第5回パチュリー・ノーレッジ賞に鬼人正邪氏
スカーレット・パブリッシングは25日、第5回パチュリー・ノーレッジ賞受賞作が、鬼人正邪氏の『こんな小説にマジになってどうすんの』(逆城社)に決定したと発表した、
選考委員のパチュリー・ノーレッジ氏は、「小説を書くこと、読むことの素晴らしさを謳う小説はいくらでもあるし、作者が小説を書くもの、読者がそれを読むものである以上、それが作者にとっても読者にとっても気持ちいいに決まっているわ。そんな小説賛歌に真っ向から反旗を翻す、死んでも小説なんか書きたくないから死んでも小説なんか書きたくないということを書く、という意志に貫かれた本書は、ぬるま湯的な小説賛美に安住する書き手と読み手の甘えた共犯関係を暴き立て、容赦なく断頭台にかける、極めて挑発的な宣戦布告の書になっているのよ。ここに収められた、あらゆる物語性を剥奪されたすばらしく無意味な小説群は、まさに誰もが小説を書きたがる今の幻想郷の文芸文化への勇猛果敢なレジスタンス。米井恋に匹敵する才能だわ」と絶賛した。
パチュリー・ノーレッジ賞は第126季に設立。作家のパチュリー・ノーレッジさんが一年間に刊行された小説の中から既存の価値観では計り得ぬ作品をひとりで選定する。受賞作は鬼人正邪氏の小説デビュー作で、各紙誌の書評欄にて賛否両論の嵐を巻き起こしている問題作。
(文々。新聞 睦月27日号一面より)
第5回八坂神奈子賞に富士原モコさん、茨木華扇さん
第5回八坂神奈子賞(鴉天狗出版部主催)は20日、守矢神社にて小説部門・ノンフィクション部門の選考が行われ、小説部門は富士原モコ氏の『亡失のフェニックス』(稗田出版)、ノンフィクション部門は茨木華扇氏の『万歳楽記録』(博麗神社)がそれぞれ受賞作に決定した。授賞式は来月4日、守矢神社にて行われる。
富士原モコ氏は、迷いの竹林に暮らす蓬莱人。不死者を題材にした本格ミステリや伝奇アクション小説に定評がある。『亡失のフェニックス』は、《不死鳥》の異名を持つ凄腕の妖怪退治人に窮地を救われた少女が、《不死鳥》とともに魑魅魍魎の跋扈する森から生還するため奮闘する冒険アクション。選考委員の永江衣玖氏は、「開始十ページで主人公の同行者五人が殺される冒頭から巻を措く能わず、一気通読の徹夜本でした。数々のピンチをくぐり抜ける機転のひらめき、緊迫した状況に一息つかせる主人公と《不死鳥》のユーモラスなやりとりが生む緩急の呼吸が抜群で、これまでの氏の作品に対するイメージを逆手にとった大ドンデン返しも鮮やかに決まっており、文句無しの傑作と言えるのではないでしょうか」とコメントした。
茨木華扇氏は、妖怪の山に暮らす仙人。『万歳楽記録』は、河童が飼育している怪魚・万歳楽の出現から河童に飼われるようになるまでの顛末を描いたノンフィクション。選考委員の八坂神奈子氏は「万歳楽の正体については実はちょっとばかし心当たりがあるんだが、多少事情を知っている者の目から見ても事実関係はよく調べてあるし、かつての万歳楽を知っている立場からは、万歳楽自身の視点から見たあの騒動というのが実に新鮮だったね」と評した。
小説部門受賞者には賞金六十貫文、ノンフィクション部門受賞者には賞金二十貫文がそれぞれ贈られる。
富士原モコ氏の受賞の言葉
どーだ見たか輝夜! 獲ってやったぞ八坂神奈子賞! 稗田文芸賞も獲ってやるから首を洗って待っていろ!
茨木華扇氏の受賞の言葉
あまりこういう形で目立ちたくはないのだけれど……。賞はくれるというのなら貰っておくけれど、授賞式は欠席させてもらってもいいかしら?
