きは初めてよ」
「ふふっ。それじゃあ、今度こそ帰るわね」
「二度と来なくていいわよ」
「また明日ね」
「強引ね」
「強引な私は嫌いかしら?」
「さあ?知らないわよ」
「本当に、アンタ見てると楽しいわ。じゃあね!」
そう言って扉を静かに開けて出て行った。
その背中がなんとも自信あり気に見えたのがなんとなく悔しくなって、私はそばにあったぬるくなった紅茶を一口飲んだ。
「…これからどうしよう」
静かな図書館に私の声が響いた。
新境地!もっと開拓していきませう
個人的にステキな組み合わせだと思うけど
マイナーカップリングと期待していただけに、二人の感情とそれに至るまでの経緯をもっと深く掘り下げて表現してほしかった
ちょっとした会話の掛け合いが素敵でした。
わきむきゅ!!!