Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

萃香がんばる

2008/07/26 14:51:47
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ある日の昼下がり、あまりに暇だったので博麗神社に遊びに行ったら。
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霊夢が死んでいた。
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と思ったら、まだ死んでいなかった。よかった。
ただ、極度の栄養失調状態らしく、このままではさっきの驚きがリバイバルしてしまう可能性が高い。
同じ人間の死に二度も立ち会うのは精神的によろしくないので霊夢を助ける方法を考える。
家の中をざっと探してみても、食料らしきものは見あたらない。困窮ここに極まれり、な状況だった。
能力を使おうにも、無い物は萃められない。困った。
ちょっと放置していた霊夢が心配になったので見てみる。
よかった。生きてる。
呼吸よし、脈よし、心音よし。ついでにちょっと揉んでおく。
揉むほど無かった。
何故か涙があふれ出て止まらなくなった。
霊夢には未来がある、私には……。あとは……わかるな?
悲しみを酒で洗い流す。すっきり。

いつぞやのようにここで宴会を開くように萃めてみようかとも考えたが、あまり悠長なことでは霊夢が持たないかもしれない。
だいたい、ここまで危険な状態になる前に紫あたりがなにか援助してそうなものだが。
きっと、今頃一人楽しく夢の中なのだろう。目が覚めて初めに見るのが霊夢の死体では、さぞやショックも大きいだろうに。
冬眠中の雑事は、彼女の式が万事を取り仕切っていた筈だが、それにしたって怪しいものだ。
普段から『躾』と称した折檻を受けている式のこと、ちょっとした茶目っ気から主の言葉を曲解して。
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「それじゃ、藍。後のことはよろしくね。霊夢のこと、しっかり見守ってあげてね?」
「かしこまりました」

~少女(?)冬眠中~

「藍! これは一体どういう事なの!? 私は貴女に、霊夢のことを頼んだ筈よね?」
「はい、紫様。しっかり『見守って』おりました。死ぬまで」
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ひぃぃ!! 恐ろしい。形ばかりは主の言葉を守ってるところが特に。
狐許すまじ! と奮起し、分身をマヨイガまで飛ばしてみたが、式は普通に家事に勤しんでいた。
よく考えれば当たり前だった。
ついでだったので、事情を話してマヨイガの食料を少し分けて貰う事にした。
式は快く承諾してくれた。いい狐だった。
さて、これで当座の食糧は確保した。しかし問題はその食糧が届くのが明日だということだ。
霊夢の状態は一刻を争う。  
ちょっと放置していた霊夢が心配になったので見てみる。
よかった。生きてる。
呼吸よし、脈よし、心音よし。ついでにちょっと揉んでおく。
悲しみを酒で洗い流す。すっきり。

こうなれば、あまり取れる手段も多くは無い。
手っ取り早く霊夢に栄養を与えるために『今現在食べ物を持っている妖怪』を萃めてみる事にした。
霊夢、もう少しだけ頑張って。

ほどなく、西の空から飛んでくる固まりを発見する。なんか緑色だった。
「え、えと。なんでわたし、こんな所に来ちゃったのかなぁ?」
河童だった。具体的には河城 にとりだった。
河童といえばきゅうり。きゅうりといえば河童。その格言(違います)の通り、にとりはきゅうりを持っていた。
たった今、失われようとしている儚き命のためにあんたが持っているその水分&繊維質が必要なんだと力説したら、結構簡単にくれた。
河童は案外チョロかった。
とりあえず3本ばかり霊夢の元に持って行く。
しかし、ここで一つの難題に行き当たる。霊夢の意識が無いのだ。これでは自力で食物を摂取することが出来ない。
無理矢理に口を開けさせてきゅうりをねじ込んだら、それはそれで何かのプレイを彷彿とさせるし、マニアックにも程がある。
私と霊夢は、まだその段階には至っていない。
それに、かみ砕かなければ飲み込むこともかなうまい。
仕方がないので、台所できゅうりをみじん切りにしてから霊夢の口に流し込む。
多少えづきながらも、細かくなったきゅうりを飲み込む霊夢。これでも十分にマニアックだった。なんかきた。角あたりに。
縁側に戻ってみると、にとりの姿はすでになかった。正直どうでもよかった。