(花果子念報 卯月21日号より)
第5回稗田児童文芸賞に少名針妙丸さん
16日、第4回稗田児童文芸賞(幻想郷文芸振興会主催)選考会が人里の寺子屋にて行われ、少名針妙丸さんの『茶碗王子の小さな冒険』(稗田出版、全3巻)が受賞作に決定した。
稗田児童文芸賞は、少年少女を対象とした児童文学作品の優秀作を表象する賞。選考委員は作家・歴史家の上白沢慧音、作家・数学者の八雲藍、命蓮寺住職の聖白蓮の三氏。受賞者には賞金二十貫文が贈られ、寺子屋にて推薦図書として生徒に配布される。
受賞作の『茶碗王子の小さな冒険』は、呪いでこびとにされてしまった王子が、ひねくれ者のお供とともに、呪いを解くため冒険の旅に出るファンタジー。大本命と見られていた星丸小虎さんの『ミッシングハンター・ナッツ』シリーズ(命蓮寺、全七巻)を打ち破っての受賞となった。
選考委員の八雲藍氏は、「なんといってもひねくれ者で嘘つきのお供・シージャのキャラクターがすばらしい。ことあるごとに主人公の王子をバカにし、見捨てようとし、売り飛ばそうとさえする悪辣非道ぶりに最初は面食らうが、最後まで読んだとき、その非道な行いは全て逆の意味に変貌する。それを知った王子が、クライマックスでシージャにかける『お前を絶対に許すもんか!』という台詞は、《友情の在り方》という命題への解がひとつではないということを書ききって余すところがない。なんと美しい複数解だろう」と語った。
受賞した少名針妙丸さんは小人の末裔。一昨年、天の邪鬼の鬼人正邪ととともに付喪神異変を起こしたことでも知られる。受賞作『茶碗王子の小さな冒険』が小説デビュー作。受賞については、「受賞は嬉しいけど、正邪これ読んでくれたかなあ。受賞なんかしちゃったらかえって読んでくれなさそうだなあ」とため息混じりに語った。
(文々。新聞 葉月17日号一面より)
第5回幻想郷恋愛文学賞受賞作決定
去る霜月13日、博麗神社にて第5回幻想郷恋愛文学賞の選考会が行われました。白岩怜(作家)、風見幽香(作家)、本居小鈴(鈴奈庵店主)の三氏による選考の結果、候補四作の中から、水橋パルスィさんの『あなただけを見つめてる』(旧地獄堂出版)が受賞作に決定しました。
◆各選考委員の短評
白岩氏「主人公が恋の相手と結ばれない話はたくさんあるけど~、まさか主人公と恋の相手の間に一言の会話もないまま終わってしまう恋愛小説なんてものが成立するなんて思わなかったわ~。こんなの書かれたら片思いの話が当分書けなくなっちゃうわね~」
風見氏「指一本触れないどころか、一言の言葉すら交わすことなく、三百年間ずっと片思いし続ける妖怪の鬼気迫る心理描写だけで最初から最後まで読ませてしまう筆力に脱帽したわ。ストーカーっていうの? いや、個人的にはあまり好みではないのだけれど」
本居氏「現実と妄想の区別を失って暴走する、常軌を逸した片思いを迫真の筆致で描ききった、幻想郷におけるストーカー文学の金字塔です。今回も絶対獲れないだろうと思いながら推したんですけど、まさか白岩さんが推してくださるとは……。これを推すなら幽香さんの方だと思ってたんですけど」
◆受賞者プロフィール
水橋パルスィ(みずはし ぱるすぃ)…地底に暮らす橋姫。小説の著書に『さようなら、恋』『丑の刻参り三十日目』『緑色の眼をした私』など。自身の嫉妬心を赤裸々に暴露するエッセイでも人気がある。受賞作は、一目惚れした相手に三百年に渡って片思いし続ける妖怪の姿を描いたストーキング恋愛小説。
◆受賞のことば
そんな、受賞なんかしちゃったら受賞作を妬めないじゃない! ああ、受賞作を妬める落選者が妬ましい……。あと自分より売れてる全ての作家が妬ましい……。
