Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:第6話 閉じられた鏡

2016/05/29 21:34:49
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妖怪の山に守矢神社という社があり、八坂神奈子という神が祀られている。
ブルーのセミロングに注連縄で作った髪飾りを被っており、真っ赤な衣装を身にまとっている。
また、神事の際には大きな注連縄の輪を背負うのだが、こういうオフの日は部屋の隅に立て掛けている。
彼女は今、不機嫌だった。
それもそうだろう。ミラーモンスターが現れだしてからというもの、人間は皆、外出自体を恐れるようになり、
結果参拝客は激減。信仰も右肩下がりだからだ。
極めつけは、いつも胸に着けている宝物「真澄の鏡」が、瓦版でぐるぐる巻きにされた上に、
ガムテープでとめられて無残な姿になってしまったことだ。
「ただでさえ少ない参拝客が怯えてしまいます!」という風祝・東風谷早苗の懇願に負けてしぶしぶ了承したが、
神社の主神がこんな小学生の工作じみた物をぶら下げていては格好が付かない。
そして、気に入らないのが──

「あの、私、先輩に恋文を送ったんです。“もし受け入れてくれるなら、明日木陰の東屋に来てください” って。
でも、やっぱり行く勇気がなくって……」

境内の一角で天狗の少女が青年に恋愛相談をしている。

「わかりました。待ってください」

青年はそう答えると、メダルをまずは1枚。続いて2枚を指で弾き──

「次で最後」

3枚弾いて裏表を見た。そして、少女の顔を左右から、ためつすがめつ見た。

「……わかりました。“待ち人来たる”です。勇気を出して」
「本当ですか!ありがとうございます!」

少女は顔いっぱいに笑みを浮かべ、占い料を真鍮の小皿に置いて去っていった。
待ってましたとばかりに次の客が進み出る。道着を着たイガグリ頭の大男だ。

「つ、次はおいらだ!今度川向うの連中と決闘なんだが、なんか助言をくれよ!」

青年は先ほどと同じくメダルを順番に弾き、

「“丑寅の方角に災いあり”です。奇襲攻撃にご注意ください」
「ありがとよ、守りを固めとくぜ!」

イガグリ頭も占い料を置くと、拳の指を鳴らしながら帰っていった。

「おい、押すなよ!」
「かみさんの機嫌も占ってくれー!」
「早くしないと日が暮れちまうべ!」
「まだ日没まで時間はあります。皆さん占いますからご安心ください」

イガグリ頭の後にも妖怪たちが長蛇の列を成している。
妖怪の山の妖怪達は、皆、高い知性を持っており、何がしかのコミュニティに属している。
また、テリトリーを侵されないかぎり、滅多に人間を襲わない。
今、占いの列にならんでいる妖怪たちも、獣耳や尻尾が生えているなど、細かい点を除けば見た目はそれほど人間と変わらない。
青年はそんな妖怪たちを相手に占い商売をしているのだが、それが恐ろしいほどの的中率で、瞬く間に妖怪の間で評判になった。
そして山中の妖怪が彼の占いを求めて集まり、今では立派な守矢神社の収入源になっている。だが、

「あーもう、みんな占いだけしたらさっさと帰っちまって。手の一つも合わせて行けってんだい!」

すっかり人気を取られてしまい、ぐで~っと上半身をちゃぶ台に預けて愚痴る姿は、あまり神様らしいとは言えない。

「もう、神奈子様ったら、そんなところを見られたらますます信仰がなくなりますよ!」

お茶を持ってきた少女は東風谷早苗。守矢神社の風祝だ。
風祝とは神奈子と民草の仲介をしたり、時に神奈子の力を借りて直接力を振るう存在である。
グリーンのロングヘアが印象的で、蛇とカエルを模した髪飾りを止めている。肩を露出した白と青の巫女服が何とも涼しげだ。

「いいじゃありませんか。手塚さんのおかげで寂しかった台所事情も一気に改善しましたし……」

早苗は湯呑みに緑茶を注ぎながら神奈子をなだめる。

「おみくじは全く売れなくなったけどね!」

実際、倉庫の隅にあった古いテーブルと椅子だけの占い所では、妖怪達が押し合いへし合いしているが、
おみくじやお守りを販売している立派な社務所は閑古鳥が鳴いている。

「頑張って99番まで書いたのに……」

神奈子も力ある神であるのは間違いないのだが、ううう……、と落ち込む後ろ姿は何とも人間臭い。

「アハハハ!神奈子カッコ悪~い」

子供のように遠慮無く神奈子を指差して大笑いする少女が1人。洩矢諏訪子である。
見た目こそあどけない少女だが、守屋神社に祀られるもう一柱の神である。
カエルのような目玉が付いた背の高い麦わら帽を被り、白地の服に紫の上着とスカートを履いている。
本来、守矢神社の主は諏訪子なのだが、そのあたりの事情は込み入っており解説していると長くなるので割愛する。

