Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:第2話 影を切り裂く者

2016/05/24 02:19:28
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助けた娘に案内され、真司は彼女が言う“里”に辿り着いた。
里は高い木と石膏の壁で覆われており、出入りは1ヶ所だけある大きな門からのみできるらしい。

「ここです。初めての人は通行手形がいるんですけど、私と一緒なら入れますから」
「凄いなぁ、映画村のセットみたいだ」

「おや、お鈴ちゃん。その人は誰だい?」

門の両脇に設置された簡素な見張台から声がかけられた。猟銃を肩にかけた法被姿の男だ。
歳は中年あたりだが、赤黒く日焼けした筋肉質の体型はいかにも腕っ節が強そうだ。

「あ、親分さん。この人、私が妖怪に食べられそうになってたところを助けてくれたんです。お礼がしたいんで、中に入ってもらってもいいですか?」
「なんだって!?ったく、この非常時にそんな馬鹿が居やがったのか……兄ちゃん、とにかくこの子を助けてくれてありがとうよ。さぁ、入ってくんな」
「あぁ、どうも……」

門をくぐり、真司が見た光景はまさに明治時代に遡ったかのような古風な街並みであった。
映画のセットなどではなく、実際に人が瓦葺きの家で生活をし、茶屋や魚屋といった店が商売に勤しんでいるのだ。

「マジ凄い!映画村より本格的だ。帰ったら絶対今度特集組もう!」
「あなたのお国ではこういう町は珍しいんですか?」
「あ、オレ真司!うん。本当初めて見た!ちなみにここ、なんていうところなの?」
「幻想郷です」
「幻想郷かぁ……珍しい地名だね。北海道の割りとあったかいところとかかな?」

真司は、お鈴と談笑しながら歩いていると、ある光景が目に留まった。
少女たちが互いに向き合って髪を整えている。

「ねぇ、ここんとこハネてない?」
「うん。だいじょぶだいじょぶ」

仲の良い友達同士でよくあることである。

「じゃあ、次はこの髪留めつけてくれる?場所がよくわかんないから」
「わかった」

(鏡、ないのかな)

歩きながら考える。
だが、次の瞬間に真司はその光景の本当の意味を知る。
全ての家々のガラスというガラスに古新聞が貼られているのだ。異様としか言えないこの光景を、真司は以前にも見たことがある。
真司が持つ変身用カードデッキの前の持ち主、榊原耕一の自宅であった。
彼はミラーモンスターの襲撃を恐れ、家中の鏡やガラスを新聞で覆っていたのだ。

「ねえ、お鈴ちゃん!あの家みんな窓ガラスあんな風になってるけど、もしかして……」
「そうです……真司さんのお国でも鏡の妖怪が?」
「鏡の妖怪って……やっぱりミラーモンスターか!」

珍しい光景に浮かれてしまい、すっかり重要な疑問を忘れていた。確かにここはミラーワールドのはずだ。
実際先程ミラーモンスターと戦った。しかし、ここでは人々が普通に暮らしている。
だが、ミラーワールドの中でも皆、ミラーモンスターを恐れて生活している。
鏡の中に鏡の世界が存在して……えーと、つまりどういうことなんだ?

(あーわっけわかんねえ!!)

あまり頭の良いほうではない真司が混乱していると、ふと驚くべきものを見た。
『蕎麦処』の看板がかかった店先に、あるはずのないものがあったのだ。
漆黒のカラーと滑らかなフレームが特徴のバイク、Hondaのシャドウスラッシャー400である。あのナンバーは間違いない。蓮のものだ。
ただ、なぜか後部に大工仕事で取り付けたような出前台がある。なんで蓮のバイクが?と考えていると、店の中から声が聞こえていた。

「おーい、盛り四枚、呉服屋の旦那まで頼むわ」
「ういっす」

そして、店から出てきた人物を見て疑問が確信に変わった。黒のジーンズに薄手のセーター。
出てきたのは真司のよく知る仮面ライダーナイト・秋山蓮その人だったからである。

「蓮……!お前どうしてここに!?」
「……お前も来てたのか」

驚愕する真司とは対照的に、やはりか、と言わんばかりに落ち着いた様子の蓮。

「どうしてお前までここにいるんだよ!なんでミラーワールドに人が住んでるんだ?
 そういえば、さっきミラーモンスターが喋ってたんだよ!この世界なんか変なんだ!
っていうかなんで蕎麦屋……」