(博麗神社月報 師走号より)
スカーレット・パブリッシングは25日、第5回パチュリー・ノーレッジ賞受賞作が、鬼人正邪氏の『こんな小説にマジになってどうすんの』(逆城社)に決定したと発表した、
選考委員のパチュリー・ノーレッジ氏は、「小説を書くこと、読むことの素晴らしさを謳う小説はいくらでもあるし、作者が小説を書くもの、読者がそれを読むものである以上、それが作者にとっても読者にとっても気持ちいいに決まっているわ。そんな小説賛歌に真っ向から反旗を翻す、死んでも小説なんか書きたくないから死んでも小説なんか書きたくないということを書く、という意志に貫かれた本書は、ぬるま湯的な小説賛美に安住する書き手と読み手の甘えた共犯関係を暴き立て、容赦なく断頭台にかける、極めて挑発的な宣戦布告の書になっているのよ。ここに収められた、あらゆる物語性を剥奪されたすばらしく無意味な小説群は、まさに誰もが小説を書きたがる今の幻想郷の文芸文化への勇猛果敢なレジスタンス。米井恋に匹敵する才能だわ」と絶賛した。
パチュリー・ノーレッジ賞は第126季に設立。作家のパチュリー・ノーレッジさんが一年間に刊行された小説の中から既存の価値観では計り得ぬ作品をひとりで選定する。受賞作は鬼人正邪氏の小説デビュー作で、各紙誌の書評欄にて賛否両論の嵐を巻き起こしている問題作。
(文々。新聞 睦月27日号一面より)
第5回八坂神奈子賞に富士原モコさん、茨木華扇さん
第5回八坂神奈子賞(鴉天狗出版部主催)は20日、守矢神社にて小説部門・ノンフィクション部門の選考が行われ、小説部門は富士原モコ氏の『亡失のフェニックス』(稗田出版)、ノンフィクション部門は茨木華扇氏の『万歳楽記録』(博麗神社)がそれぞれ受賞作に決定した。授賞式は来月4日、守矢神社にて行われる。
富士原モコ氏は、迷いの竹林に暮らす蓬莱人。不死者を題材にした本格ミステリや伝奇アクション小説に定評がある。『亡失のフェニックス』は、《不死鳥》の異名を持つ凄腕の妖怪退治人に窮地を救われた少女が、《不死鳥》とともに魑魅魍魎の跋扈する森から生還するため奮闘する冒険アクション。選考委員の永江衣玖氏は、「開始十ページで主人公の同行者五人が殺される冒頭から巻を措く能わず、一気通読の徹夜本でした。数々のピンチをくぐり抜ける機転のひらめき、緊迫した状況に一息つかせる主人公と《不死鳥》のユーモラスなやりとりが生む緩急の呼吸が抜群で、これまでの氏の作品に対するイメージを逆手にとった大ドンデン返しも鮮やかに決まっており、文句無しの傑作と言えるのではないでしょうか」とコメントした。
茨木華扇氏は、妖怪の山に暮らす仙人。『万歳楽記録』は、河童が飼育している怪魚・万歳楽の出現から河童に飼われるようになるまでの顛末を描いたノンフィクション。選考委員の八坂神奈子氏は「万歳楽の正体については実はちょっとばかし心当たりがあるんだが、多少事情を知っている者の目から見ても事実関係はよく調べてあるし、かつての万歳楽を知っている立場からは、万歳楽自身の視点から見たあの騒動というのが実に新鮮だったね」と評した。
小説部門受賞者には賞金六十貫文、ノンフィクション部門受賞者には賞金二十貫文がそれぞれ贈られる。
富士原モコ氏の受賞の言葉
どーだ見たか輝夜! 獲ってやったぞ八坂神奈子賞! 稗田文芸賞も獲ってやるから首を洗って待っていろ!
茨木華扇氏の受賞の言葉
あまりこういう形で目立ちたくはないのだけれど……。賞はくれるというのなら貰っておくけれど、授賞式は欠席させてもらってもいいかしら?