一応危機的状況は脱したものの、いかんせん与えたのがきゅうりのみじん切りだけである。
いささか心許ない。出来ればタンパク質、炭水化物、糖分あたりが欲しいところだ。
ということで、次なる来客を待つ。

ぱたぱたと羽音を響かせながら、低空で飛んでくる一匹の妖怪。
夜雀のミスティア=ローレライだった。
ミスティアは、まったくスピードを落とさぬままこちらにやって来る。
そういえば、彼女は八目鰻の屋台をやっているのだったか。ちょうどいいので、何か食べ物をわけてもらうことにした。
「おねがい~。かくまって~」
飛び込んできたミスティアは、障子の裏側に入り込みガタガタと震えている。
よっぽど慌てて来たのだろう。取る物もとりあえず、といった感じだった。
おかしい。私は『食べ物を持っている妖怪』を萃めた筈だ。ならば、彼女はなにかしらの食べ物を持っていて然るべきなのに。
私が首を傾げていると石段の方から話し声がした。
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「ねぇ妖夢。どうやら見失ってしまったみたいよ?」
「ええ、そのようですね。それにしても、何故いきなり『雀が食べたくなったから』と顕界に連れてこられなくてはならないのでしょう」
「主に付いてくるのも仕えるものの役目よ。それに最近運動不足だったからエクササイズがてらに。綺麗になった庭で食べるご飯はおいしいのよ」
「幽々子様、エクササイズの意味をわかっていらっしゃいますか?」
「草刈り鎌のことでしょう?」
「……はぁ…………」
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なるほど、得心がいった。広い意味では確かに『食べ物』だなぁ。と、震えるミスティアを見る。
しかし、いくらタンパク質とはいえ、これを霊夢に食べさせると人間として大切なものを失わせることになるだろう。小骨多いし。
仕方がないので、今度私と霊夢を屋台に招待することを約束させて裏口から逃がした。
霊夢とのデートスポットが増えたと思えば、悪い取引では無かった。よしよし。

現段階で霊夢の食生活に何の功罪も残さなかった夜雀の事は忘れて、次なる来客を待つ。
ふよふよと、遠くの方から麦わら帽子が飛んできた。
違った。
「あーうー」
洩矢 諏訪子だった。
もしかしたら、あの麦わら帽子は食べられるのか? でも、また繊維質だなぁ。なんて考えていたらそれも違った。
諏訪子は、その手にキャンディを持っていた。昔懐かしい「ペロペロキャンディ」だった。幻想入りしていたのか。
おそらくおやつの時間だったのだろう。諏訪子はこちらに飛んでくる間もぺろぺろぺろぺろとキャンディをなめていた。 
そのキャンディが幻想郷の危機を救うんだ! と力説してみたが、諏訪子は首を縦に振らない。
幻想郷より自分のおやつが大事か、この○○○(自主規制)神め。
口に出すとミジャグジさまを憑けられそうなので黙っておいた。
ちょっと早い気もするが、最後の手段に訴えることにした。

「おとなしくそれを寄越さないと、お前の帽子の中に大量のヘビを萃めるよ」

キャンディゲット。諏訪子は泣きながら帰って行った。
かわいそうな気もしたが、これも幻想郷を救うためなので勘弁して欲しい。
先ほどまで諏訪子がなめていたコレをそのまま霊夢に与えるのは、私の中にあるとても純粋な何かに抵触する感じがしたので。
私がキャンディを一通り舐(ねぶ)ってから霊夢の口に差し込んだ。なんかエロい。
もはや、霊夢が何かを食べているだけでエロい。
これから先、霊夢と食卓を囲む際、視線のやり場に困るではないか。いや、疚しいことが無ければ、堂々としていればいい。