矢継ぎ早に疑問をぶつける真司だが、

「うるさい、俺は忙しい。とにかく慧音さんに会ってこい、話はそれからだ」
「おい、蓮!」

呼び止める真司を無視して、蓮は出前台に蕎麦を乗せると、シャドウスラッシャーを発進して出前に行ってしまった。
後ろから見ると、バイクの洗練されたボディと無骨な出前台のミスマッチ具合が何とも残念だなぁ。と、
どうでもいいことを考えていたことに気づくと、さっそく真司は、お鈴に“慧音”という人物について尋ねた。

「上白沢先生のことですよ。里の守護者で寺子屋の教師もなさってる立派な方なんです」
「守護者ってことはやっぱりミラーモンスターと戦ってる人なのかな……ねぇ、何とかその人と会えないかな?」
「ええ、今の時間ならまだ寺子屋にいらっしゃいますよ」
「お願い、その寺子屋ってとこに案内してよ! あと……その守護者の人に俺のこと紹介してくれないかな。
いきなり俺だけで行ったら怪しまれそうだし」
「全然問題無いですよ。寺子屋はすぐ近くですし、先生も気さくな方なのでどなたとも会って下さいます」

お鈴に案内してもらうと、実際寺子屋には10分ほどで到着した。
学生時代に歴史の教科書で見た戦前の小学校のような、木造一戸建ての校舎に小さな運動場がある。

「ごめんくださーい!上白沢先生はいらっしゃいますかー!」

お鈴が入り口で声を上げて守護者なる人物を呼ぶと、奥から“少し待ってくれ”と返答があった。待つことしばし。

「待たせて悪かったな、お鈴。今日はどうしたんだ?」

出てきた守護者は女性だった。スカート部分のフリルが映える、特徴的なブルーのドレスを着ており、
帽子と言うにはいささか奇妙な、櫓のミニチュアのようなものを頭に乗せている。

「あ、あの、初めまして!俺、城戸真司っていいます!この町にミラーモンスターが出るって聞いて、俺もミラーモンスターと戦ってて色々聞きたいことがあって……」

不思議な守護者と会ったこと、それをきっかけに改めて疑問が噴出し、いささか焦ってまくしたててしまう真司を慧音が制した。

「待て。君が聞きたいことは大体わかっている。中で話そうじゃないか。お鈴、よくこの人を連れて来てくれたな。
私はこれから彼と大事な話がある。長くなりそうだから君はもう帰ると良い」
「はい。では私はこれで失礼致します。真司さん、結局何もお礼できなくてすみません」
「そんなことないって。色々助けてくれたじゃん。気をつけてね」

真司は手を振って、お鈴を見送った。それを見届けると、慧音は真司を職員室に招き入れた。
職員室と言っても教室の半分くらいの小さな部屋で、教員も慧音1人だけなので、
半分は教材置き場を兼ねており、部屋の隅に置かれた応接用ソファに座るよう勧められた。
慧音も真司と向かい合うように座る。すると、開口一番に驚くべきことを言った。

「結論から言おう。ここはミラーワールドではない。君たちが住む同じ現実世界だ」
「!?」
「ただ、君たちの常識とここの常識は少し……いや、かなり違うな」
「そ、それってどういうことですか?俺、確かにミラーワールドに入ってミラーモンスターを倒したんです。
というか、どうしてミラーワールドについて知ってるんですか?ここだけライダーバトルのルールが違うとか?
まさか、ひょっとしてあなたもライダーなんじゃ……」
「……はぁ、全く。またろくに説明もせず連れて来たのか。おい紫、いるんだろう!」

うんざりした様子の慧音は、他に誰もいないはずの職員室で誰かに向かって呼びかけた。

「はぁい、みんなのアイドル素敵な美人ゆかりんで~す」

すると、声とともに空間が裂けると、中から白いドレス姿の女性がひらひら手を振りながら現れたのだ。

(なんだこれ!鏡もないのに空中から人…)ゴツン!

という真司の驚きは部屋中に響く鈍い音で遮られた。慧音が紫に頭突きを食らわせたのだ。多分、手加減してない。

「痛ったーい!ちょっと新入りさんの緊張をほぐしてあげようと思っただけなのに……」
「ふざけるな。お前のせいで彼が混乱しているんだぞ」
「そこを懇切丁寧に事情を説明してあげるのがあなたの「お前の仕事だ」」
「せめて最後まで言わせてよ!」
「だいたいまともに状況説明して連れて来たのは蓮だけじゃないか」
「だってぇ。めん…一刻を争う状況でやむを得ないっていうかぁ」
「めんどくさいって言ったな。今めんどくさいって言ったな!」

そんなやり取りを見て真司がふと思う。

(紫って人、確かに綺麗だけど、なんかびみょ~に“若作り”してるような……)