「うっさいロリガエル!その指引っ込めないと食っちまうよ!」
「神奈子様落ち着いて!諏訪子様もからかわないでください」

肝心なのは、神奈子、諏訪子、早苗と同居することになった占い師の青年である。
手塚海之。彼もまた、仮面ライダーの1人なのだ。
手塚は、慧音に幻想郷の状況を知らされた際、里に住むよう勧められたのだが、妖怪の山の方角に「何かの運命を感じます」と言い出したのだ。
あそこは人が住むようなところではない、と慧音に止められたのだが、どうしてもという彼に根負けして、守矢神社と交渉し、今に至るというわけだ。

「でも、不思議な人ですよね。手塚さん。本当にあの占いは神がかってます」
「早苗まで私よりアイツに夢中なのかい?もうみんなして私のこと馬鹿にして!神様なんか辞めてやるー!」

と言って畳の上をゴロゴロ転がりだした。別に早苗は神奈子を見捨てたわけではないし、諏訪子以外誰も馬鹿にもしていないのだが、
被害妄想丸出しで、すねてしまった。早苗は夕食の準備もあり、さすがにいつまでも付き合ってはいられないので、もう放っておくことにした。
今夜は神奈子の好物だからその時には機嫌も直るだろう。

「ただいま帰りました」

そうこうしているうちに、手塚が今日の占い行列をさばいて帰って来た。

「東風谷さん。これお願いします」

手塚がずっしりと重そうな袋を早苗に手渡す。もちろん中身は今日の占い料だ。

「わぁ……いつもありがとうございます。本当に助かります」
「いえ、無理を言ってご厄介になってるんですから当然です」
「……ふん。おかえり、人気もん」
「神奈子様!」
「あの……何かあったんですか?」
「あーいいのいいの!バカは放っといてあっちで晩ご飯までゲームしようよ!」
「バカとはなんだい!」
「二人ともやめてください!あ、なんでもないんですよ手塚さん。夕食まで時間がありますんで、諏訪子様と休んでいてください」
「そう、ですか……ではそうさせていただきます」

ムスッっとしたままの神奈子を置いて奥の部屋に行く諏訪子と手塚。早苗は夕食の支度を再開した。
そして1時間後──神奈子と諏訪子は戦慄した。

「こ、これは夢なのかい……?」
「お肉が……見えてるよ。まだ水菜よけてないのに!!」

夕食は神奈子の好きな水炊きだった。しかも手塚の稼ぎのおかげで、今までより鶏肉が大幅に増量されている。

「水菜のジャングルを切り分け、豆腐の妨害をくぐり抜け、湯の中をさまよい歩き、ようやく探し当てていた鶏肉が、さあ食べてと言わんばかりに山盛りだなんて!」
「悲しくなること言わないでください!今まで貧乏暮らしだったみたいじゃないですか!」

しかし、実際今までの水炊きは肉の割合が寂しかったのも事実である。

「美味しいよう、美味しいよう……」

もう食べている神奈子は泣き出しそうな勢いである。

「いただきます」

手塚は水菜、豆腐、鶏肉をバランスよく器に取り、落ち着いて食べている。

「神奈子様」

神奈子の隣に座った早苗がそっと話しかける。

「このお肉も手塚さんが頑張ってくれたおかげなんですよ。神奈子様も諏訪子様も手塚さんも、
みんな、同じ神社を支えるもの同士です。だから、少しでいいんで仲良くしませんか?」

暗に手塚との仲を取り持つ早苗。

「ふ、ふん。考えとくよ……」

ぷいっと向こうを向いてつぶやく神奈子。しかし、顔にはもう答えが書いてあるようなものだった。

後日。

「さあ、私もいつまでもグズグズしてらんないね。今日は直々に本殿に出向こうか」

神奈子は伸びをすると、大きな円形の注連縄を背負った。そして、胸の物に気づくと、

「参拝客の前でこいつは付けられないね」

瓦版でぐるぐる巻きの物を外してちゃぶ台に置き、境内へ向かった。そして遅れること約数分。
手塚も身支度を整え、いつもの占い所へ向かおうとした。すると、あるものに目が留まった。
先程、神奈子が置いていった「真澄の鏡」である。外見はただの新聞の固まりなのだが、見ていると、何か奇妙な言い表しようのない感情が湧いてくる。
手塚の占いの才能が、神の宝物と共鳴したのか。いや違う。もっと身近な縁(えにし)を手塚は感じていた。仮面ライダーとしての縁を。