……疚しいことだらけだった。

襲い来る様々な誘惑を振り切って次の来客を待つ。
糖分は、体の中で素早くエネルギーになるので、霊夢は峠を越えたと考えていいだろう。
霊夢が起きた時のために、お腹に貯まるものを用意してあげたい。
その願いが天に届いたのか、またも何かが飛んできた。えらいぞ、天子。
時は夕刻。空が朱ね色に色づく中、その黒い球体は境内までやってきた。
あれは、確か「闇を操る程度の能力」を持ったルーミアとかいう妖怪だったはずだ。
静止した球体からリボンを付けた金髪の少女が顔を出す。
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少女の口が『朱い何か』で濡れていた。
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開口一番「あなたは、食べてもいい人類?」とか訊いてくる。
人類じゃないよ。鬼なめんな。
それで興味を無くしたのか「そーなのかー」とつぶやきながら球体の中へと戻る。
ぞぶり、ばきりと何かを食む音が。地面に赤い染みが広がる。
あーあー、聞こえない、キーコーエーナーイー!!
ちくしょう、たまに天に願ってみたらこんな叶え方か。天子あとでシメる。
驚きを酒で洗い流す。すっきり。ルーミアを追い払った。
どっと疲れた。

辺りは宵闇に包まれ、もうこの神社を訪れる者はいない。
これ以上続けると、さっきみたいな事が増えそうだし、各家庭の夕食が博麗神社に持ち寄られる結果になりそうだったので能力は中断した。
いろいろあったけど、いい暇つぶしにはなったなぁ。
縁側で酒を煽っていると、背後で物音がした。
霊夢?
昼間に突っ込んだキャンディをバリボリとかみ砕きながら、霊夢が立っていた。
霊夢よかった。助かったんだね! 
わき上がる感動を押さえきれずに、酒でふらふらになった足を賢明に動かして霊夢の元に駆け寄る。
霊夢! 霊夢! 私、頑張ったよ!!
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……こんなに頑張った私に対して、いきなり陰陽玉は無いと思うんだ。霊夢?
4作目の投稿です。
まずは、ごめんなさい。閃いたのは萃香&霊夢のほの甘ものだったはず。
なんで、こんな事に。頭の中の萃香がまったく自重してくれませんでした。
オチも弱めですね、わかります。
感想、批評、叱咤激励、もろもろお待ちしております。
めたる
[email protected]
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
相変わらず貧困ネタはつまらんなぁ
2.名前が無い程度の能力削除
意識あったのか霊夢w
けど、命助けて貰ったんだから、揉まれたこととキャンディについては許したれ
3.名前が無い程度の能力削除
萃香がんばれ。萃香のおっぱいもがんばれ。。
4.名前が無い程度の能力削除
過ぎたるは及ばざるが如しと言いますが、萃香はちょっと頑張り過ぎちゃったんですよね。わかります。
5.名前が無い程度の能力削除
楽しく読めていただけに、オチがあまりにも弱すぎて残念です
6.喚く狂人削除
エロい。これはエロいぞ!うぉぉぉぉぉぉ!!!
7.名前が無い程度の能力削除
見守る藍がありそうで怖い。
8.名前が無い程度の能力削除
オチは弱いけど面白かったよ。
9.トラッシュ削除
面白かったですが・・・・・・
諏訪子様が可哀想すぎる!
10.名前が無い程度の能力削除
うん、まずはその手にある酒を飲ませるべきだと思うんだ

とりあえず、猛暑一日分を乗り切るねちょ分は補給できたさー。萃香GJ!
11.名前が無い程度の能力削除
>1
うはぁ。いきなりストレートなお言葉。掘り尽くされた廃坑にお宝が眠ってるかもしれないじゃないですか。……ないか。
次こそは、満足いくものをお届け出来るように頑張ります。
>2
きゅうりのあたりから意識あったかもです、飲み込んでるんで。
>3
萃香のおっぱいは……。これ以上は言えないw 
>4
あなただけでも理解してくれて、萃香も喜んでいるはずです。
>5.8
書き始めてから「オチ弱くね?」と気づいたときには遅かった。ふくらませようと悩んだ1時間半が無駄にorz
やっぱり、オチは大事ですよね。
>6
ありがとうございます! うぉぉぉぉぉぉ!!
>7
藍様は紫と橙と油揚げ以外は割とどうでもよさそうです。
>9
このSSの一番の被害者かもしれません(2番目は霊夢
>10
弱った胃腸に負担を掛けまいとする萃香の心遣いですよ、きっと。
む? このSSにはネチョ分とか無いですよ? いやだなぁw