「あら、な・に・か・ご・し・つ・も・ん・で・も?」

ぐりんっ!と顔だけ真司に向けて固まった笑顔を見せた。心でも読めるのかよ。

「い、いえなんでも!(うげ、目が笑ってなかったよ怖えぇ)
……いや、やっぱり聞きたいことがあります」
「なぁに?年齢とスリーサイズ以外なら何でもお答えしますわ」
「いや、そうじゃなくて……今のお話だと、蓮はわかっててこの幻想郷ってとこに来たんですよね。
その時のこと、詳しく聞かせてもらえませんか?」
「よくってよ。あの時も一騒動あったわねぇ……」

つい最近のことなのは明らかなのに、紫は昔を思い出すように語りだした。


──


「キャアァァ!!鏡の妖怪よ!」
「ガラスに近づくんじゃないぞ!」
「和室だ、和室に逃げるんだ!」

その日、突然里の中央広場にミラーモンスターが現れ、付近住民はパニックに陥っていた。
既に早馬が博麗神社に通報に行ったが、犠牲者が出るまでに霊夢が間に合うかどうかは正直厳しい。
シマウマのような外観のミラーモンスターは両腕に生えたブレードを振り回し、
屋台や石像を恐るべき切れ味で切り刻んでいる。あれが人に及ぶ前になんとかしなければ。

「あら大変。早速お願いできるかしら」
「ああ。そろそろ“こいつ”も腹を空かせてたところだ」

八雲紫と秋山蓮は幻想郷に到着早々、ミラーモンスターに遭遇。蓮は混乱でひっくり返った水桶で出来た水たまりにカードデッキをかざす。
水面の像と現実の蓮の腰にベルトが現れた。蓮は右腕を曲げ、体ごと左に振りかぶる。そしてベルトにカードデッキを装填。

「変身!!」

蓮の体に光り輝くプリズムがいくつも重なり、黒を基調とした西洋騎士の甲冑を思わせる姿の仮面ライダー、仮面ライダーナイトに変身した。
ナイトは直ちにカードを1枚ドロー。腰に装着したダークバイザーに挿入。

『SWORD VENT』

ナイトの手に一振りのランスが現れた。すぐさまナイトはシマウマ型モンスターに走りより、一太刀浴びせる。蓮の幻想郷での初陣が幕を開けた。


その頃。ナイトがミラーモンスターと死闘を繰り広げている時、無人となった青果店で蠢く人影があった。
妖怪ネコババ──背丈は小学生くらい、猫と老婆を足して2で割ったような顔つきで背中がひどく曲がっている。ネコババは高級果物や売上金を次々と懐に放り込む。

「ヒヒヒ、ぼろ儲けぼろ儲け。苦労して荷馬車に潜り込んだ甲斐があるってもんさね。鏡1枚放り投げたらこの通り。楽な商売見つけちまったよ」

「火事を起こして火事場泥棒とは、見下げたクズだな」

いつの間にか後ろに立っていたナイトがネコババを見下ろしている。

「お、お前はいつの間に。あの妖怪と戦ってたはずじゃ……い、いいのかい?アレを放っておいたらすぐに誰か死んじまうよ?ヒヒ」

「貴様の心配など要らんし放ってもいない」

「だって今……あれ、え?えええええ!?」

ネコババが驚きの声を上げたのも無理はない。目の前にいるはずのナイトが、
中央広場でミラーモンスターと戦っているのだ。しかも4体。

『TRICK VENT』

“TRICK VENT”は4体の分身を生み出すアドベントカードで、自分自身を含めた計5体で戦うことにより、使い方次第で戦局を大きく変えることができるのだ。

「後ろで妙な気配がして見に来たらこの有様か」
「貴方はミラーモンスターに対処して。こいつは私が処分する」

スキマから上半身だけを出した紫がネコババの首根っこを捕まえた。

「ひっ!!」

「わかった。一気にカタを付ける」

ネコババを捨て置き、再びシマウマ型ミラーモンスターへと駆け出すナイト。「待っとくれ兄ちゃん!いっそ殺し──」
後ろから聞こえた声を無視し、ナイトはもう1枚カードをドローした。
そして、コウモリのエンブレムが描かれたカードをダークバイザーにセット。

『FINAL VENT』

カードの力で次元に穴が空き、上空に巨大なコウモリ型モンスター、ダークウィングが現れた。
ダークウィングは大きく羽ばたくと、疾走するナイトの肩に捕まり大きなマントと化した。
次の瞬間、ナイトはマントの力で空高く飛翔し、一瞬静止した後、ミラーモンスターへ向け突進。
空中でマントがナイトの体を取り巻き、漆黒の竜巻と化したナイトがミラーモンスターを直撃、致命傷を負わせた。
ナイトのファイナルベント「飛翔斬」が勝負を決し、人里に再び平穏が訪れた。


