Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:第1話 東方死闘劇

2016/05/24 02:05:36
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満月の輝く冷たい夜空を切り裂くように、2つの影が空を駆ける。

「霊夢、そっち行ったぞ!」
「わかってる!」

2人の少女が追うのは、1体の魔物。人間型の上半身を持つ大型の蜘蛛が、木々をなぎ倒しながらその巨体に似つかわしくないスピードで逃げ回る。
最近になって幻想郷に現れ出した、謎の異形である。

「足場が悪いところに追い込むわよ!」
「了解だぜ、私は奴の前を塞ぐ。進路を変えたら霊夢は魔法の森に追い込んでくれ」
「わかったわ」

魔理沙は懐から1枚のカードを取り出し、スペルを起動した。

──魔符「スターダストレヴァリエ」!

魔理沙の周囲から無数の星型のエネルギー弾が発射され、巨大蜘蛛の周りに降り注いだ。
蜘蛛は一瞬その動きを止め、次の瞬間には弾幕の薄い方角へ向かって再び走り出していた。
だが、それが二人の取った作戦であり、二人の思惑どおりに蜘蛛は森の奥深くに入り込んでいった。
あとはもう、後方から追い詰めるだけだ。両側は、うねる様な古木が絡み合うようにして進路をふさいでおり、
大蜘蛛は足場の悪い森を、前に向かって進むしかなかった。明らかに速度が落ちた蜘蛛との距離は一気に縮まり、二人は大蜘蛛を魔法の射程内に捕らえた。

「よ~し、今だ!一気にとどめを刺すぜ!」
「本当、手こずらせてくれたわね」

魔理沙は意気の上がった様子で陽気に叫ぶ。
霊夢も勝利を確信していた。──だが。

グゴゲゲゲゲゲ…

二人をあざ笑うかのように、大蜘蛛が不気味な鳴き声を上げた。
同時に二人も作戦が裏目に出てしまったことを知る。

「しまった、あんなところに池があるなんて!」
「まずいぜ、こないだの雨が大きな水たまりになってるんだ!」

ここ、幻想郷では、妖怪自体は珍しくも何ともない。妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する。
古来よりそういう共存関係を続けてきた。また、妖怪も好き放題に人間を襲うわけではない。里にいる人間、特に昼の間は手を出さない。
少しでも知性のある妖怪なら、その不文律を破ると、すぐさま博麗の巫女に退治されてしまうことを知っているからだ。
だが、数ヶ月前から現れ出した、この妖怪は異なる。昼夜を問わず、里の中にいようと手当たり次第に人間を喰らい、妖怪ですら餌食にする。
そして、その最大の特徴が──

「くそ、月明かりで池が鏡になってるはずだ!逃げられるぜ!」
「間に合わない…!」

鏡の世界を行き来するのだ。──実際は鏡に限らず、水面やガラスなど、鏡面化しているものなら何にでも出入りできる──
いったん鏡に逃げ込まれてしまえば、もうなす術はない。大蜘蛛は、まさに池の中へ飛び込もうとしていた。

「ちくしょう……ここまで来て逃がしてたまるかよ!」
「ちょっと魔理沙、何する気!?」
「行くぜ!恋符──」

魔理沙は六角柱の物体を構え、前方の池に狙いを定めた。そして、ありったけの力を込めて叫んだ。

「マスタアァァーーーースパアァァーーーーク!!!」

六角柱から巨大なレーザー光が放たれた。レーザーは、まさに鏡の世界に逃げ込もうとした大蜘蛛を池と周囲の地形ごと吹き飛ばした。
轟音が深夜の森に響き渡り、鳥や森の動物たちを穏やかな眠りの世界から叩き起した。


『ギャース!ギャース!』


「ちょ、痛い!誰が森にクレーター作れって言ったのよ!」
「イテテ、悪かったって、あっち行ってくれっての!
──しょうがないぜ、変な鏡の妖怪を野放しにしとくよりマシだろ?」
「そりゃそうだけど!」

鳥たちに安眠妨害された怒りをぶつけられながら、2人は引き揚げて行った。
今夜の妖怪退治は終了である。だが勿論、根本の問題が解決したわけではない。

「紫でも干渉できない鏡の世界…一体なんなのかしら」
「わからんぜ。パチュリー達も色々調べてるみたいだが、まだ何の手がかりもつかんでないってさ」

翌朝。
霊夢たちの活躍も空しく、天狗の瓦版で別の鏡の妖怪による凶行が報じられた。
霊夢達が大蜘蛛を倒した同じ晩に、人間の里では村人が家族の目の前で鏡の妖怪に食い殺され、
妖怪の山では水辺にいた河童が水中ではなく、「水面」に引きずり込まれ、二度と帰って来なかったという。
鏡の中からは無尽蔵に謎の妖怪が現れる。その異変の原因を突き止めない限り、幻想郷の人妖に安息の日は訪れないのだ。
霊夢は天狗が投げ込んで行った瓦版を居間に放り出し、溜息をついた。
すると、庭先の空間に裂け目ができ、中から金髪を腰まで伸ばした女が姿を現した。
だが、霊夢はそんな超常現象ともいえる出来事に驚くことなく、