今日も今日とて占い所は盛況だった。しかし、神奈子も負けてはいない。
風神が直々に邪気を払ってくれるとあって、占ってもらった後、本殿に参拝というコースが出来上がり、神社全体に活気があふれていた。しかし。

──キィィーーーン……

手塚の耳に聞き慣れた音が響いた。ミラーモンスターが現実世界へ出てくる前に撃退しなければ。立ち上がって占い客に告げる。

「皆さん、大変です!今日はもうお戻りください。邪悪な気配が近づいています!」
「じゃ、邪悪な気配!?」
「先生が言うんだもの、早くしないと不幸になるわ!」
「不幸ですって!?いやよ、逃げなきゃ!」

妖怪たちはあっという間に逃げていった。人間の列ならパニックで将棋倒し等の惨事が起きていたが、
空を飛べる妖怪がほとんどだったので大事には至らなかった。
避難が終わったことを確認し、手水舎を覗くと、居た。胴体から前に突き出すように2つの盾を持つ、重装甲のモンスター。

「一体どうしたっていうんだい!?」

混乱に気づいた神奈子が駆け寄ってきた。

「ミラーモンスターです。中にいるうちに倒さないと!」
「例の鏡の妖怪か……わかった。仮面ライダーの妖怪退治、とくと拝ませてもらうよ!」

手塚は手水舎の水面にカードデッキをかざす。水面と現実の手塚の腰にベルトが出現。
そして、右手の人差指と中指を立て、サッと腕を伸ばす。

「変身!!」

そしてカードスロットにデッキを装填。3つの鏡像に身を包まれ、仮面ライダーライアへと変身した。
ワインレッドのアーマーに多数のスリットが入ったヘルムが特徴。

「へえ……これが仮面ライダー」

珍しそうに感嘆する神奈子をよそに、ライアはすぐさま水盤へ飛び込む。
左右反転した守矢神社にそいつは居た。さっきも見た2つの盾を装備した重装甲のミラーモンスター。
ライアは戦い方を思案する。正直に言って、この戦いははじめから不利だ。ライアのデッキはいささか決定的な攻撃力に欠ける。
この重量級モンスターをどう打ち崩せば良いのか。まずは基本武器が無くては始まらない。
ライアはカードを1枚ドロー。左腕に装備したエビルバイザーに装填、カバーを押し上げた。

『SWING VENT』

ライアの手に鞭状の武器、エビルウィップが現れた。右手のスナップを効かせて、思い切りモンスターに振り下ろす。
風切音と共にモンスターに命中。バシィン!という大きな破裂音が響いた。不意打ちを食らい、始めてライアの存在に気づいたモンスター。

「グルアアアァ!!!」

怒りの雄叫びを上げると、モンスターはライアに向かって猛烈な勢いで突進してきた。
やはり攻撃はほとんど効果がなかったようだ。ライアはとっさに右方向に回転ジャンプし、突進を避けた。
モンスターが勢い余ってぶつかった、境内の隅にある高さ2メートルほどの岩が粉々に砕けた。まともに食らっていたら死んでいただろう。
ライアは状況を打開すべく、カードをドロー。しかし、“COPY VENT”。駄目だ!これはライダーの能力をコピーするカード。モンスターには使えない!
残る手は、“ADVENT”で契約モンスターを召喚か、“FINAL VENT”に賭ける。
しかし、どちらもあの2つの盾に守られた正面からぶつかっても、とどめを刺せるかは正直厳しい。
いや、待て。正面が駄目なら……よし、これに賭けるしかない。ライアはカードを、2枚ドロー。1枚をエビルバイザーに装填。

『ADVENT』

異次元からエイ型モンスター・エビルダイバーが飛来した。
しかし、「合図するまでそのまま待て!」ライアはエビルダイバーに攻撃をさせず、上空で待機を命じた。
砕いた岩から立ち上がったモンスターは再びライアに向かって突進。
また横方向にギリギリで回避したが、頭に血が登るに従って足が早くなっている。
次は逃げきれないだろう。──いや、そうでなくては困る。再びエビルウィップを数回転させ、モンスターの頭に一撃与える。
やはり効果はなく、完全に頭に来たモンスターは、ライアに向かって猛スピードで突進してきた。
今度は回避せず後ろに逃げるライア。やはりモンスターの方が足が早く、どんどん差が縮まる。
そして、もう捕らえられる、といった瞬間、ライアは上空めがけてエビルウィップを放った。頑丈にそびえ立つ守矢神社の大鳥居に。
鳥居上部にエビルウィップを巻きつけると、ライアは全力で引っ張る。すると振り子のように体が宙を舞った。
「来い!」その機を逃さず、ライアはエビルダイバーを呼び、同時に最後のカードをエビルバイザーに装填。