──


「……なんてことがあったのよ~」
「ちょ、ちょっと待って下さい。蓮がここに来た経緯はわかりました。
でも話の中でサラッと“妖怪”が出てきたんですけど、それってミラーモンスターのこと、ですよね……?」
「いいえ。文字通りの妖怪よ。昔話とかでご存じない?」
「知ってますけど、いきなりは信じがたいっていうか……あなたも人間にしか見えないし」
「そうね。疑念を抱いたままだと後々差支えが出るでしょうから、慧音、あの姿を見せて差し上げたら?」
「むぅ、仕方がない。あまり見せたくはないのだが……」

慧音は深く息を吸い込むと、意識を集中し始めた。真司に緊張が走る。周囲の空気が震え始める。
すると、慧音の周りを小さな光球が取り巻き、慧音の体に変化が起き始めた。
髪が緑に染まり、頭には角が生えはじめ、慧音の頭飾りが転げ落ち、カラカラと音を立てた。
しばらくして完全に伸びた鋭い双角は、彼女が人ならざる者の証だった。

「見ての通り、私は半人半妖、ワーハクタクなんだ。信じてもらえただろうか」
「あ……はい、信じます……」

その言葉に嘘はなかったが、“なんでドレスまで色が変わるんだ?”という疑問のほうが強かった。
しかし人間、命の危機やあまりに信じがたい出来事に直面した時は、ついどうでもいいことを考えてしまうものなのだ。

「つまり、ここに人間は貴方一人しかいないってこと。お分かり頂けたかしら?」
「はい、十分。あ、でもそんな凄い力があるなら、ミラーモンスターなんか平気じゃないんですか?」
「平気じゃないのよそれが」

紫が、はぁため息をついてから説明する。

「私の能力は“境界を操る程度の能力”。虚と実、天と地、あらゆる事象の境界を操って、
無から有を創りだしたりできるんだけど……鏡の世界にだけは干渉できないの」
「お、俺頭よくないからあんまりピンと来ないんですけど、それって凄くないですか!どうしてミラーワールドだけだめなんです?」
「2枚の鏡を向かい合わせて遊んだことはあって? 鏡が互いの姿を映しあって、それが目視できる限り無限に続くの。
そう、まさにそれが原因。ミラーワールドは無限に存在するの。無限にある世界のどれかにいるモンスターなんて探しようがない。
さっきの話のようにミラーモンスターが現実世界に出てきて、運良く私たちが居合わせれば撃退は可能。
でも実際そんな幸運はめったに無い。結局のところ防戦一方なの、今のところ」

やんなっちゃう、という風に紫が頬杖をつく。そこで、慧音が話を引き継いだ。

「そこで、幻想郷はミラーモンスターを察知し、ミラーワールドを行き来できる仮面ライダー諸君に協力を仰ぐことにしたんだ。
このままでは何かが映るもの全てに怯えながら生きていかなければならない。ミラーモンスター発生の元を断たない限り。
……無理やり連れて来て勝手なお願いをしている事は承知している。
だが!どうかミラーモンスター撃滅に協力してはくれないか、頼む!」

慧音は深々と頭を下げる。

「……頭を上げてください、慧音さん。俺は元々みんなをモンスターから守るために戦ってるんです。そして、ライダー同士の争いを止めるためにも」
「真司……ありがとう」
「やったぁ!さすが正義のヒーロー仮面ライダーね!」
「でも、気をつけてください。ライダーは話の通じるやつばかりじゃありません。
というか、大抵みんな自分の欲望を満たすことを第一に戦ってます。特に、1人凶暴な奴がいますから」
「わかった。新しいライダーとの接触には十分注意を払うよう肝に命じよう」

窓から夕焼けが差し込んでくる。
互いの要件が済む頃には、すっかり日も沈みかけていた。

「そうだ、真司。今夜泊まるあてはあるのか?ないなら隣の空き家を使うといい。せめて協力してくれるライダーには衣食住を提供するよう決めているんだ」
「あ、そうだ全然考えてなかった。マジ助かります!そういえば蓮はどこで寝泊まりしてるんだろう」
「彼にも同じように申し出たんだが、“タダ飯食らいは性に合わない”と言うものだから、住み込みで働ける蕎麦屋を紹介したんだ」
「あー……偉いなー蓮。ハハハ……」

なんだか自分だけニートやるような気分になって少し落ち込む真司だった。
拙作ですが頑張って続き書きます。
AK
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