「紫じゃない……お茶なら出さないわよ」
「あら、ご挨拶。浮かない顔ね」
「当り前じゃない。こんな訳わかんない連中に好き放題させてたら、ただでさえ少ない収入(賽銭)が無くなるわ」

軽口を叩く霊夢だったが、その表情にいつもの明るさはなかった。

「ふふ。元気をお出しなさないな。今日はそのことでいい話を持ってきたんだから」
「何か手掛かりがわかったの!?」
「ええ。実は外の世界にね……
鏡の世界を根城にしている者たちがいるの」



    ──東方Project VS 仮面ライダー龍騎 ──



──2002年 東京


「はぁ~、結局ガセネタだった。また編集長に嫌味言われんのかぁ…」

OREジャーナルの新米記者、城戸真司は浮かない気持ちで
愛用のHondaズーマーで新宿の街を走っていた。

「絶対居ると思ったんだけどなぁ、虹色の鯉。
金色のザリガニとは違ってなんつーか信憑性感じるっていうか、
なんか実在してもおかしくなさそうな感じだったんだけどなぁ」

──キィィーーーン…

「!?」

城戸真司の頭に聞きなれたいつもの甲高い音が響く。
ミラーモンスターが現れたのだ。すぐさまズーマーを道路わきに留め、
ブティックのショーウィンドウの前に立つ。丁度ガラスに全身が映る。よし、問題ない。

真司はガラスに向かって、龍の模様を模ったカードデッキをかざす。
すると、鏡に映った真司の腰にベルトが現れた。
バックル部分に、何かを差し込むような長方形のスペースがある大型のベルトだ。
鏡の中のベルトは実体を伴い、現実世界の真司に装着された。
真司は右手を斜め上に振り上げ、叫んだ。

「変身!!」

そして、流れるような動作でベルトにカードデッキを装填。
次の瞬間、真司の姿に幾重もの鏡像が折り重なり、真司は完全にその姿を変えた。

赤を基調としたスーツに、全体的に龍をモチーフにした防具が装着されている。
頭部を完全に保護するヘルム。活動の妨げにならないよう無駄な部分をそぎ落とし、
それでいて強力な金属で胸部を保護するブレストアーマー。
そして、左腕に装着された龍の頭部を象ったガントレットを思わせる装備が特徴的である。

──その名を仮面ライダー龍騎という。

「っしゃあ!」

いつものようにミラーモンスターを追うべく、
カードデッキで変身し、鏡に飛び込む真司。
鏡の中は無数の鏡面体に包まれた世界、ディメンジョンホールなっていた。
そこには、巨大なキャノピーが特徴的なバイク型ビークル、
ライドシューターが待機していた。
真司はすぐさまライドシューターに乗り込み、異次元のトンネルを突き進んだ。
ディメンジョンホールを抜けると、全ての左右が反転した鏡映しの世界、
ミラーワールドである。

(──見つけた…)

だが、誰も居ないはずの空間に、突然謎の声が響いた。

「──!?
だ、誰だ!」

真司の呼びかけに返事はない。
鏡の中で誰かの声を聞く、ということは普段決して起こりえない。
この異次元には仮面ライダー以外の者が入りこむことは不可能なはずだ。

「空耳かな…」

出口は目前に迫っていた。
真司は気になりながらもモンスターとの戦いに意識を向ける。
そして、超高速で走り抜けるライドシューターは
ディメンジョンホールの出口を走り抜けた。
この先は、左右が反転したか鏡映しの世界、ミラーワールド。
つまり、先ほどのブティックの前に到着するはずであった。

──しかし
ライドシューターでたどりついた先は、見慣れた東京の街ではなく、
まるで人気のない、森の近くの草原だった。

「どこだよ、ここ…」

困惑し、辺りを見回す真司だが、風の吹き抜ける音と、時折鳥の鳴き声が聞こえるだけで
ブティックはおろか、通りかかる者すら見当たらない。

が、そんな緩やかな空気を、女性のすさまじい悲鳴が切り裂いた。
声の方向に目を向けると、質素な着物を着た娘が、木々の間を縫うように、何かから逃げようとしている。
そして、それを追うのは右手の筋肉が異常に発達し、それに見合う巨大な鉤爪を持った狼のようなモンスターだった。

「ちょろちょろ逃げ回りやがって、いい加減大人しく食わせろっつてんだよ!」

「やめてください、ここはまだ里の土地です!私を殺せば貴方も博麗さんに退治されますよ!」
「足から頭まで食っちまえばわかんねえんだよ、そんなもん」

もともと足場の悪い森の中を逃げ回っていた娘は、あっという間に追いつかれる。

「なな、なんでミラーワールドに人が居るんだ?」

モンスターはともかく、生身の一般人がミラーワールドにいるはずがない。
次々に起こる想定外の現象に戸惑う真司だった。

「でも……今はそんなことどうだっていい!」

どんなに不可解な現象が起ころうと、今の状況で真司が仮面ライダーとして、
やるべきことは一つだった。渾身の力を込めて叫ぶ。

「止めろ!」

鉤爪を振りおろそうとした狼男は動きを止め、声の聞こえた方向を見る。
そして、狼男が見たのは、全力でこちらに駆け寄ってくる
見慣れぬ鎧を着た人間らしき者の姿だった。