『FINAL VENT』

息の合ったタイミングでエビルダイバーに着地すると、ライアはそのまま、標的を見失い辺りを見回すモンスターに後ろから突撃。
ぐしゃり、という手応えを感じた後、モンスターは爆散した。狙い通り。戦車と同じだ。前装甲は厚くても後ろの防御は薄い。
ライアは、見事に弱点を突き、ファイナルベント「ハイドベノン」でとどめを刺すことができた。

手塚は水盤から飛び出し、変身を解いた。神奈子が感心した様子で出迎えた。

「やるねえ、仮面ライダーってのも!」
「ありがとうございます」
「お前さんが来て、神社に活気も戻ったし、鏡の妖怪も恐るるに足らず。守矢神社も安泰だな!」

うん、うん。と、腕組みをして一人納得する神奈子。だが、手塚にはどうしても聞かなければならない疑問があった。

「ところで神奈子様、折り入ってご相談したいことが……」
「何だい?改まって」
「今朝、居間のちゃぶ台に妙な物が置いてあったのです。一体あれは何なのですか?」
「ああ、あれかい?“真澄の鏡”っていうこの神社の宝物さ。今じゃあんな有様だけど、鏡の妖怪が現れるまでは、いつもこの胸に身につけてたんだ」

鏡!! やはり気のせいなどではなかった。その真澄の鏡には特別な“何か”がある。そして、神奈子も会話の流れから察知する。

「ん、鏡?ちょっと、あんたまさか……」
「はい。失礼を承知でお願いします。一度、真澄の鏡に飛び込ませては頂けないでしょうか」
「う~ん、大事な宝物だ。他の奴なら“寝ぼけんな”で済ませるんだが……
お前さんなら不純な動機じゃないことはわかる。あぁ、いいとも。ちょっと待ってな」

神奈子はすぐに戻ってきた。居間から持ってきた、真澄の鏡を包んでいた瓦版を破ると、手塚に向けた。

「さぁ、飛び込んできな!」

手塚はもう一度変身すると、真澄の鏡に飛び込んだ。

……
………

不可思議な空間。
いつもライドシューターが待機している、現実世界とミラーワールドをつなぐ、鏡で構成された空間と似ているが、その広さが全く異なる。
上を見ても下を見ても限りがない。もちろん周囲を見回してもどこまでも果てなく続いている。
しかし、はるか遠くに奇妙なものが見えた。無数の多角体の鏡で構成された球体である。遠く離れたここでさえそのエネルギーが感じられる。

「あれは……そうか、あれが!」

ライアが一歩踏み出そうとすると、突然ミラーモンスターのけたたましい鳴き声が真横で響き、ライアを切り裂こうとした。
一瞬の差で回避できたが、ライアは周りを見てギョッとした。
侵入者の存在を感知したミラーモンスターが上下左右、どこを見ても視界を埋め尽くしていたのだ。
防御や回避など考えようともせず、とにかくライアは出口に飛び込んだ。息も絶え絶えに、真澄の鏡から再び守矢神社に投げ出される。

「どうした、一体何があったんだい!?」
「やはり真澄の鏡はただの鏡ではありませんでした。……コアミラーです。無数のミラーモンスターに守られていましたが、コアミラーの存在する空間につながっていました」
「なんだいそりゃあ?」
「ミラーモンスターを生み出すミラーワールドの核です。今すぐ、仲間のライダー達に連絡を取らないと……」
「慧音のところに行くのかい?」
「はい。急がないと」
「なら私の風で送ってやるよ。お前さんのヒラメより早いはずだよ」
「(ヒラメ……)すみません。お願いします」
「お安い御用さ。そらっ」

ビュオオオォ!!

ライアを強力な風が包み込み、徐々に体が浮かび上がった。そして、体が完全に空に舞うと、里に向けて一直線に飛び去った。
アイデアをすぐ形にしないと忘れてしまうんです。6話書きながら最終話書くとかもうね
AK
コメント



1.沙門削除
アイデアはすぐ形にしないと、ダメになる。つぅてばっちゃが言ってた。
何事も形にする事で良くなる。今の苦難も未来への投資だと思えばいいんじゃないの?
2.AK削除
>沙門 さん
アドバイス、本当にありがとうございます。実は7・8話も
ちょくちょくブツ切り案を書いているので、(1話分には全く足りてませんが)
飛び飛びでも、今は今のやり方で地道に書いていこうと思います。