(花果子念報 卯月21日号より)
第5回稗田児童文芸賞に少名針妙丸さん
16日、第4回稗田児童文芸賞(幻想郷文芸振興会主催)選考会が人里の寺子屋にて行われ、少名針妙丸さんの『茶碗王子の小さな冒険』(稗田出版、全3巻)が受賞作に決定した。
稗田児童文芸賞は、少年少女を対象とした児童文学作品の優秀作を表象する賞。選考委員は作家・歴史家の上白沢慧音、作家・数学者の八雲藍、命蓮寺住職の聖白蓮の三氏。受賞者には賞金二十貫文が贈られ、寺子屋にて推薦図書として生徒に配布される。
受賞作の『茶碗王子の小さな冒険』は、呪いでこびとにされてしまった王子が、ひねくれ者のお供とともに、呪いを解くため冒険の旅に出るファンタジー。大本命と見られていた星丸小虎さんの『ミッシングハンター・ナッツ』シリーズ(命蓮寺、全七巻)を打ち破っての受賞となった。
選考委員の八雲藍氏は、「なんといってもひねくれ者で嘘つきのお供・シージャのキャラクターがすばらしい。ことあるごとに主人公の王子をバカにし、見捨てようとし、売り飛ばそうとさえする悪辣非道ぶりに最初は面食らうが、最後まで読んだとき、その非道な行いは全て逆の意味に変貌する。それを知った王子が、クライマックスでシージャにかける『お前を絶対に許すもんか!』という台詞は、《友情の在り方》という命題への解がひとつではないということを書ききって余すところがない。なんと美しい複数解だろう」と語った。
受賞した少名針妙丸さんは小人の末裔。一昨年、天の邪鬼の鬼人正邪ととともに付喪神異変を起こしたことでも知られる。受賞作『茶碗王子の小さな冒険』が小説デビュー作。受賞については、「受賞は嬉しいけど、正邪これ読んでくれたかなあ。受賞なんかしちゃったらかえって読んでくれなさそうだなあ」とため息混じりに語った。
(文々。新聞 葉月17日号一面より)
第5回幻想郷恋愛文学賞受賞作決定
去る霜月13日、博麗神社にて第5回幻想郷恋愛文学賞の選考会が行われました。白岩怜(作家)、風見幽香(作家)、本居小鈴(鈴奈庵店主)の三氏による選考の結果、候補四作の中から、水橋パルスィさんの『あなただけを見つめてる』(旧地獄堂出版)が受賞作に決定しました。
◆各選考委員の短評
白岩氏「主人公が恋の相手と結ばれない話はたくさんあるけど~、まさか主人公と恋の相手の間に一言の会話もないまま終わってしまう恋愛小説なんてものが成立するなんて思わなかったわ~。こんなの書かれたら片思いの話が当分書けなくなっちゃうわね~」
風見氏「指一本触れないどころか、一言の言葉すら交わすことなく、三百年間ずっと片思いし続ける妖怪の鬼気迫る心理描写だけで最初から最後まで読ませてしまう筆力に脱帽したわ。ストーカーっていうの? いや、個人的にはあまり好みではないのだけれど」
本居氏「現実と妄想の区別を失って暴走する、常軌を逸した片思いを迫真の筆致で描ききった、幻想郷におけるストーカー文学の金字塔です。今回も絶対獲れないだろうと思いながら推したんですけど、まさか白岩さんが推してくださるとは……。これを推すなら幽香さんの方だと思ってたんですけど」
◆受賞者プロフィール
水橋パルスィ(みずはし ぱるすぃ)…地底に暮らす橋姫。小説の著書に『さようなら、恋』『丑の刻参り三十日目』『緑色の眼をした私』など。自身の嫉妬心を赤裸々に暴露するエッセイでも人気がある。受賞作は、一目惚れした相手に三百年に渡って片思いし続ける妖怪の姿を描いたストーキング恋愛小説。
◆受賞のことば
そんな、受賞なんかしちゃったら受賞作を妬めないじゃない! ああ、受賞作を妬める落選者が妬ましい……。あと自分より売れてる全ての作家が妬ましい……。
(博麗神社月報 師走号より)