「助けてください!」

娘も気が付き、泣きながら真司に向かって叫ぶ。

「あぁ?なんだお前、邪魔すんじゃねえ!」

「こいつ、喋った!?」

娘を放り出すと、モンスターは右手の巨大な鉤爪を構えながら、威圧するように真司に近づいてきた。

「退治屋気取りが、そんな薄っぺらい鎧で妖怪に勝てると思ってんのか?」

「へへん、こいつは特別なんだよ。デカい口は勝ってから叩け」

「じゃあ望み通りお前から挽肉にしてやるよ!!」

妖怪対人間。
古来より続いてきた、それでいて、決して起こりえないはずの戦いが幕を開けた。
しかし、両者がそれを知るすべはない。

狼男は真司を一撃で仕留めるべく、巨大な鉤爪を振り下ろそうとする。
真司は後方にジャンプ、鉤爪を回避。そして、ベルトに装填したカードデッキから1枚のカードをドローし、
左腕に装着した龍の頭部を象ったガントレット型のカードリーダー、ドラグバイザーに挿入した。

『SWORD VENT』

システム音声とともに、カードの力が解放される。
空中から一振りの剣が現れ、真司の手に飛び込んだ。

「ふんっ!」
「ハッ!」

妖怪が二撃目を繰り出したが、寸でのところで召喚した剣がモンスターの鉤爪を受け流し、攻撃に転ずる龍騎。
だが、モンスターも妖怪本来の身体能力で、スピードとパワーを兼ね備えた連撃で龍騎を追い詰める。

「くそっ、やるな」

「どうした、ふざけた鎧は見かけ倒しか?」

狼男が横薙ぎの攻撃を繰り出した。今度は回避が間に合わず真司の脇腹に命中。
一撃をまともに食らい、吹っ飛ばされる真司。

「ぐっ!!痛ってえ……」

痛みをこらえながら立ち上がる。だが、そのおかげで彼我の距離が空いた。
チャンスだ。
その機を逃さず、真司はもう1枚のカードをドロー。
現れた龍のエンブレムが描かれたカードをドラグバイザーにセットした。

『FINAL VENT』

1枚目のカードとは比較にならない、莫大なエネルギーがカードから解放される。

「ハアァァアアアアア……!!!」

カードのエネルギーで上空の時空が歪み、歪みの中から巨大な何かが現れた。

「な、なんだ!?」

気合いを高める真司を、異次元から現れた真紅の龍、ドラグレッダーが
うねるように取り巻いた。
そして、真司は空高く跳躍し、ドラゴンも追随するように飛翔。
大きく空中で一回転すると、後方からドラゴンが勢いよく炎を吐き、
激しく燃え盛る炎と一体となった真司が一直線にモンスターめがけて蹴りを放った。

「ギャアァァァ!!」

超高熱と数百トンに及ぶ衝撃を受け、狼男は断末魔を残して燃え尽きた。

──ライダー固有の必殺技 “FINAL VENT”
龍騎のドラゴンライダーキックが炸裂した。

「ふぅ…」

真司は変身を解除し、息をついて辺りを見回す。
死闘の終わりとともに、元の長閑な風景が戻る。
とりあえずの危機は脱した。だが、同時に自分の置かれた状況を思い出す。

「つーかここ、いったいどこなんだ?
もうすぐ10分くらい経つけど、消える気配もないし。消えちゃこまるけどさ」

元の世界に帰ろうにも、入ってきたはずの鏡は見当たらない。
すると、困り果てた真司に、助けた娘が駆け寄ってきた。

「ありがとうございました!なんとお礼を言えばいいか…」
「あぁ、いいっていいって、そんなの。それより怪我してない?」
「大丈夫です。それより何かお礼をさせてください。私、近くの里に住んでるんです。
大したことはできませんが、ご飯でも食べていってください」
「里? 近くに街があるのか…… それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

娘と共に里に向けて歩き出す真司。

「あ、そうだ。新宿駅どこか知らない?」
「しんじゅくえき、ですか……? ごめんなさい。よくわかりませんが、里で上白沢先生に聞けば何かわかると思います」
「新宿からずいぶん離れちゃったのかなぁ。まぁいいや。街に行けばわかるだろうし」

行く当てもない真司は、助けた娘に里まで連れて行ってもらうことにした。
そこに東京へ戻るための手がかりがあると信じて……
読んでくださってありがとうございます。
AK
コメント



1.沙門削除
クロスオーバー物は茨の道なのですが、これからも頑張って欲しいと思う今日この頃
2.AK削除
>沙門 さん
コメントありがとうございます。
確かに、あちらを立てればこちらが霞む状態で、バランス取りに苦労しています。
でも、始めたからには絶対完結させたいです。